聴覚に基づく家族行動に関する研究 ーアニメ・サザエさんによる気配の解析ー

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聴覚に基づく家族行動に関する研究 ーアニメ・サザエさんによる気配の解析ー Extractions of Family Soundscape: from the Case of Famous Animation "Sazae-san"

田代 紗和子 Sawako TASHIRO

hitoshi watanabe lab. waseda univ. bachelor's thesis 2012


Extractions of Family Soundscape : from the Case of Famous Animation "Sazae-san"

1

本論

hitoshi watanabe lab. waseda univ. bachelor's thesis 2012

はじめに

0

研究背景

1

研究概要

2

視覚障害者へのヒアリング調査

3

アニメサザエさんにおける気配抽出調査

4

分析・考察

5

まとめ

6

参考文献

7


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0

はじめに

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はじめに

0.1

もくじ

0.2


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0.1 はじめに

おばあちゃんの音がすきだった。

冬の朝早く、台所からきこえる お湯がわく音。 包丁の音。 私はそれを、あたたかい布団の中できく。

あの音は、どこにいったのだろう。 あの音に、なにをおもったのだろう。

あの音を、もう一度かんじたい。 おばあちゃんの「けはい」をかんじたい。

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4


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第 1 部 本論

0 はじめに

3

0.1 はじめに

4

0.2 もくじ

5

1 研究背景

7 8

1.1 気配とは  1.2 気配とコミュニケーション

14

1.3 アニメにみる気配

19

2 研究概要

24

2.1 研究目的

25

2.2 既往研究

26

2.3 本研究の位置づけ

31

2.4 研究フロー

32

3 視覚障害者へのヒアリング調査

33

3.1 調査概要

34

3.2 調査結果

35

3.3 考察

38

4 アニメ・サザエさんにおける気配抽出調査

39

4.1 調査方法

40

4.2 調査結果

43

5 分析・考察

47

5.1 抽出項目ごとにみた気配の発生回数

48

5.2 気配マップ

60

5.3 全気配の遷移

71

5.4 会話行動を引き起こした気配音の広がり

73

5.5 考察

77

6 まとめ

80

6.1 まとめ

81

6.2 展望

82

6.3 謝辞

83

7 参考文献

84

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5


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第 2 部 資料編

1 自宅における気配の収集調査データ 2 アニメ・サザエさんにおける気配抽出調査データ  2.1 視聴作品リスト  2.2 気配抽出データ

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資料編

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自宅における気配収集調査データ

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アニメ・サザエさんにおける気配抽出調査データ

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視聴リスト

2.1

気配抽出データ

2.2


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1

研究背景

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気配とは

1.1

気配とコミュニケーション

1.2

アニメにみる気配

1.3


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1.1 気配とは 1.1.1 気配の意味

* デジタル大辞泉 http://kotobank.jp/word/

「気配」の意味は以下の2つである。* 《古くは「けわい」 。 「けはい」は、当て字「気配」に引かれた読み》 1.はっきりとは見えないが、漠然と感じられるようす。きはい。 2.取引で、市場の景気や相場の状態。きはい。

気配の語源である「けわい」の意味は以下の3つである。 《「気 ( け ) 這 ( は ) ひ」の意。 「気配」の字を当てて現代では「けはい」という》 1 漠然と感じられる物事のようす。雰囲気。特に、音・声・においなどによっ て感じられる物事のようす。また、その音やにおいなど。 2 立ち居振る舞い・動作などから受ける印象。また、その人のようすから察せ られる人柄や品位。 3 死んだり離ればなれになったりしても感じられる、その人の面影・名残。

*wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/

英語での「気配」については以下のとおり述べられている。* 英語表現に sign または indication があり、また気配を感じる事を sense という 動詞で表すことがあるが前者 2 つの名詞は「徴候」といった意味で、後者の動 詞は五感により読み取る事を含んだ「感じる」という意味であるため、なんと なく感じられる様子という意味での気配という語に相当する概念だけを表す簡 潔な語はない。あえて背後から人に見られているときに感じる気配を英語に訳 すと "Sense of being stared at" となる。

本研究では、音・声・においなど人間の感覚器官によって感じられるという、 語源「けわい」の意味に着目し、研究をすすめることとする。 声

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fig.1.1.1-1 気配のイメージ

8


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1.1.2 気配と感覚

感覚器官と認知の仕組みについて記述しておく。*1

*1 感覚器官と認知の仕組み http://www5f.biglobe. ne.jp/ mind/vision/line3.html

自分の周囲を取り巻く外界の事物や現象といった環境、自分自身の身体の状 態を人間などは、目、鼻、耳といった感覚器官を働かせて「認知」している。 外界からの物理的刺激を単純に感覚器官で受け取る事を一般に「感覚」という。 感覚とは、 「視覚・聴覚・嗅覚・味覚・皮膚感覚・運動感覚・平衡感覚」の事を いい、それぞれの感覚に対応する感覚器官(受容器)と物理刺激を以下の表に まとめる(tab.1.1.2-1) 。

tab.1.1.2-1 感覚の種類(感覚器官と物理刺激)

五感

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1.1.3 視覚と聴覚の比較

*2 教育機器編集委員会「産業 教育機器システム便覧」日科技 連出版社(1972) 五感による知覚の割合 視覚 83%

人間の感覚において、視覚と聴覚により得られる情報量多いということが産 業教育機器システム便覧 *2 によって明らかにされている。ここでは、視覚と聴 覚の情報量の比較を行う。

聴覚 11% 嗅覚 3.5% 触覚 1.5%

三上章允氏によると、以下のような視覚と聴覚の比較がなされている。*3

味覚 1.0%

ヒトやサルは視覚が良く発達しており視覚動物と呼ばれる。確かに対象物の識別や対象物 *3 脳の世界―時間特性は聴覚 優位、聴覚が視覚判断を変える ― http://web2.chubu-gu.ac.jp/ web_labo/mikami/brain/index. html

の位置の識別では視覚はすぐれた特性を持っている。聴覚と視覚を比較すると、双方とも体 から離れた位置に発生した物理的情報を受容する共通点がある。しかし、視覚は聴覚に比べ て情報の到達時間が速く、3 次元空間位置の同定の精度が高く、高い空間解像度の他に、色、 明るさ、動きなどの情報も高い精度でとらえることができる。視覚情報と聴覚情報が矛盾す ると、しばしば視覚情報が優先される。そのため視覚優位という表現も使われる。  一方、聴覚のすぐれている点のひとつは、360 度、どの方角からの音も聞くことのできる 点である。視覚は水平方向に約 180 度の視野を持つが、振り向くことなしに後ろを見ること はできない。また、高い解像度で見ることができるのは視野の中心付近だけであり、通常は 視野の中心付近に注意が向いていて周囲の視野のできごとをしばしば見落とす。道路を歩い ているときや自転車で走っているとき、音を聞くことにより我々は後方から近づく車にも気 づくことができる。

また、手嶋教之氏によると、それぞれの感覚器官には異なった特性があると *4 物理的インターフェイス http://www.ritsumei.ac.jp/

述べられている。*4

ocw/se/2006-53924/lecture_ doc/2006-53924-02.pdf

情報取得における視覚の特徴 :  1.伝達できる情報量が極端に多い                 2.意識しないと情報を取得できない 情報取得における聴覚の特徴 : 1.伝達できる情報量は視覚より少ない                2.無意識や睡眠中でも情報を取得できる

意識しないと情報を取得するのが難しい視覚に対し、耳を塞ぐといったこと がないかぎり、無意識下でも容易に情報を取得してしまうのが聴覚の特性であ る。 視覚に比べ聴覚の特性は、漠然と感じられる物事のようす、という気配に ふさわしいと考えられる。

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1.1.4 わたしの周りの気配

日常生活で実際に感じられる「気配」についてまとめる。

■ブレインストーミングによる気配イメージの収集  実際に「気配」と聞いて、思いつく事柄について、自由に言葉を出してもら うブレインストーミングを行った。その結果、聴覚による気配が最も多く、視 覚による気配は二番目に多く想起された。 調査日:6月14日 協力者:大学生5名 調査結果:以下に感覚器官ごとに分類したものを示す。

tab.1.1.4-1 感覚器官による気配の分類

耳でかんじる気配

眼でかんじる気配

体でかんじる気配

床のきしみ

すりガラス越しに見える人影

椅子のぬくもり

寝息

外に漏れる光

家の前を通るトラックの振動

階段を降りる音

傾いた製図台

温かい座布団

父が帰ってきたバイクの音

つきささる視線

熱を持ったテレビ

ドアが閉まる音

PCの履歴

つり革のぬくもり

壁づたいの書く音

机の上のゴミ

風呂場の湿気

食器を洗う音

トイレットペーパーの切れ方

クーラーの効いた部屋

雨戸を閉める音

洗濯物の量

鍵が開いた音

忘れ物

鼻でかんじる気配

料理する音

タイルについた足あと

シャンプーのかおり

階下のテレビの音

登っていくエレベーター

夜ご飯のにおい

鳩が飛び立つ音

急についた廊下の電気

あの人の香水

話し声

ぐちゃぐちゃの布団

トイレの残り香

ハイヒールの音

取り込み忘れた洗濯物

タバコのにおい

掃除機の音

濡れた傘

コーヒーの香り

隣の家の目覚まし時計

大量の着信履歴

汗臭い洋服

歯を磨く音

散らかったおもちゃ

下校時の子供の声

脱ぎ揃えられた靴

心でかんじる気配

漏れる音楽

背後に誰かがいる予感

冷蔵庫を開ける音

おばけ

買い物袋の音

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インターホン越しの緊張感

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■自宅における気配の収集調査  どの感覚器官を使って気配を感じることが多いのかを調べるため、自宅にお いて人の気配の収集調査を行った。結果を以下に示す。 (fig.1.1.3-2) 調査日:6月17日 12:00 ∼ 13:00 調査場所:自宅リビング 調査結果:以下に気配の種類と発生回数、及び発生場所を示す。       (収集したデータ一覧は資料編を参照。 ) 電話 ベル音1回 階段 足音5回

キッチン 料理音4回

W.C トイレ

冷蔵庫 開閉音2回

流水音1回

私 窓 開閉音1回

父の姿1回 外の様子 足音、話し声3回

:聴覚   :視覚 fig.1.1.3-2 自宅における気配収集マップ

以上の 2 つの調査では、聴覚による気配が多かった。これらの結果と、1.1.3 において前述した聴覚の特性を考慮し、本研究では、聴覚による気配に着目し、 研究をすすめることとする。

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1.1.5 視覚障害者と聴覚による気配

視覚障害者が持つ感覚のひとつに、聴覚による気配を手がかりに障害物を認 識する「障害物知覚」という感覚がある。  盲人の中には、手で触る前、あるいは身体が接触する以前に壁や柱などの 物体の方向や距離を見事に当てることができる人がいる。このように、音を 出さない物体の空間的位置を探知する感受性のことを障害物知覚 (obstacle perception) と呼ぶ。1950 年代の研究により障害物知覚の正体は、音を利用し た空間知覚であることがわかったが、それまでには諸説があり、健常者により も感覚が鋭くなったという感覚鋭敏説や、第六感が備わっているというオカル ト説などが唱えられていた。ここで、障害物知覚が聴知覚であることが明らか *5 障害物知覚メカニズムの解 明に関する研究

になった 1 つの実験例を以下に紹介する。*5

http://www.fun.ac.jp/ itokiyo/ studies/obstacle/obst-prcpwhatis.html

盲人に壁に向かって歩いて近づいてもらう.そして,何かあると思った所で停止すること を求める.この課題を盲人は容易にこなした.しかし,耳を覆ってしまうと彼らは壁の直前 で停止することができず,衝突してしまったのである.

以上により、視覚障害者は健常者と比較して、聴覚による気配を有効に活用 していると予測される。視覚障害者における聴覚の利用実態については、 3章 「視 覚障害者へのヒアリング調査」において後述する。

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1.2 気配とコミュニケーション 1.2.1 家族間コミュニケーションの減少

人々の価値観の多様化やライフスタイルの変化が目まぐるしい近年、家族関 *6 象印マホービン株式会社 「家族揃っての行動に関する調

係に変化が見られる。家族揃っての行動に関する調査 *6 によると、家族と過ご

査」(2002)

す時間は減少傾向にあり、家族が全員揃う時間は平均して、平日で 2 時間 48 分、

http://www.zojirushi.co.jp/

休日で 8 時間 29 分となった。休日に 11 時間以上家族全員が揃っている家庭も、

topics/koudou.html

*7 シチズン意識調査「30 年 の推移で見るビジネスマンの生 活時間調査」(2010) http://www.citizen.co.jp/

1985 年の 39.0%から 28.3%に減少している。 (tab1.2.1-1)  また、ビジネスマンの生活時間調査 *7 によると、1 週間における家族との会 話に要する時間は、30 年前と比較し 3 時間 48 分減少していることがわかった。 (tab.1.2.1-2)

research/time/20101201/02. html

こうした家族間コミュニケーションの減少により、様々な問題が発生してい *8 内閣府「国民生活白書」 (2007) http://www.caa.go.jp/seikatsu/ whitepaper/h19/01_honpen/ index.html

る。国民生活白書 *8 によると、親子間の会話が少ないほど、子供の知的好奇心 は減少し、 また、 成人後の仕事に関する能力 * は乏しくなることがわかった。また、 夫婦間においても、出産意欲の低下や、子育て負担の偏りに影響するというデ ータが得られている。家族関係の希薄化は、晩婚化や少子化、ひきこもりや自 殺といった社会問題や、若者の犯罪 ・ 非行の増加にまで関係している。*9

* 成人後の仕事に関する能力: 「自分の考えを分かりやすく説 明すること」「自分の感情を上 手にコントロールすること」 「自

次頁にて、家族関係の希薄化の原因の 1 つとして考えられる、日本の住宅の 変遷を取り上げる。

分から率先して行動すること」

tab.1.2.1-1 家族が全員揃う時間

*9 国政モニター http://www8.cao.go.jp/ monitor/answer/h14/ans1412003.html

tab.1.2.1-2  1 週間あたりの家族との会話時間

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1.2.2 日本の住宅の変遷

日本の住宅の変遷に伴い、気配を感じにくい住宅が増えていると考えられる。 江戸時代から現在に至るまでを見ても、鎖国や戦争、高度経済成長といった歴 史的背景のもと、住居形態は大きな移り変わりを見せている。 ■住宅の個室化  日本の伝統的な木造住宅を見ると、開放性、つまり風通しの良さという大き な特徴を持っていることがわかる。こうした住宅では、外壁、間仕切り壁、柱 と柱の間はそのほとんどが障子や襖となっている。これには、四季をとおした *10 日本住宅の変遷 http://www.moiss.jp/ whatmoiss/pop_01.html

暮らし方が基本となっている日本人が屋内に居ながらにして自然と接するとい う生活感が現れている。*10 また、これらの間仕切りは取り外しが可能であり、 部屋の用途に多様性を持たせることができる。一方、欧米の家は土・石・煉瓦・

*11 日本家屋の間仕切り http://anaroguoyaji.cocolognifty.com/blog/2011/10/post-

コンクリート等で造られ、各部屋も完全に壁で仕切られ、 「ドア」の開閉によっ て外部と連結するそれぞれ独立したスペースで構成されている。*11

c7af.html

こうした伝統的な住宅は、今では数が少なくなってきている。戦後、日本の 住まいは、客を迎え入れる為の部屋よりも家族主義の部屋作りに関心が払われ *12 ふすまの歴史 http://www.i-kurasi.com/C9_1. htm

るようになった。各部屋の独立性が高まり、プライバシー重視に目が向けられ る反面、二間続きの和室が段々と減っている。*12

江戸の長屋     昭和の戸建て住宅   平成の戸建て住宅   平成のマンション

fig.1.2.2-1 日本の住宅の変遷

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■住宅の無音化 * 騒音の定義 「無いほうが望ましい音」( 守田

プライバシーが重要視されるにつれて、住宅における騒音問題 * も顕在化し

栄「騒音」、岩波書店 ) との定

てきた。都市の近代化が進む中で、集合住宅が増え、そこに住む人は上階の住

義が一般的である。音そのもの が不快感をもたらす場合もあれ

人の足音・隣室のオーディオの音で悩まされるようになった。このような問題

ば、聴く人が置かれている状況

を背景に、具体的な住宅の音環境評価が行われ始めた。

や精神状態に起因してもたらさ れる不快感もある。すなわち、 存在するあらゆる音はそれを聴 く人の心理状態によって騒音と みなされる可能性がある。

1979 年には日本建築学会編「建築物の遮音性能基準と設計指針」において、 建築物の遮音性能が「遮音等級」という簡明な尺度によって表され、その比較 や評価が実用的かつ容易に行えるようになった。また 2000 年には、住宅の品質 確保の促進等に関する法律 ( 住宅品確法 ) に基づく住宅性能表示制度が開始され た。これを機に一般市民の住宅音環境に対する意識はさらに高まりを見せてお り、求められる遮音性能はますます高くなっていると言える。

*13 建築物の遮音性能基準と 設計指針 日本建築学会編,技報堂出版 (1979)

各ハウジングメーカーの取り組みを見ると分かるが、以前のような近隣住戸 や屋外の音のシャットアウトのみならず、最近では自宅内で聞こえる音 ( 家族の 音や電化製品の振動騒音、排水音など ) も低減するのが当然となっている。それ が良い音であれ悪い音であれ、 自然に発生する音が家から消えて行く、 これは「住 宅の無音化」と言える。  しかしながら、元来日本人は、音に対しておおらかな国民性を持ち合わせて いる。西洋人にはノイズとしか聴こえない虫の音に趣きを感じる日本人の感性 は独特のものである。このおおらかな国民性が顕著だったと言われているのが

*14 橋本典久「近所がうるさ い !―騒音トラブルの恐怖 」、 ベストセラーズ,ベスト新書

江戸時代の長屋住まいだ。橋本典「近所がうるさい !―騒音トラブルの恐怖 」*14 ではこのような指摘がされている。

(2006)

戦後、西洋化の波とともに、次第に敵対性の強い国民に変化してきているのではないだろ うか。江戸時代などの昔の日本人は、遮音性などというものはほとんどないに等しい棟割り 長屋に生活していたが、ここでは隣の音が聞こえるなどというのはごく当たり前のことであ り、特に気になるものではなかったのである。だからこそ、そんな建物で暮らすことができ、 それがかえって地域コミュニティ形成の利点にもなっていたのである。

騒音問題に伴い住宅の音は失われつつあるが、音を取り入れ、それを利用す ることが重要であるとも考えられる。

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1.2.3 気配を取り入れた住宅

以下、住宅内に積極的に気配を取り入れた設計事例を挙げる。 ●聴覚を活かした住宅  家族のコミュニケーションのために互いの音が聴こえるような設計を行う住 宅が登場している。 ・手塚貴晴 + 手塚由比「3 人の子どもが走り回れる家ー回廊の家」  居住スペースにほぼ壁が無く、施主の子どもが走り回れるスペースが確保さ れているのと同時に、家族の音が互いに伝わることによるコミュニケーション の促進が意図されている。ちなみにトイレ等のプライベートな空間には壁はあ るが、天井までは届かない設計になっている。 *15 四十万靖 , 渡辺朗子「頭 のよい子が育つ家」日経 BP 社 (2006)

・四十万靖 , 渡辺朗子「家族の音を伝える吹き抜け―頭のよい子が育つ家」*15  著者の実地調査によると、有名中学合格者の子どもの家は家族のコミュニケ ーションが密で仲の良い家庭が多い。そのような家庭の実現のために、著者が 提案する住宅のしつらえの一つが「家族の音を伝える吹き抜け」である。子ど もが音から家族の気配を感じる→家族の気配を感じることで安心感を得る・家 族のコミュニケーションが増えるというのがその理由である。 これは実際にハ ウジングメーカ−にも採用され、一定の支持を得たようである。 ・鳥越けい子「音を取り込む住宅ー古いトランクの家」

*16 サウンドスケープ : 「音の環境。専門的には、研究 のフィールドとしてみなされた 音環境の一部分。現実の環境を 指す場合もあれば、特にそれが ひとつの環境として考えられ た場合には、音楽作品やテー プ・モンタージュのような抽象 的な構築物をさすこともある」 (R.Murray Schafer 著、「世界の

サウンドスケープ *16 研究の国内における第一人者、鳥越けい子氏の自邸「古 いトランクのある家」は家自体が多様な音を発し、また、屋外の音を積極的に 取り込める設計がなされている。  ガラガラという音で人の動きを知らせる昔ながらのガラスの引き戸、雨が降 るたび軽快な音を立てる庇など…今までサウンドスケープ研究は屋外を対象と したものが中心であったが、その概念が家の中まで拡張された例である。

調律̶サウンドスケープとはな にか」、鳥越けい子・庄野泰子・ 若尾裕・小川博司・田中直子訳、 平凡社 ,テオリア叢書(1986)

fig.1.2.3-1 古いトランクのある家

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●視覚を活かした住宅  視覚を有効に活用できるような設計により、聴覚障害者にやさしいと紹介さ *17 聾者・難聴者にやさしい 都市・建築・住宅

れた住宅がある。*17

http://sugilab.com/blog/

・アトリエ・ワン「2階で外の気配を感じる家ーガエハウス」  地下から2階までのつながりを意識して設計されている。2階の窓がひとつ しかないため、一見外部とのつながりが途絶えてしまうようだが、庇に窓があ ることにより光が地面で反射し、庇の窓を通じて内部に入る。このとき、その 光とともに、外の影の動きも天井に映る。

fig.1.2.3-2 ガエハウス

・安藤忠雄「気配を感じる建築ー hhstyle.com/casa」  トップライトからの光が凸凹とした壁や天井に当っていき、その反射した光 は別のあちこちの壁などに向かって反射していく。ここで、上層部での人の動 きが光の動きを変化させることになり(わずかな影をつくる) 、それを通じて、 下層部にいる人は上層部が見えなくとも、あちこちに出てくる反射の変化を感 じ取る。

fig.1.2.3-3 ―hhstyle.com/casa

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1.3 アニメにみる気配  本研究で対象とする気配は、聴覚により感じられるものに焦点をあてるとし た。そこで、音に着目し研究をすすめるが、日常の生活から音を抽出、分析す るのは困難なため、音声を抽出しやすいアニメにおいて調査を行うこととする。 以下に、漫画及びアニメ「サザエさん」における音に関して考察を行う。

1.3.1 漫画・アニメにおける音 *18 音喩(おんゆ):漫画にお いて書き文字として描かれたオ ノマトペを指す、夏目房之介に よる造語。漫画を構成する要素 の一つで、効果音から人の心情 まで幅広く表現する。 wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/ *19 小松正史,吉村和真「マ

■漫画における音  漫画における聴覚情報は、文字による記述で示される。では、気配としての 音も、漫画の中では文字により可視化されるのではないか。漫画において視覚 化された擬音語・擬態語を「音喩」*18 という。その特長と、現実での音の認識 のされ方について「マンガに見る聴覚情報の視覚的記録」*19 には以下のように 述べられている。

ンガに見る聴覚情報の視覚的記 録」京都精華大学紀要第 26 号 , 215-238(2004) http://www.kyoto-seika.ac.jp/

現実世界では瞬時に消えゆく運命でありながら私たちの聴覚に記憶される「音」たちは, 画と文字の組み合わせによって視覚的に記録されるマンガにおいて,どのように描出され変

event/kiyo/pdf-data/no26/

換されるのか。たとえば ( 図−1)* 20 の「シーン」

komayosi.pdf

という音喩について考えるならば,いつどこに登

*20 手塚治虫,「バンパイア」

場,いつのまに私たちはこれを「音の無い音の擬

55 頁(1968)

音語」として読み解き・共有してしまったのか。 あるいは, 「音の無い状態」が,なぜ「シーン」で あり, 「ムーン」や「ガーン」では代替不可能なの か。逆に,なぜショックを受けたときの音喩は 「ガーン」なのか。つまり,各音の場面に連動した 音喩が存在するという仮説が成り立つのである。

fig.1.3.1-1(図―1)音喩の例

* サウンドマップ:日本では「音 の地図」と訳されており,聴覚 情報から得られた印象を主観的 に紙面等の2次元平面上に各人 が表現しやすい媒体(図や文字 等)で表記されたもので,全 体の音環境の中で分節された音 (これを音種という)が聞こえ てきた位置情報を付帯して表さ れる。おもに環境教育や音の教 育現場等で(音)環境へ向けた 意識啓発を目的として,ワーク ショップ活動を中心に実践され ている。 http://www.kyoto-seika.ac.jp/

∼(サウンドマップ * を作成する調査の結果)聴覚情報の視覚的記録に対する不慣れさと面 白さを述べたものが多く,ふだんの生活のなかでいかに音を「聞き逃している」かが改めて 認識された。∼音が複数で発生していたり曖昧な状態であると,視覚化が困難になる状況も 見受けられ,リアルな音環境を記述することの困難さが改めて浮き彫りにされた実験であっ た。聴覚情報が音喩化された「具体的事実」のさまざまなヴァリエーションを第一次的情報 として取り上げ,直接的に解釈することに重点をおいたため,具体的事例を明確に客体化さ せることは困難を窮めた。これは,音環境という無定型で不可視のメディアが意識/無意識 の領域で解釈されることが多く,しかも音から受ける個人差が大きいためである。

event/kiyo/pdf-data/no26/ komayosi.pdf

以上から、現実世界での音の抽出・解釈は、曖昧で個人差が生じるため困難 であり、漫画においては音喩として表されていることがわかった。

hitoshi watanabe lab. waseda univ. bachelor's thesis 2012

19


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* 音響効果:演劇 ・ 映画 ・ ラジ オ ・ テレビなどにおいて,劇の 進行上必要な音 ( 擬音 ) を創造 ・ 表現して,劇の進展を助け雰 囲気を盛り上げる舞台効果の一 つ。 http://kotobank.jp/word/

■アニメにおける音  アニメにおける聴覚情報は、セリフ、音楽、その他の3つに大別される。こ のうち、その他に含まれるものには、環境音、動物の鳴き声、さらにはロボッ トの動く音など、一般的に効果音といわれるものをいい、これらの音をまとめ て音響効果 * という。 「アニメ制作における音の重要性」*21 について以下の様な 記述がある。

*21 アニメ制作における音の 重要性 http://gainax.weblogs.jp/ staff/2011/06/

アニメ制作において『音』の存在は大変重要です。 『役者(声優)の声』と『効果音』 『BGM』 『音調整』 。画面の絵と同様、音も人の手(声)によって作り上げられます。 なので、そこにはまったく同じものは存在しません。常に違うシチュエーションにあわせて 違う音がつきます。制作進行として自分の担当話数の音がどういうふうに作られるかを必ず 確認してください。その理由は、 『音響作業』によってアニメーションの『厚み』が出来るか らです。アニメーションの画面の『絵』は視覚を刺激します。そして『音』は聴覚を刺激し ます。人間は視覚と聴覚を刺激されると『臨場感』を感じ、あたかもその世界にいるかのよ うに錯覚します。つまり、 『絵』にあった『音』がつくことによって『擬似空間』が出来るの です。観ている人がその『擬似空間』を共有できれば『感動』を共感できます。つまりキャ ラクターの心情やシチュエーションに『感情移入』するということですね。実写の映像も同 様です。映画やドラマも音がつくことによって『臨場感』を体験させられます。実写は実際 の風景に近い映像ですのでより『空間』を共有しやすくなります。

以上の通り、アニメに「音」が存在することにより、実際の空間をよりイメ ージしやすくなるということがわかった。この点より、本研究では漫画ではな くアニメにおいて、聴覚による気配を抽出していく。

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20


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1.3.2 「サザエさん」とは

本調査で対象とするアニメ「サザエさん」の概要と、その選定理由について まとめる。 ■概要  アニメの原作、 漫画「サザエさん」は、 1946 年(昭和 21 年) 、 福岡の地方新聞『夕 刊フクニチ』で連載を始めた 4 コマ漫画であり、 後に『朝日新聞』の朝刊に移った。 その後は 1974 年(昭和 49 年)まで連載が続き、 本作は連載が 6477 回に及んだ。 アニメとしての放送は 1969 年(昭和 44 年)から始まり、2012 年現在、放送年 数 43 年、放送回数 2000 回以上、放送話数 6600 話以上、そして平均視聴率が 20% 前後という非常に高い部類に属する国民的アニメ番組として現在も続いて いる。本作はいわゆるストーリー漫画ではなく、一貫した舞台、人物が登場す る比較的独立したエピソードからなる。季節が移り変わっても登場人物達は年 を取らない形式となっている。

fig.1.3.2-1 1966 年 9 月 1 日朝日新聞

fig.1.3.2-2 1962 年 7 月 4 日朝日新聞

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21


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■選定理由  サザエさんを選定した理由は主に3つある。  「社会的資料としての生活マンガ」*22 では 1960 年代後半の社会を示す資料と *22 西脇 和彦「社会的資料と しての生活マンガ : 60 年代から 90 年代まで」學苑 766, 135-144, (2004)

して同漫画を挙げている。アニメにおいては、季節に合ったものを原作である 漫画から抽出し組み合わせて物語を構成しており、同じ原作を複数回使用する ことも一般的となっている。このように、サザエさんの作品内容が、実際の生 活を色濃く反映させた庶民の等身大の生活風景であるがゆえに、われわれにも

*23 西畑 絵里加「サザエさん とちびまる子ちゃんにおける会

たらす共感は大きい。以上のように、サザエさんの内容が、社会や日常生活を

話の比較 -- ポライトネスを中心

具体的に描写している点が理由としてあげられる。

に」人間文化 (28), 81-89,(2011)

http://ci.nii.ac.jp/ naid/40018888472

サザエさんの家族は3世代、7人で構成されている(fig.1.3.3-1) 。これは核家 族化が進む現代では珍しい。また、 『 「サザエさん」と「ちびまる子ちゃん」に

* ポライトネス:社会言語学、

おける会話の比較』*23 によると、高められているポライトネス * が異なり、家

語用論におけるポライトネス

族という間柄であっても、礼儀や対人関係を重んじていることがわかる。波兵

(politeness) とは、一般用語か ら連想される礼儀正しさ、慇懃、

を絶対的な大黒柱としている設定や、居間に集まることが多いサザエさんの家

丁重さのことではない。一言で

族は、現代の家庭とは対照的で、濃密で良好な家族関係を築いていると言える

いうと、対人関係を円滑にする

のではないか。このような家族関係に加え、サザエさんのストーリーが一家の

ための社会的言語行動と定義さ れる。

メンバーを中心として繰り広げられ、その多くが自宅において展開する点が理

http://www.weblio.jp/

由としてあげられる。  次項にて後述するが、3つ目の理由として、サザエさんの住宅の間取りがあ げられる。

fig.1.3.2-3 サザエさんの家系図

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22


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1.3.3  「サザエさん」の住宅

*24 ライオンホーム http://lionhome.co.jp/

サザエさんの住宅の間取りの特徴が以下のように述べられている。*24

animation/

連載が始まった年代を考慮すると、昭和 20 年代の家と推測される。改めて見ると現代の 感覚では三世代 2 家族の住まいにしては小さいと感じるが、この小さな住まいは日本人の生 活の知恵がぎっしりと詰まっている。一般的にいう 田の字型プラン の間取りで、和室が 多い事が特徴である。田の字型プランは必要に応じて部屋の大きさを変えることができ、和 室は部屋の使い勝手を固定化しない。つまり日本人は「室」という空間の仕切り方ではなく 「間」という仕切り方で住まいを構成してきた。これはそれぞれの空間を必要に応じて使い分 けできるという、小さい住まいでも広く使える日本人の知恵である。昭和 20 年当時、最も 一般的なこの間取りは、家長(波平)の寝室と客間を日当りのいい南側に配置し、個室や団 らんの場である茶の間を北側に配置している。トイレはくみ取り式が一般的であるため住ま いの一番奥に配置している。広縁は別名 表廊下 とも言い、訪問客専用の通路として利用 していた。ここで注目したいのが、サザエとマスオの部屋の位置だ。所帯が別というのは言 い換えれば別の家族である。磯野家とフグ田家を、 廊下を使って絶妙な距離感で分離している。 また、子どもたちの部屋も注目である。テレビアニメと漫画の間取りは若干異なり、4 畳半 を二人で使っていた。さすがにこの狭さだと部屋にこもりにくいことが予測される。さらに 居間のそばに配置されているという点も家族とのコミュニケーションを活発にする要因とし て考えられる。玄関から「ただいま」という声が届きやすい場所に居間(団らんの場)があ ることも楽しく暮らすためには重要と考えられる。

*25 影山明仁「名作マンガの

以上のように、サザエさんの住宅の間取り *25 が、現在では珍しい「間」とい

間取り」ソフトバンククリエイ

う仕切り方で構成されており、聴覚による気配が多く存在しているのではない

ティブ(2008)

かと考えたことが3つ目の理由としてあげられる。  以上の理由より、サザエさんを調査の対象とし、聴覚による気配の収集を行う。

U

6

fig.1.3.3-1 磯野家の間取り

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23


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2

研究概要

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研究目的

2.1

既往研究

2.2

本研究の位置づけ

2.3

研究フロー

2.4


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2.1 研究目的

本研究は、家族間で起こった行動において、聴覚による気配と空間との関係 を調査し、気配による家庭内コミュニケーションモデルを作成することで、住 宅設計における新しい指針を提示することを目的とする。

気配の有効活用 コミュニケーション 円滑化

気配をうまく 感じられない

無秩序な気配

気配の取り込み・強調

fig.2.1-1 研究目的のイメージ

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25


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2.2 既往研究 2.2.1 感覚器官により感じられる気配に関する既往研究

■聴覚による気配に関する既往研究 (1) 関 喜一 , 伊福部 達 , 田中 良 広 「盲人の障害物知覚と反射音定 位の関係」 日本音響学会誌 50(4), 289-295,

1)盲人の障害物知覚と反射音定位の関係 (1)  盲人の障害物知覚の要因の一つである障害物からの反射音について、先行音 効果を考慮に入れた聴感実験により、盲人の反射音定位の特性を明らかにした。

(1994)

(2) 関 喜一 , 伊福部 達 , 田中 良 広 「盲人の障害物知覚における障 害物の遮音効果の影響」 日本音響学会誌 50(5), 382-385,

2)盲人の障害物知覚における障害物の遮音効果の影響 (2)  盲人の障害物知覚の要因の一つである障害物の遮音効果による音場の変化に ついて、心理実験により音場の変化の特性を明らかにした。

(1994)

(3) 関 喜一 「環境騒音場における無限障壁 に対する障害物知覚の心理的要 因」 電子情報通信学会技術研究報

3)環境騒音場における無限障壁に対する障害物知覚の心理的要因 (3)  任意の複数方向から騒音が伝搬している音場において、心理的要因の分析に より、音場の空間的印象の変化を明らかにした。

告 . HCS, ヒューマンコミュニ ケーション基礎 96(243), 51-56, (1996)

4)盲人の障害物知覚とナビゲーション (4) (4) 伊藤 精英 , 関 喜一 「盲人の障害物知覚とナビゲー ション」

盲人のナビゲーションにおける音響情報の役割について、生態心理学的観点 から音響情報を利用していることが示された。

情報処理学会研究報告 . HI, ヒュ ーマンインタフェース研究会報 告 99(9), 41-46,(1999)」

5)視覚障害者の障害物知覚・方向認知のための反響体の開発 (5) (5) 安部 信行 , 橋本 典久 「視覚障害者の障害物知覚・方 向認知のための反響体の開発」

視覚障害者が感知しづらい障害物において、白杖の音を反響させることによ り、障害物の存在や方向を認知しやすくするという反響体の開発を行った。

学術講演梗概集 . 計画系 2002(D1), 831-832,(2002)

(6) 大内 誠 , 岩谷 幸雄 , 鈴木 陽 一 , 棟方 哲弥 「汎用聴覚ディスプレイ用ソフ トウェアエンジンの開発と音空 間知覚訓練システムへの応用」 日本音響学会誌 62(3), 224-232, (2006)

6)汎用聴覚ディスプレイ用ソフトウェアエンジンの開発と音空間知覚訓練シス テムへの応用 (6)  聴覚ディスプレイを PC のネイティブ CPU で構築するためのソフトウェアエ ンジンを構築し、応用例として視覚障害者向けの空間認識能訓練コンテンツの 開発を行った。

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■視覚による気配に関する既往研究

(7) 佐藤 研吾 , 山本 和彦 , 加藤

7)周辺視野における気配の認識能力についての研究 : 単眼における空間認識能

邦人

力についての解析 (7)

「周辺視野における気配の認識 能力についての研究 : 単眼にお ける空間認識能力についての解 析」 映像情報メディア学会技術報告 33(34), 27-30,(2009)

自己の周辺空間における気配を「周辺視野による空間把握能力」ととらえ、 視覚機能の 1 つである陰影情報を認識する能力によって、人の気配を認識して いることを明らかにしている。 8)建物に付属する光によって与えられる路上での安心感 : 岐阜県白川村の平瀬

(8) 小林 茂雄 , 名取 大輔 , 神宮 彩 , 角舘 政英 「建物に付属する光によって与 えられる路上での安心感 : 岐阜 県白川村の平瀬地区を対象とし て」 日本建築学会環境系論文集

地区を対象として (8)  街路空間における気配を「視覚による人の存在感」ととらえ、夜間の住宅街 において、建物に付属する光が歩行者にどの程度の安心感を与えるのかについ て明らかにした。

73(627), 567-572,(2008)

(9) 築山 祐子 , 高橋 正樹 , 渡辺

■その他の感覚器官による気配に関する既往研究

秀俊 , 下川 美代子 , 千葉 陽輔 , 山岸 秀之 , 松田 克己 開放感と気配感の定量化 : 住宅 の吹き抜け空間に関する調査分 析 その 1 学術講演梗概集 . E-2,247-248, (2006)

9)開放感と気配感の定量化 : 住宅の吹き抜け空間に関する調査分析 その 1(9)  住宅ににおける気配を「別室及び別階の雰囲気」ととらえ、吹き抜け空間の 物理的特性と開放感や気配感の程度を、アンケート調査及びブラン調査により 明らかにした。

(10) 陳 偉中 , 小久保 秀之 , 古 角 智子 , 張 トウ , 原口 鈴恵 , 河 野 貴美子 , 山本 幹男 「対人遠隔作用実験における受

10)対人遠隔作用実験における受信者左手労宮部位の皮膚表面温度の変化 (10)  武道における気配を「人間が発する攻撃の気」としてとらえ、視覚、聴覚を

信者左手労宮部位の皮膚表面温

遮断するため別室間で気配の伝達を行った場合、気を発する前後で受信者左手

度の変化」

労宮部位の皮膚表面温度に変化が見られることを明らかにした。

Journal of International Society of Life Information Science 19(2), 473-479,(2001)

11 32)都市空間における「気配」の研究(その 1 ∼22)(11)

(32)

都市の街路空間における気配を「連続的に変化する雰囲気」としてとらえ、 (11) (32)

SD 法によって都市空間ごとの気配の違いを明らかにしている。

「都市空間における気配の研究」 学術講演梗概集

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「感覚器官による気配」に関する研究を以下にまとめる。

tab.2.2.1-1 感覚器官による気配に関する研究の分類

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2.2.2 情報技術を用いた気配の伝達方法に関する既往研究

(33) 松尾佳菜子 , 岡野裕 ,  橋本悠希 , 梶本裕之 「音響的な影の呈示による気配 感覚の増強」 日本バーチャルリアリティ学会 第 12 回大会論文集(2007)

33)音響的な影の呈示による気配感覚の増強 (33)  自己の周辺空間における気配を「聴覚により知覚する反射音」 「障害物の遮音 効果」ととらえ、障害物方向からの雑音を消去した音を提示することにより気 配を察知する勘が鋭くなったかのような錯覚を生じさせるインタフェースを提 案した。

(34) 仁科 圭三郎 , 上岡 英史 「アンビエント音による局所的 天気情報伝達システム」 電子情報通信学会技術研究報告 . MoMuC, モバイルマルチメデ

34)アンビエント音による局所的天気情報伝達システム (34)  気配を「音による情報の伝達」としてとらえ、音を用いて無意識にユーザに 天気情報を伝える天気情報伝達システムの構築法と実現可能性について明らか

ィア通信 110(290), 13-18,(2010)

にした。

(35) 大澤 隆治 , 本田 新九郎 ,

35)個人領域の確保と気配の伝達に着目した仮想オフィスシステム (35)

富岡 展也 , 木村 尚亮 , 岡田 謙一 , 松下 温 「個人領域の確保と気配の伝達 に着目した仮想オフィスシステ ム」

自己の周辺空間における気配を「オフィス内メンバーの雰囲気」ととらえ、 仮想空間オフィスにおいて、気配を故意に感じさせる周辺視ビューや効果音を 実装した。

全国大会講演論文集 第 54 回平 成 9 年前期 (4), 179-180,(1997)

(36) 笹島 学 , 石野 正剛 , 山崎 和彦 「ユーザーエクスペリエンスデ ザインの事例 : 体験を基にした 携帯アプリケーション」 デザイン学研究作品集 11(11), 58-61,(2006)

36)ユーザーエクスペリエンスデザインの事例 : 体験を基にした携帯アプリケー ション (36)  携帯電話の操作中における気配を「通話の前に感じる発信者の様子」ととらえ、 発信者のコール数や受信者が非同期で着信を確認するまでの時間の経過を可視 化した携帯電話の待ち受けアプリケーションの提案をした。

「情報技術を用いた気配の伝達方法」に関する研究を以下にまとめる。 tab.2.2.2-1 情報技術を用いた気配の伝達方法に関する研究の分類

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2.2.3 住宅と音環境に関する既往研究

(37) 城戸 奈津子 「住宅内で聴こえる環境音によ

37)住宅内で聴こえる環境音による心拍変動とリラックス効果に関する研究 (37)

る心拍変動とリラックス効果に

住宅内において、環境音の種類の違いによる心拍変動と心理尺度アンケート

関する研究」

を調査し、環境音が心身にリラックス効果を与えることを明らかにした。

早稲田大学渡辺仁史研究室修士 論文 ,(2008)

38)環境音の印象評価構造に関する研究 : 被験者自身の言葉に基づいた評価構造 (38) 川井 敬二 , 小島 隆矢 , 平 手 小太郎 , 安岡 正人 「環境音の印象評価構造に関す る研究 : 被験者自身の言葉に基 づいた評価構造の抽出」 日本音響学会誌 60(5), 249-257, (2004)

(39) 渡辺 充敏 , 石橋 睦美 , 上 野 佳奈子 , 橘 秀樹 , 縄岡 好人 「集合住宅の音環境に関する主 観評価実験」 学術講演梗概集 , 81-84,(2006)

の抽出 (38)  居住環境及びテーマパークを想定した状況において、環境音に対し人それぞ れが持つありのままの印象評価の抽出を試みた結果、 音事象は「自然音」 「交通音」 「生活音」などに類型化され、評価における主要な軸は選好性・活動性・日常性 などと解釈された。 39)集合住宅の音環境に関する主観評価実験 (39)  集合住宅の音環境におけるアノイアンスを生活に対する妨害感として捉え、 単独あるいは複数の種類の騒音が複合した場合に、アノイアンスがどのように 変化するかについて明らかにした。

(40) 大島 正光 「騒音の心理的ならびに生理的 影響」 人間工学 18(3), p115-120, (1982)

40)騒音の心理的ならびに生理的影響 (40)  騒音が人体に及ぼす心理的・生理的影響についてとりあげ、睡眠、会話、聴 覚のそれぞれにおいてを障害としてあげられる事例を具体的に明らかにした。

(41) 荘 美知子 , 木村 翔 , 井上 勝夫 , 豊田 直美 , 吉岡 香奈枝 「集合住宅の生活音に対する居 住者意識と住まい方について : 集合住宅の住まい方と生活環境 の意識に関する研究 ( その 3)」 学術講演梗概集 . D, 環境工学 1993, 227-228,(1993)

41)集合住宅の生活音に対する居住者意識と住まい方について : 集合住宅の住ま い方と生活環境の意識に関する研究 ( その 3)(41)  集合住宅における、居住者の生活音に対する意識について、出さないよう配 慮している音、及び遮音性能が悪いと感じる音に関するアンケート調査を行っ た結果、居住性能の向上と共に居住者自信の住まい方に対する配慮により生活 音に対する意識が変化していることを明らかにした。 「住宅と音環境」に関する研究を以下にまとめる。 tab.2.2.3-1 住宅と音環境に関する研究の分類

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2.3 本研究の位置づけ

本研究の位置づけを以下に示す。  気配に関する研究では、障害物知覚に関する研究を除くと、聴覚を取り上げ たものはなされていない(fig.2.3-1) 。  音に関する研究では、そのほとんどが音を騒音として否定的にとらえている (fig.2.3-2) 。音を肯定的にとらえた研究として、城戸の「住宅内で聴こえる環境 (37)城戸 奈津子 「住宅内で聴こえる環境音によ る心拍変動とリラックス効果に

音による心拍変動とリラックス効果に関する研究」(37)があげられるが、家族間 の行動に与える影響については言及されていない。

関する研究」早稲田大学渡辺仁 史研究室修士論文(2008) 環境音が心身に与えるリラック ス効果について明らかにした。

そこで、本研究では住宅内における聴覚による気配に着目し、研究を進める こととする。

空間に

情報技術に

感覚に

関する研究

関する研究

関する研究

アンビエント音

障害物知覚

スケール小 (住宅レベル)

本研究 聴覚による 気配

視覚による 気配

その他の 感覚による 気配

本研究

街路上の光

インターフェース

携帯アプリ

都市イメージ 仮想オフィス 吹き抜け空間

システム

周辺視野

否 定 的 評 価

皮膚表面温度

fig.2.3-1 気配に関する研究の位置づけ

騒 音 研 究

城戸

サウンド スケープ

肯 定 的 評 価

スケール大 (都市レベル)

fig.2.3-2 音環境に関する研究の位置づけ

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2.4 研究フロー

本研究の流れを以下に示す。

現状把握

基礎調査 視覚障害者へのヒアリング調査

本調査 アニメサザエさんにおける気配抽出調査

結果分析

考察

fig.2.4-1 研究フロー

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32


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3

視覚障害者へのヒアリング調査

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調査概要

3.1

調査結果

3.2

考察

3.3


Extractions of Family Soundscape : from the Case of Famous Animation "Sazae-san"

chap.3

3.1 調査概要

■調査目的  視覚障害者は晴眼者と比較して、聴覚を有効に活用していると予測される。 そこで視覚障害者に対し、日常生活においてどの程度、聴覚による気配を活用 しているかを把握することを目的とし、ヒアリングを行った。

■調査実施日  2012 年 10 月 19 日

■調査対象  視覚障害者 3 名(東京都盲人福祉協会 職員 1 名、会員 2 名)

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34


Extractions of Family Soundscape : from the Case of Famous Animation "Sazae-san"

chap.3

3.2 調査結果

質問内容、および回答結果を以下に示す。 ■ Y さん(男性・中途失明・全盲・65 歳)

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35


Extractions of Family Soundscape : from the Case of Famous Animation "Sazae-san"

chap.3

■ K さん(女性・先天性・全盲・41 歳)

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36


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* 光覚弁:暗室にて被検者の眼 前で照明を点滅させ、明暗が弁

chap.3

■ S さん(男性・中途失明・光覚弁 *・62 歳)

別できる視力

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37


Extractions of Family Soundscape : from the Case of Famous Animation "Sazae-san"

chap.3

3.3 考察

ヒアリング調査により得られた回答の一部と、考察を以下に述べる。

・住宅内で発生する音により、同居する家族の判別、位置の特定、感情の把握   が可能であるという回答が得られた。 (fig.3.3-1) 。  →視覚障害者は音を有効に活用しているのではないか。 ・家族が同じ部屋にいる時よりも、異なる部屋にいる時のほうが、音をより意   識するという回答が得られた。  →ひとつの部屋にいる時だけでなく、異なる部屋においても、聴覚による気   配として音は有効に活用できるのではないか。

以上より、視覚障害者は聴覚による気配を有効に活用していると考えられる。 次章にて、アニメ「サザエさん」において聴覚による気配を抽出する調査につ いて述べる。

個人の特定

位置の特定

感情の特定

fig.3.3-1 聴覚の活用イメージ

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38


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4

アニメ・サザエさんにおける気配抽出調査

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調査方法

4.1

調査結果

4.2


Extractions of Family Soundscape : from the Case of Famous Animation "Sazae-san"                    chap.4

4.1 調査概要 4.1.1 調査方法

アニメ・サザエさんを視聴し、気配とそれに関する項目を抽出する。 詳細を以下に示す。

■調査対象作品 放映日 2011 年 8 月 21 日∼ 2012 年 7 月 15 日 作品 No.6516 ∼ No.6652 のうち、80 話  総所要時間 800 分

■抽出項目 発信者:気配を発した人 受信者:気配を感じた人 種類:発生した気配の種類 発信空間:発信者が存在した場所 受信空間:受信者が存在した場所 間仕切り:発信空間と受信空間を隔てる建具など 行動:受信者が気配を感じた後にとった行動。以下の3つに分類する。    【会話行動】会話を伴う行動    【把握行動】状況を把握する行動    【思考行動】心情変化や独り言 肯定 / 否定:受信者による気配の捉え方。肯定的あるいは否定的に捉えたと考 えられるもの

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■「気配」の抽出条件  気配の定義に照らし合わせて、以下の 4 つの条件を満たすものを、本調査に おける気配として抽出した。  1.人間が発する、または人間がきっかけとなって発するもの  2.受け手が感じ取り、それにより行動を伴うもの  3.発信者が、受信者に対して、意図的に発していないもの  4.磯野家の住宅の敷地内で発生したもの

人間が発した玄関扉の音(条件1,3,4)

受け手による音の感知(条件2)

受け手による行動(条件2)

fig.4.1.1-1 気配の抽出条件

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4.1.2 シーン紹介

気配が発生しているシーンの例を以下に示す。

fig.4.1.2-1 玄関扉の音による気配

fig.4.1.2-2 体操の声による気配

fig.1-1 全体のかたちと人数[]

fig.4.1.2- 3 泣き声による気配

fig.4.1.2-5 気配による受信者の会話行動

fig.4.1.2-4 会話音による気配

fig.4.1.2-6 料理音による気配

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42


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4.2 調査結果 4.2.1 結果概要

視聴作品 80 話中、気配が現れた作品は 65 話であった。  このうち、合計 156 個の気配を抽出した。

4.2.2 凡例

抽出項目のデータを数値によって置換した。以下にその凡例を示す。

tab.4.2.2-1 凡例

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43


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4.2.3 結果データ

抽出できた気配 156 個の一覧データを以下に示す。

tab.4.2.3-1 サザエさんによる気配一覧表

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44


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tab.4.2.3-2 サザエさんによる気配一覧表

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45


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tab.4.2.3-3 サザエさんによる気配一覧表

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46


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分析・考察

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抽出項目ごとにみた気配の発生回数

5.1

気配マップ

5.2

全気配の遷移

5.3

会話行動を引き起こした気配音の広がり

5.4

考察

5.5


Extractions of Family Soundscape : from the Case of Famous Animation "Sazae-san"                    chap.5

5.1 抽出項目ごとにみた気配の発生回数

4.2.3 の結果に基づき、抽出項目ごとにみた気配の発生回数についてグラフを 作成した。以下にグラフを示す。

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48


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5.1.1 個人別にみた発信者・受信者

個人別にみた発信者・受信者と気配の発生回数を以下に示す。 (例:サザエとカツオが同時に1つの気配を発信した→サザエ1回カツオ1回)  個人別にみた発信者と気配の発生回数を以下に示す。  家族の中でも発信発生回数にばらつきが見られた。気配の発信頻度は人によ り異なることがわかった。   発信回数 58 42

42

42 30

15

オ マ ス

オ ツ カ

20

fig..5.1.1-1 個人別発信者と気配の発生回数

個人別にみた受信者と気配の発生発生回数を以下に示す。  フネは、発信発生回数は最少だったが受信発生回数は 3 番目に多かった。気 配の受信頻度は人により異なることがわかった。   受信回数 47

42

40 32

26

21

オ マ ス

オ ラ タ

メ カ ワ

ヘ イ ミ ナ

フ ネ

オ ツ カ

13

fig..5.1.1-2 個人別受信者と気配の発生回数

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49


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5.1.2 大人 / 子供別にみた発信者・受信者

気配の発信者・受信者を、年齢により、大人 / 子供 / 大人と子供の混合、と分 * キャラクター推定年齢 大人:

類した。* (例:サザエとカツオが同時に1つの気配を発信した→混合1回)

フグ田サザエ 年齢…24 歳 磯野波平 年齢…54 歳 磯野フネ 年齢…50 とウン歳 フグ田マスオ 年齢…28 歳 波野ノリスケ 年齢…24 ∼ 26 歳 波野タイコ 年齢…22 歳 伊佐坂難物 年齢…60 歳

大人 / 子供別発信者と気配の発生回数を以下に示す。  発信回数は大人が最も多く、子供が最も少なかった。

伊佐坂お軽 年齢…フネと同い年

発信回数

伊佐坂甚六 年齢…20 歳 伊佐坂ウキエ 年齢…16 ∼ 17 歳

84

子供: 磯野カツオ 年齢…11 歳 磯野ワカメ 年齢…9 歳

43

フグ田タラオ 年齢…3 歳

29

波野イクラ 年齢…1 歳半∼ 2 歳 フジテレビ http://www.fujitv.co.jp/b_hp/

供 子

合 混

sazaesan/sazaesan_cast.html

fig..5.1.2-1 大人 / 子供別発信者と気配の発生回数

大人 / 子供別受信者と気配の発生回数を以下に示す。  受信回数は大人が最も多く、2 番目に子供が多かった。

受信回数 76 51

合 混

供 子

29

fig..5.1.2-2 大人 / 子供別受信者と気配の発生回数

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50


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5.1.3 気配の種類

気配の種類と気配の発生回数の割合を以下に示す。 会話音による気配が最も多かった。視覚による気配はわずか 4% で、ほとんど が聴覚による気配であることがわかった。

家事2% 足音 3%

無音 突発 3% 音 2%

乗り物音 1%

視覚4%

会話 45%

声 11%

建具 29%

fig..5.1.3-1 気配の種類と気配の発生回数の割合

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51


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5.1.4 発信空間・受信空間

発信空間と気配の発生回数を以下に示す。 玄関が最も多く、次いで居間や個人の部屋が多かった。使用頻度の高い空間で 多く気配が発信されたからだと考えられる。 発信回数 50

5

1

佐 伊

1

5

5

6

11

11

屋 廊 下 台 所 客 間 広 縁

12

屋 供 子

の エ ザ

15

16

18

fig..5.1.4-1 発信空間と気配の発生回数

受信空間と気配の発生回数を以下に示す。 廊下が最も多く、2 番目に居間が多いことがわかった。玄関や個人の部屋で発信 された気配が、廊下や居間で受信されていることが多かった。

受信回数 47

40

6

4

3

1

5

7

7

脱 衣

8

伊 外 佐 坂 家

9

間 の 部 子 屋 供 部 屋 台 所 サ ザ 広 エ 縁 の 部 屋 客 間 玄 関

11

11

fig..5.1.4-1 受信空間と気配の発生回数

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5.1.5 間仕切りの種類

間仕切りの種類と気配の発生回数の割合を以下に示す。  ふすまを介した気配の伝達が最も多かった。ふすまは気配を伝達しやすいと 考えられる。

のれん 6%

木塀 玄関扉 2% 6%

ガラス戸 1%

なし 7% 障子 9% 廊下 10%

ふすま 59%

fig..5.1.5-1 間仕切りの種類と気配の発生回数の割合

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53


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5.1.6 行動 * 行動の分類 会話行動:会話を伴う行動

行動 * と気配の発生回数の割合を以下に示す。

把握行動:状況を把握する行動

会話行動が最も多かった。聴覚による気配は会話行動を引き起こしやすかっ

思考行動:心情変化や独り言

たと考えられる。

思考行動 8% 把握行動 11%

会話行動 81%

fig..5.1.6-1 行動と気配の発生回数の割合

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5.1.7 肯定 / 否定評価

肯定 / 否定評価と気配の発生回数の割合を以下に示す。  肯定的に気配を捉える割合が高かった。気配は受信者の心情に対しプラスに 作用しやすいということがわかった。

ネガティブ 14%

ポジティブ 86%

fig..5.1.7-1 肯定 / 否定評価と気配の発生回数の割合

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5.1.8 発信空間と気配の種類

発信空間と気配の種類の発生回数を以下に示す。  玄関において発信される「建具音」が最も多く、2 番目に居間において発信さ れる「会話音」が多かった。 「建具音」は特定の空間のみで発信されることが多 いが、「会話音」や「声」は、特定の空間に限られず発信されていた。

発信空間 廊下

7

玄関

5

1

2

1

42

1

居間

15

ナミヘイの部屋

9

2

サザエの部屋

11

1

子供部屋

8

1

1 2

4

1

広縁

1

2

1

2

2

1

台所 浴室 客間 外

2

3

5

1

1

1

1 1

3

1

1

1 5

1

1

1

1

1

1

伊佐坂家

1

会話音

建具音 家事音

足音

無音

突発音 乗り物音

視覚

気配の種類

fig..5.1.8-1 発信空間と気配の種類の発生回数

以上のことを考慮すると、発信空間と気配の種類において以下のような分類 ができると考えられる。 ・空間を限定される気配の種類: 「建具音」 「家事音」 「乗り物音」 ・空間を限定されない気配の種類: 「会話音」 「声」 「足音」 「無音」                  「突発音」 「視覚」

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5.1.9 発信空間と受信空間

発信空間と受信空間の気配の発生回数を以下に示す。  玄関で発信された気配が居間で受信される場合が最も多かった。2 番目に、 玄関およびサザエの部屋で発信された気配が廊下で受信される場合が多かった。 いずれも、発信空間と受信空間の位置が直線上にあり、隣接していたため、気 配が伝達しやすかったと考えられる。

発信空間 2

廊下 玄関

13

居間

6

ナミヘイの部屋

2

27

1

3

1

3

2 3 1

13

子供部屋

12

1

1

2

2

サザエの部屋

1

2

1

2

3

1

3

2

1

3

2

1

1

1

1

1

広縁

2

1

1

4

台所

6

1

1

1

1

2

1

浴室

1

客間

1

3

1

3

伊佐坂家

1

1

1

1

坂 家

佐 伊

衣 所 脱

客 間

台 所

縁 広

部 屋 供

部 屋

の サ

ヘ イ ミ ナ

ザ エ

居 間

玄 関

廊 下

1

受信空間

fig..5.1.9-1 発信空間と受信空間の気配の発生回数

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5.1.10 行動と気配の種類

行動と気配の種類の発生回数を以下に示す。  「会話音」により会話行動を引き起こす場合が最も多く、2 番目に「建具音」 により会話行動を引き起こす場合が多かった。会話行動は全ての気配の種類に より引き起こされていた。種類によらず、気配は会話行動を引き起こしやすい と考えられる。

行動 会話行動

53

思考行動

9

把握行動

8

会話音

40

4

16

1

5

1

2

3

1

1

4

建具音  家事音

3

1

足音

無音

2

突発音

2

乗り物音

視覚

気配の種類

fig..5.1.10-1 行動と気配の種類の発生回数

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5.1.11 肯定 / 否定評価と気配の種類

肯定 / 否定評価と気配の種類の発生回数を以下に示す。  全ての気配の種類により肯定的評価がなされていた。

肯定/否定評価

肯定的評価

57

否定的評価

13

会話音

42

3

3

16

1

建具音  家事音

1

4

3

2

1

1

1

足音

無音

突発音

2

5

1

乗り物音

視覚

気配の種類

fig..5.1.11-1 肯定 / 否定評価と気配の種類の発生回数

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5.2 気配マップ 5.2.1 気配のマッピング方法

4.2.3 の結果に基づき、抽出された気配のうち聴覚によるものを、磯野家の平 面図にマッピングした。 * キャラクター推定年齢 大人: フグ田サザエ 年齢…24 歳 磯野波平 年齢…54 歳 磯野フネ 年齢…50 とウン歳 フグ田マスオ 年齢…28 歳 波野ノリスケ 年齢…24 ∼ 26 歳 波野タイコ 年齢…22 歳

それぞれの項目を以下のように表現した。 ・聴覚による気配の種類:8 種類の気配音として色別に分類 ・発信者 ・ 受信者の年齢層 *:大人 / 子供 / 混合 ( 大人と子供 ) に記号別に分類 ・発信者:塗りつぶし記号 ・受信者:白抜き記号

伊佐坂難物 年齢…60 歳 伊佐坂お軽 年齢…フネと同い年 伊佐坂甚六 年齢…20 歳

次頁以降、全気配のマップ、気配音別のマップ、行動別のマップ、肯定 / 否

伊佐坂ウキエ 年齢…16 ∼ 17 歳

定評価別のマップを示す。

子供: 磯野カツオ 年齢…11 歳 磯野ワカメ 年齢…9 歳 フグ田タラオ 年齢…3 歳 波野イクラ 年齢…1 歳半∼ 2 歳 フジテレビ http://www.fujitv.co.jp/b_hp/ sazaesan/sazaesan_cast.html

tab.5.2.1-1 発信者・受信者の分類    tab.5.2.1-2 気配音の分類

tab.5.2.1-3 凡例    発信者       受信者 大人 子供 混合  大人 子供 混合 会話

建具

家事

足音

無音

突発音

乗り物音

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5.2.2 全気配のマップ

■全気配のマップ(fig.5.2.2-1) 気配音の種類を区別しないため、黒一色で表した。 ・すべての部屋において気配の受信、発信が存在した。 ・北東部分(玄関、子供部屋、居間)に、気配が集中していた。 ・客間、浴室では気配が少なく、トイレには存在しなかった。 ・気配の伝達距離は短いものが多かったが、長いものも存在した。 ・各部屋の使用者と受信者及び発信者の年代は概ね一致していたが、ナミヘイの  部屋においては発信者として子供が混合することが多かった。

▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲▲ ▲ ▲ ▲▲ ▲ ▲▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲

▲ ▲ ▲

▲ ▲ ▲ ▲

▲ ▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲

▲▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲

▲▲

▲ ▲ ▲ ▲ ▲▲ ▲

▲ ▲▲ ▲

U

6

発信者       受信者 大人 子供 混合  大人 子供 混合 ▲

fig.5.2.2-1 全気配のマップ

以上の結果により、以下のことが考えられる。 ⃝空間により気配の発生頻度が異なり、空間の使用頻度が高いほど気配の発生  頻度が高い。 ⃝隣接した空間の方が気配は伝達されやすいが、隣接していない空間にも気配  は伝達される。

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5.2.3 気配音別のマップ

■「会話音」による気配のマップ(fig.5.2.3-1) ・隣接する空間における気配の伝達が多かった。 ・廊下で受信する場合が多かった。

▲ ▲

▲ ▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲ ▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲ ▲ ▲ ▲▲ ▲

U

6

発信者       受信者 大人 子供 混合  大人 子供 混合 会話

fig.5.2.3-1 会話音マップ

■「建具音」による気配のマップ(fig.5.2.3-2) ・ほとんどが玄関扉による気配であった。 ・発信者は大人が多かった。 ・受信空間は、居間が最も多かった。 ・玄関から距離のある、台所やナミヘイの部屋でも受信されていた。

▲ ▲ ▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲

▲▲ ▲

U

6

発信者       受信者 大人 子供 混合  大人 子供 混合 建具

fig.5.2.3-2 建具音マップ

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■「声」による気配のマップ(fig.5.2.3-3) ・伝達距離の長いものが多かった。 ・受信者は大人であることが多かった。 ・発信者が子供であるとき、受信者は大人のみであった。

▲ ▲ ▲

▲ ▲

U

6

発信者       受信者 大人 子供 混合  大人 子供 混合 声

fig.5.2.3-3 声マップ

■「家事音」による気配のマップ(fig.5.2.3-4) ・発信者は大人のみであった。 ・台所における家事音は子供が受信していた。

U

6

発信者       受信者 大人 子供 混合  大人 子供 混合 家事

fig.5.2.3-4 家事音マップ

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■「足音」による気配のマップ(fig.5.2.3-5) ・伝達距離は短かった。 ・同じ空間で伝達される場合もあった。

U

6

発信者       受信者 大人 子供 混合  大人 子供 混合

足音

fig.5.2.3-5 足音マップ

■「無音」による気配のマップ(fig.5.2.3-6) ・部屋の中で発信することが多かった。 ・大人が受信することが多かった。

U

6

発信者       受信者 大人 子供 混合  大人 子供 混合 無音

fig.5.2.3-6 無音マップ

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■「突発音」による気配のマップ(fig.5.2.3-7) ・大人が発信していた。 ・1 つの発信から2つの受信が起こることがあった。

U

6

発信者       受信者 大人 子供 混合  大人 子供 混合 突発音

fig.5.2.3-7 突発音マップ

■「乗り物音」による気配のマップ(fig.5.2.3-8) ・伝達が外部にまで及んでいた。

U

6

発信者       受信者 大人 子供 混合  大人 子供 混合 乗り物音

fig.5.2.3-8 乗り物音マップ

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■気配音別に色分けした全気配のマップ(fig.5.2.3-9) ・「会話音」と「声」を比較すると、伝達距離は「会話音」の方が短く「声」の 方が長かった。 ・「会話音」や「声」 「足音」 「無音」 「突発音」は空間を問わずに気配が発信され たが、「建具音」や「家事音」 「乗り物音」は特定の空間で気配が発信された。 ・「会話音」が最も多く、次に「建具音」が多かった。

▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲▲ ▲ ▲ ▲▲ ▲ ▲▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲

▲ ▲ ▲

▲ ▲ ▲ ▲

▲ ▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲

▲▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲

発信者       受信者

▲▲

大人 子供 混合  大人 子供 混合 会話

建具

家事

足音

無音

突発音

乗り物音

▲ ▲

▲ ▲ ▲▲ ▲ ▲

▲ ▲▲ ▲

U

6

fig.5.2.3-9 気配音別マップ

以上の気配音別のマップの結果により、以下のことが考えられる。 ⃝気配音の種類によって、生じる空間、発信者・受信者、伝達距離の長さ、方  向に特徴があらわれる。 ⃝同一空間内で気配が伝達されることもある。 ⃝気配は 1 つの発信から2つの受信が起こることがある。

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5.2.4 行動別のマップ ■会話行動を引き起こした気配のマップ(fig.5.2.4-1) ・「会話音」と「建具音」による気配が多かった。 ・年齢、気配音など様々な種類が混合していた。

▲ ▲ ▲ ▲ ▲    発信者       受信者

建具

家事

足音

▲ ▲

無音

乗り物音

▲ ▲

▲▲

▲ ▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲

▲▲

▲ ▲

突発音

▲ ▲

大人 子供 混合  大人 子供 混合 会話

▲ ▲ ▲

▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲▲ ▲ ▲ ▲ ▲

▲ ▲ ▲▲ ▲ ▲

U

6

fig.5.2.4-1 会話行動マップ

■思考行動を引き起こした気配のマップ(fig.5.2.4-2) ・「建具音」による気配はなかった。 ・「会話音」による気配が多かった。 ・ナミヘイの部屋での大人による受信が多かった。

▲ ▲ ▲ ▲    発信者       受信者 大人 子供 混合  大人 子供 混合 会話

建具

家事

足音

無音

突発音

乗り物音

U

6

fig.5.2.4-2 思考行動マップ

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■把握行動を引き起こした気配のマップを以下に示す。 (fig.5.2.4-3) ・「突発音」による気配が多かった。 ・子供による受信が多かった。 ・大人による発信が多かった。 ・台所では発信が行われなかった。

▲ ▲

▲ ▲

発信者       受信者 大人 子供 混合  大人 子供 混合 会話

建具

家事

足音

無音

突発音

乗り物音

▲▲

U

6

fig.5.2.4-3 把握行動マップ

以上の行動別の結果により、以下のことが考えられる。 ⃝気配音の種類によって、生じる行動に特徴があらわれる。 ⃝気配音の種類によって、発信者の行動を予測できる。 (建具は帰宅の合図) ⃝引き起こされる行動によって、発信者・受信者、空間に特徴があらわれる。 (台  所は料理をする空間なので把握する必要がない)

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5.2.5 肯定 / 否定評価別のマップ ■肯定的評価の気配のマップ(fig.5.2.5-1) ・否定的評価よりも気配数が多かった。 ・「建具音」 「声」による気配が多かった。

▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲

▲ ▲ ▲

▲ ▲ ▲ ▲

大人 子供 混合  大人 子供 混合 ▲

建具

家事

足音

無音

突発音

乗り物音

▲ ▲

▲▲ ▲

▲ ▲

発信者       受信者

会話

▲▲

▲ ▲ ▲ ▲ ▲▲ ▲

U

6

fig.5.2.5-1 肯定的評価マップ

■否定的評価の気配マップ(fig.5.2.5-2) ・ナミヘイ、子供部屋、居間における気配の伝達が多かった。 ・「会話音」による気配が多かった。 ・伝達距離は短いものが多かった。

▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲

▲ ▲

発信者       受信者

大人 子供 混合  大人 子供 混合 会話

建具

家事

足音

無音

突発音

乗り物音

U

6

fig.5.2.5-2 否定的評価マップ

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以上の肯定 / 否定評価のマップ結果により、以下のことが考えられる。 ⃝気配は受信者の心情に影響を与える。 ⃝気配音の種類、伝達距離により心情への影響に特徴があらわれる。

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5.3 全気配の遷移

4.2.3 の結果に基づき、抽出された全気配のうち、感覚器官、気配音の種類、 発信空間、受信空間、行動について、気配の発生回数および、各項目から項目 への遷移の回数を、遷移図として表した。    結果を以下に示す。

線の種類:各項目から項目への遷移の回数 a 回 6 10回 11 20回 21回以上

気配

円の大きさ:各項目から項目への遷移回数

気配 156

感覚器官 視覚 4

聴覚 150

気配音 家事音 4

乗り物音 2

突発音 3

無音 4

足音 5

会話音 70

声 17

建具音 45

発信空間 外6

庭5

脱衣所 1

台所 10

客間 5

子供部屋 15

ナミヘイ 12 の部屋

サザエ 15 の部屋

子供部屋 9

ナミヘイ 10 の部屋

サザエ 7 の部屋

居間 18

広縁 4

廊下 11 玄関 48

受信空間 外8

庭3

脱衣所 1

台所 8

客間 6

玄関 5

広縁 8 居間 39

廊下 46

行動 把握行動 15

思考行動 11

会話行動 124

fig.5.3.1-1 全気配の遷移図

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聴覚による気配が多く、そのうち「会話音」と「建具音」による気配音が多 かった。以下に多く見られた遷移の例を示す。

・気配 → 聴覚 → 会話音 → サザエの部屋 → 廊下 → 会話行動 例)サザエの部屋で、サザエとマスオの「会話音」を、ナミヘイがふすまを介 して廊下で感じ取り、会話行動を引き起こした。

fig.5.3.2-1 No.6584「ぼくはカブヌシ」

・気配 → 聴覚 → 建具音 → 玄関 → 居間 → 会話行動 例) マスオが帰宅時に、玄関で「建具音」を発信し、家族が居間で感じ取り、 会話行動を引き起こした。

fig.5.3.2-2 No.6630「大阪のおばあちゃん」

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5.4 会話行動を引き起こした気配音の広がり 5.4.1 居間で発信された気配音の広がり

会話行動を引き起こした気配のうち、居間で発信された気配がどのように各 部屋へ広がるかを以下に示す。

tab.5.4.1-1 居間で発信された気配における受信空間ごとの割合

+-,*(

'#$) %&( ! " "

気配の発信地 90%∼99% 80%∼89% 70%∼79% 60%∼69% 50%∼59% 40%∼49% 30%∼39% 20%∼29% 10%∼19% 1%∼ 9% 0%

fig.5.4.1-1 居間発信の気配の広がり

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結果より以下のことがわかった。 ・隣合わない空間においても気配は伝達されていた。    居間とナミヘイの部屋は直接隣り合っていないが、のれんやふすまで仕切ら れた台所や客間を介しているため、気配音が伝達されやすかったと考えられる。 そのため、ナミヘイの部屋では、台所や客間と同程度、居間で発信された気配 が伝達されていたと考えられる。

・廊下を介すと気配は伝達されなかった。  サザエの部屋において、南側・西側は外に面し、北側・東側は廊下に接して いるため、他の部屋と隣り合う面が1つもなく、独立している。そのため、居 間で発信した気配音が届くことはほとんどなかった。サザエ、マスオ、タラオ は別の世帯と考えられるため、プライバシーを保護するといった観点から見た 場合、廊下により独立させた部屋の配置は効果的だと考えられる。

ここで、サザエさんの住宅のふすまを、音をほとんど通さない建具だと仮定 してみると以下のようになる。気配音は、居間に接する空間にしか伝わらない と考えられる。

気配の発信地 90%∼99% 80%∼89% 70%∼79% 60%∼69% 50%∼59% 40%∼49% 30%∼39% 20%∼29% 10%∼19% 1%∼ 9% 0%

fig.5.4.1-2 建具を変えた場合の居間で発信される気配の広がり

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5.4.2 玄関で発信された気配音の広がり

会話行動を引き起こした気配のうち、玄関で発信された気配がどのように各 部屋へ広がるかを以下に示す。

tab.5.4.2-1 玄関で発信された気配における受信空間ごとの割合

気配の発信地 90%∼99% 80%∼89% 70%∼79% 60%∼69% 50%∼59% 40%∼49% 30%∼39% 20%∼29% 10%∼19% 1%∼ 9% 0%

fig.5.4.2-1 玄関発信の気配の広がり

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結果より以下のことがわかった。

・玄関で発信された気配は居間で最も多く受信された。 玄関、廊下、居間が直線上に配置されているため、気配は伝達されやすかった と考えられる。

ここで、サザエさんの住宅のふすまを、音をほとんど通さない建具だと仮 定してみると以下のようになる。気配音は、 廊下にしか伝わらないと考えられる。

気配の発信地 90%∼99% 80%∼89% 70%∼79% 60%∼69% 50%∼59% 40%∼49% 30%∼39% 20%∼29% 10%∼19% 1%∼ 9% 0%

fig.5.4.2-2 建具を変えた場合の玄関で発信される気配の広がり

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5.5 考察

以下の具体的事例と、これまでに行った分析を踏まえて聴覚による気配のコ ミュニケーションモデル図を作成した。

×

音のしないドア

壁 ×

ふすま、障子、のれん    などの建具

×

廊下

足音が鳴らない床材

× 足音が鳴る床材

fig.5.5-1 聴覚による気配のコミュニケーションモデル

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■具体的事例 1.「建具音」 廊下にいたタラオは、見つからないよう子供部屋のふすまをそっと開けた。ふ すまによる音がなり、その音をカツオとワカメが気配として感じ取り、会話行 動を引き起こした。 音の出ない建具であれば、タラオの存在に気づけず、その後の会話も生まれな かった。

fig.5.5.1-2 No.6649「きょうは何曜日」

2.「声」 広縁にいたカツオがワカメを泣かせ、ナミヘイの部屋にいたナミヘイが障子を 介して泣き声を気配として感じ取り、会話行動を引き起こした。 ナミヘイの部屋と広縁の境界が壁であれば、泣き声は届かず、その後の会話も 生まれなかった。

fig.5.5.1-3 No.6628「お父さんとおでかけ」

3.「突発音」 ナミヘイの部屋にいたナミヘイは紙をくずかごに投げ入れた。発生した音を、 カツオ、ワカメ、タラオがふすまを介して客間で感じ取り、会話行動を引き起 こした。 ナミヘイの部屋と客間が壁で仕切られていれば、音は届かず、その後の会話も 生まれなかった。

fig.5.5.1-3 No.6586「ナミヘイの抽象絵画」

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4.「料理音」 台所にいたフネが料理をする音を、居間にいたタラオがのれんを介して感じ取 り、会話行動を引き起こした。 台所と居間がドアで仕切られていれば、音は届かず、その後の会話も生まれな かった。

5.「無音」 フネが帰宅時に、サザエの部屋から音がしないことを疑問に思い、状況を把握 しにいった。サザエの部屋に1面しか出入り口がなく、玄関方向のふすまが壁 で仕切られていれば、音が届かないのは当たり前であり、違和感に気づくこと ができず、把握行動も生まれなかった。

6.隣接しない空間 居間で生じたサザエとフネの会話音を、ナミヘイの部屋でナミヘイが感じ取り、 把握行動が引き起こされた。 居間とナミヘイの部屋を介している台所や客間が廊下であった場合、会話音は 届かず、その後の把握行動も生まれなかった。

7.開いた状態のふすま 子供部屋で泣くワカメとタラオの声を、開いた状態のふすまを介して、廊下に いたナミヘイが感じ取り会話行動が引き起こされた。 子供部屋と廊下がふすまではなく常時閉じられている扉ならば、音が届かず、 その後の会話行動も生まれなかった。

8.「足音」 廊下でマスオがたてた足音を、子供部屋にいたカツオがふすまを介して感じ取 り、会話行動が引き起こされた。 足音が発生しない床材であったとすれば、音は届かず、その後の会話行動も生 まれなかった。

9.廊下 子供部屋とサザエの部屋は、廊下を介して向かい合う位置にあるにもかかわら ず、気配音の伝達が1つもされていない。 部屋同士が廊下を介さず隣接していれば、気配音が届き、会話行動が引き起こ されたと考えられる。

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6

まとめ

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まとめ

6.1

展望

6.2

謝辞

6.3


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6.1 ま と め

本研究は、聴覚による気配と家族行動に着目し、アニメ・サザエさんにおけ る気配抽出調査より以下のことを明らかにした。 ・住宅内において、聴覚による気配は、会話行動を引き起こしやすかったこと ・隣接する空間だけでなく、隣接しない空間においても気配が伝達されたこと  居間を中心とし、田の字に構成される磯野家の部屋の間取りとともに、ふす まや障子、のれんなどの間仕切りが、気配の伝達に関係しているのではないか と考えた。 ・気配音によるコミュニケーションモデルを作成した。  これを利用し、間取りや建具、床材を変更することで、聴覚による気配を操 作することが可能となる。

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6.2 展 望

本研究は、聴覚による気配と空間との関係に着目し、気配による家庭内コミ ュニケーションモデルを作成することで、住宅設計における新しい指針を提示 することができた。 *26 株式会社 LIXIL「はじめて の建材選びガイド」(2011)

近年、住宅設備において、開閉時に音が出ないドア *26 や、上下階や廊下など の移動空間において音を伝えない床材などが開発されている(fig.6.2-1)。こう した設備を住宅内で多用することは、聴覚による気配を消し去り、家族行動ま で変えてしまうと危険性があると考えられる。 家族の行動に伴って発生する音を、騒音として消し去るのではなく、住宅にう まく取り込むことが必要である。  間取りや建具、床材の変更によって、気配を伝えたい空間、伝えたくない空 間を意図的に設計することが、家族間コミュニケーションを活発化する一助と なるのではないだろうか。

fig.6.2-1 リクシル「ソフトモーションドア」

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6.3 謝 辞 たすけさん 見た目がやさしい。 中身もやさしい。 作者が酔ってもやさしい。

仁史先生 常に的確で斬新なアイディアを授ける。 自然や動物を愛する姿勢が素敵。 仁史研の神様。 良三先生 サザエさん研究の第一理解者。 人生の師匠。 仁史研の基礎。 林田先生 常に差し入れの気持ちを忘れない。 海老狸が最高。 銀のぶどうも最高。

よごさん 仁史研のボスキャラ。 頼れる姉さんはたまにおっちょこちょい。 面倒見の良さに作者に惚れられる。

夏子さん つらい時に頭をぽんぽんしてくれる。 理想のワーキングマザー。 きくちさん 人生をビッグバンからやり直したい。 愉快な外国人。 ひとなつっこい天才。

まぶちさん      作者のお向かいに住む愉快な人。     針・マッサージで癒してくれる。     存在そのものも癒し。

ざま やさしい筋肉。 なかなか好きである。

どいぱん 白くて細い。 合宿ではドラえもんのように女子部屋で眠る。 少しだけ作者と同じにおいがする。 あゆみ 着物が似合う人。 一見、作者のお母さんのような安定感。 しかし真実はただのビハ仲間。 のんちゃん 変態っぽい普通のいい人。 朝語りとアイパッドのいたずら仲間。 飽きられないことを切に願う仲間。

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石井さん 本作品の担当者。 エレベーターも帰り道も電車も自転車もお風呂も ベッドも翌朝の登校時も、もちろん研究室でも 作者の視界を塩水で曇らせる。 彼の声による気配は作者に悲哀行動をもたらす。 ジェンガを作者の頭の上から崩して叩き起こす。 ただただ強者。 実はやさしい。

もえこさん       作者の理解者。       作者の姉、たまに妹。       好き。

おーみさん 一女と五男の関係。 全裸おじさん。 やさしい。

ヒトシけん

すぎたつさん 面白い人。 期待した反応をくれる。 ぬいぐるみを抱く可愛い一面を持ち合わせる。

たけちゃん 脱北者兼 youtube 芸人。 下品、汚い、うざい。 たまにおもしろいいい人。 たくちゃん 犬をこよなく愛するやさしい人。 シャンプーを貸してくれるやさしい人。 誕生日にカレーをくれるやさしい人。 でもちょっと変態。 もーちゃん 作者の専属カメラマン。 仁史研いちの照れ屋さん。 ひとなつっこい。

作者の長谷川町子あらため田代紗和子です。 卒論がこんなに楽しく書けるなんて思ってもいませんでした。 仁史研に快く迎え入れてくれた仁史先生、ありがとうございます。 仁史研を作り上げてきた先輩がた、ありがとうございます。 仁史研を次の世代に伝えていく同期、ありがとうございます。 こんなに楽しい研究室がずっと続けばいいのにと思うばかりです。 仁史研に存在した気配を残して…。                                2012.11.2 12:23 田代紗和子

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7

参考文献

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既往論文

7.1

参考文献

7.2


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7.1 既 往 論 文

(1) 関 喜一 , 伊福部 達 , 田中 良広 「盲人の障害物知覚と反射音定位の関係」 日本音響学会誌 50(4), 289-295,(1994)

(2) 関 喜一 , 伊福部 達 , 田中 良広 「盲人の障害物知覚における障害物の遮音効果の影響」 日本音響学会誌 50(5), 382-385,(1994)

(3) 関 喜一 「環境騒音場における無限障壁に対する障害物知覚の心理的要因」 電子情報通信学会技術研究報告 . HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 96(243), 51-56,(1996)

(4) 伊藤 精英 , 関 喜一 「盲人の障害物知覚とナビゲーション」 情報処理学会研究報告 . HI, ヒューマンインタフェース研究会報告 99(9), 41-46, (1999)」

(5) 安部 信行 , 橋本 典久 「視覚障害者の障害物知覚・方向認知のための反響体の開発」 学術講演梗概集 . 計画系 2002(D-1), 831-832,(2002)

(6) 大内 誠 , 岩谷 幸雄 , 鈴木 陽一 , 棟方 哲弥 「汎用聴覚ディスプレイ用ソフトウェアエンジンの開発と音空間知覚訓練システ ムへの応用」 日本音響学会誌 62(3), 224-232,(2006)

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(7) 佐藤 研吾 , 山本 和彦 , 加藤 邦人 「周辺視野における気配の認識能力についての研究 : 単眼における空間認識能力 についての解析」 映像情報メディア学会技術報告 33(34), 27-30,(2009)

(8) 小林 茂雄 , 名取 大輔 , 神宮 彩 , 角舘 政英 「建物に付属する光によって与えられる路上での安心感 : 岐阜県白川村の平瀬地 区を対象として」 日本建築学会環境系論文集 73(627), 567-572,(2008)

(9) 築山 祐子 , 高橋 正樹 , 渡辺 秀俊 , 下川 美代子 , 千葉 陽輔 , 山岸 秀之 , 松田 克己 開放感と気配感の定量化 : 住宅の吹き抜け空間に関する調査分析 その 1 学術講演梗概集 . E-2,247-248,(2006)

(10) 陳 偉中 , 小久保 秀之 , 古角 智子 , 張 トウ , 原口 鈴恵 , 河野 貴美子 , 山本 幹 男 「対人遠隔作用実験における受信者左手労宮部位の皮膚表面温度の変化」 Journal of International Society of Life Information Science 19(2), 473-479,(2001)

(11) 積田 洋 , 関戸 洋子 , 堀村 隆憲 , 吉原 和彦 「表参道における「気配」の心理量・指摘量分析 : 都市空間における「気配」の 研究 ( その 1) 」 学術講演梗概集 . E-1, 983-984,(2001)

(12) 吉原 和彦 , 積田 洋 , 関戸 洋子 , 堀村 隆憲 「銀座における「気配」の心理量・指摘量分析 : 都市空間における「気配」の研 究 ( その 2) 」 学術講演梗概集 . E-1, 985-986,(2001)

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(13) 堀村 隆憲 , 積田 洋 , 関戸 洋子 , 吉原 和彦 「秋葉原における「気配」の心理量・指摘量分析 : 都市空間における「気配」の 研究 ( その 3)」 学術講演梗概集 . E-1,987-988,(2001)

(14) 積田 洋 , 関戸 洋子 , 堀村 隆憲 , 吉原 和彦 , 石井 聡史 「渋谷・新宿における「気配」の心理量・指摘量分析 : 都市空間における「気配」 の研究 ( その 4)」 学術講演梗概集 . (E-1), 1011-1012,(2002)

(15) 石井 聡史 , 積田 洋 , 関戸 洋子 , 堀村 隆憲 , 吉原 和彦 「六本木・鎌倉における「気配」の心理量・指摘量分析 : 都市空間における「気配」 の研究 ( その 5)」 学術講演梗概集 . (E-1), 1013-1014,(2002)

(16) 吉原 和彦 , 積田 洋 , 関戸 洋子 , 堀村 隆憲 , 石井 聡史 「指摘量分析による空間構造の分析 : 都市空間における「気配」の研究 ( その 6)」 学術講演梗概集 . (E-1), 1015-1016,(2002)

(17) 濱本 紳平 , 積田 洋 , 関戸 洋子 , 吉原 和彦 , 石井 聡史 , 菅原 綱治 「国立・山手・馬車道・巣鴨における「気配」の心理量シークエンス分析 : 都市 空間における「気配」の研究 ( その 7)」 学術講演梗概集 . E-1, 979-980,(2003)

(18) 菅原 綱治 , 積田 洋 , 関戸 洋子 , 吉原 和彦 , 石井 聡史 , 濱本 紳平 「指摘量分析によるエレメント構成の類型化 : 都市空間における「気配」の研究 ( その 8)」 学術講演梗概集 . E-1, 981-982,(2003)

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(19) 石井 聡史 , 積田 洋 , 関戸 洋子 , 吉原 和彦 , 濱本 紳平 , 菅原 綱治 「心理量と指摘量の相関分析 : 都市空間における「気配」の研究 ( その 9)」 学術講演梗概集 . E-1, 983-984,(2003)

(20) 積田 洋 , 濱本 紳平 , 石井 聡史 「心理量と指摘量による都市空間の記号化 : 都市空間における「気配」の研究 ( その 10)」 学術講演梗概集 . E-1, 1075-1076,(2004)

(21) 濱本 紳平 , 積田 洋 , 石井 聡史 「都市空間の記号化による分析 : 都市空間における「気配」の研究 ( その 11)」 学術講演梗概集 . E-1, 1077-1078,(2004)

(22) 中田 滋之 , 積田 洋 , 濱本 紳平 「京阪地区・東京地区の心理量・指摘量分析 : 都市空間における「気配」の研究 ( その 13)」 学術講演梗概集 . E-1, 1027-1028,(2005)

(23) 濱本 紳平 , 積田 洋 , 中田 滋之 「指摘エレメントの類型化と記号化による分析 : 都市空間における「気配」の研 究 ( その 14)」 学術講演梗概集 . E-1, 1029-1030,(2005)

(24) 積田 洋 , 濱本 紳平 , 中田 滋之 「仙台ならびに札幌地区の心理量分析・指摘法分析 : 都市空間における「気配」 の研究 ( その 12)」 学術講演梗概集 . E-1, 1025-1026,(2005)

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(25) 青木 健三 , 積田 洋 , 濱本 紳平 「指摘エレメントの類型化による分析 : 都市空間における「気配」の研究 ( その 15)」 学術講演梗概集 . E-1, 1035-1036,(2006)

(26) 濱本 紳平 , 積田 洋 , 青木 健三 「主要な都市空間における心理量分析 : 都市空間における「気配」の研究 ( その 16)」 学術講演梗概集 . E-1, 1037-1038,(2006)

(27) 積田 洋 , 濱本 紳平 , 青木 健三 「ヨーロッパ都市空間における指摘法分析 : 都市空間における「気配」の研究 ( その 17)」学術講演梗概集 . E-1, 1039-1040,(2006)

(28) 積田 洋 , 濱本 紳平 「エレメントの分布構成のタイプ < 指摘エレメント構成型 > による分析 : 都市空 間における「気配」の研究 ( その 18)」 学術講演梗概集 . E-1, 1091-1092,(2007)

(29) 濱本 紳平 , 積田 洋 「雰囲気のタイプ < 意識型 > による分析 : 都市空間における「気配」の研究 ( そ の 19)」 学術講演梗概集 . E-1, 1093-1094,(2007)

(30) 濱本 紳平 , 積田 洋 , 廣野 勝利 , 須山 直樹 「< 指摘エレメント構成型 > と < 意識型 > による分析 : 都市空間における「気配」 の研究 ( その 20)」 学術講演梗概集 . E-1, 793-794,(2008)

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(31) 須山 直樹 , 積田 洋 , 廣野 勝利 , 濱本 紳平 「都市空間の指摘エレメントと心理評価の相関分析 : 都市空間における「気配」 の研究 ( その 21)」 学術講演梗概集 . E-1, 795-796,(2008)

(32) 濱本 紳平 , 積田 洋 , 廣野 勝利 「< 指摘エレメント構成型 > と < 意識型 > の対応関係による分析 : 都市空間にお ける「気配」の研究 ( その 22)」 学術講演梗概集 . E-1, 731-732,(2009)

(33) 松尾佳菜子 , 岡野裕 , 橋本悠希 , 梶本裕之 「音響的な影の呈示による気配感覚の増強」 日本バーチャルリアリティ学会第 12 回大会論文集(2007)

(34) 仁科 圭三郎 , 上岡 英史 「アンビエント音による局所的天気情報伝達システム」 電子情報通信学会技術研究報告 . MoMuC, モバイルマルチメディア通信 110(290), 13-18,(2010)

(35) 大澤 隆治 , 本田 新九郎 , 富岡 展也 , 木村 尚亮 , 岡田 謙一 , 松下 温 「個人領域の確保と気配の伝達に着目した仮想オフィスシステム」 全国大会講演論文集 第 54 回平成 9 年前期 (4), 179-180,(1997)

(36) 笹島 学 , 石野 正剛 , 山崎 和彦 「ユーザーエクスペリエンスデザインの事例 : 体験を基にした携帯アプリケーシ ョン」 デザイン学研究作品集 11(11), 58-61,(2006)

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(37) 城戸 奈津子 「住宅内で聴こえる環境音による心拍変動とリラックス効果に関する研究」 早稲田大学渡辺仁史研究室修士論文 ,(2008)

(38) 川井 敬二 , 小島 隆矢 , 平手 小太郎 , 安岡 正人 「環境音の印象評価構造に関する研究 : 被験者自身の言葉に基づいた評価構造の 抽出」 日本音響学会誌 60(5), 249-257,(2004)

(39) 渡辺 充敏 , 石橋 睦美 , 上野 佳奈子 , 橘 秀樹 , 縄岡 好人 「集合住宅の音環境に関する主観評価実験」 学術講演梗概集 , 81-84,(2006)

(40) 大島 正光 「騒音の心理的ならびに生理的影響」 人間工学 18(3), p115-120,(1982)

(41) 荘 美知子 , 木村 翔 , 井上 勝夫 , 豊田 直美 , 吉岡 香奈枝 「集合住宅の生活音に対する居住者意識と住まい方について : 集合住宅の住まい 方と生活環境の意識に関する研究 ( その 3)」 学術講演梗概集 . D, 環境工学 1993, 227-228,(1993)

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7.2 参 考 文 献

*1 感覚器官と認知の仕組み http://www5f.biglobe.ne.jp/ mind/vision/line3.html

*2 教育機器編集委員会「産業教育機器システム便覧」日科技連出版社(1972)

*3 脳の世界―時間特性は聴覚優位、聴覚が視覚判断を変える― http://web2.chubu-gu.ac.jp/web_labo/mikami/brain/index.html

*4 物理的インターフェイス http://www.ritsumei.ac.jp/ocw/se/2006-53924/lecture_doc/2006-53924-02.pdf

*5 障害物知覚メカニズムの解明に関する研究 http://www.fun.ac.jp/ itokiyo/studies/obstacle/obst-prcp-whatis.html

*6 象印マホービン株式会社「家族揃っての行動に関する調査」 (2002) http://www.zojirushi.co.jp/topics/koudou.html

*7 シチズン意識調査「30 年の推移で見るビジネスマンの生活時間調査」 (2010) http://www.citizen.co.jp/research/time/20101201/02.html

*8 内閣府「国民生活白書」 (2007) http://www.caa.go.jp/seikatsu/whitepaper/h19/01_honpen/index.html

*9 国政モニター http://www8.cao.go.jp/monitor/answer/h14/ans1412-003.html

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*10 日本住宅の変遷 http://www.moiss.jp/whatmoiss/pop_01.html

*11 日本家屋の間仕切り http://anaroguoyaji.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/post-c7af.html

*12 ふすまの歴史 http://www.i-kurasi.com/C9_1.htm

*13 建築物の遮音性能基準と設計指針 日本建築学会編,技報堂出版 (1979)

*14 橋本典久 「近所がうるさい !―騒音トラブルの恐怖 」 、ベストセラーズ,ベスト新書(2006)

*15 四十万靖 , 渡辺朗子 「頭のよい子が育つ家」日経 BP 社(2006)

*16 R.Murray Schafer 著,鳥越けい子・庄野泰子・若尾裕・小川博司・田中直 子訳 「世界の調律―サウンドスケープとはなにか」平凡社 ,テオリア叢書(1986)

*17 聾者・難聴者にやさしい都市・建築・住宅 http://sugilab.com/blog/

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*18 wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/

*19 小松正史,吉村和真「マンガに見る聴覚情報の視覚的記録」京都精華大学 紀要第 26 号 , 215-238(2004) http://www.kyoto-seika.ac.jp/event/kiyo/pdf-data/no26/komayosi.pdf

*20 手塚治虫, 「バンパイア」55 頁(1968)

*21 アニメ制作における音の重要性 http://gainax.weblogs.jp/staff/2011/06/

*22 西脇 和彦 「社会的資料としての生活マンガ : 60 年代から 90 年代まで」學苑 766, 135-144, (2004)

*23 西畑 絵里加「サザエさんとちびまる子ちゃんにおける会話の比較 -- ポラ イトネスを中心に」人間文化 (28), 81-89,(2011) http://ci.nii.ac.jp/naid/40018888472

*24 ライオンホーム HP http://lionhome.co.jp/animation/

*25 影山明仁 「名作マンガの間取り」ソフトバンククリエイティブ(2008)

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