目次
第 1 部 本論
0
はじめに
1 序論 1-1
研究概念
10
1-2
用語の定義
12
1-3
研究目的
13
1-4
研究の位置づけ
14
1-5
研究フロー
19
2 研究背景 2-1 .1
現代における食
.2
料理のインスタント化
.3
スーパーマーケットが冷蔵庫
.4
土離れと自然食品ブーム
.5
自家栽培
2-2
ホールフード
.1
キッチンの道具化
.2
システムキッチンの固定化
キッチン道具の普及とこれから
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
22
35
002
目次
第 1 部 本論
3 基礎研究 3-1
台所の構成
.1
火を使う所
.2
水を使う所
.3
食糧を保管する所
3-2
台所について
.1
台所とは
.2
厨房 厨(くりや)
.3
囲炉裏、囲炉
.4
おかって
3-3
世界のキッチン
42
56
64
4 調査 4-1
日本住宅における食の空間
.1
住宅の変遷
.2
現代の日本の LDK
.3
食空間の変遷
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
73
003
目次
第 1 部 本論
5 社会統計の調査 5-1
93
現代日本の台所事情の調査
.1
家での過ごし方について
.2
アンケート回答者の家について
.3
家の食糧保管状況について
.4
日本の台所事情の分析
5-2
社会生活調査
119
5-3
社会調査からわかる現代の食生活習慣
171
.1
産業と食
.2
料理について
6 ライフスタイルと空間 6-1
食のライフスタイルと空間の変化
.1
時代と空間の変化
.2
時代とライフスタイルの変化
.3
キッチンは要るのか
.4
現代の食行動
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
187
004
目次
第 1 部 本論
〜研究室食の例をもとに〜 7 ケ ーススタディー
7-1 .1
調査概要
.2
調査方法
7-2
観察調査調査結果
.2
観察調査分析考察
食レポート調査結果
.2
食レポート分析考察
研究室食に関する意識調査
.1
意識調査調査結果
.2
意識調査考察分析
7-5
221
研究室食レポート
.1 7-4
205
観察調査
.1 7-3
195
ケーススタディー調査
研究室食の調査まとめ
234
250
8 総括 8-1
まとめ
8-2
展望
263
参考文献 謝辞
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005
目次
第 2 部 資料編
資 資 料編
282
家庭の食の場についてのアンケート
- アンケート原本
- アンケート生データ
- アンケート結果
研究室内食行動観察調査
- 研究室内撮影画像
- 研究室内行動観察生データ
研究室食レポート
- 研究室レポートデータ
研究室食意識調査アンケート
- アンケート原本データ
- アンケート生データ
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006
1
第 部 main issuu
2
第 部 appendix
「住空間」における「食行動」のパラダイム・シフトに関する研究 A Study on Paradigm shift of Feeding befavior in Living Space
余語 悠里佳 Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
はじめに
0
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
0. はじめに
キッチン、トイレ、お風呂・・・・
住空間の中で必ずあるもの その機能のためにデザインされた空間 文明の進歩を表す技術の詰め込まれた製品
私はすごく好きだ 人の生活のために必要で より人の暮らしを豊かにするために考えられている新しいもの
パソコン、タブレット、スマートフォン、カメラ、車・・・ どんどん新しいものがつくられてくる かっこいいデザイン、使いやすいデザイン、わかりやすいデザイン でも、 キッチンもトイレも この数十年あんまり変わってない もう形は完成してしまったのかな? このまま百年後も同じ形なのかな?
美味しいごはんを食べるのが大好きだ 幸せな気持ちになれる でも食生活はこの数十年すごく変わってきた じゃあキッチンも変わっていくのかな?
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
序論
序論
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
1
1
研究概念
1-1
用語の定義
1-2
研究目的
1-3
研究の位置づけ
1-4
研究フロー
1-5
-009-
序論
1 1-1. 研究概念
1-1. 研究概念
ライフスタイルの変化に合わせた住居空間。近年の住宅設備は水 準が高く整備され、誰もが不自由なく使うことが出来る。しかしい ま家庭にある住宅設備のかたちは、この数十年進化を止めてしまっ ている。現代のライフスタイルにあった、これからの住宅空間とは、 どのような変化が必要か。
多様化する 社会 ライフスタイル 時代
住居空間
ライフスタイル
住居空間 すべてのライフスタイルに 共通の空間
多様化するライフスタイルには それぞれにあった台所空間があるのでは?
fig.1-1.1 研究概念図
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-010-
序論
1 1-1. 研究概念
古代から空間は、ライフスタイルに合わせて形成されてきていた。 建築という固定的なものが生まれてから、その自由度は減少気味で はあるものの、ライフスタイルと共に変化し、改良されてきた。よ り便利に、より豊かな生活が送れるようにと未来の空間を描いて、 それに近づくように技術を培って建築をつくってきた。 しかし、近年のメーカー社会の中で、特に住宅設備は進化を止め てしまっている。人が普通に生活する中では十分な程に設備は整い、 より効率的、より省力的に生活できるようにという、快適性を求め た改良が進められてきており、その形状やシステム構成をもう一度 見直すことが行われず、目に見える変化は少なくなってきている。 一方で、ライフスタイルは、社会が豊かになり、技術は飽和し、様々 な道具が生活をサポートするようになり、人々の生活を一律とみな すことが出来ないほどに多様化している。どのような多様なライフ スタイルでも、生活していける社会になったのだ。この数十年での 人々の生活の変化はめまぐるしいものであったはずだ。 このような時代の変化の中、 「便利」を極めた現在の住居空間は、 このまま変化しなくていいのか。数十年前に形成された、 「定番」 の空間をそのまま引き継いでしまっていいのだろうか。 本研究では、生活の “食” に関わる行動に着目して日本の歴史の 中の、「ライフスタイルの変遷」 「食の空間の変遷」をまとめ、多様 化するライフスタイルに合った食空間について考察を行う。特に、 現代の便利な食社会を反映させた食生活を送っている「研究室」と いう特別な空間における “食行動” を取り上げた。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-011-
序論
1 1-2. 用語の定義
1-2. 用語の定義
食行動…食に関わる一連の行動。 『食事をしよう』と思ってから、 実際に食べ終わるまでに、 「食事をするために」行った行為、行動 のことを指す。調理や食べる行為も含める。 また、本研究では特別に以下のような使い分けを行う。 ◯台所…料理をする場所 ◯キッチン…料理をするのに必要な機能をそろえたもの ◯キッチンセット…「火」 「水」 「収納」の機能のそろった既成品
□内食、家食…住んでいる住居、家庭内で食べる食事。または、食 べること自体を指す □研究室食…研究室内で食べる食事について。必ずしも研究室で料 理を行なって食べるというものでなく、弁当や店で買ってきたもの も含める。
◇料理…食品や食材、調味料などを組み合わせて加工を行うこと、 およびそれを行ったものの総称である。本*内では、食材そのもの から切るなど、形を変えて、加工を施し、時間と手間をかけて食べ られる状態にしていくことを指す。 ◇調理…食材を加工して料理を作る家庭のことを指すものである が、本*内では、料理と区別して、加熱、冷却、混ぜる、茹でるな どの行為をひとつでも行ったものを調理と呼ぶ。(ex. インスタント 食品を食べられるように準備するのも調理と呼ぶ )
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-012-
序論
1 1-3. 研究目的
1-3. 研究目的
食のライフスタイルの変遷と、食空間の構成について調べ、現代 の食生活における実際のニーズを抽出することで、それぞれのライ フスタイルに合わせて、今後の台所空間の提案を行うことを目的と する。
?
食のライフスタイルとそのニーズ
?
?
? fig.1-3.1 目的ダイアグラム
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-013-
序論
1 1-4. 研究の位置づけ
1-4. 研究の位置付け
栄養が摂りたいから
人と会うために
♡ お腹がすいたから
時間だから
! ご飯を食べよう!
食糧の入手
食べ物を決める
食事空間を決める
処分する 埋め立て
#1
食べに行く
店で食べる
食べる場所を
#2
リサイクル
決める
購入する
家で食べる
買って帰る 育てる
#3
焼却処分
その他 容器包装
コンポスト化
#6
#4
#7
食べられる場所を
作る
採ってくる
生ゴミ
バイオ燃料
既往論文で扱われているところ
#1
#4
日下部 真世 ; 食行動の自由度からみた生活環境の評価モデル ,
2011 年度 細田衛士研究会 事前レポート
早稲田大学建築計画専攻分野 , 修士論文 (2005)
日本のコンビニ弁当の行方と環境への取り組み
#2
#5
食料消費に関する消費者の意識調査
#3
川崎正博、小谷健司、杉崎聡、高口洋人 「屋上菜園の環境負荷削減効果に関する研究」2008 年度日本建築学会 関東支部研究報告書、第 79 号,2009 年 3 月
餌
探す #5
本研究で扱うところ
野生動物の
#7
廃棄物研究財団 メタン発酵研究会調べ 生ごみリサイクル・分別収集に関する調査
吉川祐輔 , 宮下芳明 ; グラフィカルデータフローによる調理 レシピプログラミング言語の提案 情報処理学会研究報告 ,2010,7,30
#6 新田米子 ; 集合住宅の住戸平面計画に関する研究 : 食生活と LDK の構成について聖徳学園女子短期大学紀要 19, 87-99, 1993-03-31
fig.1-4.1 食行動全体と本研究の位置付け
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-014-
序論
1 1-4. 研究の位置づけ
住居
空間スケール
*13 *14
*3
*15
ケーススタディー
本研究
空間の使い方
ライフスタイル
特定のペルソナ
人・生活
*9
*5
*4
*2
*6 *10
*8
*11
*12
*7
「D」or「K」 *1
fig.1-4.2 既往研究のと本研究の位置付け図 *1
*8
○5612 ライフスタイルとキッチンデザインの関係性について
○食に関わる空間の現状とそのあり方に関する研究 : 小学生の視点からの分析
津田 具子 , 宮本 奈央美 [ 他 ] 2006
森 ゆかり , 出口 寛子 , 柏原 士郎 2007
*2
*9
○5689 調理・食空間と家族のコミュニケーションに関する調査研究
○5592 家族のあり方と台所に関する研究 : ( その 1) 台所空間とそこでの生活行為
中山 和美 , 奥田 高子 , 古江 教靖 , 安藤 洋司 , 石渡 明美 , 駒場 ゆかり ,
北浦 かほる , 川田 菜穂子 [ 他 ] 2000
籔 ゆき子 , 大西 康友 2010
*10
*3
○4054 台所設備の空間的配置に関する人間工学的研究
○5001 生活時間調査に見る戦後食事時間の変遷と食の変化
関根 毅 , 榎本 範子 1998
○5645 生活時間調査に見る戦後食事時間の変遷と食空間の変化
*11
森 ゆかり , 森 裕史 , 出口 寛子 , 柏原 士郎 2009
○4019 複数照明が存在する複数空間での視環境に関する研究
*4
村上 慶太 , 山手 美穂 [ 他 ]2011
○5605 主婦の立場から見た食空間の現状とそのあり方について
*12
: 家族の生活行為と食空間の分析
○G18 日本の台所空間における調理機器の高さの変遷に関する研究
○食に関わる住空間の現状とそのあり方に関する研究 (1) : 主婦の視点からの分析
入江 加寿雅 , 石村 真一 - デザイン学研究 .2004
森 ゆかり , 出口 寛子 , 柏原 士郎 2008
*13
*5
○9441 J.J.P. アウトの集合住宅における台所と外部空間の関係
○主婦の住生活における時間と空間の利用
橋本 克也 , 本田 昌昭 2011
島根女子短期大学紀要 28, 97-104, 1990-03-30
*14
*6
○5766 戦後の住様式の変遷に関する研究 I : 台所空間のプラン分析 (
○一人、二人暮らしの高齢者の食生活と台所に関する研究
北川 圭子 , 阿部 恵利子 2007
雪本 礼子 , 馬場 昌子 2006 *7 ○5654 高齢者が求めるキッチンダイニング空間の方向性
*15 「建築家具」建築の機能を併せ持つ家具 鈴木 敏彦 - デザイン学研究作品集
荒井 麻紀子 , 中塚 千恵 2009
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-015-
序論
1 1-4. 研究の位置づけ
前に取り上げた既往論文をいくつか紹介する。 既往論文は、主に、空間評価に特化したものと、ライフスタイルを 調べたものに分けることができる。 森 ゆかり , 出口 寛子 , 柏原 士郎らは、 「住宅における食空間の平 面計画上の特徴と今後のあり方について」 「食に関わる空間の現状 とそのあり方に関する研究 : 主婦の視点からの分析 , 小学生の視点 からの分析」で、生活の中での食について、各家庭の LDK 空間と 照らし合わせるような形で、食空間の重要性を見出して考察してい る。「生活時間調査に見る戦後食事時間の変遷と食の変化」では、 戦後の人々の食のライフスタイルの変化についてまとめている。 北浦かほる、川田菜穂子らは、 「家族のあり方と台所に関する研究」 や「家族のあり方と台所空間のゆくえ」で、家族にとっての台所の 重要性について明らかにした上で、台所空間の利用の仕方、住まい 方について調べている。 これまでの研究では、“家族” “家庭” に焦点を充てたものが多かっ た。食の空間は、 家庭の中心、 象徴であるという捉え方が強く、 コミュ ニケーションの場として、重要視されている場でもある。現代のラ イフスタイルの中で、LDK の空間から家族の絆を深めようという働 きかけもある。しかしこれらの研究は、“現代の家庭” におけるも ののみで考えており、過去からの日本の歴史の中で築かれてきた台 所ではなく、戦後の西洋化した LDK のことしか考えられていない。 『食』は古代から人間にとって大事な行為であるため、本研究では 本来の日本文化の台所と、今後の食のライフスタイルについても考 えていく。
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-016-
序論
1 1-4. 研究の位置づけ
雪本 礼子 , 馬場 昌子は「一人、二人暮らしの高齢者の食生活と 台所に関する研究」で高齢者の食生活に関する実態調査を行なって いる。目的はキッチンメーカーの作る高齢者キッチンというものに 対し、実際の高齢者が調理器具などをどのように使っているのか実 態を調べたものになる。結論は、朝食などは自宅での調理がほとん どだが、昼食などは調理に頼らないものも多い。 荒井 麻紀子 , 中塚 千恵は、 「高齢者が求めるキッチンダイニング 空間の方向性」で高齢者の食空間へのニーズについて調べている。 身体的に料理をすることが簡単ではなくなってきているが、希望と しては、これまでのような料理を、できるだけ長く続けていくこと、 家族に振る舞うことなどがあげられている。 これらの研究は、高齢者という一部の属性のペルソナに対して、 潜在的なニーズ調査を行ったものである。この他にも、高齢者施設 の台所についてや、高齢者を対象とした人間工学的な研究も多く存 在した。一般の人々のニーズと異なる点は、 「身体能力の衰退によっ てキッチン機能が使いづらくなっていること」 「これまでの鍋や調 理器具を用いた料理を続けて行きたいという希望があること」の2 点である。本研究では、高齢者など特に特定のペルソナを設けずに 潜在的なニーズを調査していく。最後のケーススタディーでは高齢 者や家庭とは対照的な、 家庭を持たない “学生” を対象とすることで、 これまでにあまり見えて来なかった新しいライフスタイルについて 考察を行う。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-017-
序論
1 1-4. 研究の位置づけ
台所、LDK 空間についての研究を以下に示す。 北川 圭子らの「戦後の住様式の変遷に関する研究」では住居空 間の LDK の戦後の変遷について調べている。新田 米子らは、 「集合 住宅の住戸平面計画に関する研究 : 食生活と L. D. K. の構成につい て」で現代の集合住宅にける、台所空間含む LDK についてのレイ アウトや空間構成について調べている。これらの研究は、住居の中 でレイアウトの変遷や多様性をまとめたもので、ライフスタイルと の比較などは行われていない。また、近年の住居についてまとめた ものであり、戦前の日本文化における食空間については取り扱って いない。 入江加寿雅らは「日本の台所空間における調理機器の高さの変遷 に関する研究」で、人間工学的分野の視点からキッチンのデザイン について調べている。津田 具子 , 宮本 奈央美らは、 「ライフスタイ ルとキッチンデザインの関係性について」で、キッチンデザインに おいて、ライフスタイルによって好まれるデザイン性が異なること を明らかにしようとした。これらの研究は、キッチンという一つの 製品について、デザイン性という側面から考えたものである。本研 究では、キッチンをひとつの製品として捉えることをやめ、ひとつ ひとつそれぞれの調理機能として捉えている。 鈴木敏彦は、デザイン学研究作品の「 「建築家具」建築の機能を併 せ持つ家具」という研究の中で、 fig.1-4.3 のような家具のようなキッ チン空間を提案している。キッチンに必要な要素を絞り、 新しいキッ チンの形を提案している。本研究では、それぞれのライフスタイル ごとに要求されるキッチンへのニーズを考えるところから始める。
fig.1-4.3 家具のようなキッチン
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-018-
序論
1 1-5. 研究フロー
1-5. 研究フロー
食のライフスタイルと今後の食空間のあり方を考える 問題点の発見
キッチンの歴史
食行動と空間に関する既往研究のリサーチ
システムキッチンが生まれるまで 文献調査
家庭での食生活についてアンケート アンケート調査
社会統計の調査
食の歴史 古代から近代までの食生活
文献調査
文献調査
近年の食のライフスタイルについて
近年の食空間について
食のライフスタイルと空間の変遷
今後の食空間について予想と仮説
キッチンセットのない空間での食生活について ケーススタディー:研究室での食生活
アンケート調査、観察調査
食行動のこれからと ライフスタイルに合った食生活の提案
fig.1-5.1 研究フロー図
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-019-
研究背景
研究背景
2
現代における食
2-1
料理のインスタント化
2-1.1
スーパーマーケットが冷蔵庫
2-1-2
土離れと自然食ブーム
2-1-3
自家栽培
2-1-4
ホールフード
2-1-5
キッチンの道具化
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
2
2-2
システムキッチンの固定化
2-2-1
キッチン道具の普及とこれから
2-2-2
021
研究背景
2 2-1.1 料理のインスタント化
2-1. 現代における食 2-1.1 料理のインスタント化 * 暮らしの allabout
かつて、「料理」といえば、主婦が “台所” “おかって” “キッチン”
節約100円電子レ
と呼ばれる場所で、野菜を切り、米を洗い、鍋を火にかけ、お皿に
ンジ調理器 http://allabout.co.jp/ gm/gc/58838/
並べて、食卓まで運ばれてくるものであった。夕飯時になると、台 所の方から『トントン』と包丁の音が聞こえてきて、何かを煮込ん でいるいい匂いがしてくる、というのが家庭料理の当たり前の姿で あった。
* ルクエ HP
近年この「料理」の形は大きく変わってきている。女性の社会進
http://allabout.co.jp/
出、核家族かつ共働きの家庭が増え、料理に手をかけることができ
gm/gc/58838/
ないという実状の中、食にかかる時間や手間を簡略化するためにさ まざまな商品が生まれてきた。 特に最近注目を集めているのが、火を使わない「電子レンジ調理」 である。お鍋で煮込んだり、グリルで焼くのと同じ調理が、簡単に、 短時間でできる、ルクエ fig.2-1.1 や、一人分のごはんだけを 15 分 程度で炊くことができる fig.2-1.2 などさまざまな新しいキッチン 道具が開発されてきている。電子レンジ調理は、最初は「そんな簡 単に美味しくできるのか」と半信半疑で話題となったが、火加減な どを気にすることもなく、電子レンジ任せでその間に別のことをし て待っていることもできるので、忙しい人を中心に多くの人が使う ようになってきている。このような道具を使った電子レンジ調理で は、キッチンも汚れないので、掃除の手間も省け、量の調節もしや すいので一人暮らしの人や、家族がご飯時に揃わない家庭などでも 喜ばれている。
fig.2-1.1 電子レンジ調理道具ルクエ
fig.2-1.2 電子レンジ対応圧力釜
食糧が十分に充実している現代において、人々は食生活のライフ スタイルに興味を示しており、より簡単に、より本物に近く、より ヘルシーという最先端の開発が今も続けられている。
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022
研究背景
2 2-1.1 料理のインスタント化
* インスタント食品
現代の日本はインスタント食品で溢れかえっている。インスタン
wiki
ト食品は長期保存が可能であり、“お湯を入れるだけ” や “電子レン
http://ja.wikipedia. org/wiki/ イ ン ス タ ン ト食品
ジで数分温めるだけ” で美味しく食べられるため、調理の場所を取 らないだけでなく、手間や時間もかからずに済む。 フリーズドライ・冷凍・レトルト様々な形態のものがあるがどれ
* 日清食品カップヌー
も最先端の科学技術を踏襲し、長年の研究の末に開発された発明品
ドル - 誕生秘話と歴史
である。
-
h t t p : / / w w w .
1950 年から 1955 年にかけて、日本がまだきびしい食糧事情に
cupnoodle.jp/story/
あった頃に、インスタント食品の開発が盛んになった。中でも、粉
index.htm
末ジュース、お茶漬け海苔、魚肉ハム・ソーセージ、インスタントラー メンの発売は画期的なできごとだった。また、甘味料の新しい生産
* 日清食品会社情報リ リースニュース h t t p : / / w w w .
技術の開発も見逃せない。1956 年、農林省食品総合研究所で、で んぷんを酸や酵素で分解し(酸糖化法、酵素糖化法) 、現在でも清
nissinfoods.co.jp/
涼飲料水の甘味料をはじめとして広く用いられているブドウ糖に変
com/news/news_
える技術が開発された。これによって、1953 年から政府が買い上
release.
げはじめた大量の余剰でんぷんを一掃することができたのである。 このような時代の食品における発明は、昭和の日本の発展に大き く貢献したと言えるだろう。日本が開発したインスタント食品は、 現代でも飢餓に苦しむ国の主食となっているなど、世界中の食糧事 情へも貢献を期待されている。
fig.2-1.3 日清食品が開発したインスタント食品
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023
研究背景
2 2-1.1 料理のインスタント化
* 宇宙食 wikipedia
そしていま日本のインスタント食品は宇宙食の分野へも進出を始
http://ja.wikipedia.
めている。
org/wiki/ 宇宙食
宇宙食とは、長期保存、簡易調理が可能なだけでなく、重力のな い宇宙空間において食べられるように工夫された食品である (fig21.4)。水分の多い料理は粘り気を持たせて飛び散らないようになっ ており、スープやジュースはパックからストローで直接飲むように なっている。現在では宇宙船内で電気オーブンレンジが利用できる ため、レトルト食品等はこれを使って温めることができる。スペー スシャトルでは燃料電池を用いており発電の際に副生成物として水 が発生することから、この水を加温して調理に用いるフリーズドラ イ食品は、多くの宇宙食に採用されている。
fig.2-1.4 世界の宇宙食
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024
研究背景
2 2-1.1 料理のインスタント化
* 日清食品ニュースリ
宇宙食に不適な食品の代表格としてラーメンがあったが、これも
リ ー ス、 ス ペ ー ス・
日清食品中央研究所が「スペース・ラム」という名称で、宇宙ラー
ラム h t t p : / / w w w . nissinfoods.co.jp/
メンを開発した (fig2-1.5)。これはカップヌードルをベースとして いるが、一般に食べられているカップ麺とは少々異なり、袋の中に
com/news/news_
摂氏約 70 度と低温の湯で柔らかくなる円筒状にまとめられた麺 3
release.html?nid=890
塊が入っており、これに湯を注入、所定時間置いてから袋を破って 円筒状になった麺をフォークや箸で食べる。スープは飛び散らない ように粘度が高く、少量で麺にまぶす程度しかないが、満足感を増 すために、やや香辛料を効かせた味となっているという。なお、しょ うゆ・みそ・カレー・とんこつと 4 種類の味が用意されている。
fig.2-1.5 日本の宇宙食
これから先も、最先端の科学技術を詰め込み、味を劣化させるこ となく、未来の住環境に適した、 『短時間』で『手軽』に準備ができ、 『長 期保存』ができる上に保存に場所を取らない、夢の様な食品開発が 行われていくだろう。
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025
研究背景
2 2-1.2 スーパーマーケットが冷蔵庫
2-1.2 スーパーマーケットが冷蔵庫 * 食生活に関する世
現代の日本家庭では、各家庭に冷蔵庫があるのは当然である。機
論 調 査 中 央 調 査 法
械の発達により食糧保管の事情は大きく変わった。魚や肉などは冷
No.617( 一般社会法人
凍保存できるようになり、前述のインスタント食品の豊富さからも
中央調査社 ) http://www.crs.or.jp/
わかるように、日本社会は豊かになり食糧に飢えるということはな
backno/No617/6172.
くなった。
htm
しかし近年の都心の家庭内に数週間分の有り余る食糧は置いてい ない。数分歩けば必ずスーパーマーケットがあり、夜中になっても コンビニにいけばその時の気分に合わせた空腹を満たすだけの食糧 がいつでも買えるので、大量に買い置きして家の中で長期保存する ことは少なくなってきているのだ。家族の人数が少なくなり家庭内 での食事数も減り、食糧は必要なとき必要な分だけ調達するという 人が増えている。 以下のアンケート結果 (fig2-1.6~7) は現代の家庭の食生活が、便 利なスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどに売ってい る、“すぐに食べられる食糧” へ依存していることを表している。 市販のお惣菜を買って食べることがあるか?
fig.2-1.6 市販の惣菜を食べる回数
インスタント食品を食べることがあるか?
fig.2-1.7 インスタント食品を食べる回数
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026
研究背景
2 2-1.3 土離れと自然食品ブーム
2-1.3 土離れと自然食ブーム 前述の通り、近年では食糧というものは、簡単にスーパーで購入 することができる。文明の進んだ現代では、冷凍冷蔵も保温もされ た、遠い地球の裏側から取り寄せた新鮮な食材がどこでも手に入る。 現代では、スーパーマーケット市場のおかげで、土のついた食材 を見る機会が減っている。人は土に触れること無く日々生活するこ とができるのである。 もともと農村家庭中心の日本では、土のついた食材を綺麗にして から調理台に運び込むため、清潔なキッチンに持ち込む前には、土 間という屋外と屋内のちょうど中間のような空間が存在していた。 近年のシステムキッチンは、このような文明の進化とともに起こっ た人々の暮らしの “土離れ” でこそ成り立っているものである。 一方近年では、人工的な食材を嫌い、より自然らしいものを好む 自然食ブームがおこっている。自然食品 (natural food) とは、農薬 や化学肥料などをできるだけ使わずに栽培された農産物、合成飼料 を使わないで育てた畜産物、魚介類、遺伝子組み換え農作物を使っ ていない食品などの総称で、健康によく、自然のままなどのイメー ジをもつ「食品」のことである。JAS法によって定義されている 「有機食品」 「オーガニック」よりも広い意味で使われることが多い。 1970 年代以降、環境や自然、健康への関心が高まるとともに、 「自 然食品ブーム」が何度か訪れており、21 世紀に入ってからもブー ムが続いている。最近は自然食品を特産物とした村おこしなども行 われている。 この自然食ブームにより、スーパーマーケットや農家などの食材 市場だけでなく、カフェやレストランなどの飲食店市場でも食材に 気を使われるようになった。これまで、味で勝負されてきた飲食店 市場だが、客側が食材の産地や育て方まで厳しく見るようになって おり、新たな価値に着目したカフェやレストランも出てきている。
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027
研究背景
2 2-1.3 土離れと自然食品ブーム
* 農民カフェ
農民カフェ
h t t p : / / w w w .
築 40 年の古民家をリノベーションした「農民カフェ」のメニュー
livemedia.co.jp/wwc/
は、千葉県流山市で自家栽培している無農薬米「空米(くうべい) 」
nong/nong_minkafe. html
と有機や自然農法で作られた朝摘み野菜「禅菜」が中心。軒先には 露地マーケットがあるので、おいしい旬の野菜を買って自宅で楽し むこともできる。 「特にホールフード(2-1.5 で記述)と打ち出してはいませんが、野 菜は皮まで使っていますし、仲間が育てた無農薬大豆で作った豆乳 や豆腐料理もあります。最近はお客さんを見ていても、健康な食事 に対する関心が高まっていると思いますね」 主催する「田んぼのワークショップ」には老若男女が参加。食か らライフスタイルを見つめ直す、農業を軸とした輪を発信している。
fig.2-1.8 農民カフェ
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028
研究背景
2 2-1.3 土離れと自然食品ブーム
* 六本木農園
六本木農園
h t t p : / / w w w .
近代的なビルが立ち並ぶ都会の真ん中、六本木で農業の魅力が体
projectnoen.com/
感できるレストランである。全国各地の農家から届く生産者の顔が 見える、旬の素材を中心に献立をつくる。日本の旬の食材の美味し さを味わいながら、農業の大切さや楽しさを感じてもらうというコ ンセプトである。 近年の農業ブーム、若者の農業離れなどの問題から、大都会東京 でのスローライフの一例として着目されてきている。実際の農家と のネットワークにもなっており、今後の日本の自給自足率この向上、 安全安心な食材の確保のためにも、重要な拠点と言えそうだ。
fig.2-1.9 六本木農園
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029
研究背景
2 2-1.4 自家栽培
2-1.4 自家栽培 * 家庭栽培の楽しみ
最近では、自宅のベランダや畑で家庭菜園を行う人が増えている。
方ーサイト
自家栽培ブームである。自家栽培ブームの理由としては、健康志向
http://million001.
の向上に伴った、農薬などの健康を害する薬品を自分で把握するこ
xsrv.jp/katei_saien/ cat0002
とができるという安心感とエコの流行がある。自然の少なくなった 街なかで緑を増やそうという動きの一環としても、各家庭で植物を
* 家庭栽培の楽しみ
育てるということは CO2 削減にも貢献しているとされている。窓
方ーサイト
辺で を蔦を這わせて育てると、部屋の温度が少し下がり涼しく過
http://yasai.ukkari.
ごすことができるという “緑のカーテン” も、省エネ運動の中で推
info/
奨され、ブームとなった。
* パナソニック家庭栽培の 機械 http://sankei.jp.msn. com/west/west_ economy/news/120528/ wec12052819380006-n1. htm
fig.2-1.10 ベランダで行われている緑のカーテン
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030
研究背景
2 2-1.4 自家栽培
家庭菜園を行うには、ホームセンターや園芸店で自家栽培用の苗 * 家庭栽培の増加
や種を購入することになる。図 2-1.1 は矢野経済研究所で調査され
https://www.
た家庭菜園用の苗の市場規模の推移を表したものである。2005 年
fuji-keizai.co.jp/
以降ここ数年でも倍近く増えてきていることがわかる。
market/11016.html
家庭菜園向け野菜苗・果樹苗の市場規模推移
* 家庭栽培の増加 h t t p : / / w w w . irisohyama.co.jp/ news/2009/0928.pdf * 家庭栽培の増加 http://www.yano. co.jp/press/pdf/820. pdf
fig.2-1.11 家庭菜園苗の出荷金額の増加
また、図 2-1.12 のグラフをみると、家庭菜園ブームは、近年の 自然食品ブームやエコ・省エネなどの理由からだけでなく、家族と のコミュニケーションや植物とのふれあいなどといった、生活の豊 かさにもメリットを見出されていることがわかる。 家庭菜園をはじめてよかったこと
fig.2-1.12 家庭菜園苗の出荷金額の増加
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031
研究背景
2 2-1.5 ホールフード
2-1.5 ホールフード * 家ホールフード最先
近年の自然食ブームや家庭栽培ブームなどと同様に、人が生活を
端
豊かに過ごすために、食生活からライフスタイルを変えていく新し
http://www.otsuka. co.jp/soy/wholefood/
い価値観として、“Whole Food” というものがある。 Whole Food(ホールフード)とは、皮も根っこもまるごと食べ る「全体食」から生まれた言葉で、食や暮らし、農業、環境を同じ
* 東京オーガニックラ イ フ 都 会 で 始 め る
フィールドでとらえる考え方を表現することを「Whole Food」と 呼んでいる。
スローな暮らし h t t p : / / w w w . tokyoorganiclife. com/s/?id=ropponginouen
fig.2-1.13 家庭菜園苗の出荷金額の増加
ホールフードは、健康食のトレンドを発信してきたアメリカで一 般的に使われてきた言葉である。そのきっかけのひとつが、1977 年に発表された報告書「米国の食事目標(マクガバン・レポート) 」 である。塩分や糖分、飽和脂肪酸の摂取を減らす、病気にならない ための食生活の目標が記されたこの報告書が発表されたころから、 アメリカ西海岸地域を中心に、有機農業や健康食、より自然志向の ライフスタイルへの注目が高まり始めていた。 その食生活を実践する手段として推奨されたのが、全粒穀物や野 菜、果物などのホールフードだ。素材をできるだけ生のまま食する ローフードや、マクロビオティックといった食のトレンドもこれを きっかけとしている。 ホールフードとは一般的に、 精製 (プロセス) されていない食べ物のことを指す言葉である。葉っぱや根っこ、皮 ごとの野菜や果物、まるごと食べられる海藻や魚など、 「一物全体食」 に当てはまるすべての食材をホールフードと呼称する。魚や海藻を 当たり前に食べてきた日本人にとって、 「ホールフード」は意識せ ずとも食生活の中に自然にあり続けてきたものであったが、近年昔 ながらの日本食を食べる機会は減少しており、ここで改めて食生活 を見直す機会が訪れているのである。
fig.2-1.14 昔ながらの日本食
fig.2-1.15 精製前の食品と 精製された食品
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032
研究背景
2 2-1.5 ホールフード
*Takako Nakamura
日 本 で は 2008 年 2 月 か ら タ カ コ・ ナ カ ム ラ さ ん が「Whole
Whole Food School
Food 協会 ( 一般社団法人 )」を設立して、“Whole Food” の考え方
h
t
t
p
:
/
/
wholefoodschool. com/
を広める活動が始まっている。また、この協会ではホールフードを 用い、Whole Food の考え方を実践するための料理教室を、東京と 福岡で開講している。 料理方法のセオリーは、 「マクロビオティック」の理論をベース にし、最新の栄養学や科学データをプラスして今のライフスタイル に合う食事方法を学ぶ。マクロビオティックは日本の伝統的な食事 方法であり、季節によって食べ方、調理方法も変わるというもの。 この知恵を料理に生かし、素材のおいしさを 100%引き出す調理方 法である。玄米の炊き方から、ベジブロス、ごま塩、野菜の料理方 法を学ぶことになっている。 その中でもいま注目を浴びているのが「ベジブロス」という料理 方法である。 「ベジブロス」(fig.2-1.16) とは、いままでは捨ててい た皮や根っこなどの “野菜の調理くず” からとる野菜の出汁(=ブ ロス)のことだ。野菜の皮や根っこにこそ、私たちの老化や病気を 防いでくれる、ファイトケミカルやミネラルがたくさん含まれてい る。これら栄養素が溶け出したベジブロス(野菜の出汁)を料理に 使うことで、生産者が真心こめて大切に作った野菜をまるごといた だくことができる。大地からのいのちをまるごといただく、といっ ても過言ではない。ファイトケミカルは、煮ても炒めてもほとんど 変化しないため、みそ汁やスープなどさまざまな料理に出汁として 使うことができる。ベジブロスを使った料理は栄養素がたくさん含 まれているだけでなく、いつもの味が格段にアップし、料理がとて も美味しく仕上がるという。
fig.2-1.16 ベジブロス
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033
研究背景
2 2-1.5 ホールフード
*Whole
Food
Association ー 食 と 暮 らしと農業まるごと 考えましょ。ー http://whole-food.jp/
fig.2-1.17Whole Food 協会の活動
『Whole Food とは直訳すると、 「まるごとの食べもの」ですが、 健康で快適に暮らしたいならば、 「食べもの」だけ安全なものを選 んでいてもだめ。有機野菜やオーガニック食品を食べていれば健康 になれるわけではないのではないでしょうか。防虫剤や電磁波、洗 剤・・・ライフスタイルをまるごと考えていかなければ健康で快適 な暮らしはできないほど、私たちの「食」と「暮らし」は密接にか かわっています。そして、水や空気をはじめ私たちの「環境」のこ とまで考えていく必要があります。 』 Whole Food 協会代表 タカコ・ナカムラ 人が本当に健康で、良い物を食べるためには、土や農業、ゴミや 洗剤など環境のこともまるごと考え無くてはならない。そのために、 世界の環境まるごとよくするための「食生活」を含めたライフスタ イルを考えていこうというものだ。
fig.2-1.18 ホールフード
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fig.2-1.19 ホールフード料理
034
研究背景
2 2-2.1 システムキッチンの固定化
2-2. キッチンの道具化 2-2.1 システムキッチンの固定化 * クリナップ会社概要
現代でキッチンといえば " システムキッチン” が一般化している。
- クリナップの歩み
日本のキッチンの機能は世界でも高い水準を誇っており、日本での
http://www.cleanup. co.jp/company/ history.shtml
普及率は ほどである。火を使うかまど、流し、そして食器などを 収納する棚、調理道具、調理台、これまでそれぞればらばらで作ら れていたものが、まとめて一つのシステムとして構築されたもので、
* システムキッチン
当時は画期的なアイデアとして脚光を浴びた。
http://ja.wikipedia. org/wiki/ シ ス テ ム キッチン
fig.2-2.1 システムキッチン
システムキッチンという言葉が最初に使われたのは、 1973 年(昭 和 48 年)、クリナップのショールームに試作展示されたドイツ風 キッチンを指す固有名としてであった。 システムキッチンとは日本の台所(キッチン)の形態の一種。共 通な色・寸法の各種ユニット(収納具、調理・洗浄設備、作業台な ど)をパーツとして組み合わせ、一枚板の天板(ワークトップ)を のせ、全てが一体となるように組み合わせた台所のこと。スペース の有効利用、デザイン性、用途に合わせた機能的な収納などが主な メリットとされる。 システム(英 : system)は、相互に影響を及ぼしあう要素から構 成される、まとまりや仕組みの全体という意味を持ち、一般性の高 い概念であるため、文脈に応じて系、体系、制度、方式、機構、組 織といった多種の言葉に該当する。 『火』 『水』 『調理・配膳台』 『収 納』といった機能の要素をひとまとまりの道具としてシステム化し ている。
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035
研究背景
システムキッチンが出てきたのは、昭和40年代ごろの戦後の混
http://www.kitchen-
乱の後、団地住宅の量産の頃である。当初はひとまとめにしたこと
bath.jp/public/ history.htm
2-2.1 システムキッチンの固定化
* キッチンの歴史
2
が画期的なアイデアとなり、キッチンメーカーが『システムキッチ ン』の名をそのままにこぞって生産した。 欧米での類似した概念にビルトインキッチン(built-in kitchen) があり、システムキッチンは和製英語(system + kitchen)であった。 対義語、すなわち各部材を並列配置して構成された台所のことは、 「キッチンセット」または「セクショナルキッチン」などと呼ばれ ている。 その後、キッチンメーカーの間で競って改良型が生産され、人間 工学の分野ではさらなる “効率性” を求めて、日々研究を重ねられ ている。当初は、LDK という日本の新しい住宅の概念の中で、 『ダ イニングキッチン』というトレンドを生み出し、これまでのキッチ ンセットをコンパクトに収めているというのが売りであったため、 一列型(I 型) の小さめのものが多かった。近年人間工学や主婦のニー ズから、新商品として改良が重ねられ、作業台をもっと広く使える L 型、調理作業の一連の動きを短縮する A 型、LDK の主役として堂々 と部屋の真ん中に置かれるアイランド型などさまざまなタイプのも のが生まれてきている。I 型、L 型、U 型、二列型、アイランド型、 A 型などのタイプがある (list.2-2.1)。
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研究背景
2 2-2.1 システムキッチンの固定化
list.2-2.1 キッチンのタイプと特徴 キッチンの写真 型 タイプごとの特徴
昭和初期のキッチン
I 型キッチン
L 型キッチン
棚、シンク、コンロは、
昭和 40 年代、
I 型より場所はとるが、
それぞれ別々に作られて
団地の発生・増加と共に
動線を短くして、効率性
いた
増えてきた
を上げたプランである
直接施工するものである
機能を一列に並べ、コン
ため大量生産には向かな
パクトにまとめたもの
かった キッチンの写真 型 タイプごとの特徴
U 型キッチン
アイランド型キッチン
二列型キッチン
機能で人の周りを囲い、
キッチンのスペースを広
水場と火を使うところが
作業動線をコンパクトに
くとり、キッチンを中心
分離していて、水場がオ
まとめたもの
としてぐるりと回る動線
ープンになっている
作業空間は狭いので複数
ホームパーティーなど大
人で料理をするのには向
勢の人がキッチンに入れ
いていない
ることが売り
キッチンの写真 型 タイプごとの特徴
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A 型キッチン
変形アイランドキッチン
変形アイランドキッチン
従来の L 型の効率性を
従来のアイランド型を空
曲線を用い、向きをなく
さらに高めたもの
間に合わせて機能的に改
すことにより、動線の無
シンクとコンロの間に
良している
駄をなくし、また複数人
作業台があることで、
アイランド型は効率性や
でのキッチンの作業にも
全体の移動を最小限に
合理性よりも、視覚的な
使いやすくなっている
している
楽しみの意味もある
037
研究背景
2 2-2.2 キッチンの道具化
2-2.2 キッチンの道具化 かつて、土間や台所という場所であったキッチンは、システムキッ チンという商品によって、 料理を作るためのひとつの「道具」となっ た。昭和後期、日本の高度経済成長は大手家電メーカーに支えられ て人々の生活を大きく変えていった。家事を変える『三種の神器』 (fig.2-2.2) の一つとして、 「冷蔵庫」が開発され、これまで食糧保管 は、 「場所」で行われていたものが「道具」となった。その後も様々 な家電製品が発明され、料理を変えるような「道具」もたくさん生 み出されてきた (list.2-2.2)。
fig.2-2.2 三種の神器
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038
研究背景
2 2-2.2 キッチンの道具化
list.2-2.2 キッチンにある家電製品
切る・混ぜる 温める 沸かす 炊く・作る 焼く 熱する Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
039
基礎研究
基礎研究
3
台所の構成
3-1
火を使う所
3-1.1
水を使う所
3-1-2
食糧を保管する所
3-1-3
台所について
3-2
台所とは
3-2-1
厨房、厨
3-2-2
囲炉裏
3-2-3
おかって
3-2-4
世界のキッチン
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3
3-3
-041-
基礎研究
3 3-1. 台所の構成
3-1 台所の構成
日本の台所には、さまざまな呼び方があり、それは時代や地域ご とに異なっていたが、語源をたどると、それぞれに意味や場所の持 つ特性などが異なっていることがわかる。本論文の中では、主に調 理空間、食事を準備する部屋のことをこれまで台所と読んできたが、 他に厨房、おかって、賄い場、調理場などの呼び名の空間も、同様 の意味を持つと考えている。 list.3-1.1 調理機能の名称
場所 台所 厨房 おかって キッチン だいどこ 土間 板の間 茶の間
調理機能 厨房 厨 炊事場 調理場 賄い所 賄い部屋
火廻り 竈 へっつい 釜屋 釜場 窯場 くど 囲炉裏
水廻り 流し 走り 水場 洗い場 井戸
賄い場や調理場、炊事場などは、 「調理をする」という行為に重点 が置かれているのに対し、キッチンは現代では、システムキッチン や、コンロなどの火周りと流しなどの水廻りを一括りにした機能道 具に重点が置かれている。また、他に「料理」に欠かせない、火や 水それぞれに対する名称も、ここで洗っておきたい。現代の日本の 住宅では、この 2 つはセットで調理機能として備わっているのが普 通であるが、もともとは全く別々のもので、別々の歴史を歩んで発 展してきた住宅設備である。
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-042-
基礎研究
3 3-1.1 火を使う所
3-1.1 火を使う所 Kitchen の語源は、ラテン語の co-quina(火を使うところ) ( 古 来語では cycene(クチーナ)) であると言われている。日本ではキッ チン=台所という意味で使われているが、もともとは、火をおこし、 その周りで食材をさばき、火にかけて料理を作り、みんなで火を囲 んで食事をする「食の空間」であった (fig.3-1.1)。
fig.3-1.1 縄文時代の人間の食生活
火を使って食材を調理する習慣は、“人間だけ” の特徴である。時 には災厄をもたらす火を人は上手く扱っていかなれけばならなかっ た。 火を使う場所は、集落の中心広場に炉が作られ、その周りが料理 から食事をする食全般を扱う空間となっていた。その後、建築の技 術が進み、住居が寝るだけでなく家族の暮らす場所となってからは、 各住宅内に炉を置くようになり、家庭の中心に置かれるようになっ ていった (fig.3-1.2)。
fig.3-1.2 弥生時代の人間の食生活
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-043-
基礎研究
3 3-1.1 火を使う所
火を調理に使うために人はさまざまな工夫を考え、技術を開発し ていった。最初は、三ツ石と呼ばれる、大きめの石を 3 つ並べた もので炉を作り (fig.3-1.3)、その上に鍋などを置いて熱するものが 主流であった。これはその後、鉄が普及すると、現代のコンロの原 型にも繋がる鉄の鍋置台を使うようになっていった (fig.3-1.5)。熱 い地域では、この上に石を鉄板のように置き、その上に食材を置い て石焼の調理を行ったり、寒い地域では同じ火を部屋を暖めるため にも利用するため、上から鍋などを吊り下げるものもあった (fig.31.6)。
fig.3-1.3 三ツ石
fig.3-1.4 三ツ石を使わない炉
fig.3-1.5 鉄製の鍋置台
fig.3-1.6 アイヌ民族の住宅
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-044-
基礎研究
3 3-1.1 火を使う所
火を使う場所として、木造住宅が中心の寒い地域では、住宅の中 心に置かれ家族が集まる場所として発展していき、その後日本では 囲炉裏と呼ばれるようになっていった (fig3-1.7~8)。
fig.3-1.7 囲炉裏を囲む家族の食事の様子
fig.3-1.8 青森県の旧武士の家
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-045-
基礎研究
3 3-1.1 火を使う所
また、竈、かまど、へっつい、釜場、窯場などの火を使う場所も あった。特にヨーロッパなどの石造りの地域ではこちらの方が主流 となり (fig.3-1.9~11)、暖炉とピザを焼く釜の併用などが見られた。 fig.3-1.10 はポンペイの食堂のキッチンであるが、このような竈の 形は、現代のキッチンを思わせる形である。下に火を炊き、この穴 の上に鍋を置くスタイルの調理場である。日本では、炉も使われて いたが、竈も家庭に一つあり土間に置かれていた (fig.3-1.12)。
fig.3-1.9 ポンペイ ( 古代ローマ ) の
fig.3-1.10 ポンペイ ( 古代ローマ ) の
ピザを焼いていた竈
食堂の竈
fig.3-1.11 ハンガリーのパンを焼く竈
fig.3-1.12 日本の武家の住宅
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-046-
基礎研究
3 3-1.1 火を使う所
火を使う場所は、地域の気候や技術によって形が変わって来てい る。煙の処理ができない場合は、外に竈が置かれていたり、寝室の ある住居から離れて竈の置かれた部屋が作られたりしていた。また、 寒い気候の地域ではこの竈や囲炉裏の火を暖として使うアイデアが 発達しただけでなく、煙を利用して部屋を暖める韓国のオンドルの ようなアイデアもあった。火を使う場所を考えることは、どの地域 においても、生活をする中で最も重要であったと言えるだろう。
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-047-
基礎研究
3 3-1.2 水を使う所
3-1.2 水を使う所 現代のキッチンには、水道と流し台はついていて当たり前の設備 である。しかし、水場が調理場に必ずあるようになったのはかなり 近年のことである。 古来から水は人の生活に水は欠かせないが、人は水を自由に確保 することは難しかった。川や海に直接行くか、雨水を貯めて使って いた。そのため、人の生活場所は水のある場所に左右されていたと 言っても過言ではない。古代ローマでも、遠くから水を引いてくる 技術はとても早くから開発されてはいた (fig.3-1.13) が、各家庭に 水道を引くというのは難しいことであった (fig.3-1.4)。
fig.3-1.13 古代ローマ ( スペインセゴビアの遺跡 ) の水道橋
fig.3-1.14 古代ローマ ( ポンペイの遺跡 ) の共同水飲み場
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-048-
基礎研究
3 3-1.2 水を使う所
人の歴史の中で、住居の中に水場ができたのはかなり最近のこと であると言える。江戸時代、住宅街の中には井戸 (fig.3-1.15~6) が あり、人々はそこで水を使った家事を行なっていた。住居内で使う 水は必要なだけ桶に汲んで部屋に持って帰る程度であった。井戸水 を汲み上げるしくみは技術の進歩とともに新しくなっていった ( fig.3-1.17) が、共同水場の時代が長く続いていた。
fig.3-1.15 江戸時代の城下町の井戸
fig.3-1.16 江戸時代の井戸端の様子
fig.3-1.17 ポンプ式の井戸
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基礎研究
3 3-1.2 水を使う所
住居内での水の使用は、家の中に水瓶を置き、飲み水や、調理の 時に使う水としているところもあった。水は、土間などで使われて いたが、住居内で水を使う事が増えてくると、土間の上にすのこを 置いたり竹で台を作り、 「流し」とするようになった (fig.3-1.18~19)。 また、海外では石や木で作られた流し台もあったようだ (fig.3-1.20)。 その後、タイル張りのもの (fig.3-1.21) や、石やコンクリートの流 し台が作られるようになり、素材の研究を重ねて、現代のようなス テンレスや人工大理石の流し台が作られるようになった。
fig.3-1.18 宮城県の農家のすのこ
fig.3-1.19 竹を組んで作られた流し台
の敷かれた床
fig.3-1.20 フランスおよそ 200 年前の
fig.3-1.21 昭和 30 年前後の日本の
石で作られた流し
流し台
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基礎研究
3 3-1.3 食糧を保管する所
3-1.3 食糧を保管する所 現代の食糧の保管場所はどこかといえば、冷蔵庫と答えるのがほ とんどであろう。冷蔵庫は冷却機能を備えた、食糧を保管するため に作られた道具である。人が食糧を大自然にとりに行かなくなって から、食糧の保存は人間の大きな課題となってきた。 人間は、科学の発展とともに、食糧を長く保存できるように工夫 するようになった。保存食の歴史を考える場合、現代に至るまで少 なくとも 2 つの大きな転換点がある。缶詰の発明と、冷蔵(冷凍) 技術の発達である。 現代では冷蔵や冷凍の技術、乾燥や発酵を機械で人工的に行う ことができるようになり、家庭内での長期食材保存も一般的になっ た。前章のインスタント食品などは長期保存ができるという点に着 目し、防災対策として家庭内に買い置きされていることも多い。ま た、災害時用の食糧として、fig3-1.21 のカンパンなどの保存食を 置いている家庭も少なくなく、災害対策パックに入っていたり、学 校などの避難場所には大量に保管されていることもある。
fig.3-1.21 現代の災害時用の保存食品
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基礎研究
3 3-1.3 食糧を保管する所
保存食のはじめは、手作業・手作りの時代である。この時代の保 存食は、天然の素材と自然界にある様々な現象を最大限に利用して、 保存しやすくするような工夫がされていた。塩蔵、糖蔵、乾燥、燻 製、発酵などである。また、加工後の食品を食べるには特殊な調理 が必要となる場合も多い。このため保存方法それぞれに特化した調 理法や食文化を発生させている。 農業が発達するようになってくると、干した魚や果物、米や穀物 のような乾燥することで長期保存ができるようになる食材を湿気を 遠ざけるようにして、納屋や倉 (fig3-1.22~24) に保存しているとこ ろが多く見られた。
fig.3-1.22 弥生時代の高床式倉庫
fig.3-1.23 ヨーロッパのワイン蔵
fig.3-1.24 レンガ造りのワイン蔵
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基礎研究
3 3-1.3 食糧を保管する所
昔の日本住宅の中には、漬物や干し物など長期に保存できる食材 が必ず置いてあった。納屋や倉のない家でも土間に食糧が入ってい る坪を並べていたり、米俵が積まれている様子はよく見ることがで きる。現代のようなスコンビニエンスストア生活になる前には、各 家庭に二、三週間分の食糧が必ず置いてあったとも言われる。それ ほど貧困に苦しんでいない家庭ならば、突然の来客が来ても、数日 分の食事は用意できたそうだ。また、漬物や干し物などを各家庭で 行なっているのが普通で、それぞれの家庭の味というのが、そのよ うなところからも作られていたと考えられる。
fig.3-1.25 大正時代の住宅の様子
fig.3-1.26 土間の様子
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-053-
基礎研究
3 3-1.3 食糧を保管する所
近年の食糧保存としては、冷蔵技術の発達が大きい。寒い地域の 農家では、夏でも日が入らず涼しい倉庫を米や野菜、お酒の食糧保 存場所としていた。近年の住宅の増加と都心の過密化によって、住 宅の土地はとても狭くなったため、別で食糧倉庫を建てることは 少なくなったが、玄関口の近くに土間とコンクリートで囲った涼し い空間をパントリー (fig.3-1.25) として食糧を並べている住宅は今 でも見ることができる。また、地下室を作ったり、床下に収納場所 (fig.3-1.26) を作って食糧の保管庫としているところもある。
fig.3-1.27 パントリー
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fig.3-1.28 床下収納庫
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基礎研究
3 3-1.3 食糧を保管する所
日本の住宅では、人工的に空間を冷やす技術がまだなかった頃、 氷を入れて冷やしていた。氷を入れた食糧保管庫は日本の歴史の中 でいつごろから存在しているかはわからないが、江戸時代頃には冷 蔵庫に入れる氷を売る氷屋も存在していたようだ。冬に氷を切り出 し、夏まで氷室で冷やして氷を保管しておき、商売にしたり夏に氷 を利用していたという話は、日本書紀にも出てくるという。
上の段に氷を入れ、下に野菜や果物などを 入れて冷やしていた。 氷は溶けてしまうので、定期的に氷屋から 購入して、入れ替えていた。
fig.3-1.29 昭和初期の冷蔵庫
今のように電気やガスで冷蔵できるようになったのは、昭和30 年ごろであり、当時は画期的な家電製品として脚光を浴び、いち早 く家に取り入れた家庭は近所で話題になったほどであった。 更に近年では、冷蔵をしなくても常温での長期保存が可能な加工 食品や、近くにコンビニやスーパーなどがありいつでも食糧が調達 できるようになったため、家庭内での食糧保存の事情も変わってき ている。
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基礎研究
3 3-2.1 台所とは
3-2. 台所について 3-2.1 台所とは 台所の語源
<平安時代の台盤所>
http://www.kitchen-
台盤とは、食物を持った盤を載せる脚付きの台で、宮中や貴族の
bath.jp/public/ history/historyall.htm
家で用いられた (fig.3-2.1)。一説には、台盤の『台』のみでも『食 物を載せるもの』 『食物そのもの』の意味があったとも言われている。 かつてこうした台盤が日常的に使われていたのは上流貴族の邸宅 や宮中に限られていたが、 「台盤所」とは文字通りとはその台盤を 置いておく所のことで、調理や配膳を行う一室のことを指した。こ の台盤所を短くして「台所」と呼ばれるようになったというのが、 語源の有力な説である。
fig.3-2.1 台盤 ( 平安時代頃から宮中で使われていたとされる )
fig.3-2.2 台盤所
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基礎研究
3 3-2.1 台所とは
<鎌倉時代以降の台所> 鎌倉時代から、武家や農家でもかまどのある部屋 (fig.3-2.3) を台 所と呼ぶようになった。一般的に呼ぶようになったのは中世になっ てからである。 江戸時代にはいると、食材や食器などの洗浄は井 戸端や川辺で行い、家に持ち帰り竹の簀の子(すのこ)などによる 木製の流しを使って台所仕事が行われるようになった。そして近代 以降、水場、かまどなどの調理機能を揃えた空間 (fig.3-2.4) が台所 と呼ばれることになった。
fig.3-2.3 武家の台所
fig.3-2.4 近代の台所
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基礎研究
3 3-2.1 台所とは
<台所という言葉の使われ方> ー天下の台所ー 江戸時代に物流、商業の中心地であった「大坂」を指した異名と して使われる用語。全国の藩が大坂に蔵屋敷などを設け、生活物資 の多くが一旦生産地より大坂に集められて再度全国の消費地に送ら れたからであると言われている。 ー東京の台所ー 東京都内で新鮮な魚類などの食材が集まっている場所として、 「築 地」のことを指しており、現代でも使われている。このような場合 の台所の意味としては、食材を調理する場所というよりは、食材そ のものが集まっている場所を指している場合が多い。 ー御台所ー かつて宮中での台盤所では、多くの女性が働いていた。これが転 じて、清涼殿内の女房詰所のことを台盤所と呼ぶようにもなってお り、さらに後には、将軍や大臣の妻のことを「御台所」などと呼ん でいた。 ー台所は火の車ー 家庭の経済について、生活がぎりぎりである時に使われる言葉で ある。かつては生活費のほとんどは食に充てられており、稼ぎが少 なければそれは直接食生活に影響していた。そのため台所を取り仕 切っている各家庭の女性達には、少ない経費の中で上手くやりくり することが求められていた。
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基礎研究
3 3-2.2 厨房
3-2.2 厨房 【厨・厨房】 厨房 房は部屋という意味なので、厨の部屋という意味になる。料 理をこしらえるところの意味で、中国でも厨や厨房と呼ばれている。 現代の日本において、厨房と言えば、レストランなどの店舗での調 理場のことを指すことが多いが、機能としては料理をこしらえると ころ全般を指している。
fig.3-2.5 レストランの厨房
旧字体は廚。 キッチン、調理場、料理をする場所、料理する、箱、櫃、という 意味がある。廚は〔説文解字・巻九〕に「庖屋なり。广に從ひい廚 聲」と調理場のこととある。厨は〔広韻〕に廚の俗体とある。
fig.3-2.6 厨と同じ意味の漢字
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基礎研究
3 3-2.2 厨房
「男子厨房に入るべからず」という言葉をよく耳にしていた。 今では、厨房は女性が入るところであり、男性は炊事に関わるな、 という男尊女卑の考えに基づくものと解釈されている。 もともとは、中国の『孟子』にある言葉に由来している。
「正しい情を持った立派な君主であれば、たとえ家畜であっても、 生きているのを見ていると、それを殺すところを見るのは忍びない 気持ちになります。ましてや、その声まで聞いてしまうと、食べる のに忍びなくなってしまいます。しかしそんなことでは、国を治め ることはできません。だから、君主たるものは、そのような気持ち になってしまわないように、調理をするために動物を殺している厨 房には近づかないほうが良いのです。 」 という意味です。 また、この節の前の部分には、食肉として引かれている牛が抵抗 しているのを君主が見て、それを憐れみ、 「そんなに牛が嫌がって いるのなら殺すのをやめなさい」と発言したことに対して、 「国民 が食べていくために動物を屠殺することは仕方のないことです」と 言って、臣下が諌めた話なのだ。 いわゆる「日本男子たるもの」の元は、 「武士たるもの」だ。武 士の道「武士道」は、儒教の影響を多分に受けて形成されていた。 そこに、日本の武士の価値観の中にあった男尊女卑の視点が混ざっ たのだと考えられている。儒教に男尊女卑の考えがあったわけでは ないが、封建時代の社会では戦いによって権力を勝ち取っていたの で、戦士である男が社会の実権を持つというのは、世界的に見ても よくあることであった。 そこで、武士がやるべきではない、という扱いになった炊事を女 性が担当した時点で、炊事=女の仕事=身分の低い者の仕事、とい う解釈になってしまったのだと思われる。 近年では、レストランなどの厨房に立つ料理人という職業も、西 洋風に男性の方が目立つという現状がある。女性の社会進出ととも に、家事全般を女性がやるというのはおかしいという風潮が強くな り、テレビなどでは『料理のできる男性』がもてはやされる時代に なってきて男性も台所に立つことが増えてきている。
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基礎研究
3 3-2.3 囲炉裏
3-2.3 囲炉裏 囲炉裏 (fig.3-2.7) は炊事専門のかまど、属人的な火鉢とともに、 日本の伝統家屋の火の座を構成した。 地方により特有の形態を持つ囲炉裏は、その呼び名も地方ごとに 異なり、多くの呼称があった。 現在に残るものとして、炉、地炉、 ヒジロ、ユル、ユルイ、ユルリ、イナカ、エナカ、ヘンナカ、エン ナカ、イリリ、イレ、シタジロ、スブト、ジリュなどがある。
fig.3-2.7 旧家の囲炉裏
また、土間は「ダイドコ」 、囲炉裏のある板の間は「カッテ」と 呼んでいたとも言われている。北陸地方の場合、竈(かまど)が作 られるのは昭和 30 年代が中心で、それまではあらゆる煮炊きを囲 炉裏で行なっていた。温暖な西日本では夏季の囲炉裏の使用を嫌い、 竈との使い分けが古くから行なわれている (fig.3-2.8)。
fig.3-2.8 囲炉裏と竈の両方がある家の間取り
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基礎研究
3 3-2.3 囲炉裏
囲炉裏の持つ様々な機能と効果を list3-2.1 に示す。 list.3-2.1 囲炉裏と竈の両方がある家の間取り 1 暖房
囲炉裏は暖をとるために用いられる。部屋の中央付近に置かれ、部屋中を暖め る。
2 調理
囲炉裏は食物の煮炊きに用いられる。囲炉裏では自在鉤(後述)や五徳を用い て鍋を火にかけ、炊飯をはじめあらゆる煮炊きを行なった。また魚などの食材を 串に刺し火の周囲の灰に立てたり、灰の中に食材を埋めて焼くことも多い。徳利 を灰に埋めて酒燗することもある。
3 照明
囲炉裏は夜間の採光に用いられた。火が主要な照明であった近世以前、囲炉 裏は安全に部屋を照らすことのできる手段であった。古くは炉辺の明かし台で 松明を燃やして手元の明かりとした。また、照明専用具として油や蝋燭がありは したが、いずれも庶民にとっては高価なものであった。
4 乾燥
火棚を組み、衣類・食料・生木などの乾燥に用いた。また、着物掛けを炉辺に置 いて濡れた着物を乾かした。
5 火種
マッチなどによる着火が容易でない時代、囲炉裏の火は絶やされることなく、竈 (かまど)や照明具の火種として使われた。
6
囲炉裏には家族や人を集結させる場としての機能を持っていた。食事中、夜間 家族のコミュニケーション は自然と囲炉裏の回りに集まり、会話が生まれる。通常家族の成員の着座場所 の中心 が決まっており、それぞれの席に嬶座(かかざ)、客座、下座などという名称もあ り、家族内の序列秩序を再確認する機能もあった。
7 家屋の耐久性向上
部屋中に暖かい空気を充満させることによって、木材中の含水率を下げ、腐食し づらくなる。また薪を燃やすときの煙に含まれるタール(木タール)が、梁や茅葺 屋根、藁屋根の建材に浸透し、防虫性や防水性を高める。ただし、家の中に煙 が充満することで眼病などの原因にもなる。
囲炉裏は、家の中で火を使う場所として、生活のさまざまなもの に役立てられていた。また、 特に寒い地域では、 ずっと火を絶やさず、 常に火の灯っている場所としても重宝されていたようだ。人の集ま る場所や生活の要として、常に火が家庭の中心にあったのである。
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基礎研究
3 3-2.4 おかって
3-2.4 おかって 台所がおかってと呼ばれている理由にはいくつかの説がある。正 確にいつ頃から呼ばれているかはわかっていないため、語源もはっ きりとしたことはわかっていない。LDK の文化が浸透してきている 現代においてもまだ使われている呼び名で、特に台所、キッチン部 分に関して呼ばれることは少なくなったが、戸建住宅において台所 近くにある、外のゴミ置き場などへ繋がっている小さめの “扉” の ことは、未だに「勝手口」と呼ぶことが多い。 また、「おかって」は LDK の主役になりつつあるオープンなキッ チンと異なって、 「他人様に見せるものではない」 「奥にあるもの」 というイメージが強い。 ①弓道では、右手を勝手、左手を押し手と呼ぶ。押し手は弓をしっ かりと支えるため自由が利かないが、勝手 ( 右手 ) はその名のとお り自由に使える。 女性には自由があまりなかった時代に、唯一、女性が自由にふるま える場所、それが台所→自由→勝手→お勝手となったという説であ る。 ②「勝手」という言葉の持つ「生計」とか「家計」 、 「暮らしむき」 という意味から。それらを任された女性の居場所になぞらえて、 「お 勝手」と呼ぶようになったと考えられる。台所の出入り口も「お勝 手口」と言われていた。正式の客が出入りする玄関に対して、酒屋、 洗濯屋などの「御用聞き」が出入りする入り口であったからと言わ れている。 ③食べ物を表す『糧(かて) 』から来ているという説もある。
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基礎研究
3 3-3 世界の台所
3-3. 世界の台所
台所の語源
日本の現代の台所は、戦後に海外のキッチンを真似たものである。
http://www.kitchen-
そのため、もともとの日本の台所の歴史とは繋がっていない点も多
bath.jp/public/ history/historyall.htm
い。狩猟時代から火を用いた料理を始めた頃までは、世界中のどの 地域も空間的な違いはあまり見られなかったが、火を使う場所を建 築内に持ち込むようになった頃から、文化ごとの建築の異なりに合 わせて台所空間も文化や国柄に合わせた違いが生まれてきた。ここ で、現代の海外の台所事情を調べてみたいと思う。
<アメリカ(日本が真似た現代のシステムキッチンの原点)> 日本のガスコンロには当然のようについている魚用のグリルはア メリカではないのが普通である。そもそもアメリカの人は、魚を焼 く臭いが嫌いなのだという。オーブンで焼くのはお肉で、魚はフラ イパンでムニエルにするのが普通である。魚の煙で苦情が来る場合 もあるので、アメリカに住んでいる焼き魚好きの日本人は苦労して 調理しているという。 現代の日本のキッチンでも、組み込まれたグリルのみでしか魚は 焼けなくなっており、煙や炎を嫌う風習が定着しつつあるといえる だろう。
fig.3-3.1 アメリカの台所の様子
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基礎研究
3 3-3 世界の台所
<イタリア> 電器や石油を使わない薪ストーブは日本でも注目されているが、 イタリアでは一般家庭では薪ストーブを使って調理したり、お湯を 沸かしたりする。 薪ストーブの天板で調理ができるタイプではなく、扉が付いた オーブンで料理ができる薪ストーブなら、ピザ屋さんのかまど焼き とまではいきませんが、オーブン焼きのピッツァなら簡単に作れま す。炉を使えばピザを焼くだけではなく、お肉も焼けるしパンも焼 ける、パイも焼ける。ガスコンロはあるが、あまり消費は多くなく、 旧式のものを使い続けている。 <ドイツ> ドイツの人があまり料理をしません。食事はワンパターン・質素が 基本。外で買ってきたものを食べることも多いので、あまり包丁を 使ったりもしません。その分お茶の時間のおやつには拘るようです。 キッチンは食事を作るよりお菓子を作るのに活躍していることが多 いようです。 ドイツやイタリアではお引越しの時にキッチンも持っていくのが普 通なのだそうだ。
fig.3-3.2 イタリアの台所
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fig.3-3.3 ドイツの台所
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基礎研究
3 3-3 世界の台所
<フランス> フランスのキッチンはシンプルである。日々の食事は一般家庭で フルコースは食べず、朝も昼もカフェで済ますのも珍しくなく、夜 は購入した惣菜という家庭も多い。日本のようにリビングダイニン グ一体でという考え方は全くなく、個室型の台所を求める。多機能 なものを求めず、この考え方は調理器具にも現れており、チーズお ろしやポテトマッシャーなどの単機能なキッチン用品が、フランス 人らしさであるといえる。 <スイス> スイスのキッチンは、電気コンロが普通で、ガスコンロを使える 家というにがあまりない。スイスの持ち家率は 3 割程度ととても低 く、アパートメントで一生を過ごす人が大半である。素材を生かし た料理が主流で、チーズフォンデュなどがその代表である。ちょっ と古くなったチーズの塊をワインで溶かして、食材に付けて食べる だけのお手軽な料理である。 核シェルターの普及率が世界一であるという事で、普段は物置な どとして利用されているが、ここに非難して 1 ヶ月は暮らせるよう に食料なども備蓄されている。スイスは寒い国なので、暖房器具は 必須だが、暖房を調理に利用することはできない。 <オランダ> オランダ人は、キッチンも質素であり、無駄に見栄えにお金をか けることはありません。料理のレパートリーは少なめで、美食を追 求するようなことはなく、大半のオランダ人にとって、食事はお腹 を満たすものに過ぎない。
fig.3-3.4 フランスの台所
fig.3-3.5 スイスの台所
fig.3-3.6 オランダの台所
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基礎研究
3 3-3 世界の台所
<韓国> 韓国の伝統的な民家は、床下暖房が普通であり、これは韓国人の 生活が西洋化する前からの伝統である。この床下暖房の設備をオン ドルといい、そのオンドルに必要なのが、台所なのだ。オンドルは、 プオクと呼ばれる台所が、その暖房設備の要になっている。プオク にはかまどがあり、このかまどからでる煙を上の床下に流れ込むよ うに配置して、煙と台所の熱で建物床全体を暖めるのである。煙が 流れ込みやすいように、このプオクは半地下に作られ、住居部分よ り下の階層に作られていた。都心部は西洋化したシステムキッチン が主流になっている。
fig.3-3.5 韓国のオンドルの仕組み
<中国> 中国では、今も農村部では釜戸が残り、都心部ではガスコンロで ある。あまりシステムキッチンは一般的ではない。ただし、ガスコ ンロは日本より火力は強く、中華鍋一つで作る料理が中国らしさで ある。食事をするという事にはとても情熱的であるが、家庭で手の 込んだ料理はあまり作らず、中国は外食率がとても高い国でもある。
fig.3-3.6 中国の農村の台所
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基礎研究
3 3-3 世界の台所
<インド> インド神話の「アグニ」は火の神様で、かまどや台所の神様であ る。その火の神様アグニ様は火を通した食べ物はすべてアグニ様に 浄化していただいた神聖なものとなる。これにより、インドの台所 は神聖な場所とされている。ヒンドゥー教の人々は、菜食主義の人 が多く、肉食をしない人も大勢いる。主食は主にお米であり、日本 のように炊くのではなく、 「煮る」ものである。 <カンボジア> 台所がない家は珍しくなく、地方では、七輪とかまどだけで調理 する家庭も少なくない。カンボジアでは、台所を使う機会は少なく、 アパートなどを探すと、台所のない物件もたくさんある。そして豊 富な屋台があり、直接食べるだけでなく、お持ち帰りして家で食べ ることもある。地方では屋台はないので、薪を使って調理するのが 一般的である。
fig.3-3.7 インドの台所
fig.3-3.8 カンボジアの 七輪の台所
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基礎研究
3 3-3 世界の台所
<マレーシア> マレーシアの台所は、家の一番奥に作られている。これは昔、キッ チンででた生ごみをそのまま外に捨てていたからだ。ちなみに一家 に二つキッチンがある家も多く、二つ目のキッチンは、家の外に作 られている。マレーシアでは換気扇がなく、換気扇のようなものが 付いていても換気機能はないことが多いので油料理は外でしている ようだ。 <タイ> タイでは、アパートやあまり裕福ではない一軒家では台所がない のが普通である。タイでは屋台が多く、 都心に住んでいる場合はキッ チンがなくとも困ることはない。 屋台など外食する場所のない地方の場合、台所は一家にひとつあ るが、家の中にキッチンが作られることはめったにない。家の中に キッチンがある家庭でも、わざわざ屋外キッチンを作り、普通に屋 外に出て調理を行う人もいるほどである。現地の人用の物件ではベ ランダにキッチンが設置されている物件が多い。煙などの問題か、 タイの人にとっては、料理は外でするのが普通という考えが浸透し ているようだ。
fig.3-3.9 マレーシアの台所
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fig.3-3.10 タイの都心の屋台
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基礎研究
3 3-3 世界の台所
<ロシア> ロシアは、昔からストーブを使って料理をしていたが、コンロ形 式の調理器具は普及しなかった。ロシア料理はオーブンで焼く、ス トーブの余熱を使って煮込む、というのが基本で炒め物などはない。 今のロシアの台所は、ストーブで料理することは少なくなり、電 気コンロも普及している。しかし、ガスコンロはない。それは、ガ スを使うと換気しなくてはいけないからである。 ボルシチ、ピロシキなどの保存食が発達していたロシアでは、魚 や肉の保存だけではなく、ジャムやピクルスなどの保存食も豊富で ある。 また、ロシアの暖房は、全館暖房などという、ケチなものではな く、町全体をお湯で暖房する温水セントラル方式が主流で、給湯も これで行われている。
fig.3-3.11 ロシアのストーブを使った
fig.3-3.12 ロシアの近年の換気扇の
台所
ない台所
世界それぞれのライフスタイルに合った台所文化が根づいてお り、それによって使われている機能もデザインも、空間構成も異なっ ていることがわかる。日本は、戦後にアメリカ文化が流れこんでき たため、日本のこれまでの食文化の流れではなく、新たなアメリカ 式のキッチンとなっている。近年の住宅設備は、日本の製品はとて も優秀であり、海外へ輸出され始めているが、もともとの日本の食 文化に合っているものなのかは疑問である。
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食空間の変遷
食空間の変遷
4
日本住宅における食の空間
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4
4-1
住宅の変遷
4-1.1
現代の日本の LDK
4-1-2
食空間の変遷
4-1-3
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食空間の変遷
4 4-1.1 住宅の変遷
4-1. 日本住宅における食の空間 4-1.1 住宅の変遷 住 宅 の 変 遷 1 原 始
住宅とは、どのように作られてきたのか?
時代の住居
太古の時代の人々は、まだ住宅というのはなく、自然にできた洞
(2002/07/01,allabout 住宅・不動産 )
窟などで寝泊りし、雨風や外敵から身を守ってきたと思われている。
http://allabout.co.jp/
住宅のはじまりは、縄文時代の竪穴式住居 (fig.4-1.1) である。稲
gm/gc/40130/
作が起こり畜産をするようになると、移動しながらの狩猟生活から、 定住した生活に移行するようになり、家の必要性が高まったのだと 考えられる。竪穴式住居は、地面を一段掘り下げ、地面に穴を開け 柱を立てて梁を組み、屋根の下にあたる垂木をさらに組んでつくら れている。地下は地上に比べて、冬は温かく、夏は涼しいので、過 ごしやすいことから自然の力を借りて快適な空間づくりの工夫を行 なっていたのだと考えられる。形は、初期は 5 から 6 mくらいの 円形が殆どであったが、後に 1 辺が 5m くらいの方形も作られるよ うになったようだ。内側に壁を作り、外側の屋根にはすすきやかや で葺いて中を守っていた。
fig.4-1.1 竪穴式住居
この時代には、箱型住居 (fig.4-1.2) というのも存在していたと考 えられている。長方形の箱の上部に、三角の屋根をつけた形のもの で現代の住宅に近い形のものである。こちらは、主に倉庫や礼拝所 のような役割をしていたと考えられる。また、裕福な家庭の住宅で あったとも言われており、弥生時代に出てくる、高床式倉庫 (fig.41.3) なども同じようなものだと考えられる。
fig.4-1.2 箱型住居
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fig.4-1.3 高床式倉庫
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食空間の変遷
4 4-1.1 住宅の変遷
この時代の家というものの原点を見ると、住宅には大きく2つの 役割があったと考えられる。 ◯厳しい自然環境から身を守るためと、外敵から身を守るため ◯食物や耕作・畜産の道具などを保存・保管する役割 である。後、稲作や畜産の技術が進むと、食事も家の中で行うよう になっていった。住居が、寝る場所・身を守る場所だけでなく、生 活の中心、家庭の中心へと変わってきたのである。 その後日本文化の発展により、平安時代には、ただ身を守り生活 するためだけではない、豪華な建築も生まれてきた。しかし、農村 などでは、長い間この竪穴住居のようなシンプルな住居が続いてい たと考えられる (fig.4-1.4~5)。鎌倉時代になると、庶民の住居も、 靴を脱いで上がる居間と、かまどが置いてある土間に分けられたよ うな住宅もみられるようになった (fig.4-1.6)。寝床が設けられ、畳 やござを敷き、ふすまなどの扉で仕切られた、“部屋” が作られる ようになっていった。
fig.4-1.4 平安時代の竪穴式住居
fig.4-1.5 平安時代の竪穴式住居内観
fig.4-1.6 鎌倉時代の住居内観
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食空間の変遷
4 4-1.1 住宅の変遷
世界の台所博物館
江戸時代では、居間と、土間の台所、客間やお風呂、トイレのつ
( 宮崎玲子 , 柏書房出
いた、日本住宅の原型のような住宅が、江戸や京都の町で見られる
版 ,1988.12)
ようになった。fig.4-1.7 は江戸の町にあったという長屋の一間の間 取りであり、fig.4-1.8 は同時代の京都の町にあった町屋一件の間取 りである。まだ、台所は、出入り口の近くであり水や土も使うので 土間に置かれているのが普通であった。また、玄関から一番遠くに 台所がある場合、その近くに勝手口と呼ばれる出入り口があり、そ こから生ゴミを出したり、水を運んだりしていた。
fig.4-1.7 江戸時代の長屋の一間
fig.4-1.8 京都の町屋
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食空間の変遷
4 4-1.1 住宅の変遷
fig.4-1.9 は大正時代の日本の伝統的な住宅の間取りである。一般 的な家庭の住宅でもふすまや障子で部屋をいくつかに仕切られてお り、床の間や仏壇のある茶の間、客間など部屋ごとに用途が異なっ ている。住宅一戸に対して、土間の占める割合は大きく、様々な作 業を土間で行なっていた。居室は、寝る、くつろぐ、来客をもてな す、などの用途に絞られて、生活のための仕事をする部分と分けら れていた。 この時代は、まだ住宅ひとつひとつに水を引いてくることができ なかったので、近くの井戸や川から水を汲んできて、家の中につく られた流しで柄杓ですくって使っていた。洗面台と台所などと分か れてはいないので、水場は流しとお風呂だけであった。
fig.4-1.9 大正時代の日本家屋
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食空間の変遷
4 4-1.1 住宅の変遷
サツキとメイの家の
明治時代に起こった文明開化によって、一部の富豪の住宅は、西
つくり方
洋化したり、一部西洋の様式を取り入れ板の間の部屋があり、縁側
( ぴ あ 出 版 ,2005/10 スタジオジブリ 編集 )
や畳など部分的に日本住宅の様式を残した住宅が一般の市民にも浸 透し始めていた ( トトロに出てくる主人公たちの住む家は昭和 10 年頃に造られた、築約 25 年の家と想定、写真はそれを復元したも
サツキとメイの家
のである fig.4-1.10~12) が、ほとんどの庶民の住宅は明治時代以前
スタジオジブリの作
の様式のままであった。fig.4-1.13 は昭和初期の一般市民の住宅で
品、 『となりのトトロ』 の主人公たちの住む 家である ( 愛知万博 「愛・地球博」の時に
あるが、江戸時代の町屋や長屋の住宅様式とあまり変わりがないよ うに見える。昭和の住宅のひとつの大きな変化としては、台所が土 間から板の間へ上がったことである。
建てられたもので現 在 も 同 所「 モ リ コ ロ パ ー ク 」 に 有 り、 観 覧できる ) http://www.aichitoshi.or.jp/park/ park(HP)/morikoro/ riyouannai/shisetsu/ satsukitomei/index. html
fig.4-1.10 昭 和 30 年 代 ( 築 25 年 程 度 と 想 定 ) の借家をモデルにしたサツキとメイの家の復元
fig.4-1.11 昭和 1 0年代の住宅 世界の台所博物館
( サツキとメイの家 ) の間取り
( 宮崎玲子 , 柏書房出 版 ,1988.12) fig.4-1.12 昭和 1 0年代の住宅 ( サツキとメイの家 ) の台所
fig.4-1.13 昭和初期のサラリーマンの住宅
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食空間の変遷
4 4-1.1 住宅の変遷
「51C」 家 族 を 容 れ る ハコの戦後と現在
現代の日本住宅の基本は、戦後の住宅から始まっている。戦後、 人口の大都市集中と住宅不足に応えて公共集合住宅のための住宅プ ランが考案された。1951 年の「51」と考案された A~C プランの うちの採用されたタイプ「C」を用いて、 「51C」と呼ばれる一般住 宅の 2DK のプランである (fig.4-1.14)。この時代にたくさん建てら れたアパート建築とともに、日本の nLDK スタイル (fig.4-1.15) の
五一 C 白書 - 私の建
住居が広まったと言われている。
築計画学戦後史
fig.4-1.14 アパート建築のために考案されたプラン
fig.4-1.15 復元された晴海高層アパート 1958 年 ( 昭和 33 年 )
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食空間の変遷
4 4-1.1 住宅の変遷
戦後のアパート建築から始まった2DK スタイルは、若い主婦の 憧れという形で流行となっていったと言われる。これは核家族化の 始まりでもあり、 「団地妻」という言葉が流行ったように、若い夫 婦がダイニングキッチンで自分たちだけの簡単な朝食を作って食べ るような生活が、欧米への憧れと混ざり合ってひとつのステータス となっていた。 その後、台所は冷蔵庫などの電化製品やシステムキッチンの登場 で様変わりをし、土間離れをする。また、ダイニングキッチンのス タイルは、住宅一戸の面積が広くなっていくと、LDK のスタイルへ と変化していく。LDK のスタイルでは、リビングとダイニング、そ して少し奥まってキッチンというそれぞれ別の部屋を作るプランが 増えていった。このような LDK スタイルは、集合住宅だけでなく、 戸建住宅 (fig.4-1.16) にも浸透していく。その流れとは逆に、学生 や単身赴任者用のアパートやマンションでは、ワンルームのプラン も登場する (fig.4-1.17)。近年のワンルームマンションでは、1K と 呼ばれる、リビングと寝室を兼ねた部屋と、玄関から部屋までの間 に小さめのシステムキッチンが置かれたキッチンの間があるプラン が一般化している。
fig.4-1.16 現代の戸建住宅の
fig.4-1.17 平成のワンルームマンションの
CG で作成された間取り
一室
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食空間の変遷
4 4-1.1 住宅の変遷
list.4-1.1 は戦後の日本住宅の変遷年表である。戦後の住宅難の時 代に生まれた nLDK の概念、気候や風土の異なる西洋建築の様式を 完全に真似るのでなく、日本住宅との融合をすることで日本の暮ら しにあった新しい住宅の形を考えていったその経過を示している。 list.4-1.1 戦後の日本住宅の変遷年表
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食空間の変遷
4 4-1.2 現代の日本の LDK
4-1.2 現代の日本の LDK 団地スタイルから生まれた nLDK プランは、当初、寝食を別の部 屋に分け、食をコンパクトに一部屋にまとめたダイニングキッチン のスタイルを目玉としていた。後に日本社会は、住宅難の時代を乗 り越え、アパートやマンションも面積を広く取るようになり、L,D,K それぞれの空間を豊かにするようになった。もともと日本には、客 間や茶の間という文化があったが、リビングとして、家族が集まり
LDKくつろぐ空間、 空間の遍歴そして時にはお客様をもてなす空間として、ソファー
やテレビなどを置かれた部屋を用意するようになった。キッチンは、 狭いダイニングキッチンのスタイルをやめ、作業場を広めに取るな ど空間を贅沢に使ったり、ダイニングやリビングの様子が見られる ように、カウンタースタイルのものや、アイランド型キッチンのよ うに空間をオープンにするものも現れた。 list.4-1.2 LDK の変遷 和・リビングスタイル
居間スタイル
LDK 一室スタイル
イメージ
L D K
土間スタイル 団地スタイル 年代
洋・リビングスタイル
1800 年代
1955 年頃
1975 年頃
(幕末以前)
(昭和 30 年頃)
(昭和 50 年頃)
K:キッチン D:ダイニング L:リビング n:個室 プランの変化
( 間取りはnLDK)
K 板の間 LD 居間・ちゃぶ台 畳 K n
n
土間
寝室
K
板の間
D
居間・ちゃぶ台 畳
L
ソファー 板の間 or 畳
K
テーブル・椅子で食事 板の間
DK 食事 L
テーブル・椅子で食事
L
ソファー フローリング
畳
n
板の間 居間 板の間 or 畳
カウンターやオープン
D
テーブル・椅子で
n 居間兼寝室
寝室
n 寝室 再び一室化
機能分離
のスタイル
L D K
板の間→フローリングへ
n 寝室
寝室兼食事 板の間 or 畳
DK
K
2000 年頃 (平成 12 年頃)
かつての日本では
キッチンが板の間
カウンターキッチンやオープン
キッチンは土間
になる
キッチンなどキッチンとダイニン グを分けないスタイルが増える
D
L
板の間で配膳をし、
戦後の団地の普及により
椅子に座って食事
畳の茶の間・居間で
ダイニングキッチンの
するのが主流になる
食事をとった
スタイルが流行る
ちゃぶ台をどけて
各個人の個室が寝室
応接間兼リビングなど
布団を敷いて寝る
となり、 居間で寝な
椅子に座ってテレビを見る
くなる
習慣が普及する 【参考】 51C- 家族を容れるハコの戦後と現在 五一 C 白書
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食空間の変遷
4 4-1.3 食空間の変遷
4-1.3 食空間の変遷 前述の中でも住宅の中で「食」に関する空間が常に中心となって きたことがわかる。また、前章で書いたように、食の空間とは、 「火 を使う所」「水を使う所」 「食糧を保管する所」そして、 「食べる所」 で構成されている。もともとそれらは、それぞれの特性によってば らばらの場所にあり、食生活のほとんどが “外” で行われていたが、 現代住宅では食生活のほとんどを家の “内” で行なっている。外の 自由な場であったものを建築の内側に取り込むことによって、建築 の一部となり、場所が固定されたものとなっていったともいえる。 日本の食の歴史の中で、空間の変化としては大きくふたつあげら れる。 1.外にあった食生活を家の内側に取り込んできた 2.場であった食空間は、道具化されることで場から離れ、“どこ でも” になってきた 以降ではこのふたつの変化を説明するために、日本の食空間の変遷 をまとめていく。
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-082-
食空間の変遷
4 4-1.3 食空間の変遷
<狩猟時代の食と食空間> 狩猟時代の食生活は、山や海、川など食糧のある所の近くに移り 住み、寝室だけの住居を建て、その日採って来た食糧を食いつなぐ ようなものであったと考えられている。集落の真ん中の広場に火を 焚く炉をつくり、人々はそこに集まって団欒の時を過ごしながら、 食事をしていた。火は生活の中心の場所であり、その周りで、調理 や道具の製作、食生活が行われていたと言われている。
fig.4-1.16 狩猟時代の生活の様子
今回の変遷をまとめる上で、 「火を使う所=火」 「水を使う所=水」 「食糧(を保管する所)=食材」そして、 「食べる所=食」を食の空 間として扱い、 「住居=住」として主に寝食をするところと定義する。 fig.4-1.19 は食材から食までの関係であり、fig.4-1.20 は住宅という 建築と食の空間の関係性を表すダイアグラムである。 食材
食材 食
食 住 寝
fig.4-1.19 食材と食の関係図
外
寝食をする道具を持ち歩いて移動 していた。そこから、住居や集落 ができ、寝食をする場所が決まり、 採ってきた食材を運び、調理して 食べるようになった。
食材 火
食 水
食材のある大自然の中を、人々が
火を使う場所は集落の中で決めら れた場所に炉を作って固定してい た。水は当時はまだ遠方まで運ぶ
内
技術はなかったので、川や海、泉
寝
など水がある場所の近くに集落を 築いた。
fig.4-1.20 食と建築の関係ダイアグラム
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食空間の変遷
4 4-1.3 食空間の変遷
<弥生時代~古墳時代の食と食空間> その後、稲作や畜産が盛んになってくると、食糧を保管しておく ための建築や、各家の中で火を焚いて食事をするようになっていっ た。食事が集落の中心から家庭の中心へと移っていったのはこの頃 である。弥生時代には、竪穴住居の真ん中に炉を置き、同じ家の人 達ごとに集まって食事をしていたと考えられている。これが古墳時 代になると、各家庭に壁に作り付けのかまどをつくるようになり、 壁の隅の方に調理道具や保存食品も並べ置くなどして、台所のよう な一画ができた。
fig.4-1.21 弥生時代の住宅の内部の様子 fig.4-1.22 弥生時代の調理の様子
fig.4-1.23 古墳時代のかまど 食材
食材
食材
高床式倉庫や納屋、 家 畜 小 屋 な ど、 食
食
食
食
住
住 寝
寝
糧を保管するため の建物がつくられ るようになったの はこの時代である。
fig.4-1.24 食材と食の関係図 ( 古墳時代まで )
外
食材 火
食 水
外
寝
食材 火
食 水
内
食材
かまど
内 火 寝
水 内 寝
fig.4-1.25 食と建築の関係ダイアグラム ( 古墳時代まで )
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食空間の変遷
4 4-1.3 食空間の変遷
<奈良、平安時代の食と食空間> その後、各家庭にひとつ土間があるのが一般的となり、住居建築 の中で必ず考えられるものとなっていった。最初は、すべて地面剥 き出しだった屋内空間も、ござなどを敷いて、土間と居間を分ける ようになり、後には、板の間や畳などの床もできてくる。この時代 では、貧富の差による住居の違いも大きく、郊外の庶民は平安時代 の末期でも、竪穴式住居に住んでいる人も多かったと思われる。し かし、都である京都の町などでは、木造建築の技術も進み、土間の 台所が整っていたようだ。この頃の食事では、食卓はなく、床にお ぼんを置き、その上にお皿を並べて食べるか、宮中などでは台盤所 と呼ばれる一人用の四足のおぼんを用いていた。食べる空間と、調 理や盛り付けをする空間が分けられ、食事の準備をする場に空間が 与えられたのがこの時代である。
fig.4-1.26 平安時代の農家 fig.4-1.27 平安時代の庶民
fig.4-1.28 平安時代の宮中の
の台所
台所の様子
の台所の様子
食材
食材
食材
食材
調理 食
食
食
住
食
住
住
寝
寝
寝
fig.4-1.29 食材と食の関係図(平安時代まで)
外
食材 火
食 水
外
寝
食材
食材 火
食 水
内
食材
かまど
内 火
水
寝
水
火
水
井戸
内
内 寝
寝
fig.4-1.30 食と建築の関係ダイアグラム(平安時代まで) この時代では建築を建てるときに、ただかまどを作るのでなく、調理をする空間を設計段階で考えてい たと考えられる。また、井戸は古事記などにも出てくることから、古墳時代以降にはあったと考えられ ており、人工的に水の確保ができるようになった時代とも言える。
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食空間の変遷
4 4-1.3 食空間の変遷
<鎌倉時代から江戸時代の食と食空間> 鎌倉時代には、庶民の住宅も、土間と畳や板の間の居間が分けら れるようになり、かまどのある土間が「おかって」などと呼ばれて 調理をする空間として定着するようになった。また、東北の方など 寒い地域では、かまどではなく部屋の真ん中に炉を置く囲炉裏のス タイルが普通であったが、鎌倉時代頃から、どちらもあるという家 が増えてきている。季節ごとや食事のメニューごとに囲炉裏とかま どを使い分けていたようだ。また江戸時代の後期から明治時代頃 に、裕福な家庭から順にかまども、板の間にあげられるようになっ ていった。 前項で江戸時代の江戸の長屋、京都の町屋のことを説明したが、 江戸時代ではほとんどの庶民の住宅に台所設備が揃っていたと思わ れる。ただし、水道のように各家庭に水を引くことができるように なったのはまだ先のことなので、当時は外の井戸から水を運び、家 の中に作られた流しの上で水を使っていた。日本では、水を使うと きに屋外や土間に直接流すのでなく、 「流し」が作られるようになっ たのはこの時代である。
fig.4-1.31 鎌倉時代の台所
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fig.4-1.32 江戸時代の町屋の台所
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食空間の変遷
4 4-1.3 食空間の変遷
食材
食材 食
食材
食
食
住
住 寝
寝
食材
食材
調理
調理
食
食 住
住 寝
寝 fig.4-1.33 食材と食の関係図 ( 江戸時代まで )
外
食材 火
食 水
外
寝
食材 火
食 水
内
食材
かまど
水
内 火
内
寝
寝
火 水 食材保存
食材 水
火
水
井戸
内
内 寝
寝
fig.4-1.34 食と建築の関係ダイアグラム ( 江戸時代まで )
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食空間の変遷
4 4-1.3 食空間の変遷
<昭和から現代まで> 江戸時代に台所の原型は完成しており、日本料理のメニューのほ とんども江戸時代に完成を迎えていた。調理方法の基本も、江戸時 代の頃からあまり変わってはいないだろう。 しかし、現代と江戸時代では食の形が大きく異なっている (fig41.35)。まず、 システムキッチンの導入がある。これは、 これまで「か まど=火」「流し=水」 「倉・納屋・土間=食糧保管、調理道具の保 管」とばらばらであったものがまとめられて一つの道具となったも のである。そして、もう一つの大きな変化は、冷蔵庫の導入である。 まず氷を利用した冷蔵庫が現れ、そして電気を利用して人工的に保 冷出来る技術が生まれて現代のような電化製品としての冷蔵庫が現 れた (fig.4-1.36)。台所の様相の変化はほとんどこのふたつで言い 表すことができる。
fig.4-1.35 昭和から現代までの台所の様相の変化
fig.4-1.36 冷蔵庫の変化
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食空間の変遷
4 4-1.3 食空間の変遷
また、食自体の変化としては、文明開化による西洋風メニュー (fig.4-1.37) の到来や工場などで既に加工された食材 (fig.4-1.38) を 食べることが増えたことであるが、これらはまとめて、 「食材加工 方法の変化」と捉えることが出来る。食材の最初の状態から実際に 食べるまでの過程 (fig.4-1.39) に、食材を育てるところ、加工する ところ、まとめて売るところ、調理するところという様にさまざま な施設を経て家庭に入ってきていることがわかる。
fig.4-1.37 西洋の食文化の導入
fig.4-1.38 加工食品
食材
販売
加工
調理
fig.4-1.39 食材を食べる前までの過程
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食空間の変遷
食
4-1.3 食空間の変遷
食材
食材
食材
食
食
住
住 寝
寝
食材
食材
食材
加工
調理
調理
食
調理
食 住
住
食 住
寝
寝
寝
fig.4-1.40 食材と食の関係図 ( 現代まで )
外
食材 食
水
食材
外
火
食
かまど
水
内 火
寝
内
寝
火
寝
火 水 食材保存
食材 水
食材 火
水
内
4
火 水 食材保存 冷
水
井戸
内
内
内 寝
寝
寝
fig.4-1.41 食と建築の関係ダイアグラム ( 現代まで )
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-090-
社会統計の調査
社会統計の調査
5
5
現代日本の台所事情の調査
5-1
家での過ごし方について
5-1.1
アンケート回答者の家について
5-1.2
家の食糧保管状況について
5-1.3
日本の台所事情の分析
5-1.4
社会生活調査
5-2
社会調査からわかる 現代の食生活習慣
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5-3
産業と食
5-3.1
料理について
5-3.2
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社会統計の調査
5 5-1. 現代日本の台所事情の調査
5-1. 現代日本の台所事情の調査
現代の日本の台所事情を調べるためのアンケートを行った。 タイトル : 家庭の食の場についてのアンケート 期間 :10 月 3 日〜 14 日 回答者数 :109 名 ( 総データ数 1966) 回答者の年齢 :10 代後半〜 50 代まで 内容 : 1. アンケート回答者の家での過ごし方について 2. アンケート回答者の家について 3. 家の食糧保管状況について ( 常識調査 ) ※アンケートは資料編に本文を添付する 1あなたのお家での過ごし方を教えて下さい。 ( 一人暮らしの方は実家や他の人と共同で暮らす家での過ごし方に ついて教えて下さい ) ○料理の頻度について ( ほぼ毎日・週に3、4回・週に1、2回・ 月に1回以上・年に何度か・なし ) ○料理のレベルについて ( 食材から調理・インスタント料理・出来 合いのもの・料理しない ) ○家族で一緒に食事を食べることはどのくらいあるか ( ほぼ毎日・週に3、4回・週に1、2回・月に1回以上・年に何度か・ なし) ◯家族との仲の良さ ○家族で机を囲んで、テーブルの上で熱を使う料理を食べたことが あるか ( 月に1度以上する・年に二回以上する・数年に一度する・自分ま たは子供が小さい頃はあった・人生で1, 2回だけしたことがある )
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社会統計の調査
5 5-1. 現代日本の台所事情の調査
2あなたのお家の様子についてお伺いします。 ○キッチンのレイアウト (I 型・二列型・L 型・U 型 ( コの字型 )・ アイランド型 ) ○キッチンの種類 (IH・ガスコンロ・電熱コンロ・その他 ) ◯家にある電化製品 ( 電子レンジ・オーブントースター・ティファー ルのようなポット・炊飯器・カセットコンロ・ホットプレート ) ○家のレイアウト 玄関の位置はどこですか? ( 北・北東・東・南東・南・南西・西・北西・ その他 ) キッチンの場所はどこですか? ( 北・北東・東・南東・南・南西・西・ 北西・真ん中 ) 3あなたのお家の食糧の保管についてお聞きします。 ◯食糧の保管場所について(冷蔵庫・床下収納庫・システムキッチ ンの天井吊りキャビネット・システムキッチンのキャビネット下・ ワゴンや食料棚・食料庫が別にある) ○冷蔵庫の大きさ ( 冷蔵室がある・4〜5人以上用の大きいもの・ 2〜3人用の少し小さめのもの・1人用で1ドアなどのかなり小さ いもの・冷蔵庫はない ) ○今の暮らし方に対して冷蔵庫は十分な大きさですか? ( 大きすぎる・ちょうどいい・小さすぎる ) ○各ものの保管場所は、冷蔵か常温か ほうれん草・レタス・じゃがいも・さつまいも・タマネギ・お茶葉・ はちみつ・米・醤油・食用油・植物の種・接着剤 ◯それぞれの正しい保存方法は知っていたか ◯収納に困っているものはあるか ( 野菜類、調味料類、肉や魚類、惣菜類、つまみや漬物など、麺類、米、 パン、アイス類、冷凍食品類、常温保存のインスタント食品、お酒 類 ( ビン )、お酒類 ( 缶など )、お酒以外の飲み物類 )
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社会統計の調査
5 5-1. 現代日本の台所事情の調査
アンケートはインターネット上のサイトで行い、不特定多数の方 に回答をいただいた。回答者の年齢分布は以下の list.5-1.1 のよう になっており、偏りはあるものの、幅の広い年代から回答をいただ いている。 list.5-1.1 回答者の年代分布
fig.5-1.1 回答者の年代分布
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社会統計の調査
5 5-1.1 家での過ごし方について
5-1.1 家での過ごし方について 家で行われる料理の頻度について聞いた (fig.5-1.2)。これは、自 分が料理をする回数でなく、家の中で誰かが料理をしていれば含ま れるものとする。毎日二回以上と答えた人が半数には満たないもの の一番多く、ほとんどの家庭で毎日料理が行われていることがわか る。外食産業が発達したといっても、家庭と食の結びつきは深いも のであるといえるだろう。しかし、その料理の内容は (fig.5-1.3)、 出来合いのものを買ってくるというのが一番多くなった。複数回答 であるため、料理の種類の割合を示すグラフではないが、ほとんど の人が家庭での料理を “買ってきたものですます” ということをし たことがあるようだ。 list.5-1.2 家で行われる 料理の頻度
list.5-1.3 家で食べる
fig.5-1.2 家で行われる料理の頻度
料理の種類について
fig.5-1.3 家で食べる料理の種類について
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社会統計の調査
5 5-1.1 家での過ごし方について
家族での食卓の様子について聞いた。生活の中での食といえば、 家庭の象徴のように扱われているが、女性の社会進出や外食や一人 前のインスタント食品が出回っている現代ではどうなのだろうか。 まず、家族の仲の良さについて回答者の主観で答えてもらったと ころ、仲が良くないと思うと答えた人は8名であり、それ以外の人 は、とても・まあまあ仲がいいと思うと答えており、家族仲が家族 で食卓を囲まない理由になりそうな回答者は約1割である。家族 揃って食事を食べる頻度は、約8割の人が週に1度は食べると答え ている。毎日一度以上は食事に家族が揃うと答えた人が4割程度も いるということも驚きである。食=家族の団欒というイメージは、 未だ現実のものであるといえるだろう。 list.5-1.4 家族の仲の良さについて
fig.5-1.4 家族の仲の良さについて list.5-1.5 家族揃って夕食を食べる頻度
fig.5-1.5 家族揃って夕食を食べる頻度
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社会統計の調査
5 5-1.1 家での過ごし方について
家族で食卓を囲い、テーブルの上で調理をしながらする食事の頻 度を聞いたもの (fig.5-1.6) である。例えば、ガスコンロや IH ヒー ター、ホットプレートなどを用い、テーブルの上で焼肉やお好み焼 き、しゃぶしゃぶなどを調理しながら、家族でつつきながら食べる 食事のことを意味している。 この質問の回答はほとんど、 「月に一回以上する」 「年に二回以上 する」に集中した。日々の普通の食事では、キッチンを使った料理 や買ってきた簡易料理を並べて食べるということがほとんどだが、 年間定期的に家族でイベントのようにこのような食事をするのだと 考えられる。また、 「数年に一度」 、 「自分や子どもが小さい頃はし ていた」と答える人もおり、昔と比べてー家族の人数が少なくなり 兄弟も少ないため、このような食事が盛り上がらないことも考えら れるなど、家族の年齢などの家族構成も重要になってくるといえそ うだ。 list.5-1.6 テーブルの上で家族で 囲んでの調理
fig.5-1.6 テーブルの上で家族で囲んでの調理
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社会統計の調査
5 5-1.2 アンケート回答者の家について
5-1.2 アンケート回答者の家について アンケート回答者のご家庭の様子について調べたものである。ま ず、回答者各家庭のキッチンのタイプについてきいた。キッチンの レイアウトのタイプ (fig.5-1.7) は、マンションなどでは大抵の場合 もともと備えついているものであり、部屋のレイアウトに合わせて 決められたものがほとんどであるので、汎用性の高い「I 型」が約 70%も占めている。次に「L 型」 、 「二列型」と続くが、部屋のレイ アウトに収まりの難しい、型はあまり使われていないことがわかる。 数年前から “デザイン性” を売りとしている「アイランド型」も 2% にとどまっている。 「アイランド型」のような自由なキッチン空間 の使い方が普及することで、食事の形ももっと自由に変わってくる と考えられるだけに、これはとても残念な事であるといえる。また、 コンロのタイプでは (fig.5-1.8)、IH コンロも数年前から騒がれてき ているものの、実際に家庭内で使用しているのは 15%にとどまり、 まだまだ家庭内で火を使うという固定的なキッチンのスタイルが定 着していることが明らかとなった。 list.5-1.7 回答者のご家庭の
list.5-1.8 回答者のご家庭の
キッチンレイアウトタイプ
キッチンのコンロのタイプ
fig.5-1.7 回答者のご家庭の
fig.5-1.8 回答者のご家庭の
キッチンレイアウトタイプ
キッチンのコンロのタイプ
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社会統計の調査
5 5-1.2 アンケート回答者の家について
ご家庭にある電化製品の調理道具についてきいたものである (fig.5-1.9)。電子レンジと炊飯器はほぼ 100%の普及率であり、今 や家庭の食事には欠かせないものだといえそうだ。また、テーブ ルの上で調理できるホットプレートやカセットコンロの普及率も 60%を超えており、固定的なキッチンから離れた料理の形がもっ とあるのではないかと考えられる。 list5-1.9 キッチン家電製品の普及率
電子レンジ
炊飯器
オーブントースター
ガスコンロ
ポット
ホットプレート
fig.5-1.9 キッチン家電製品とその普及率
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社会統計の調査
5 5-1.2 アンケート回答者の家について
かつて、日本の住宅には、風水などの決まりごとによって、方位 と家のレイアウトが決められていた。現代の住宅では宗教的な方位 のきまりなどは薄れ、自由なレイアウトが増えてきているが、マン ションなどでは日光の関係などからある程度決められたレイアウト になりがちでもある。下記の list5-1.10~11 と fig.5-1,10~11 は回答 者のご家庭のレイアウトについてきいたものである。 list5-1.10 家庭のレイアウト
list5-1.11 家庭のレイアウト
玄関のある方位
キッチンのある方位
fig.5-1.10 家庭のレイアウト内で玄関のある方位
fig.5-1.11 家庭のレイアウト内でキッチンのある方位
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社会統計の調査
5 5-1.2 アンケート回答者の家について
回答者に家の中の食糧保管場所についてきいた (fig.5-1.12)。現 代の住宅においてあって当たり前であり、普及率もほとんど 100% の電化製品である冷蔵庫は、回答者の全員が食糧保管場所としてあ げた。冷蔵庫だけでなく、ワゴンやシステムキッチンについている キャビネットなど、常温で保存する場所も確保している家庭が多い ようだ。現代住宅において、食料庫が別にあるという家庭が1割を 超えたことは驚きであったが、冷蔵庫やスーパーマーケットに頼り がちな現代においては “食糧保管” に重点を置いて住宅設計をして いることはとても重要なことであると思われる。 list5-1.12 家の中の食糧保管場所
ワゴン
キッチンキャビネット
床下収納庫
fig.5-1.12 家の中の食糧保管場所
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社会統計の調査
5 5-1.3 家の食糧保管状況について ( 常識調査 )
fig5-1.13~14 は、回答者の全員が食糧保管場所として利用してい ると答えた「冷蔵庫」についてきいたものである。ほとんどの家庭 で一般的に家電量販店に売っている大きいサイズの冷蔵庫を使って いるようだ。一人暮らしの家などでは、2〜3人用のサイズの少し 小さめのものが多く使われている。回答者全体の中では、ちょうど いいと感じている人がほとんどのようだ。冷蔵庫は、住宅設計の中 で備え付けられているものではなく、家族で新たに購入するものな ので、大抵の場合はその時に必要なサイズを購入しているため、ちょ うどいいという回答が多くなったのだと思われる。しかし、近年の 新しい冷蔵庫のコマーシャルなどでは、 「よりたくさん収納できる ように」というコンセプトで作られている商品が多いように思われ る。本当にどのくらいそのような需要があるのか、考えるべきだろ う。 list5-1.13 家庭で使っている 冷蔵庫の大きさ
list5-1.14 冷蔵庫は十分な大きさか
fig.5-1.14 冷蔵庫は十分な大きさか
fig.5-1.13 家庭で使っている冷蔵庫の大きさ
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社会統計の調査
5 5-1.3 家の食糧保管状況について ( 常識調査 )
5-1.3 家の食糧保管状況について ( 常識調査 ) 食糧保存についての常識の調査を行った。レタス・ほうれん草・ タマネギなど、家庭にあると思われる下記の 12 個のもののうち、 fig5-1.15 は普段冷蔵保存しているものを選んでもらったもので、 fig5-1.16 は普段常温保存しているものを選んでもらったものであ る。「レタス」と「ほうれん草」は、冷蔵保存しているものだと答 えた人が約9割おり、常温保存していると答えた人が 3%に満たな いことから、ほとんどの人が冷蔵保存するものだと認識しているこ とがわかる。 「食用油」 「米」については逆にほとんどの人が常温保 存するものだと認識していることがわかる。一方「タマネギ」 「じゃ がいも」 「醤油」などはどこの家庭にも必ずあるものだと思われるが、 冷蔵保存と常温保存で票が割れている。このように、保存について の常識は、家庭によって異なってしまっていることがわかる。正し い保存方法については、後述する。 list5-1.15 冷蔵保存しているもの
fig.5-1.15 冷蔵保存しているもの list5-1.16 常温で保存しているもの
fig.5-1.16 常温で保存しているもの
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社会統計の調査
5 5-1.3 家の食糧保管状況について ( 常識調査 )
fig.5-1.17~18 は前述の保存方法についてのアンケート結果を正 誤別にグラフ化したものである。ほとんど冷蔵庫頼りだと思われて いた、現代の食糧保存の実態は、意外にも常温保存しているものが 多いことがわかる。本来冷蔵したほうがいいものも、常温保存する ことが常識となってしまっているようだ。 fig5-1.19 は正しい保存方法をわかっていたかどうかたずねたも のである。わからないと答えた人のほうが多く、 「わからないけど 気にならない」と答える人が 20%もいるなど、食糧保存について あまりちゃんと考えていない人が多いということがわかる。 list5-1.17 冷蔵保存しているもの ( 正誤別 )
fig.5-1.17 冷蔵保存しているもの ( 正誤別 ) list5-1.18 常温で保存しているもの ( 正誤別 )
fig.5-1.18 常温で保存しているもの ( 正誤別 ) list5-1.19 正 し い 保 存 方 法 を わかっていたか
fig.5-1.19 正しい保存方法をわかっていたか
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-105-
社会統計の調査
5 5-1.3 家の食糧保管状況について ( 常識調査 )
回答者のご家庭内で収納に困っているものを下記の 14 個の中か ら選んでもらった。fig5-1.20 はそれぞれのものについて収納に困っ ていると答えた回答者の割合を示すグラフである。 「調味料」の収 納場所に困っているという答えが一番多く、約 30%程度であった。 常温で保存しているという回答が多かった「調味料」や「常温保存 のインスタント食品」など、冷蔵庫以外の常温のまま保存できる場 所が足りていないという人が多いようだ。全体として、困っている ものが回答者ごとにバラけている印象で、それぞれの家庭の食事情 や生活の様子などによってニーズが異なるといえそうだ。 list5-1.20 家庭で収納に困っているもの
fig.5-1.20 家庭で収納に困っているもの
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-106-
社会統計の調査
5 5-1.4 日本の台所事情の分析
5-1.4 日本の台所事情の分析 この調査では、それぞれの家庭の間取りを描いてもらうことがで きなかったため、家の中の大体の位置関係を知るために「玄関の場 所」と「キッチンの場所」について尋ねた。以下のグラフを見る限 りでは、方位によって多少の偏りはあるものの、特に固定的なレイ アウトは見られない。 list5-1.21 玄関・キッチンの場所
fig.5-1.21 玄関・キッチンの場所
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-107-
社会統計の調査
5 5-1.4 日本の台所事情の分析
以降に示すグラフ (fig.5-1.22~30) は、玄関の位置に対するキッ チンの位置の割合である。キッチンの向きではなく、家のレイアウ トに対してキッチンのある位置である。 玄関の位置が東西南北のように方位に対してきっちりと向きが決 まっている家のレイアウト (fig.5-1.22,24,26,28)) では、キッチンの 位置は「北」が多くなっている。北側は、太陽が差し込まないため、 南側に大きな採光用の窓を切り取りその明るい空間を、リビングや 居室とし、反対側をキッチンなど大きな窓を必要としないゾーンと する事が多いのだと考えられる。また、夏場でも、南側よりも北側 の方が涼しいため、食糧が腐らないように涼しい北側にキッチンを 設置しているとも考えられる。逆に玄関の位置が東西南北にきっち り定まっていない家のレイアウト (fig.5-1.23,25,27,29) では、キッ チンが「北」に来ているものはひとつもない。この場合では、 「北東」 と「南西」に多いようだ。 また、玄関の位置とキッチンとの関係で、方位的な遠さを考慮に 入れてみたが、玄関の位置とキッチンの位置が同じ方位という家も 珍しくないようだ。北が玄関の家では (fig.5-2.22)、キッチンも北 にあるという家が一番多くなっている。他の方位を見てみても、 キッ チンと玄関は近くにある家は多そうである。 古く風水などで言われてきた場所としては、 「南西」のキッチン は大凶であり、 「南東」のキッチンはとてもよいとのことであるが、 この調査を見る限りでは現代の住宅において、ほとんど方位とレイ アウトは関係をもたないようだ。
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社会統計の調査
5
list5-1.22 玄関が北の時のキッチンの場所
fig.5-1.22 玄関が北の時のキッチンの場所 list5-1.23 玄関が北東の時のキッチンの場所
fig.5-1.23 玄関が北東の時のキッチンの場所 list5-1.24 玄関が東の時のキッチンの場所
fig.5-1.24 玄関が東の時のキッチンの場所 list5-1.25 玄関が南東の時のキッチンの場所
fig.5-1.25 玄関が南東の時のキッチンの場所 list5-1.26 玄関が南の時のキッチンの場所
fig.5-1.26 玄関が南の時のキッチンの場所
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社会統計の調査
5
list5-1.27 玄関が南西の時のキッチンの場所
fig.5-1.27 玄関が南西の時のキッチンの場所 list5-1.28 玄関が西の時のキッチンの場所
fig.5-1.28 玄関が西の時のキッチンの場所 list5-1.29 玄関が北西の時のキッチンの場所
fig.5-1.29 玄関が北西の時のキッチンの場所 list5-1.30 玄関が特に方位なしの時のキッチン の場所
fig.5-1.30 玄関が特に方位なしの時のキッチンの場所
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-110-
社会統計の調査
5 5-1.4 日本の台所事情の分析
fig.5-1.31 家庭で使っている冷蔵庫の大きさごとの、実際に冷蔵 庫の大きさをどのように感じているか、をまとめたグラフである。
list5-1.31 家庭で使っている冷蔵庫の大きさ
小さすぎ る 0%
と実際に使っていての大きさの感想
ちょうど いい 0%
大きすぎ る 100%
大きすぎ る 12% 小さすぎ る 19% ちょうど いい 69%
小さすぎ る 7%
大きすぎ る 5%
ちょうど いい 88%
小さすぎ る 0%
大きすぎ る 0%
ちょうど いい 100% fig.5-1.31 家庭で使っている冷蔵庫の大きさ と実際に使っていての大きさの感想
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社会統計の調査
5 5-1.4 日本の台所事情の分析
アンケート結果では、冷蔵庫の大きさを「ちょうどいい」と思っ ている人が多く、冷蔵庫に不満を持つ人が少ないことがわかってい る。その中で、冷蔵庫のサイズごとに、感想が異なると考え、分け て分析した。結果として、n数の少ない「1人用の小さいもの」と 「食料庫がある」という回答の中では傾向と呼べるものではないの で、「2〜3人用」と「4〜5人用」の冷蔵庫を使っていると回答 した人について述べる。 「2〜3人用」と「4〜5人用」では、 「4〜5人用」の方が不満 が少ないことが分かる。しかし、 「小さすぎる」 「大きすぎる」の両 方共の不満が同じくらいであることから、実際の大きさと、感想と はあまり相関がないと思われる。 「2〜3人用」で大きすぎると答 えるひとがいることや「4〜5人用」で小さすぎると答える人がい る。冷蔵庫は生活者が各自で自分で購入する場合が多いため、基本 的には生活に合ったものを購入するので不満が少ないのだと思われ るが、どこの家庭でも平均した使い方があるわけではなく、家庭に よって必要な容積が大きく異なっていることがわかる。 「1人用の とても小さいもの」を使っている人が、 「小さすぎる」ではなく、 「大 きすぎる」と答えていることも注目すべきことである。 冷蔵庫のメーカーでは、よりコンパクトに、より多くのものが入 る冷蔵庫の開発に尽力しているようだが、もっと大きい冷蔵庫が欲 しいと言っている人の数を考えると、人々のニーズとは合っていな いと思われる。
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-112-
社会統計の調査
5 5-1.4 日本の台所事情の分析
次に、料理をする頻度と、実際に使っている冷蔵庫の大きさ、冷 蔵庫の大きさに関する感想、の比較を行う。 冷蔵庫の大きさは、料理をする頻度が高いほど、大きいものを使っ ていることがわかる。しかし、冷蔵庫がある場合は、料理の頻度が 高いとはいえないようだ。今回の調査では冷蔵室のある家というn 数が少なかったので、必ずしも、この結果のように冷蔵室を使って いる家では料理頻度が少ないということはできない。 また、この調査の結果によると、料理の頻度が高いほど、冷蔵庫 のサイズを正しく用意していることが多いようで、そのサイズは、 4〜5人程度が多い。これは、4〜5人用タイプの冷蔵庫は2世代 にまたぐ家族などが多く、主婦が毎日料理を行なっているような家 庭が多いからだと思われる。また、 「週に1,2回」 、 「月に一回」程 度しか料理を行わない家庭では、冷蔵庫が大きすぎるという意見も 多くなっている。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-113-
社会統計の調査
5 5-1.4 日本の台所事情の分析
冷蔵室、 冷暗室が ある 3%
list5-1.32 家で行われる料理の頻度と
1人用で 2∼3人
冷蔵室、
list5-1.33 家で行われる料理の頻度と 1ドアな 用の少し 冷暗室が どのかな
ある 小さめの 実際に使っていての大きさの感想 り小さい
使っている冷蔵庫の大きさ
3%
冷蔵室、 1人用で 冷蔵室、 1人用で 冷暗室が 1ドアな 冷暗室が 1ドアな ある どのかな ある どのかな 4∼5人 0% 0% り小さい り小さい 以上用の もの もの 大きいも 0% の0% 90% 冷蔵室、 1人用で 1ドアな 冷暗室が ある 4∼5人 4∼5人 どのかな 以上用の 以上用の 0% り小さい 大きいも 大きいも もの 大きすぎ 小さすぎ の 0% の る る 84% 84% 5%2∼3人 1人用で 2% 冷蔵室、 冷蔵室、 1人用で 1ドアな 用の少し 冷暗室が 冷暗室が 1ドアな どのかな 小さめの ある 4∼5人 ある どのかな り小さい 3% もの 以上用の 7% 0%もの り小さい 大きいも 0% 小さすぎ のもの 0% る 67% 4∼5人 10% 以上用の 大きいも 4∼5人 の 以上用の 90%
毎日二回以上 冷蔵室、 冷暗室が ある 3%
1人用で 2∼3人 1ドアな 用の少し どのかな 小さめの り小さい もの もの 7% 0%
ほぼ毎日一回程度
2∼3人 用の少し 小さめの もの 33%
2∼3人 用の少し 小さめの もの 31% 大きすぎ る 11%
小さすぎ ちょうど 大きすぎ る いい 44% ちょ る 79% い 15% 56 小さすぎ る 0%
大きすぎ る
1人用で 1人用で 2∼3人 2∼3人 0% 大きすぎ 小さすぎ 冷暗室が 冷暗室が 1ドアな 1ドアな 用の少し 用の少し る る ある ある どのかな どのかな 小さめの 小さめの 5% 2% 0% 0% り小さい り小さい もの もの もの もの 16% ちょうど 16% 小さすぎ 0% 0% いい
ちょうど いい 85%
大きすぎ る 79% 44% ちょうど る いい 56%
1人用で 冷蔵室、 ほぼ毎日一回程度
大きすぎ 冷蔵室、 1人用で 1人用で 小さすぎ冷蔵室、 冷暗室が る 1ドアな 1ドアな る 冷暗室が ある 5% どのかな どのかな 2% ある 0% 0% り小さい り小さい もの もの 0% 0%
2∼3人 2∼3人 用の少し 用の少し 小さめの 小さめの もの もの 16% 16%
週に3,4回
1人用で 冷蔵室、 1ドアな 小さすぎ冷暗室が ある どのかな る 0% り小さい 10% もの 0%
1ドアな 冷暗室が 小さすぎ ある どのかな る 0% り小さい 10% もの 0%
2∼3人 用の少し 大きすぎ 小さめの る 11%もの 33%
ちょうど いい 79% 冷蔵室、 1人用で 週に3,4回 1ドアな 冷暗室が大きすぎ ある どのかな る 0% り小さい 0% もの 0%
4∼5人 以上用の 大きいも の 69%
4∼5人 以上用の 大きいも の 67%
週に1,2回
ちょうど いい 79%
1人用で 冷蔵室、 1ドアな 冷暗室が ある 大きすぎ どのかな る 0% り小さい 0% もの 0%
2∼3人 用の少し 小さめの もの 31%
小さすぎ る 44% ちょうど いい 56%
fig.5-1.32 家で行われる料理の頻度と 大きすぎ
使っている冷蔵庫の大きさ る 15%
小さすぎ る 0%
2∼3人 用の少し 大きすぎ 小さめの る もの 11%33%
ちょうど いい 85%
4∼5人 以上用の 大きいも の 67%
4∼5人 4∼5人 以上用の 以上用の 大きいも 大きいも の の ちょうど 84% 84% いい 93%
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
2∼3人 2∼3人 用の少し 用の少し 小さめの 小さめの もの もの 16% 16%
4∼5人 4∼5人 15% 以上用の 以上用の 大きいも 大きいも の 小さすぎ の 84% ちょうど 84% る いい 0% 93%
4∼5人 以上用の 大きいも の 90%
4∼5人 以上用の 大きいも の 69%
ちょうど 大きいも いい の 毎日二回以上93% 69%冷蔵室、 冷蔵室、
もの 7%
もの 0%
冷蔵室、 1人用で 冷蔵室、 1人用で 冷暗室が 1ドアな 冷暗室が 1ドアな ある どのかな ある どのかな 4∼5人 0% 0% り小さい り小さい 以上用の もの もの 大きいも 0% 0% 冷蔵室、 1人用で の 冷暗室が 1ドアな 90% ある どのかな 4∼5人 4∼5人 0% り小さい 以上用の 以上用の もの 大きいも 大きいも 0% 大きすぎ の 小さすぎ の 1人用で 84% 84% る 冷蔵室、る 冷暗室が 1ドアな 5% 2% 4∼5人 ある どのかな 以上用の 0% り小さい 大きいも もの の0% 小さすぎ 67% る 10% 4∼5人 以上用の 大きいも ちょうど 大きす の いい る 69% 93% 0%
2∼3人 用の少し 小さめの もの 31%
小さすぎ る 44% ちょうど いい 56%
週に1,2回 大きすぎ る 15%
小さすぎ る 0%
ちょうど いい 85%
fig.5-1.33 家で行われる料理の頻度と 実際に使っていての大きさの感想
-114-
ちょうど いい 85%
5
社会統計の調査
5-1.4 日本の台所事情の分析
冷蔵室、 冷暗室が ある 8%
4∼5人 以上用の 1人用で 冷蔵室、 大きいも 1ドアな 冷暗室が ある どのかな の 0% り小さい 77% もの
冷蔵室、 1人用で
list5-1.32 家で行われる料理の頻度と
list5-1.33 家で行われる料理の頻度と 冷暗室が 1ドアな
使っている冷蔵庫の大きさ
実際に使っていての大きさの感想 り小さい 8%
ある
どのかな もの 7%
1人用で 冷蔵室、 1ドアな 冷暗室が 4∼5人 ある どのかな 以上用の 0% り小さい 大きいも もの の 0% 77% 1人用で 冷蔵室、 4∼5人 1ドアな 冷暗室が 以上用の どのかな ある 大きすぎ 大きいも 1人用で り小さい 冷蔵室、 る 0%1ドアな の 冷暗室が もの 4∼5人 どのかな ある 100%15% 0% 以上用の り小さい 8% 大きいも もの 小さすぎ 7% の る 33% 8% 4∼5人 小さすぎ 以上用の 大きいも る の 0% 77%
月に一回以上
月に一回以上
冷蔵室、 冷暗室が ある 8%
1人用で 1ドアな どのかな り小さい もの 7%
2∼3人 用の少し 小さめの もの 8%
2∼3人 用の少し 小さめの もの 0%
小さすぎ る 0%
2∼3人 用の少し 小さめの もの 8%
大きすぎ る 0%
2∼3人 用の少し 小さめの もの 67%
年に何度か
ちょうどい い 67%
ちょうど いい
ちょうど いい ちょうどい 77%
い 67%
年に何度か
大きすぎ る 1人用で 15% 冷蔵室、 1ドアな 冷暗室が ある どのかな 小さすぎ 0% り小さい る 8%もの 0%
小さすぎ る 0% 1人用で 冷蔵室、 1ドアな 冷暗室が どのかな ある り小さい 0% もの 4∼5人 以上用の 0% 大きいも の 33% ちょうど いい 100%
2∼3人 用の少し 小さめの もの 0%
ちょうど いい 77%
なし
大きすぎ る 0%
2∼3人 用の少し 小さめの もの 67%
なし 小さすぎ 大きすぎ る る 1人用で 冷蔵室、 0% 1ドアな 冷暗室が 0% どのかな ある り小さい 0% もの 4∼5人 0% 以上用の 大きいも の 33%
ちょうど いい 100%
大きすぎる 0%
小さすぎる 33% 2∼3人 用の少し 小さめの もの 67%
ちょうどい い 67%
fig.5-1.32 家で行われる料理の頻度と
fig.5-1.33 家で行われる料理の頻度と
使っている冷蔵庫の大きさ 大きすぎる
実際に使っていての大きさの感想
0%
小さすぎる 33%
ちょうどい い 67%
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
大きす る 0%
ちょうど 小さすぎる いい 33% 100%
77% 大きすぎる 大きすぎ 冷蔵室、 1人用で 2∼3人 る 0% 1ドアな 用の少し 15% 冷暗室が ある どのかな 小さめの 0% り小さい もの 小さすぎ 0% る もの 8% 0% 小さすぎる 4∼5人 100% 以上用の 大きいも の 100%
2∼ 用の 小さ も 0
ちょうど いい 大きすぎる 77% 0%
ちょうど 33% いい
4∼5人 以上用の 大きいも の 77%
4∼5人 以上用の 大きいも の 100%
2∼3人 用の少し 小さめの もの 8%
1人用で 0% 冷蔵室、 1ドアな 冷暗室が どのかな ある 4∼5人 り小さい 大きすぎ 0% 以上用の ものる4∼5人 大きいも 以上用の 0% の 15% 大きいも 100% の 小さすぎ 33% る 8%
1人用 1ドア どのか り小さ もの 7%
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社会統計の調査
5 5-1.4 日本の台所事情の分析
食品の保存方法についてきいたものである。 (fig.5-1.34)では、 正しい保存方法について知っていたかという質問に対して、 「わかっ ている」「わかっているつもり」 「わかっていない」と答えた人を分 けて分析している。 まず、冷蔵常温どちらも、 「わかっている」と答えた人よりも「わ かっているつもり」と少し自信がないと答えた人のほうが、正解率 が高くなってしまっている。正解率は冷蔵ではわかっていると答え た人は、52%、 常温では 49%であり、 この結果から、 半分くらいが“わ かっているつもりで間違っている” ということがわかる。 冷蔵保存のものに関しては、グラフの青が正解、赤が間違い=常 温で保存すべきもの、であるがが、間違いとして多いのはまず、じゃ がいもである。また、 「わかっている」と答えた人の中では、 「さつ まいも」については “常温で保存するもの” だと分かっているようで、 間違いの回答をした人はいなかった。 常温保存の場合では、正解率ではあまり差がでなかったものの、 間違った回答である “冷蔵保存すべきもの” である、ほうれん草、 レタス、タマネギについては、 「わかっている」と答えた人は全員 冷蔵保存すると答えており、自信が下がるについれて、この 3 つの 項目を常温保存だと答えている人が増えている。特に多い間違いと しては、「米」や「食用油」であり、これらは場所も取るので、冷 蔵庫に収めるとすると、冷蔵庫が小さいという意見がもう少し増え てもよさそうだ。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-1.4 日本の台所事情の分析
list5-1.34 冷 蔵 庫 に 入 れ る と 思 う も の (わかっている自信別) わかっている
正解率 52% わかっているつもり
正解率 58% わからない
正解率 57% fig.5-1.34 冷 蔵 庫 に 入 れ る と 思 う も の (わかっている自信別)
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社会統計の調査
5 5-1.4 日本の台所事情の分析
list5-1.35 常温で保存するもの (わかっている自信別) わかっている
正解率 42% わかっているつもり
正解率 58% わからない
正解率 49% fig.5-1.35 常温で保存するもの (わかっている自信別)
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
5-2 社会生活調査 食生活習慣に関する社会調査 一 般 社 会 法 人 中 央
世論調査、市場調査の専門機関である社団法人 中央調査社(会
調査社 2008.8
長 中田 正博) は、 「食の安全」 に関する全国意識調査を実施。調査は、
http://www.crs.or.jp/ data/pdf/foodpr08. pdf
7月 10 日から 21 日にかけて、無作為に選んだ全国の 20 歳以上 の男女個人を対象に個別面接聴取法で行い、1,331 人から回答を得 た。
日頃、食品の安全性について不安を感じているか聞いたところ、 (fig.5-2.1~2)「非常に不安である」が 25.2%と4人に1人、 「やや 不安である」54.8%とあわせると、約8割(79.9%)の人が不安を 感じている。性別にみると、男性が 70.6%であるのに対し女性が 88.0%で、男性に比べ女性の方が食品の安全性に敏感であるといえ る。この結果は、昨年(2007 年 8 月実施)と比較すると、男女と もに、不安を感じている人が増えた。
fig.5-2.1 食品の安全性への不安感
fig.5-2.2 食品の安全性への不安感 - 性別・年齢別 -
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
一 般 社 会 法 人 中 央
不安を感じる点として (fig.5-2.3)、最も多かったのは「生産地・
調査社 2008.8
原産地(国産か輸入品かなど)に関すること」60.0%で、 次いで「 (残
http://www.crs.or.jp/ data/pdf/foodpr08. pdf
留)農薬」59.6%、 「食品表示」56.8%、 「保存料、着色料などの 食品添加物」54.9%が上位を占める。 「食品表示」については、昨 年に比較して、不安感が増えていることが特徴的。2008 年時のア ンケート結果ならではの、鳥インフルエンザへの不安などが 50% もあり、食への不安は時事に影響されやすいことも伺える。
fig.5-2.3 食品の安全性に不安を感じること
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
一 般 社 会 法 人 中 央
野菜・果物を購入するときに意識していること (fig5-2.4) は、 「新
調査社 2008.8
鮮さ」が 74.5%と最も多く、4人に3人が意識している。肉類を
http://www.crs.or.jp/ data/pdf/foodpr08. pdf
購入するとき (fig.5-2.5) には「産地表示」が 61.4%と最も多く、 「新鮮さ」60.6%、 「消費期限・製造年月日」54.0%が続く。価格 よりも品質を重視する傾向がある。加工食品を購入するとき (fig52.6) では、「消費期限・製造年月日」55.4%、 「加工した場所・国」 52.2%が半数をこえ、続いて「原材料の産地」42.7%となり、賞 味期限のように直接暮らしに関わる部分以外では、国への信頼度が 大きく関わっているようだ。
fig.5-2.4 野菜・果物を購入するとき意識していること
fig.5-2.5 肉類を購入するとき意識していること
fig.5-2.6 加工食品を購入するとき意識していること
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
一 般 社 会 法 人 中 央
食品の安全性を守っていくために、改善が必要だと思う組織や人
調査社 2008.8
をたずねたところ、 「食品メーカー」が 59.1%と、6割近い人が改
http://www.crs.or.jp/ data/pdf/foodpr08. pdf
善の必要性を感じていることがわかった。次いで「輸入業者」が 49.1%で、輸入食品への関心の高さがうかがえる。以下は、 「政府 や役所」42.5%、 「生産者団体(農協など) 」38.6%、 「販売者(商店、 スーパーなど) 」36.6%などと続く。
fig.5-2.7 食品の安全性確保のために改善が必要な主体
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
中央調査法 No.617( 一
時事通信社では、2008 年 12 月 12 日から 15 日にかけて、無作
般 社 会 法 人 中 央 調
為に選んだ全国 20 歳以上の男女個人 2,000 人を対象に、 「食生活」
査社 ) http://www.crs.or.jp/
に関する世論調査を実施した。この調査は、調査員による面接聴取
backno/No617/6172.
法により実施し、1,325 人から回答を得た。
htm
食品への不安は、性別年代ごとに見ても全体的に不安が高いこと がわかる。東京、大阪などの 18 大都市で 91.9%と9割を超えてお り、年代ごとでは若いほうがより不安を感じている。
fig.5-2.8 食品に不安を感じている割合 ( 都市規模別、性別、年代別 )
ふだんの食事について聞いたものでは、 朝食、 昼食、 夕食ともに「自 分や家人が作ったもの(弁当を含む) 」が最も多くなっている。また、 朝食は一割弱が食べないと答えている。昼食は外食の人が多いよう だが、弁当を含めた手料理が7割も占めている。
fig.5-2.9 ふだんの食事について )
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
中央調査法 No.617( 一
次に、ふだんの食事でインスタント食品をどの程度食べるか聞い
般 社 会 法 人 中 央 調
た。 「食べる (計) 」 と答えた割合は 82.9%を占める。その頻度は、 「週
査社 ) http://www.crs.or.jp/
に1~2回」が 31.0%と最も多く、 「月に2~3回」が 26.3%、 「そ
backno/No617/6172.
れ以下」が 16.5%となっている。また、インスタント食品は幅広
htm
い年代に浸透していることがわかる。
fig.5-2.10 インスタント食品を食べる回数
fig.5-2.11 インスタント食品を食べるか
市販のそうざいをどの程度食べるか聞いたところ、 「食べる(計) 」 と答えた割合は 84.2%を占める。その頻度は、 「週に1~2回」が 30.0%と最も多く、 「月に2~3回」が 25.1%、 「それ以下」が 19.3%となっている。60 歳以上が 77%になっており、インスタン ト食品よりも、高齢者でも手が出しやすいものとなっていることが わかる。
fig.5-2.12 市販のそうざいを食べる回数
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fig.5-2.13 市販のそうざいを食べるか
-124-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
中央調査報(No.595)
-「味の素(株)AMC調査」より主婦の眼から見た現代の食生活 -
2003 年 10 月「 味 の
わが国の食生活は大きな変化を遂げてきた。食の欧米化、健康関
素(株)AMC調査」
心の高まり、食の安全性への関心、外食の日常化、加工食品の利用
より主婦の眼から見 た現代の食生活
の増加など枚挙にいとまがない。さらに女性の社会進出により家
http://www.crs.
庭内の食を支えてきた「主婦」の意識にも変化が見られる。この
or.jp/backno/old/
ように変わりつつある「現代の食」を把握すべく、味の素(株)で
No595/5951.htm
は定期的に主婦の食生活意識調査である「AMC調査(Ajinomoto Monitoring Consumer Survey) 」を実施している。当調査は四半世 紀の長期にわたり全国規模での主婦の意識変化を把握することがで きるという特徴を持つ。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
中央調査報(No.595)
近年、生活の中での「食」の位置づけが相対的にみて下がってき
2003 年 10 月「 味 の
ている (fig.5-2.14)。年齢別に見ると 20 ~ 40 代の若年層では「重
素(株)AMC調査」 より主婦の眼から見
視している」のは約5割。対して 60 代では 78%となり、年代差
た現代の食生活
が大きいことが分かる。これは経済的な豊かさが確立し、 「食」に
http://www.crs.
不自由のない時代に育った世代の増加を反映した結果だと考えられ
or.jp/backno/old/
る。
No595/5951.htm
fig.5-2.14 食の位置づけ
女性の社会進出が進むなか、いわゆる「主婦像」はどのように認 識され、変化していくのだろうか。 「食事作りは主婦の大切な仕事 だと思う」と尋ねたときの回答結果を fig.5-2.15 に示した。この結 果を見ると、主婦の「食事作りは大切」という意識は9割近くもあ り、根強いものと思われる。
fig.5-2.15 主婦の食事作り
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
中央調査報(No.595)
主婦の仕事として広く認識されている「食事作り」であるが、女
2003 年 10 月「 味 の
性の社会進出、 さらに「食」の位置付けの相対的低下などに伴い、 「食
素(株)AMC調査」 より主婦の眼から見 た現代の食生活
事作り」にかける時間や手間を省きたいとの意識が強まる傾向が見 られた (fig.5-2.16)。
http://www.crs. or.jp/backno/old/ No595/5951.htm
fig.5-2.16 料理の省時間志向
fig.5-2.17 年代ごとの料理の省時間志向
fig.5-2.18 夕飯の支度時間の変化
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
中央調査報(No.595)
かつて、主婦の料理では下ごしらえから時間をかけて、こだわり
2003 年 10 月「 味 の
のあるそれぞれの味を作り出していた。しかし近年はめんつゆのよ
素(株)AMC調査」 より主婦の眼から見 た現代の食生活
うに簡単に調理に使える調味料、下ごしらえが済んでいる半調理済 食品も増えており、気軽に使われるようになった (fig.5-2.19)。
http://www.crs. or.jp/backno/old/ No595/5951.htm
fig.5-2.19 加工食品に対する意識
一方で、「食事作り」が主婦の腕の見せ所であることには変わり ない。「わが家の味というものを大切にしたい」 「わが家の料理や味 は、子供にも伝えていきたい」 (76%)は両者とも約8割がイエス と答える意識であり、年齢差も少ない。省くところでは簡易食品や 簡単な調理方法にしつつ、要所では主婦それぞれの自己表現をする 場として力を入れているようだ。
fig.5-2.20「我が家の味」に対する意識
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
中央調査報(No.595)
家族の食卓といえば、まず「団らん」という言葉を思い浮かべ、
2003 年 10 月「 味 の
家族の集う楽しい場というイメージを持つ方が多いのではないだろ
素(株)AMC調査」 より主婦の眼から見
うか。fig5-2.21 を見ると、主婦の共通意識として、食卓を大切に
た現代の食生活
する気持ちが強いことがわかる。しかし、fig.5-2.22 によると、家
http://www.crs.
族で食卓を囲む頻度は、朝食・夕食ともに下がってきていることが
or.jp/backno/old/
わかる。
No595/5951.htm
fig.5-2.21 家族の食卓に対する意識
fig.5-2.22 家族全員で食卓を囲む頻度
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
中 央 調 査 報 2002 年
ー食品の購入と不安意識ー
7 月 「 中 央 調 査 報
中央調査社では今年(2002 年)夏~秋に食品に関して2つの意
(No.542)」より http://www.crs.
識調査を実施した。1つは全国 20 歳以上個人を対象に面接聴取法
or.jp/backno/old/
で行った「食品問題に関する世論調査」 (以下、 「成人調査」 )で、
No542/5421.htm
もう1つは2人以上世帯の主婦を対象に郵送法で行った「食品の安 全性と信頼に関する主婦調査」 (以下、 「主婦調査」 )である。
食品の購入について調べたものである。世帯の食品購入へのかか わりを性・年代別にみたのが fig5-2.23 である。男性では各年代を 通じて「ほかの家族が主に食料品の買い物をする( 「主に家族」 ) 」 が多数を占めている。30 〜 60 代までの女性のほとんどが家庭の 食品購入を任されていることがわかる。
fig.5-2.23 食品購入への関わり
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
中 央 調 査 報 2002 年 7 月 「 中 央 調 査 報 (No.542)」より http://www.crs.
「味」 「新鮮さ(鮮度・賞味期限) 」 「栄養」 「便利さ(手軽さ) 」 「価格」 「安全性」の中から食品を選ぶ際に最も重要な点を1つ選んでもらっ たところ、「新鮮さ」をあげる人が 55%を占めた。女性では「新鮮
or.jp/backno/old/
さ」の比率はさらに高まり、世帯の食品購入者が「主に自分」とい
No542/5421.htm
う女性では 64%にのぼる。世帯の食品購入者が「主に自分」とい う男性では「便利さ」 「価格」を最も重視するという人も比較的多 くみられる。
fig.5-2.24 食品について最も関心のあること
fig.5-2.25 食品の安全性への関心別・食品の選定基準
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
中 央 調 査 報 2002 年
「主婦調査」から、食品の購入に関わる項目を、安全性に対する
7 月 「 中 央 調 査 報
不安との関連でみてみる。
(No.542)」より http://www.crs. or.jp/backno/old/ No542/5421.htm
fig.5-2.26 は食品の安全性への不安意識別の生鮮食品の購入店を 調べたものである。安全性への意識による購入チャネル選択を見よ うとするものである(各店鋪の不安感を示すものではない。 ) 。全体 的には「スーパーマーケット」の比率が極めて高いが、食品の安全 性に「たいへん不安がある」という人ではこの比率がやや下がり、 「生 協」や「一般(個人)商店」などの比率が高くなっている。
fig.5-2.26 食品の安全性への不安意識別・生鮮食品の購入店
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
一 般 社 会 法 人 中 央
- 全国成人のコンビニエンスストア利用状況全国 -
調査社 2001.5 http://www.crs.or.jp/ data/pdf/cvs.pdf
全国成人のコンビニエンスストアの利用頻度をみると、 「週5日 以上」(4.8%) 、 「週3~4日」 (10.8%)といったヘビーユーザー がおよそ 15%いる一方で、 「まったく行かない」 (22.5%) 、 「月1 日未満」(17.3%)という人もほぼ4割いる。
fig.5-2.27 コンビニエンスストアの利用頻度
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
一 般 社 会 法 人 中 央
コンビニエンスストアを月1回以上利用する人に、よく利用する
調査社 2001.5
コンビニエンスストアの場所を聞いた(複数回答) 。 「家の近く(歩
http://www.crs.or.jp/ data/pdf/cvs.pdf
いて5分以内) 」は、13 大都市やその他の市ではおよそ半数があげ ているのに対し、町村部では 16.4%に下がり、 「家の近く(歩いて 10 分以上) 」 「通勤・通学などの途中」が多くなる。
fig.5-2.28 よく利用するコンビニエンスストアの場所
fig.5-2.29 コンビニエンスストアをよく利用する時間帯
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
一 般 社 会 法 人 中 央
コンビニエンスストアで購入するものについて調べたものであ
調査社 2001.5
る。主に飲み物やお弁当、パンやお菓子などの食品類を購入する事
http://www.crs.or.jp/ data/pdf/cvs.pdf
が多いことが明らかとなった。また、食品はスーパーマーケットな どの購入が多いためか、全体で2割程度に留まるものの、調理を必 要とせずすぐに食べられるおにぎりなどの食べ物は5割を超えてお り、コンビニエンスストアと簡単な食事とは結びつきが強いことが わかる。
5-2.30 一ヶ月間にコンビニエンスストアで買ったもの
fig.5-2.31 お弁当やおにぎり、サンドイッチを
fig.5-2.32 その他の食料品を購入した人の
購入した人の内わけ
内わけ
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
大臣官房統計部生産
平成 21 年度食品ロス統計調査(世帯調査)結果の概要
流通消費統計課消費
農水産省が平成 22 年に行った食品に関するアンケートのうち、
統 計 室 更 新 日: 平 成 22 年 9 月 30 日
食品ロスについての記事を紹介する。
担当:農林水産省
平成 21 年度における世帯食の食品ロス率は 3.7%となった。こ
http://www.maff.
れを食品ロスの発生要因別にみると (fig.5-2.33)、過剰除去による
go.jp/j/tokei/
ものが 2.0%、食べ残しによるものが 1.0%、直接廃棄によるもの
sokuhou/loss_ setai_09/index.html
が 0.6%となっている。世帯員構成別に食品ロス率をみると (fig.52.34)、単身世帯では 4.8%、2 人世帯では 4.2%、3 人以上世帯では 3.4%となっており、単身世帯の食品ロス率が最も高くなっている。
fig.5-2.33 食品ロス率
fig.5-2.34 世帯員構成別食品ロス率 (H.21)
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
大臣官房統計部生産
「食卓に出した料理を食べ残した理由 (fig.5-2.35)」は、 「料理の
流通消費統計課消費
量が多かったため」と回答した世帯の割合が 71.7%と最も高くなっ
統 計 室 更 新 日: 平 成 22 年 9 月 30 日
ている。「食品を使用せずに廃棄した理由 (fig.5-2.36)」は、 「食品
担当:農林水産省
の鮮度が落ちたり、腐敗したり、カビが生えたりしたため」 、 「食
http://www.maff.
品の消費期限・賞味期限が過ぎたため」と回答した世帯が 51.7%、
go.jp/j/tokei/
50.0%とともに高くなっている。食べられる人が好みや気分で残し
sokuhou/loss_ setai_09/index.html
たり、好みや気分で食品を使わずに捨てるというような、“贅沢な” 廃棄の仕方はしていないのだが、食事情が豊かな日本では、どうし ても “多く作りすぎてしまう” “多く買いすぎて腐らせてしまう” と いうような食品の廃棄に繋がる計画ミスがみられる。
fig.5-2.35 食卓に出した料理を食べ残した理由 (H.21)
fig.5-2.36 食品を使用せずに破棄した理由 (H.21)
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
大臣官房統計部生産
本調査は、食育推進基本計画(平成 18 年 3 月 31 日食育推進会
流通消費統計課消費
議決定)において「家庭や外食における食品の廃棄状況等を把握す
統 計 室 更 新 日: 平 成 22 年 9 月 30 日
るための調査を実施する。 」とされているのを受けて実施しており、
担当:農林水産省
食品の食べ残しや廃棄の減少に向けた取組等を行う際の資料に利用
http://www.maff.
されている。
go.jp/j/tokei/
fig.5-2.37 は食品ロス率の年代ごとのグラフである。平成 16 年
sokuhou/loss_ setai_09/index.html
度から比較すると、ほんの少しではあるがロス率は低くなってきて いる。これは、エコの意識が高まってきていること、ホールフード 調理などの流行から食材自体の使い方が上手になってきていること などが考えられる。また、以前はスーパーマーケット市場に頼って いたことにより、形の良い選別されたものしか売れなかったが、近 年の産地直送志向や道の駅など販売箇所の増加によって、細かい見 た目の品質にとらわれずに野菜などを売りやすくなったこともひと つあるだろう。
fig.5-2.37 世帯における食品ロス率の年次別推移
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
大臣官房統計部生産
世帯食における一人 1 日当たりの食品使用量は 1,116.4g であっ
流通消費統計課消費
た。 これを世帯員構成別にみると、 「2 人世帯」が 1,390.0g と最
統 計 室 更 新 日: 平 成 22 年 9 月 30 日
も多く、次いで「単身世帯」が 1,338.8g、 「3 人以上世帯」が 1,029.2g
担当:農林水産省
となっている。
http://www.maff.
主な食品別に食品使用量割合をみると (fig.5-2.38)、 「野菜類」が
go.jp/j/tokei/
20.8%と最も高く、次いで「調理加工食品」が 18.4%、 「穀類」が
sokuhou/loss_ setai_09/index.html
14.7%、 「牛乳及び乳製品」が 7.9%、 「果実類」が 6.5%となっている。 主な食品別に食品ロス率をみると (fig.5-2.39)、 「果実類」が 8.9% と最も高く、次いで「野菜類」が 8.7%、 「魚介類」が 5.9%となっ ており、過剰除去によるロス率の高い生鮮食品で高くなっている。 調理をする前の食糧保存の段階で、新鮮さを欠きそのまま廃棄せざ るを得ないということが多いようだ。新鮮なうちに使いきれる量だ けを購入して、食べるまで新鮮なまま保存しておくことが大事だと いえるだろう。
fig.5-2.38 世帯員構成別の主な食品別食品使用量割合 (H.21)
fig.5-2.39 主な食品別の食品ロス率 (H.21)
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
「食育に関する意識 調査」結果について H23 内 閣 府 政 策 統 括 官(共生社会政策
「食育に関する意識調査」結果について 内閣府政策統括官が平成 23 年に国民の食生活に関する調査を 行ったものであり、 「食育に関する意識調査」の結果である。また、
担当)
これは同様の調査を以前にも行なっており、その時の結果との比較
http://www8.cao.
も行なっている。
go.jp/syokuiku/more/
近年の社会問題として食生活の乱れというのがあるが、遠くに言
research/h23/pdf/ g1.pdf
われているのは朝食を摂らなくなってきているということである。 このようなことはかなり前から言われており、近年では小学生の授 業などでも朝食を摂ることの重要性について教えられるようになっ た。調査の結果 (fig.5-2.40~41) によると朝食を食べる頻度として、 「ほとんど毎日食べる」と答えた人が平成 22 年、23 年の二年間と も 85%を超えているものの、 「ほとんど食べない」と答えた人が 7% もいることは見逃せない事実である。メリットとしては体調よりも、 「生活のリズムがとれる」というような生活全体に与える影響が大 きいことがわかる。
fig.5-2.40 朝食を食べる頻度について
fig.5-2.41 朝食を摂ることによるメリット
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
「食育に関する意識
次に、朝食と夕食を誰かと一緒に食べる頻度(=共食頻度)につ
調査」結果について
いてきいたもの (fig.5-2.42~43) についてである。朝食では、 「ほと
H23 内 閣 府 政 策 統 括 官(共生社会政策
んど毎日」共食であると答えた人が半数を超えている一方、 「ほと
担当)
んどない」と答えた人が、四分の一もおり、個々のライフスタイル
http://www8.cao.
に極端な差が見られる。朝食は食べないと答える人もいるなど、時
go.jp/syokuiku/more/
間も少ないため軽く済ませる人が多いため、人と食べる時間をあえ
research/h23/pdf/ g1.pdf
てとらない人も多いのだろう。しかし、一人で食べるという習慣に よって、朝食を “抜いてしまいやすくなる” ともいえそうだ。夕食は、 朝食に比べると、全体的に共食の頻度が高い。 「ほとんど毎日」共 食であると答えた割合はあまり変わらないが、 「ほとんどない」と 答えた人の割合はずいぶんと異なる。夕食は忙しい日もあるが、日 によってはゆっくりと時間がとれるため、コミュニケーションの時 間として大切にしている家庭も多いだろう。 朝食
fig.5-2.42 朝食の共食頻度
夕食
fig.5-2.43 夕食の共食頻度
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-141-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
「食育に関する意識
家族と一緒に食べることのメリットとしては (fig.5-2.44)、 「家族
調査」結果について
とのコミュニケーションを図ることができる」という回答では8割
H23 内 閣 府 政 策 統 括 官(共生社会政策
のひとがそうであると答えている。その次に「楽しく食べることが
担当)
できる」でも 66%と高い数値を示しており、食事における家族と
http://www8.cao.
の交流が大事にされていることがわかる。それぞれの個室があり、
go.jp/syokuiku/more/
また家族全員がそれぞれに用事があり忙しい現代において、食事は
research/h23/pdf/ g1.pdf
家族を集める大事な日々の行事であるといえるのだろう。また、家 族と食事をすることに対し、 「食事をするのが楽しい」(fig.5-2.45) と答えた人の方が、家族と食事をする頻度も高くなっている。
fig.5-2.44 共食に伴うメリット
fig.5-2.45 家族と一緒に食事をすることが楽しいか
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
「食育に関する意識 調査」結果について H23 内 閣 府 政 策 統 括 官(共生社会政策
「食育に関する意識調査」結果について fig.5-2.46 は、 「回答者自身が健康や食生活をより良くすることに 対して、家族が協力的であるか」という質問に対する答えである。
担当)
fig.5-2.47 は、 「家ではいつも、例えば主食・主菜・副菜を基本にす
http://www8.cao.
るなど、栄養バランスのとれた食事を食べられる状況にあるか」と
go.jp/syokuiku/more/
いう質問に対する答えである。どちらも「そう思う」と肯定的に捉
research/h23/pdf/ g1.pdf
えている人ほど、家族と一緒に食事をする頻度が高くなっている。 逆に、 「全くそう思わない」と答えた人は特に、 「ほとんど食べない」 という回答が多くなっている。家族との共食頻度は、スケジュール 的な可能不可能に関わるのではなく、家族との関係や家族の態度、 共食自体に感じるメリット感に関係しているといえる。
fig.5-2.46 回答者自身が健康や食生活をより良くすることに対して、 家族が協力的であるか
fig.5-2.47 家ではいつも栄養バランスのとれた食事を食べられる状況にあるか
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
「食育に関する意識
fig5-2.48 は「食べ方への関心度」を示したグラフである。 「関心
調査」結果について
がある」「どちらかといえば関心がある」と答えた人を合わせると、
H23 内 閣 府 政 策 統 括 官(共生社会政策
7割の人が関心を持っているといえる。
担当)
fig5-2.49「バランスの良い食事の頻度」に関しては、 「ほとんど
http://www8.cao.
毎日バランスの良い食事を食べる」と答えた人が7割もおり、これ
go.jp/syokuiku/more/
は前年度の調査よりも増えている。この2つの結果から、食事に対
research/h23/pdf/ g1.pdf
しての関心は高い、または高くなってきているといえる。
fig.5-2.48 食べ方への関心度
fig.5-2.49 バランスの良い食事の頻度
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-144-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
「食育に関する意識
fig.5-2.50「食べ方への関心度」と「朝食頻度」との関係を表し
調査」結果について
たグラフをみると、 「関心がある」人ほど、朝食を食べる頻度が高
H23 内 閣 府 政 策 統 括 官(共生社会政策
い人が多いことがわかる。また、 「関心がない」人たちは「ほとん
担当)
ど食べない」と答えている人が一割を超えており、これは朝食を食
http://www8.cao.
べることによるメリットを知らないことが原因で起こった結果だと
go.jp/syokuiku/more/
思われる。
research/h23/pdf/ g1.pdf
同様に、fig.5-2.51「食べ方への関心度」と「バランスの良い食 事」との関係では、差がもっと顕著であり、 「関心がある」と答え ている人ほど、 「バランスの良い食事」を食べる頻度が高くなって いる。生活や健康に直接影響をおよぼす食生活をより良く過ごすた めには、まず意識を持つこと、そして正しい知識を身につけて意識 的に改善していくことを心がける必要があるといえるだろう。
fig.5-2.50「食べ方への関心度」と「朝食頻度」との関係
fig.5-2.51「食べ方への関心度」と「バランスの良い食事」との関係
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
「食育に関する意識
幼い頃に食事をするとき、 『よく噛んで食べなさい』と親や周り
調査」結果について
の大人達に教育を受けて育ったという人は多いだろう。より長く
H23 内 閣 府 政 策 統 括 官(共生社会政策
「噛む」ことをした方が良いということは、小学校の家庭科の授業
担当)
でもよく言われていることである。より食べやすく食品が加工され
http://www8.cao.
ている現代の食において、噛まずに流しこむような食事スタイルに
go.jp/syokuiku/more/
慣れてしまい、硬いものが食べられなかったり、顎の筋肉が衰えて
research/h23/pdf/ g1.pdf
来ているというような話もよく聞くことである。本来口の中で噛み 砕き消化して行くような食べ物を、そのまま流し込んでしまうこと によって引き起こされる健康障害もある。自然の食材であればなお、 よく噛んで食べることが大事であり、健康につながっているもので ある。 fig.5-2.52 は「噛むこと、味わって食べること」の実践度を示し たものである。 「食べていない」と答えた人が 31.7%も居ることは、 注目すべき問題である。また、fig.5-2.53 は「噛むこと、味わって 食べることの実践度」と「朝食頻度」との関係を示しており、 「食 への関心度」の時と同様に、 「噛むこと、味わって食べることをし ている」と答えている人のほうが、朝食をよくとっていることがわ かる。
fig.5-2.52 噛むこと、味わって食べることの実践度
fig.5-2.53「噛むこと、味わって食べることの実践度」と「朝食頻度」との関係
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
「食育に関する意識 調査」結果について H23 内 閣 府 政 策 統 括 官(共生社会政策
次に、fig.5-2.54 では「噛むこと、味わって食べることの実践度」 と「バランスの良い食事」との関係を示しており、このグラフをみ ると、「噛むこと、味わって食べることをしている」と答えている
担当)
人のほうが、 「食べていない」と答えている人よりも「バランスの
http://www8.cao.
良い食事」をとっている頻度が高いことがわかる。
go.jp/syokuiku/more/ research/h23/pdf/ g1.pdf
fig.5-2.54「噛むこと、味わって食べることの実践度」と 「バランスの良い食事」との関係
まとめとして、 ◯家族と共食をすることに関しては、家族がバランスの良い食事や 健康に対して協力的であり、共食にメリットを感じている人ほど、 家族と一緒に食事をする頻度が高く、共食のメリットを含め、 「家 族との食事は楽しい」と感じている人ほど、家族と食事をする頻度 が高くなっていた。また、夕食より朝食の方が共食頻度が少なく、 共食をしないことによって食事を抜くということに繋がってくると も考えられる。 ◯「朝食頻度」 「バランスの良い食事」 「噛むこと、味わって食べる こと」が多いことは全て健康につながっており、これらはそれぞれ お互いに相関を持っている。そして、全ての項目の頻度は「食べ方 への関心」と関連しているため、全ての食生活の改善については、 まず「食への関心」からはじまるといえるだろう。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
「食育に関する意識調 査」結果について平 成24 年4 月20 日 内閣府政策統括官 (共生社会政策担当)
「食育に関する意識調査」結果について(平成 24 年度版) 内閣府政策総括官による食生活に関する調査の中で、前述までの 食育に関する意識調査の、平成 24 年に行われたものである。 「( 回答者自身のことについて ) 東日本大震災以前と、現在の食生
http://www8.cao.
活で変わったと思うことを次の中からいくつでもあげてください。 」
go.jp/syokuiku/more/
という質問についてきいている。fig.5-2.55 は「増えたり、広まっ
research/h24/pdf/ g.pdf
たりしたもの ( 右 )」 「減ったり、狭まったりしたもの ( 左 )」につ いてグラフ化したものである。増えたものとしては、 「食卓を囲む 家族の団欒」や「家族との食事の回数」など家族内のコミュニケー ションについてあがっていたり、 「地域性や季節感のある食事」 「規 則正しい食生活リズム」 「節電に配慮した食生活」など、現在の生 活を見直し改善するような、ポジティブな回答がみられた。一方で、 一番大きく増えたと回答された、 「食品の安全性への不安」や「安 定的な食料供給への不安」などの不安も増えてしまっている。食は 生活全体に栄養を及ぼすものなので、この機会によく見直しておく ことが、今後の生活を豊かなものにするためにも重要なことである といえるだろう。
fig.5-2.55 東日本大震災以後、食生活で変わったと思うこと
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-148-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
「食育に関する意識調
「今後の食生活で力を入れたいところ」としてあげられたもの
査」結果について平
(fig.5-2.56) としては、 「栄養バランスのとれた食事の実践」 「規則
成24 年4 月20 日 内閣府政策統括官 (共生社会政策担当)
正しい食生活リズムの実践」など食生活の改善に対する意欲が高い ことがわかる。今回の調査で特に増えているものとしては、 「家族
http://www8.cao.
や友人と食卓を囲む機会の増加」であり、これは前述のように東日
go.jp/syokuiku/more/
本大震災を受けての影響であると思われる。
research/h24/pdf/ g.pdf
fig.5-2.56 今後の食生活で力を入れたいところ
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-149-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
「食育に関する意識調
fig.5-2.57「あなたはふだん誰と食事をする事が多いですか」と
査」結果について平
いう質問に対して、朝食・昼食・夕食別に当てはまるものを選択す
成24 年4 月20 日 内閣府政策統括官 (共生社会政策担当)
るという方式で答えてもらったものである。また、平日、休日につ いても分けて分析する。全体的に朝食よりも昼食、夕食のほうが、
http://www8.cao.
誰かと一緒に食べる傾向があり、朝食は特に、 「食べない」 「一人で
go.jp/syokuiku/more/
食べる」という回答が多くなっている。また、平日より休日の方が
research/h24/pdf/ g.pdf
誰かと一緒に食事をすることが多く、それは「友人」ではなくほと んどが「家族」である。家族と一緒に夕食を食べると答えている人 が、平日休日問わず8割を超えていることも注目すべきことである。
fig.5-2.57 ふだん誰と食事を共にするか
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-150-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査けっk
「食育に関する意識調
fig.5-2.58 は家族と一緒に朝食を食べる頻度について、fig.5-2.59
査」結果について平
は夕食を家族と一緒に食べる頻度について調べたものである。平成
成24 年4 月20 日 内閣府政策統括官 (共生社会政策担当)
21 年、22 年の結果と比較して、今回の調査結果では家族と一緒に 食べると答えた割合が全体的に増えている。特に、 「ほとんど毎日」
http://www8.cao.
と答える人が増えており、平成 22 年まで減少傾向に合ったことを
go.jp/syokuiku/more/
考えると、東日本大震災以後、家族と過ごす時間を過ごす時間を大
research/h24/pdf/ g.pdf
切にし、日課として定着させようという動きが強まってきているこ とがわかる。 朝食
fig.5-2.58 朝食を家族と食べる頻度 ( 家族と同居している人のみ )
夕食
fig.5-2.59 夕食を家族と食べる頻度 ( 家族と同居している人のみ )
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-151-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
「食育に関する意識調
fig.5-2.60 は「日頃の健全な食生活を実践するため、どのような
査」結果について平
指針等を参考にしているか」という質問に対し、選択肢の中から
成24 年4 月20 日 内閣府政策統括官 (共生社会政策担当)
上位 3 つを選ぶという方法でアンケートを行ったものである。ま た、健康に悪影響を与えないようにするために、どのような食品を
http://www8.cao.
選択するとよいかや、どのような調理が必要かについての知識が、
go.jp/syokuiku/more/
回答者自身に備わっていると思うかどうかについて示したものが、
research/h24/pdf/ g.pdf
fig.5-2.61 となる。自信を持って、知識を持っていると答える人は あまりおらず、参考にしているものは、小中学生の家庭科の教科書 などに載っているような、 「食事バランスガイド」 「三色分類」 「6 つの基礎食品」といったものであった。
fig.5-2.60 健全な食生活を実践するために参考にしている指針について
fig.5-2.61 健康に悪影響を与えないようにするための食品や調理についての知識があるか
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-152-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
ビジネスマンの生活
ビジネスマンの生活時間調査、30年の推移
時 間 調 査、 3 0 年 の
fig.5-2.62 は株式会社シチズンが過去 30 年に渡り、ビジネスマ
推移 ( シチズン調査 ) http://www.citizen.
ンの日常生活について、必要な時間を調べたものであり、この中で
co.jp/research/
も食事に要する時間について言及されている。2000 年までは、通
time/20101201/index.
勤時間、勤務時間ともに増加傾向にあり、それに伴った形で睡眠時
html
間は減少傾向にあった。公共交通機関が年々発展しているのにも関 わらず通勤にかかる時間が伸びているのは、ビジネスのグローバル 化などの広がりと労働の過密化が考えられる。その後 2010 年に勤 務時間が減っているのは、近年の過労に対する批判の高まりなどか ら残業の廃止や NO 残業デーの導入などが起こったことによると思 われる。 食事時間に関しても、2000 年までは増減はあまりなかったが、 この 10 年で 15 〜 20 分程度減少している。これには、調理方法 の変化や食に対する考え方の変化など、食生活の変化がこれまでの 20 年よりもこの 10 年間は大きかったのだと考えられる。
fig.5-2.62 生活の中での各項目の要する時間
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-153-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
ビジネスマンの生活
10 年後の 2020 年について、回答者に予想してもらったもので
時 間 調 査、 3 0 年 の
ある (fig.5-2.63)。睡眠時間」と「食事時間」は、 “増える”>“減る”、 「通
推移 ( シチズン調査 ) http://www.citizen.
勤時間」と「勤務時間」は “減る” > “増える” 結果となった。通勤・
co.jp/research/
勤務環境はより時間減との認識のようだ。予想であるため、これま
time/20101201/index.
での結果と照らし合わせると願望だけであり、実際には予想と逆の
html
ことも起こっている。ただし、睡眠時間や食事時間は時間短縮でな く、本当は長く時間を取りたいというのが、本当のニーズであると いえるだろう。
fig.5-2.63 2020 年の生活必要時間の予想
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-154-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
ビジネスマンの生活
ビジネスマンは、プライベート時間をどのように案分しているの
時 間 調 査、 3 0 年 の
か週平均で聞いている (fig.5-2.64)。数字は全て実行者のみの平均
推移 ( シチズン調査 ) http://www.citizen.
時間で、表の項目配列も実行率の高い順に並べてある。 「インター
co.jp/research/
ネット・E メール」 、 「子供と過ごす」以外全ての項目で 2000 年よ
time/20101201/index.
りも減少しており、電子端末の普及などで、見る、聴く、学ぶ、遊
html
ぶの多様化が進み、各項目への配分を減らさざるを得ないというこ とだと考えられている。10 年前と比べて特に減っているのは、 「読 書」3 時間 31 分減、 「家族との会話」3 時間 25 分減。特に「読書」 は 80 年比では 6 時間 6 分と大幅減である。 ここでは、食に直接関わりのあるプライベートの時間として「外 での飲食、喫茶の時間」に着目しようと思う。80 年から比較する と、実行率自体が 93%から 60%にまで大幅に減っており、外食自 体が減っているということがわかる。また、実行者のみの時間数に して、5時間 17 分の短縮がなされている。一食にかける時間を短 縮していることを含めても、一食2時間程度として1〜2食分減少 していると考えてよいだろう。80 年からの 10 年毎の結果を追っ ていくと 2000 年までは実行率はマイナス 10%程度、時間数は一 時間半程度の短縮であり、ここ 10 年で大幅に減少していることが わかる。近年の不景気から家食の増加が促されたことや、食糧への 不安や自然食、家庭菜園ブームなどから、家庭料理への注目度が上 がったことなどが理由として考えられる。外食産業は、 「簡単に」 「美 味しい料理」が食べられること以外に、食材のブランドや健康に気 遣った創作メニュー等、新たな付加価値をつけていかなくては今後 生き残っていけないだろうと考えられる。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-155-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
ビジネスマンの生活 時 間 調 査、 3 0 年 の 推移 ( シチズン調査 ) http://www.citizen. co.jp/research/ time/20101201/index. html
fig.5-2.64 プライベート時間の案分について
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-156-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
ビジネスマンの生活
fig5-2.65 は、サラリーマンに対して「1週間のうち、ご自宅で
時 間 調 査、 3 0 年 の
夕食をとるのは平均して何日ぐらいですか?」という質問の回答で
推移 ( シチズン調査 ) http://www.citizen.
ある。夕食を自宅でとる日数は、 「毎日」と回答した人が 52.3%と
co.jp/research/
半数以上で過去 30 年の中で最多、平均日数も 5.6 日と高くなって
time/20101201/index.
いる。バブル期の 1990 年と比べると、毎日ウチ食派が 13.2%か
html
ら 52.3%に増えており、特にここ 10 年の変化が大きく、残業の減 少など不況の防衛策とも思われる。また、 「なし」と答えている人 は変わっておらず、数十年前には週に数日であった人々が、 「毎日」 に変わってきていることも1つの特徴である。
fig.5-2.65 一週間のうち家で食事を摂る日数
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-157-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
働く独身女性の生活
働く独身女性の生活時間
時間 ( シチズン調査 )
株式会社シチズンが働く独身女性に対して行った生活時間につい
http://www.citizen. co.jp/research/
ての調査である。fig.5-2.66 は働く独身女性が夕食を自宅で食べる
time/20101201/index.
日数についてきいたものである。以前に、ビジネスマンの自宅での
html
夕食について述べたが、ビジネスマンは家族がいるひとも多いた め、より多く家で食事を採ると答える日数が多かった。今回の調査 では、独身女性で、もともと自身で料理をすることも多い女性では あるが、10 年前までは、週に2,3回以上外で食事していた人が多 かったことがわかる。これが、2011 年では、毎日家で食べると答 えた人は、約四割にも、週5日以上家で食べると答えた人を合わせ ると、74.3%にものぼる。多くの働いている独身女性はほとんど毎 日、夕食を家で食べていることがわかる。
fig.5-2.66 働く独身女性の自宅で夕食をとる日数
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-158-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
働く独身女性の生活
fig.5-2.67 は働く独身女性に対して、一日の所要時間についてき
時間 ( シチズン調査 )
いたものである。ビジネスマンのときのアンケート結果と同じく、
http://www.citizen. co.jp/research/
平日の睡眠、通勤時間は 20 年前よりも短くなっている。通勤時間
time/20101201/index.
の 35 分短縮は、交通網の発展によるものと考えられる。同様に、
html
食事時間も 15 分減、休日では 28 分減となっており、食事にかけ る時間が短縮されている。
fig.5-2.67 働く独身女性の自宅で夕食をとる日数
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-159-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
働く独身女性の生活
fig.5-2.68 は働く独身女性の生活の、様々な細かい行動別に所要
時間 ( シチズン調査 )
時間を調べたものの一部である。1991 年当時よりも、行動の設定
http://www.citizen. co.jp/research/
が細かくなっている部分がある。
time/20101201/index.
ふだんの生活の様子の変化が分かる一番特徴的なものとして、 「テ
html
レビ」についての結果をみると、20 年前は 12 時間も費やしてい たのに対して、テレビだけでは9時間に、音楽とあわせても時間 が短縮されていることがわかる。しかし逆に今では、 「携帯電話な どの端末」や「PC」などの普及がめざましく、 「SNS」や「ゲーム」 に費やす時間が増えていることから、全体としての家の中での趣味 などの自由な時間というのは減っていないといえるだろう。また、 家族との会話時間では、 「会話」 「通話」 「メール」を合わせても、 20 年前より短くなっている。会話時間というのは食事の時間と兼 ねられていることが多いが、会話が短くなっていることからも、家 族が揃った食事の時間が短くなっていることが考えられる。 そして、家事の時間については、とても短くなっていることが明 らかとなった。20 年前は「料理」と「掃除や洗濯」を合わせると 8時間半を超えていたものが、今では、約4時間と半減している。 以前は「料理」だけにも4時間以上をかけていたものが、前述のよ うに現代のほうが家での夕食の頻度が増えているにもかかわらず、 「家事」全般にかける時間が短縮されているということから、家電 製品の発展、食の効率化がうかがえる。 さらに、外食の時間について、特に「飲む」という行為について、 アルコールの有無で分けて聞いているが、 「お酒を飲む」という行 為ひとつでも、2時間 47 分しかかけておらず、現代の働く独身女 性はお酒ですら外でゆっくりと時間をかけて楽しむことがあまりな いということがわかる。外食全般がとても少なくなり、またあった としても、とても短い時間に抑えられていることがわかる。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
テレビ・音楽 働く独身女性の生活 時間 ( シチズン調査 ) http://www.citizen. co.jp/research/ time/20101201/index. html
電子端末に接する (PC・携帯電話など )
家族との会話時間
家事の時間
飲む時間
fig.5-2.67 働く独身女性の自宅での行動の所要時間
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-161-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
四半世紀比較で見る
ビジネスマンと OL に対して行った生活時間を調べるアンケート
ビジネスマンと OL の
の中からいくつかの食に関係する興味深い結果を抜粋した。朝食
生活時間調査 ( シチズ ン調査 )
にどのくらいの時間をかけたいかという希望をきいたところ (fig.5-
http://www.citizen.
2.68)、25 年前と同じく、 「20 分」と回答した人が多くみられた。
co.jp/research/
しかし全体の分布をみてみると、25 年前よりも、ゆっくりと朝食
time/19990610/index.
時間をとりたいとする人よりも、短めでよりとする人のほうが増え
html
ている。これまでの他のアンケートと同様、食事にかける時間を短 縮する、短縮したいとしている傾向がみられる。
fig.5-2.68 朝食にかける理想の時間
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-162-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
都市生活研究所 / 都 市 研 コ ラ ム (TOKYO GAS) http://www.toshiken. com/column/food/
- 内食化傾向と言えるのか 東京ガスの都市生活研究所が行なっているアンケート調査の結 果の中で、『食生活と食文化』というテーマの調査から一部を抜粋 したものである。近年は “内食化傾向” であるとよくいわれている が、全体のニーズが本当に内食化といえるのか、調べたものである (fig.5-2.70~72)。全体の夕食を家で作る頻度は増えているようだが、 夕食をつくるのにかかっている時間は短縮されている。これは、前 項からもいっているように、調理道具などの効率化とインスタント 食品など簡単に調理できる食材が豊富であることなどが理由として 考えられる。また、夕食を作る頻度は、単身者ではむしろ減少して おり、外食の頻度や家でも料理をしないで食事をするということが 増えていると考えられる。単純に内食化と言ってしまい、家でたく さん料理をしていると考えることは危険である。
fig.5-2.70 夕食を家で作る頻度
fig.5-2.71 夕食を作るのにかける時間
fig.5-2.72 単身者の夕食を家で作る頻度
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-163-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
都市生活研究所 / 都 市 研 コ ラ ム (TOKYO GAS) http://www.toshiken. com/column/food/
- 手間をかけるとは? ~共働き女性の省力化~ 都市生活研究所が行った定点観測調査(2008 年)によると、共 働き女性ほど、調理の省力化・合理化に積極的であることがわか る。お惣菜などの「買ってきてそのまま食べられる料理」の利用頻 度をみると、共働き女性は月 1 回程度以下が約 3 割だが、共働き でない女性は 45.8%と高くなっており、共働き女性は、お惣菜や、 下ごしらえ済みの食材や半調理品を利用し、省力化をしているとい える (fig.5-2.73~74)。しかし、これに対して、 「手間をかけている」 という意識について (fig.5-2.75) は共働き、共働きでないにかかわ らず変わらないのである。事実上、多くの共働き女性はお惣菜や半 調理料理などを用いており、調理の手間を省いていると捉えられる が、本人たちの意識としては、手間をかけていないという自覚はあ まりないようだ。
fig.5-2.73 お惣菜を利用する頻度
fig.5-2.74 下ごしらえ済み食材や半調理品を利用すること
fig.5-2.75 調理の手間をかけるかどうか Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-164-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
都市生活研究所 / 都 市 研 コ ラ ム (TOKYO GAS) http://www.toshiken. com/column/food/
- やっぱり、ごはん 都市生活研究所が 1990 年から 3 年ごとに実施している生活定 点観測という調査の中に、 「炊いてあるごはんを買うことに抵抗が ない」という質問がある (fig.5-2.76)。ここで、 「あてはまらない+ あまりあてはまらない」と回答した炊いてあるごはんを買うことに 抵抗を感じている人の割合は 6 割強で、この 10 年間ほぼ変わって いない。しかし fig.5-2.73 のように、お店では、多種多様なおにぎ りや持ち帰り弁当が売られており、それらを買うことに抵抗がある 人は、今やほとんどいない。だが、 「白いごはん」は別なのである。 このようなデータから「白いご飯」というものが日本人にとって特 別なものであることがわかる。また、食品の購入や調理には、手間 や時間の短縮以外に、意識の中での価値観が大きく関わってくると いうことがいえるだろう。
fig.5-2.73 お惣菜を利用する頻度
fig.5-2.76 焚いてあるご飯を買うことへの抵抗感について
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-165-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
都市生活研究所 / 都 市 研 コ ラ ム (TOKYO GAS) http://www.toshiken. com/column/food/
都市生活研究所の行った調査の中で、弁当についてきいているも のがある。その調査の中で「お弁当に入っているとうれしいもの」 を訊きいている (fig.5-2.77)。対象は「自分では作らないが、家族 などが作ったお弁当を、週 1 回以上食べている人(n=761) 」であ る。唐揚げや卵焼きなどの “お弁当のおかず” といえば上がるよう な定番のものが上位に上がっている。この中で着目したいのが、3 位と4位に「ごはん」が上がっていることである。特に「色や味が ついたごはんもの」よりもただの「白いごはん」のほうが順位が上 のことも興味深い結果である。日本人の食事の中では、 「白いごはん」 に対するこだわりがあることがわかる。
fig.5-2.77 お弁当に入っていると嬉しいものについて
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
都市生活研究所 / 都
若者のひとり暮らしというと、 「家は寝るだけの場所」 「食事は外
市 研 コ ラ ム (TOKYO
食か購入したもので済ます」といった印象をもたれる可能性が高い
GAS) http://www.toshiken. com/column/food/
が、実態は違うようだ。東京ガス都市生活研究所が未婚ひとり暮ら しを対象に実施した調査(2010 年 1 月、N=334)によると、20 代男性の 39.9%、 女性の 61.3%が週に 3 回以上の頻度で夕食を作っ ている。また、 「料理が好き」 であるのは 51.1%、 「料理がカッコいい」 と思っている人は 75.8%にのぼり、料理に対して積極的な意識を 持っている。しかし、手間ひまかけて料理をしているわけではなく、 むしろ料理は手間や時間はかけたくないと考えていることは、主婦 やビジネスマンたちと同じようだ (fig.5-2.78)。 fig5-2.79、80 では 20 代は他年代と比較して「料理をする頻度 を増やしたい」や「料理を手作りすることに喜びを感じる」にあて はまると回答する割合が高くなっており、手間や時間を省く工夫を しつつ、料理は行ないたいという意識がみられる。 省力化や合理化のニーズはあるが、必ずしも料理の行為自体を省 くことは求められていないようだ。
fig.5-2.78 日常の料理は時間・手間をかけずに作りたい
fig.5-2.79 料理をする頻度を増やしたい
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
fig.5-2.80 料理を手作りすることに喜びを感じる
-167-
社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
都市生活研究所 / 都 市 研 コ ラ ム (TOKYO GAS) http://www.toshiken. com/column/food/
キッチンリフォームの現状とニーズ ~ 50 代・60 代女性がリフォームで実現したいキッチンとは~ 都市生活研究所の行った住まいと暮らしに関する調査である。リ フォームに関する生活者の実態とニーズの中で、最もリフォームが 実施されることの多い、キッチンについての調査結果である。食べ る行為そのもののことではないが、食の空間について記述する。
今回は、対象者 800 名について行ったキッチンリフォームに関 する調査から抜粋したものを示す。
以下はキッチンの不満について示したものである (fig.5-2.81)。 収納に関する不満が多いことが分かる。上位4項目が収納に関す る不満であり、特に、 「狭い」や「取りづらいなど」いまキッチン にある物に対して空間が足りていないということが不満になってい る。
fig.5-2.81 キッチンの不満
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
次のグラフは、年代ごとの調理器具の所有率 (fig.5-2.82) と食材 都市生活研究所 / 都
ストックの所有率 (fig.5-2.83) である。全体として、年代が高いほ
市 研 コ ラ ム (TOKYO
うが持っているものが多い。調理器具については、年齢を重ねてい
GAS) http://www.toshiken. com/column/food/
くうちに足りないものを買い足したり、必要になる機会が訪れるこ とが稀にあるからだと思われるが、食材ストックに関しては、世代 ごとの性格や習慣の違いだといえるだろう。若い世代になるにつれ て、社会が便利になり、食糧を買い込んで家の中で保管しておかな くても、足りなくなったらすぐに買いにいけるという習慣になって きたのだと考えられる。
fig.5-2.82 調理器具の所有率
fig.5-2.83 食品ストックの所有率
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-2. 社会生活調査
都市生活研究所 / 都
次のアンケートはリフォーム実施者に行ったものである。収納物
市 研 コ ラ ム (TOKYO
の量がリフォーム実施前とどのように変わったか年代ごとに表した
GAS) http://www.toshiken. com/column/food/
もの (fig.5-2.85) である。グラフを見ると、リフォームによって物 が少なくなったという人がいることがわかる。これは、特に 50 代 60 代と年代が高い人程多いことがかわる。
fig.5-2.84 リフォームによる収納物量の増減
収納量が変化した人にその理由を聞いたところ、特に 60 代で 「使わないものを処分した」という回答が多くあがっていた。さら に、この変化による気持ちとして「量が減って満足」と答えた人 が、50 代・60 代では 3 割を超えている。もともと多く物を持ちす ぎている高い年代の人達は、リフォームによって、本当に要るもの、 使うものだけに整理する機会になっているのかもしれない。逆に、 都市生活研究所 / 都 市 研 コ ラ ム (TOKYO GAS) http://www.toshiken.
30 代 40 代の人達は、リフォームによって狭くて自由が聞かなかっ たキッチンから開放され、新たに欲しかった調理器具や必要なだけ の保存食材を置き、より便利なキッチン空間にしているのだろう。
com/column/food/
fig.5-2.85 収納物量の変化の理由
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
fig.5-2.86 収納物量の変化と満足感
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社会統計の調査
5 5-3.1 産業と食
5-3 社会調査からわかる現代の食生活習慣 5-3.1 産業と食 サンケイリビング新
<外食産業と内食化>
聞社 OL マーケットレ
近年外食産業は飽和するほどにまで増え、どのようなメニューで
ポート (シティリビングホー
も好きに選べる豊かな時代となった。 「ラーメン激戦区」などとい
ム ペ ー ジ「Citywave」
う言葉ができるほどに店が立ち並び、互いに客を取り合うほどに、
メール会員に対する
店が溢れている。しかし一方で最近では、あえて外食をしないとい
WEB アンケート 2011
う人も増えてきている。以前ではクリスマスや誕生日などの特別な
年 11 月) h t t p : / / w w w .
日こそ、「贅沢に外食をする」ことが多かったが、最近ではクリス
sankeiliving.co.jp/
マスに家で過ごすという人が増えてきているというのだ (fig.5-3.1)。
research/ol/109.html
これは、ここ数年の不景気による影響だと考えられる。実際に個人 の意識としても、20%の OL がクリスマスの過ごし方が変わってき ていると答えており、家で過ごすようになったと答える人が 70% を超えた (fig.5-3.2)。 Q, 今年のクリスマスをどのように過ごしますか?また、去年はどのように過ご しましたか?
fig.5-3.1 クリスマスをどのように過ごすか Q, クリスマスの過ごし方はどのように変わったと思いますか?
fig.5-3.2 クリスマスの過ごし方はどのように変わったか Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-3.1 産業と食
ビジネスマンの生活
家食が増えていることは、シチズンの行なっている調査結果から
時 間 調 査、 3 0 年 の
もわかる。そのひとつをビジネスマンに対して30年にわたって行
推移 ( シチズン調査 ) http://www.citizen.
なってきた調査の中から抜粋して以下に示す (fig.5-3.1)。1980 年
co.jp/research/
からの 10 年毎の統計結果を比較すると、夕食を「毎日」家で食べ
time/20101201/index.
ると答えている人がここ 20 年増えており、2010 年には過半数を
html
超えている。全体的にも以前は週に 4 日程度が一番多かったのに 対して、2010 年では5日以上に偏っており、毎日が一番多くなっ ている。 これらの統計から、家での食事「内食化」の傾向をみることがで きる。しかし、ひとえに「内食化」と言って、単純に家庭料理が増 えている、ブームであると捉えることは危険である。この「内食化」 は不景気の影響が大きいと思われるので、 「内食化」=「家庭料理 の増加」ではなく、実際の消費者のライフスタイルから本当のニー ズを見出さなくてはならない。 list.5-3.1 一週間のうち家で食事を摂る日数
fig.5-3.3 一週間のうち家で食事を摂る日数
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-3.1 産業と食
財 団 法 人 食 の 安 全、
<外食産業の発展>
安心財団平成23年
実際に外食産業の統計資料集の外食産業生産総額をみてみると
「外食産業統計資料集 2012 年版
(fig.5-3.4)、昭和 50 年 (1975 年 ) から平成9年 (1997 年 ) まではグ
http://anan-zaidan.
ラフが右肩上がりであるが、平成9年以降では、年々下り坂となっ
or.jp/data/index.html
ている。ここ 10 年間では下がり方が微小になってきてはいるが、 外食産業の発展はピークを超えてしまったといえるだろう。 fig.5-3.5 は、実際の消費者側が、食全体の中で外食産業を利用す る割合=「外食率」と外部の食を購入する ( 広義では外食に入るが、 飲食物の商品の購入を含めたもの ) 割合=「食の外部化率」のふた つの変化について示している。外食率のグラフは fig.5-3.4 の外食産 業計のグラフに対応した山を描いており、増減変化がそれほど顕著 に表れていないものの、平成9年以降上がっていないことがわかる。 これに比べ、食の外部化率は、外食産業計・外食率と同様に平成9 年あたりに一度山があるものの、その後も右肩上がりに上がり続け ている。外食自体をしなくなり、家での食が増えたとはいっても、 昔のように全てを家で調理するのではなく、市場に出ている食品を 購入して食べることがほとんどであるということがわかる。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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社会統計の調査
5 5-3.1 産業と食
財 団 法 人 食 の 安 全、 安心財団平成23年 「外食産業統計資料集 2012 年版 http://anan-zaidan. or.jp/data/index.html
fig.5-3.4 外食産業の生産額総計
fig.5-3.5 外食率と食の外部化率の推移
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-174-
社会統計の調査
5 5-3.1 産業と食
財 団 法 人 食 の 安 全、 安心財団平成23年 「外食産業統計資料集 2012 年版 http://anan-zaidan.
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
list.5-3.3 外食率と食の外部化率の推移
list.5-3.2 外食産業の生産額総計
or.jp/data/index.html
-175-
社会統計の調査
5 5-3.1 産業と食
中央調査法 No.617( 一
<コンビニエンスストアと外部食>
般 社 会 法 人 中 央 調
前述の外部食にあたるインスタント食品や市販のお惣菜などの加
査社 ) http://www.crs.or.jp/
工食品、半加工食品を購入する割合についてわかる統計を下記に示
backno/No617/6172.
した。fig.5-2.10 はインスタント食品を食べるかという問いに対す
htm
る回答であり、fig.5-2.12 は市販の惣菜を食べるかという問いに対 する回答を示したものである。両方とも 8 割を超える人々がこれ
都市生活研究所 / 都 市 研 コ ラ ム (TOKYO
らの外部食を利用している。また、5-2.73 はお惣菜を実際に利用 している頻度の割合を示しており、3割を超える人々が週に1回以
GAS)
上、6割程度の人々が月に2, 3回以上利用している。fig.5-2.74 は、
http://www.toshiken.
下ごしらえ済みの食材を利用する割合を示しており、 「たまにある」
com/column/food/
と答えた人を含めると、7割程度の人が利用しているということが わかる。
fig.5-2.10 インスタント食品を食べる割合 fig.5-2.12 市販のそうざいを食べる割合
fig.5-2.73 お惣菜を利用する頻度
fig.5-2.74 下ごしらえ済み食材や半調理品を利用すること
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-176-
社会統計の調査
5 5-3.1 産業と食
一 般 社 会 法 人 中 央
実際にコンビニエンスストアで食糧を買うという人は多い。もと
調査社 2001.5
もとは、営業時間が長く、さまざまなものを売っている家の近くに
http://www.crs.or.jp/ data/pdf/cvs.pdf
ある便利なお店、というものであったが、近年ではその家の近くで あり営業時間が長いという利点から、食糧が急に必要になった時な どに利用することも多い。昔のように家にストックしておくことが 少なくなった現代において、このような近くにある店というのは冷 蔵庫の代わりといっても過言ではないほどよく、食糧調達先として 選ばれている。fig.5-2.30 は回答者が一ヶ月間にコンビニエンスス トアで購入したものについて答えてもらったものである。第三位ま でが飲食料であり、ビールやお酒、その他の食料品を含め上位に来 ている。
5-2.30 一ヶ月間にコンビニエンスストアで買ったもの
外食の頻度が少なくなってきた現代であるが、昔のように家で食 材を調理、加工して長期にわたって保管し、手間をかけて料理をす るわけではなく、半加工食品やお惣菜やお弁当などそのまま食べら れる食材を購入する「食の外部化」は進んでいる。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-177-
社会統計の調査
5 5-3.2 料理について
5-3.2 料理について 都市生活研究所 / 都 市 研 コ ラ ム (TOKYO GAS) http://www.toshiken. com/column/food/
<調理にかける時間> 前項で、夕食を家で食べることが増えているという調査統計の結 果について記述したが、fig.5-2.70 の夕食を家で作る頻度について 示したグラフをみると、近年めざましく割合が上がっているという ことはなくむしろ頻度は下がっている。つまり、夕食を家で食べる ことが増えた分だけ、料理をする回数が増えたわけではないのだ。 次に、夕食を作るのにかける時間について fig.5-2.71 を見てみる と、30 分から1時間未満という比較的短時間で調理を済ませると いう回答が、10 年前に比べて増えてきていることがわかる。
fig.5-2.70 夕食を家で作る頻度
fig.5-2.71 夕食を作るのにかける時間
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-178-
社会統計の調査
5 5-3.2 料理について
中央調査報(No.595)
以下の 2 つのグラフは、料理にかける時間を減らすようにしてい
2003 年 10 月「 味 の
るかという質問の回答を示したものである。fig.5-2.16 は「料理に
素(株)AMC調査」 より主婦の眼から見
かける時間を減らすようにしている」と答えた人と、 「減らしてい
た現代の食生活
ない」と答えた人の割合の時代ごとの変化をグラフにしたものであ
http://www.crs.
る。「減らしていない」と答えている人の割合は 1994 年に一度上
or.jp/backno/old/
がっているものの、1980 年から全体的に右肩下がりになっている。
No595/5951.htm
逆に、「減らすようにしている」と答えている人の割合は、1982 年からずっと右肩上がりになっており、 「減らしていない」と答え た人の割合に近づいてきている。 fig.5-2.17 は年代別に分けて示されている。これをみると、 「時間 短縮」を意識的に行なっているのは若い世代のほうが多く、60 代 では6割近くが「時間短縮」の意志はない。 「時間短縮」の意志は 特に 30 代に多く、この年代が仕事や育児など、女性にとって一番 忙しい年代であるからだと思われる。
fig.5-2.16 料理の省時間志向
fig.5-2.17 年代ごとの料理の省時間志向
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-179-
社会統計の調査
5 5-3.2 料理について
働く独身女性の生活
fig5-2.67 は、働く女性の家事の時間の内訳であるが、20 年前の
時間 ( シチズン調査 )
調査では「料理」とそれ以外の「家事・洗濯」を分けていたにもか
http://www.citizen. co.jp/research/
かわらずどちらとも、現在の家事にかける時間よりも短くなってい
time/20101201/index.
る。これには、家電製品の進化や家族人数の縮小なども理由になり
html
そうだが、女性が仕事に就くようになり、家事にかける時間を意識 的に短縮するようになったというのが一番の理由であろう。家事・ 料理にかける時間をできるだけ短縮したいというニーズを読み取る ことが出来る。 家事の時間
fig.5-2.67 働く独身女性の自宅での行動の所要時間より抜粋
調理にかける時間だけではない。現代のビジネスマンには、生活 にかける時間自体が短縮せざるを得なくなっているのだ。fig.5-3.6 は、ビジネスマンが生活の中で一日の食事にかける時間を 30 年に わたって示したものである。社会が便利になり、ライフスタイルが 変わってきているこの数十年間の中で、食にかける時間はこれまで あまり変わってこなかった。しかし、ここ 10 年程度で急激に短く なっている。最近のビジネスマンがそれだけ時間に追われて生活し ているかが見て取れる結果となった。 list.5-3.4 食事にかかる平均時間
fig.5-3.6 食事にかかる平均時間
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-180-
社会統計の調査
5 5-3.2 料理について
四半世紀比較で見る
また、fig.5-2.68 は朝食にかける理想の時間を聞いたものであり、
ビジネスマンと OL の
実際にかけている時間ではなく、必要とする希望の時間を聞いたも
生活時間調査 ( シチズ ン調査 )
のである。この結果でも、 25 年前と比較して食の時間は減っている。
http://www.citizen.
一番多い 20 分と答えた人は、25 年前とあまり変わらず 40%を超
co.jp/research/
えているが、30 分欲しいと答えた人の割合は減っており、10 分で
time/19990610/index.
よいと答えた人の割合は増えている。全体的に、短い時間で良いと
html
答えている人の割合が増えているということだ。不景気の影響で外 食や贅沢な食事をしなくなった現代においては、食事をゆっくり摂 るという生活習慣自体が失われつつあるのかもしれない。
fig.5-2.68 朝食にかける理想の時間
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-181-
社会統計の調査
5 5-3.2 料理について
都市生活研究所 / 都 市 研 コ ラ ム (TOKYO GAS) http://www.toshiken. com/column/food/
<料理願望> 前述の通り、食や調理に対して、 「なるべく時間短縮したい」と いうニーズは明らかである。そしてもうひとつ、 「手間をかけずに 作りたい」、というニーズもある (fig.5-2.78)。これは、手間がかか る=時間がかかる、という関連が大きいと思われるが、このニーズ を叶えるべく、現代にはお弁当やインスタント食品、半調理食品な ど便利な食材が市場に出回っており、多くの主婦もこれらを利用し ていることがわかっている。
fig.5-2.78 日常の料理は時間・手間をかけずに作りたい
一方で、「料理は面倒くさいもの」 「必要ないこと」と考えている わけではないようだ。生活の中で食を重視している人々の割合は 減ってきてはいるものの、近年の食材への不安感などから改めて食 の見直しを行なっている家庭も増えてきている。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-182-
社会統計の調査
5 5-3.2 料理について
中央調査報(No.595)
主婦への質問の中で「家族が喜ぶ食卓づくりを心がけていますか」
2003 年 10 月「 味 の
というものがあった (fig.5-2.21) が、 「はい」と回答した人が 43%、
素(株)AMC調査」 より主婦の眼から見
「どちらかといえば、はい」と答えた人を含めると 93%にものぼる
た現代の食生活
アンケート結果が出ている。この回答をした主婦のほとんどが前項
http://www.crs.
で述べたように、 「料理を省力化したい」と答えている人たちである。
or.jp/backno/old/
つまり、近年食にかける時間を取りづらくはなったものの、食をど
No595/5951.htm
うてもいいとは考えておらず、家族で楽しめるような食を提供した いという思いはあるのである。
fig.5-2.21 家族の食卓に対する意識
また、同じ調査の中で、 「いわゆる『我が家の味』というものを 大切にしたいと考えていますか」というアンケートがあった (fig.52.20) が、年代ごとの多少の差はあるものの、8 割近くの人々が「大 切にしたいと思う」と答えている。30 代 40 代よりも、若者であ る 20 代の方がその割合が高いことも注目すべきことである。
fig.5-2.20「我が家の味」に対する意識
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-183-
社会統計の調査
5 5-3.2 料理について
都市生活研究所 / 都 市 研 コ ラ ム (TOKYO GAS) http://www.toshiken. com/column/food/
東京ガスの都市生活研究所の行なっている調査では、もっと直 接的に料理についての考えを聞いている。fig.5-2.79 は、アンケー ト回答者自身が料理をする頻度を増やしたいかどうかについて示 したグラフである。30 代 40 代に比べ、20 代の方が増やしたいと 思っている人の割合が多いことが分かる。まず、30 代以上は家庭 を持つ主婦も多いため、20 代に比べて、現在の料理をしている頻 度が多いことが考えられる。このため、現在料理をすることの少な い 20 代が料理をする頻度を増やしたいと願うことは普通であろう。 しかし、全体的に「料理をする頻度を増やしたい」と答えている人 の方が「減らしたい」と答えている人よりも多く、20 代では「増 やしたい」と答えている人が過半数を超えていることは注目すべき 結果である。また、同様に fig.5-2.80 では「料理を手作りすること に喜びを感じる」と答えている人が「あてはまらない」と答える人 よりも多く、20 代では5割近くにのぼっている。 「料理」自体が面倒くさくなるべくなら、 「したくないもの」 、と いうわけではなく、 「ゆっくりと料理を楽しむ」時間がないために 省力化できるものなら、便利なものを利用しているだけなのである。 これらのアンケート統計結果から、忙しい日々の生活の中で、料 理をして、楽しく安全な食卓の演出をしたい、という本当のニーズ を拾い上げることができる。
fig.5-2.79 料理をする頻度を増やしたい
fig.5-2.80 料理を手作りすることに喜びを感じる
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-184-
ライフスタイルと空間
ライフスタイルと空間
6
食のライフスタイルと空間の変化
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
6
6-1
時代と空間の変化
6-1.1
時代とライフスタイルの変化
6-1.2
キッチンは要るのか
6-1.3
現代の食行動
6-1.4
-186-
ライフスタイルと空間
6 6-1.1 時代と空間の変化
6-1. 食のライフスタイルと空間の変化 6-1.1 時代と空間の変化
古代
外
食行動に関わる空間要素、機能要素について、歴史
食材 火
食 水
内
ごとに変遷をまとめて fig.6-1.1 にダイアグラムとし て示す。 機能要素は、 「火」 「水」 「( 食糧 ) 保存」 「食べる」
寝
の4つの機能空間について扱うものとする。古代住居 は、人工的につくるものでなく岩や木などで自然にで
外
きた洞穴状の囲まれた空間であった。その頃は食や生
食材
活全般は住居の外で行われており、住居内は寝るため
水
内 火 食 寝
の護られた空間であった。後に、人が建築をつくるよ うになっても、最初は食も生活もすべて外で行われて いた。 住居を固定するようになると、集落単位でなく、各 家庭ごとに食の空間を設けるようになり、 「火を使う
食材 火 かまど
水 内 食
寝
ところ」を各住戸に設置するようになった。 「火を使 うところ」はさらに安定したものを施工するようにな り、 「かまど」が作られるようになった。fig.6-1.2 に あるように、この時、寒い地域では「かまど」ではな く部屋の真ん中に「囲炉裏」を施工するようになった。
食材
中世
火
水
水
井戸
内 食
次に、住居空間に取り込まれたのは、 「食糧」である。 古代から建築がつくられるようになって倉庫を建てて 集落の食糧の保管を行なってきた。平安時代ごろにな
寝
ると、田畑で取ってきた食糧を別棟で保管するのでは なく、家の中に入れるようになってきた。宮中など、
火 水 食材保存
広い建物内でも、食糧を保管する土間と火を使うかま
近代
どのある土間が、殿様やお姫様が食べる部屋とは別に 存在していた。また、土間の横にある板の間で皿に盛 り付け配膳をしており、それが、台所の起源である。
内 食
寝
最後に、 「水」の問題であった。海や川、湖から取っ てきていた「水」は、各家庭に直接引けるようになる
現代
火 水 食材保存 冷
内
食
までに時間がかかった。まず、井戸を掘り、水を汲 み上げる技術ができ、町の中や集落の中に作られる ようになった。裕福な家庭では家の敷地内に井戸が掘 られていたが、家の中に取り込まれるようになったの
寝
は、明治時代以降であった。 「水を使うところ」とし
fig.6-1.1 時代と食空間の
て、家の中に水を流せる場所を施工するようになった
変化概要ダイアグラム
のは、江戸時代後期ごろからである。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-187-
ライフスタイルと空間
6 6-1.1 時代と空間の変化
LDK 空間の遍歴 城下町の一間
囲炉裏
農家の台所
火を 台所イメージ
家の中へ
火の周りで集まって 食事
宮中の台所
かまどの登場
土間キッチン
土間キッチンの前身 年代
紀元前 1000 年以前
紀元0年前後
(縄文時代以前)
1000 年前後
(弥生時代)
1300 年頃
(平安時代)
1700 年頃
(室町・鎌倉時代)
(江戸時代)
E:土間 K:キッチン B:寝床 プランの変化
K E
B
E K
生活の中心
B
寝床
囲炉裏の周り
土間 寝床
生活の中心
K
生活の中心
B
寝床
生活の中心
B
寝床 板の間 or 畳
が土間
火の周り
E
火の周り=外
K
E
K
土間
B
E
土間
かまどの設置
K
板の間
寝床
B
寝室兼食事 板の間 or 畳
土間
B 屋内生活スタイルへ スタイル
K
E K
寝室 板の間 or 畳
寝室の切り離し
住居が始まった頃
住居の建物の
土間が生活の中心の場
寝室の切り離し
火は屋外
中に火が持ち込まれる
かまど、炉など
土間はキッチン中心の
場所の固定
台所空間へ固定化されていく
調理も生活も屋外
【参考】 台所空間学<摘録版>(2000 年 )/ 山口昌伴 にっぽんの台所文化史 (1991 年 )/ 小菅桂子著
和・リビングスタイル
居間スタイル
LDK 一室スタイル
イメージ
L D K
土間スタイル 団地スタイル 年代
1955 年頃
1975 年頃
(昭和 30 年頃)
(昭和 50 年頃)
K:キッチン D:ダイニング L:リビング n:個室 プランの変化
( 間取りはnLDK)
E
LD 居間・ちゃぶ台 畳 K
n
2000 年頃 (平成 12 年頃)
板の間
D 居間・ちゃぶ台
板の間→フローリングへ
ソファー 板の間 or 畳
D
テーブル・椅子で食事
L
ソファー
畳
L
n 寝室
土間
K
n 寝室
寝室兼食事 板の間 or 畳
DK テーブル・椅子で食事
DK 食事
板の間
L
n 居間兼寝室 畳
n:個室 個室化へ
n
板の間 居間 板の間 or 畳
カウンターやオープン
フローリング
テーブル・椅子で
↓
K
K
K 板の間
B:寝床
のスタイル
L D K
洋・リビングスタイル
1800 年代 (幕末以前)
寝室
n 寝室 再び一室化
機能分離 かつての日本では
キッチンが板の間
カウンターキッチンやオープン
キッチンは土間
になる
キッチンなどキッチンとダイニン グを分けないスタイルが増える
D
L
板の間で配膳をし、
戦後の団地の普及により
椅子に座って食事
畳の茶の間・居間で
ダイニングキッチンの
するのが主流になる
食事をとった
スタイルが流行る
ちゃぶ台をどけて
各個人の個室が寝室
応接間兼リビングなど
布団を敷いて寝る
となり、 居間で寝な
椅子に座ってテレビを見る
くなる
習慣が普及する
fig.6-1.2 住居における食空間の変遷まとめ
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
【参考】 51C- 家族を容れるハコの戦後と現在 五一 C 白書
-188-
ライフスタイルと空間
6 6-1.2 時代とライフスタイルの変化
6-1.2 時代とライフスタイルの変化 古代では、人間の生活は、 「寝る」以外すべて外で行なっていた。 食糧も水もすべて外にあり、住居の中だけでは生活が成り立たな かった。その後、稲作など安定した食糧の確保ができるようになる と、住居建築はめざましい進化を遂げた。 「かまど」が施工され、 家の中で食事を準備する場所がつくられ、別棟として集落で共同の 「食糧倉庫」が建てられるようになった。食糧が、“採りに行くもの” でなく、“育てるもの” となって、家から離れて生活をしなくても、 集落内で生活が成り立つようになった。 土間は日本の歴史の中で長い間、 「生活の中心」の場所であった。 食事の準備はもちろん、長時間かけて行うため、女性は一日中炊事 場から離れられなかっただろう。その他にも、取ってきた食物を分 けたり、わらじや縄、傘などの生活に必要な道具を手作りする場所 も、服をつくる場所も土間であった。また、土間は食糧の保存場所 でもあり、各家庭で食糧を土間に並べ、もともと長期保存できない 食糧は、乾燥させたり発酵させるなど加工しながら食糧を長期保存 するようになっていった。 その後食が安定してきた人々の生活は、一日を食に費やす必要性 がなくなって行き、他の様々なことに一日を費やす人が増えてきた。 これが職業の多様化となっていき、現代にも「食にかける時間の短 縮化」として繋がっている。現代では、調理方法の簡略化や、調理 済み食材が簡単に手に入ることなどから、さらに「食の簡略化」 「時 間短縮化」 「省力化」が進み、逆に “食にかけられる時間” が少な すぎて問題となっているほどである。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-189-
ライフスタイルと空間
6 6-1.2 時代とライフスタイルの変化
狩猟時代
昭和時代
江戸時代
弥生時代 24
24
24 6
18
6
18
12
食事を 食べられる時間帯
明治時代
平安∼鎌倉時代
24 6
18
6
18
12
12
12
江戸時代
一日のうち 食にかける時間
食材
加工
効率化 省力化 24
24
現代
24h
調理
販売
6
18 12
fig.6-1.3 時代の変化と食のライフスタイルについて
食材
加工 調理 食材
食材 食材
調理 調理
食
食
調理
調理 食 住
住 寝
食 住
食
住 寝
食材
寝
寝 食材
加工
外食
経済的問題 食への不安 ↓ 自然食品ブランド 志向
自然食 効率化 ブーム 省力化 ↓ 調理方法の改善 で解決?
食材
調理
調理
食
食
住
fig.6-1.4 食生活の変遷ダイアグラム
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
寝
住 寝
-190-
ライフスタイルと空間
6 6-1.3 キッチンは要るのか
6-1.3 キッチンは要るのか パナソニックキッチン
食にかける時間が減少、さらに短縮されているいま、キッチンセッ
リビングステーション
トの機能を使い切っている人がどれほど要るのか。また、その機能
情報レタ(ー 2011.9.6)
は他の道具で代わりになるのではないか。
https://prtimes.jp/data/
キッチンはいま家具であり、空間であり、ひとつの部屋でもある。
corp/3440/f0fc5a0e7594
しかし昔のようにそこは、食にかける場所に限定されたものではな
2eedc9c4c1cff24c8bcd.
く、ひとつの装飾品や、車のような趣味やステータスの象徴ともなっ
ている。また一方で、新居の選ぶ時やリフォーム時など、キッチン は重視されやすいとも言われる。特に女性にアンケートを行ったも のでは、トップか、3位以内までには必ずランクインする。しかし これらも、キッチンの選び方は、 『機能とデザイン』と唱われ、デ ザインが必ずついてくるほどに、デザイン性も豊かでバリエーショ ンが増え、インテリア家具としての重要度が上がっているという意 味なのである。 パナソニックが行った調査で、以下のようなものがある。システ ムキッチンに当たり前に備わっている「グリル」と「真ん中のコンロ」 についての、使用実態を調べたところ、4家庭に一つはグリルは使 われていないというものである。また、日本以外では、魚を焼くと いう調理は屋外で行うところもあるそうだ。コンロに関しては、料 理をする人、しない人では差がないことも注目すべき結果である。
fig.6-1.5 グリルが使われていない
fig.6-1.6 真ん中のコンロが使われていない
近年流行っている電子レンジ調理や IH などを利用すれば、もう キッチンは必要ないのかもしれない。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-191-
食糧の入手
食材
古代
外
食事空間を決める 週1,2日
火
食
食べ物を決める
食べに行く
店で食べる 食べる場所を
水
内 寝
決める
購入する
週5,6日
買って帰る
家で食べる
週1日
ライフスタイルと空間
育てる 週3,4日
食べられる場所を
作る
採ってくる
水
内 火 食 寝
6-1.4 現代の食行動
食材
外
6
探す
インスタント食品やレトルト などの半調理済み食材での 省力化料理
家庭菜園ブームから 増えては来ている ↓ 作る手間が簡略化されれば もっと増えてくるだろう
6-1.4 現代の食行動 食材 火 かまど
水 食材
古代
外
内 食
食 水
火 寝
内 寝
食材
中世
火
水
食べ物を決める
食事空間を決める 週1,2日
食材
販売
食べに行く
加工
店で食べる
食べる場所を 決める
購入する
週5,6日 週1日
買って帰る
水
家で食べる
育てる
井戸
外
食糧の入手
調理
食材
内 食
水
寝
内 火 火 水 食材保存 食
寝
週3,4日
食事
食べられる場所を
作る
fig.6-1.7 現代の食の流れ 採ってくる
探す
fig.6-1.7 は現代の食の、 「食材」から実際に「食べる」 インスタント食品やレトルト
家庭菜園ブームから
などの半調理済み食材での 増えては来ている までの流れである。これらは、それぞれ独立しており、 省力化料理 ↓ 作る手間が簡略化されれば
近代
もっと増えてくるだろう 空間としての繋がりは薄い、またはなくても成り立つも
のである。fig.6-1.8 に示すように、古代人々の食に関わ 内食材 食
寝火 かまど
水 火 水内 食材保存 食冷
現代
寝
中世
火 寝水
とき、必ず備え付けられているシステムキッチンは、作
食事 調理 率化に特化したものが多くデザインされている。当たり
内 食
寝
火 水 食材保存 食材
前になっている現代の機能美システムキッチンはこれか らも今の形のままで良いのだろうか。 食糧の入手
食べ物を決める
近代 代 古
食べに行く
内
内 食
寝
寝
現代
水
火 水 食材保存 食材 冷
内
店で食べる 食べる場所を 決める
購入する
週5,6日
買って帰る
外
食事空間を決める 週1,2日
火
食 水
の頃は面であった、食の場は、その後キッチンセット、 食材 販売 加工
業動線をできるだけ短くして身体への負担を減らし、効
井戸
外
食の部屋ひとつに収まるようなレイアウトとなった。こ
に収めた、線へと変わっていく。近年では住居をつくる
食材 水
間の中で収まるようになっていき、中世から近代までは、
さらにシステムキッチンとなり、一連の食の場を1動線
食
内
る場は、土地全体であった。それが徐々に限定された空
食
週1日
育てる 週3,4日
内 火 食 寝寝
食べられる場所を
作る
採ってくる
fig.6-1.8 食の場の変遷
家で食べる
家庭菜園ブームから 増えては来ている ↓ 作る手間が簡略化されれば もっと増えてくるだろう
探す
インスタント食品やレトルト などの半調理済み食材での 省力化料理
fig.6-1.9 調査からわかった食行動
食材 火 かまど
-192-
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda 水 .Univ 2012 内 食
寝
食材
加工
販売
ケーススタディー
ケーススタディー 〜研究室食の例をもとに〜
7
ケーススタディー調査
7-1
調査概要
7-1.1
調査方法
7-1.2
観察調査
7-2
観察調査調査結果
7-2.1
観察調査分析考察
7-2.2
研究室食レポート
7-3
食レポート調査結果
7-3.1
食レポート分析考察
7-3.2
研究室食に関する意識調査
7-4
意識調査調査結果
7-4.1
意識調査考察分析
7-4.2
研究室食の調査まとめ
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
7
7-5
-194-
ケーススタディー
7 7-1.1. 調査概要
7-1. ケーススタディー 〜研究室食の例をもとに〜 7-1.1 調査概要 今回、キッチンセットを有していない空間での食生活ということ で、ケーススタディーとして、大学研究室での食行動の観察調査を 行った。 大学の研究室では、日々学生たちが夜遅くまでや泊まり込みで作 業を行なっており、 食事を学内で済ますという学生も多くいる。キャ ンパスのカフェテリアは閉まる時間が早いことなどから、高頻度で 利用している人は少なく、多くの場合は大学の近くの外食店か、コ ンビニなどで購入して大学内に持込み、食事をすることが多い。 しかし、稀の一度の場合は選択肢がたくさんあるように見えるが、 数日続けば飽きも来、偏ったコンビニ食では栄養バランスも悪く なってしまうため体調に差し障ることもある。各自で食に対する工 夫が必要となってくる。この調査では、研究室での食事の実態、そ れぞれの研究室での食事に対する意識、行なっている工夫や食の満 足度に関しても明らかにしている。
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ケーススタディー
7 7-1.2. 調査方法
7-1.2 調査方法 【調査方法1】定点カメラによる研究室内での行動観察 ■期間:2012/7/7~18,10/24~11/8,11/22~2013/1/3 ■データ数:1分毎に撮影されたカメラの画像 65,986 枚 ■対象;早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 ■目的 : 研究室内の空間的な把握、調理空間や食事空間 食事の時間帯、調理にかける時間、食事にかける時間
fig.7-1.1 調査対象研究室の様子
丸テーブル
9300
丸テーブル
5200
ホワイトボード大
個人用小テーブル 窓
出入口
豆型テーブル
カメラ1 ラグ
丸テーブル
3200
ホワイトボード小 丸テーブル
AO機器 機材置き場
6790
fig.7-1.2 研究室のレイアウトとカメラの位置
fig.7-1.3 使用した web カメラと設置の様子
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ケーススタディー
7 7-1.2. 調査方法
調査対象空間の詳細 調査場所:早稲田大学建築学科渡辺仁史研究室 早稲田大学西早稲田キャンパス55号館 N 棟801号室 研究室にある機具:冷蔵庫、電子レンジ、ポット 調理器具:包丁、まな板、食器、鍋、その他各自持ち込んだ電子レ ンジ調理用シリコンスチーマーや電子レンジ用ミニ炊飯鍋など
電子レンジ
ティファールポット 調理器具・食器棚
冷蔵庫
流し
出入口
個人用小テーブル 丸テーブル
窓
豆型テーブル
AO機器 機材置き場
フリー用丸テーブル 個人用小テーブル
丸テーブルデスクトップ席
フリー用丸テーブル
豆型テーブルデスクトップ席 個人用小テーブル
fig.7-1.4 調査対象空間の詳細 豆型テーブル
丸テーブル
1700
1200
個人用テーブル
500
1個
4個
4個
キャスター付き キャスター付き、一応可動 デスクトップを乗せている席と何も乗せていないフリー 共有のため誰でも の席があり、 それらは模様替えや使い方によって自由に 好きに動かせる 変えられている。
fig.7-1.5 調査対象空間のオフィス家具について
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ケーススタディー
7 7-1.2. 調査方法
調査内容 2012/12/25 19:16~19:24
fig.7-1.6 食事の準備 2012/12/25 19:19~19:24
fig.7-1.7 研究室で調理中 2012/12/25 19:25~19:38
fig.7-1.8 食事をしている時
電子レンジ
ティファールポット 調理器具・食器棚
冷蔵庫
流し
出入口
調理場所
個人用小テーブル 窓
豆型テーブル
9300
丸テーブル
AO機器 機材置き場
作業場所
6790 fig.7-1.9 食事の様子
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ケーススタディー
7 7-1.2. 調査方法
【調査方法 2】研究室内で行った食事レポート ■調査期間:1月4日以降 ■調査内容:日付、時刻、食べたもの、調理方法、 調理に使った調理器具、その他おかず ■目的:それぞれの実際に食した食事メニュー、細かな 動作、調理で行った行為や実際に使ったものを調べる。
作っている様子
食事の様子の写真
fig.7-1.10 食レポート内容 カレーライス
卵かけご飯
↑
コーンサラダ、ウィンナー
↑
fig.7-1.11 食レポート写真例
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ケーススタディー
7 7-1.2. 調査方法
【調査方法 3】研究室食についてのアンケート 調査目的:食の満足感につながることについての意識調査 調査日程:2013 年 1 月 04 日〜 14 日 調査対象:建築学科の研究室 ( 計6研究室 ) に所属しており、研究 室内で夜まで作業をして夕飯を食べることがある学生 調査内容: ・実際に研究室で食事をする実態 ・研究室食の理由 ・食事にかける時間 ・食べているもの ・研究室調理について ・研究室で食事をする際に気にかけていること
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ケーススタディー
7 7-1.2. 調査方法
早稲田大学大学院で建築学を専攻しております、
渡辺仁史研究室修士二年の余語悠里佳と申します。
今回修士論文として、『家庭の中での食の場の空間(食料・料理・食事)のあり方』をテーマに研究を進めており、 みなさまの食に関する生活調査をさせていただいております。
前回もご協力頂いた方もいらっしゃると思いますが、前回に引き続きの調査であり今回のアンケートでは「研究室」という 特殊な場所での食事についてお聞きしたいと思います。
なお、このアンケートは学術目的のためだけに利用し、いただいたデータを個人が特定できる形で用いることはありません。 また、データの管理は厳重に行い、研究室外部への流出はいたしません。
本アンケートに関するご質問等ありましたら、以下まで連絡いただけますようよろしくお願いいたします。 アンケートは全体で5分程度のものです。
締め切りは、【1月14日(月)まで】とさせていただきたいと思います。 お忙しい中と存じますが、ご協力いただければ幸いです。 どうか、よろしくお願いいたします。
早稲田大学創造理工学研究科建築学専攻 渡辺仁史研究室 修士二年 余語悠里佳 yurika-45wa115@ruri.waseda.jp
fig.7-1.9 アンケート本文 01
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ケーススタディー
7 7-1.2. 調査方法
fig.7-1.10 アンケート本文 02
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ケーススタディー
7 7-1.2. 調査方法
fig.7-1.11 アンケート本文 03
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ケーススタディー
7 7-1.2. 調査方法
fig.7-1.12 アンケート本文 04
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ケーススタディー
7 7-2.1. 観察調査結果
7-2. 観察調査 7-2.1 観察調査調査結果 行動観察調査から抽出した計 108 個の「食行動」について、ま とめた結果を載せていく。食事の種類は、コンビニやマクドナルド などで購入したすぐに食べられるものや、家から持ってきた弁当、 少しの調理を必要とするインスタント食品、米を炊くなど様々な種 類がある。今回は、“食” に着目しているが、その中でも食事とい う行為に焦点を置いている。そのため、お菓子などの食事ではない とみなされる物に関しては、除外している。また、研究室内での「食 行動」を観察しているため、研究室から外へ食べに行く、外へ購入 しに行くなどの行動部分は除外されている。 fig.7-2.1 は抽出した「食行動」の時間帯について示したものであ る。示されている時刻は、 「食行動」の開始された時刻である。研 究室は、作業や会議などを目的としている場であるため、家庭と異 なり、夜通し作業を行うことは珍しくなく、それぞれの生活パター ンも異なっている。fig7-2.2 をみると、時刻はばらけており、夜中 でも「食行動」が行われていることがわかる。ライフサイクルが、 一般的な朝、昼、夜という概念が成り立っていない空間とも言える。 しかし、このグラフをみると、13時と20時にピークを迎えてお り、“昼ごはん”、“夜ごはん” という概念に沿って「食行動」が行わ れやすいことが読み取れる。 「食行動」は空腹に促されて行うこと であるが、 『ごはんとはこういうものである』というような根強い 固定概念によって行われているということもありそうだ。
fig.7-2.1 研究室での食事の時間帯
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の時間帯
0
5
10
15
20
fig.7-2.2 研究室での食行動の開始時刻
23:00 22:00 21:00 20:00 19:00 18:00 17:00 16:00 15:00 14:00 13:00 12:00 11:00 10:00 9:00 8:00 7:00 6:00 5:00 4:00 3:00 2:00 1:00 0:00 25
30
35
40
45
50
55
60
65
70
75
80
85
90
95
100 105 110
7-2.1. 観察調査結果
list.7-2.1 研究室での食事
ケーススタディー
7
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ケーススタディー
7 7-2.1. 観察調査結果
研究室での食事を「研究室食」と呼ぶこととする。fig.7-2.3 研究 室食の種類の内訳である。そのまま、何も手を加えずに食べられる ものとしては、 「コンビニ弁当」と「おにぎり、パン」 、 「マクドナ ルドのハンバーガー」であり、それらが多くなっていることがわか る。研究室の作業中に間を縫ってする食事であるため、なるべく簡 単にすぐに食べられるものを選ぶ傾向が高いといえる。 「コンビニ 弁当」に次いで多かったのが「ごはんもの」であり、これは、 「明 太子や梅干しなどを乗せたもの」 「納豆ごはん」 「レトルトのカレー や牛肉などを乗せた丼もの」などである。また、ごはん自体も、① 電子レンジ用ごはんパック、②家で炊いたものを冷凍保存、③電子 レンジ炊飯釜で米から炊飯の三種類がある。ごはんがあれば、レト ルト食品や冷凍食品、その他コンビニなどで購入できる惣菜を足し て、様々なメニューに応用することが出来る。 list.7-2.2 研究室食の種類
fig.7-2.3 研究室食の種類
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ケーススタディー
7 7-2.1 観察調査結果
fig.7-2.4 は、研究室食の準備時間と、fig7-2.5 は研究室での食に かける時間を示している。準備を必要とせず、そのまま食べられる 食品の場合も含めている。机に並べるなどの作業も準備とみなして いる。 list.7-2.3 研究室食の準備時間
list.7-2.4 食にかける時間
食事の準備時間 40 35 30 25 20 15 10 5 0
40 35 30 25 20 15 10 5 0
fig.7-2.4 研究室食の準備時間
食行動全体にかかった時間 40 35 30 25 20 15 10 5 0
40 35 30 25 20 15 10 5 0
fig.7-2.5 研究室食の食にかける時間
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ケーススタディー
7 7-2.1. 観察調査結果
食行動開始から終了まで、最短で6分から、一時間以上に及ぶも のまである。あえて外食や家に帰って食事をするという選択肢では なく、研究室内で食べるという選択をしていることもあり、15分 程度の短めの食事時間が多い。長時間の食行動では、調理時間と、 熱が冷めるまでの間の待ち時間など、必ずしも食べる時間が長いわ けではないものも含まれている。 また、研究室内での食事では、食事時間を休憩時間に充てている ことも多く、テレビを見ながらや人と喋りながら食べる行為をして いることも少なくない。 今回調査した中での食行動では、食事の準備があるものが 63%、 準備なしのものは 37%であった (fig.7-2.6)。 list.7-2.5 研究室食の準備について
fig.7-2.6 研究室食の準備について
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ケーススタディー
7 7-2.1. 観察調査結果
fig.7-2.7~9 は 行動観察を行う中で、それぞれの行為を行う場所 についてその割合を示したものである。作業は大抵の場合、パソコ ンを使っての着座姿勢での作業であり、研究室に設置してあるデス クトップパソコンを使うか、各自のノートパソコンを使うかは自由 で、席も自由に選ぶことができる。 list.7-2.6 研究室内行動観察: 作業場所について
list.7-2.7 研究室内行動観察:
fig.7-2.7 研究室内行動観察:作業場所について
食べる場所について
list.7-2.8 研究室内行動観察:
fig.7-2.8 研究室内行動観察:食べる場所について
準備場所について
fig.7-2.9 研究室内行動観察:準備場所について Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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ケーススタディー
7 7-2.1. 観察調査結果
作業場所が「丸テーブルデスクトップ席」と「豆テーブルデスク トップ席」が多いのに対して、食べる場所、準備場所は「丸テーブ ルのフリー席」が一番多く、次いで「個人用テーブル」が上がって いる。それぞれのテーブルの形状や特徴が大きく関わっている。作 業を続けながら食事をする時と、作業の席を離れ、人と話したりテ レビを見るために別の席に移動して食事をする時がある。作業をす る席に食器を置く場所がないときは、 「個人用小テーブル」をサイ ドテーブルのように使用していることが多い。 また、準備場所が「丸テーブルのフリー席」が多い理由はふたつ あると考えられる。ひとつは、フリーの席(=何もおいてない席) で広いテーブルが「丸テーブル」であるから。水を使ったり、暖め たものを置いたり、食材が溢れるなどする可能性があるため、大事 な書類やパソコンのない場所が必要となる。もう一つの理由として は、冷蔵庫や電子レンジ、流しや調理器具のある場所から一番近い テーブルが「丸テーブルのフリー席」であるからである。食べる場 所は水場や調理場所から遠くても運べるが、複数の食材や食器を並 べたり、熱いものを運ぶのには、調理全般がコンパクトにまとめら れていたほうが良いのだろう。食材が置いてある場所や水場からそ れぞれの作業を行う席までの動線の間にあるテーブルであるため、 仮置き場としてもちょうどいいのである。
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ケーススタディー
7 7-2.2. 観察調査分析考察
7-2.2 観察調査分析考察 食にかける時間について、 時間の長さを割合で示した (fig.7-2.10)。 大きく2つの山があり、 「15分前後」が一番多く、次に「30分 前後」となっている。研究室内での食事は、作業の間に行われるこ とが多いため、なるべく最短時間で食事を摂るようにしていること が多い。最短時間で食事を取りたい15分程度の人と、休憩時間に 充てて、30分取る人とで別れている。また、45分以上の時間を とる多くの場合は、加熱調理などに時間をかけたり、加熱したもの を冷ますための時間に使っている。また、食べられる状態で置いて おいても、ずっと同じ空間内にいるのでいつでも食べられるという こともある。 fig.7-2.11 は5章にて紹介した、シチズンが行ったビジネスマンの 食生活の統計調査の結果だが、近年の食事時間が短くなってきてい るとはいうものの、平均時間は1時間を超えており、研究室での食 事時間は平均 27 分であるため、家庭での食事時間よりはるかに短 いことがわかる。 list.7-2.9 研究室食の食にかける時間
list.7-2.10 家庭での食事時間の平均
fig.7-2.10 研究室食の食にかける時間の割合
シチズンによるビジネスマンの生活調査
fig.7-2.11 家庭での食事時間の平均
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ケーススタディー
7 7-2.2. 観察調査分析考察
fig.7-2.12 は食の準備時間の割合について示している。準備とい うのは、食を並べるところから電子レンジやポットを使っての加熱 調理までを含めている。5〜 10 分程度の短時間での調理が多い。 。 調理を必要としない食材を最初から用意してくることは 37%もあ る。15 分以上の準備は合わせて 10%程度である。 調理時間は、家庭での普通の料理時間よりもはるかに短い。作業 時間を減らさないため、調理の時間にあまり時間をかけたくないと いうのは当たり前だと思われる。そのため、電子レンジなどの調理 中には、調理場所を離れ、席での作業を続けていることもある。 list.7-2.11 研究室食の準備時間
list.7-2.12 研究室食の準備時間の割合
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ケーススタディー
7 7-2.2. 観察調査分析考察
研究室内で食事をする時の人数を示したものである (fig.7-2.14)。 研究室内には、所属学生が 16 名居るため、一人で過ごすことは少 なくなっている。fig7-2.13 は研究室内にいる人数であり、多い時 には 10 人以上が部屋の中でひしめいている。2人の時間が長いが、 5人位上の時も少なくはない。しかし食事は、一人で食べる時が過 半数を超えている。これは、研究室に一緒に居るとは言っても、作 業はそれぞれ別であり、会話も常には無い上に、時には寝ている、 テレビを見ているなど、人とコミュニケーションを取れる状況でな いことも少なくはなく、作業のペースを合わせて一緒に時間を合わ せて食事をすることは少ない。また、5人以上の人が研究室に居る 時も、空間内にいる全員で食事を摂るということはあまりないよう だ。部屋の中で近くにいる数人が会話を交わす程度、というのがよ く見られ、効率性が重要視されているのだろう。 list.7-2.12 研究室内にいる人数
fig.7-2.13 研究室内にいる人数
list.7-2.13 研究室内で一緒に食べる人数について
fig.7-2.14 研究室内で一緒に食べる人数について
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ケーススタディー
7 7-2.2. 観察調査分析考察
fig.7-2.15 は、食事を一緒に食べる相手の人数ごとの、その時研 究室に居る人数である。一人で食事を食べるときには、研究室内に ひとりしか居ない時が4割近く、ふたりのときが4.5割である。 やはり、研究室内にいる人数が少ないほうが一人で食事することが 多くなるようだ。しかし、数は少ないものの、研究室内に5,6人 いるときにも一人で食べることがある。 食事を一緒にする相手が一人、という時は、特に部屋に二人の場 合が多いようだ。部屋に二人の時は、食事中に二人で会話する頻度 も高くなっている。一人が食事をしていて、もう一人は食事をして いない場合も多く、相手と話せる場所に移動して話す場合も多くみ られた。 また、3人、4人以上で食事をする場合はとても少なく、その場 合でも、部屋の全員で食事をすることはない。3人の場合は、5〜 6人程度部屋にいる時、4人の場合は10人位上居るときに行われ ている。 研究室という空間が、 「食」という面においては、専門の場では なく、多目的に利用できる場であるため、各自が自由にライフサイ クルの中に「食」という行動を組み入れることが可能であり、 「食」 はそれぞれに別々の行動であることがわかる。
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ケーススタディー
7 7-2.2. 観察調査分析考察
list.7-2.14 研究室内で一緒に食べる人数に対する 研究室にいる人数
fig.7-2.15 研究室内で一緒に食べる人数に対する 研究室にいる人数 Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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ケーススタディー
7 7-2.2. 観察調査分析考察
fig.7-2.16 は研究室内で食事をした場所と、その食事の準備をし た場所をマッピングしたものである。食事をする場所はテーブルの 種類などに依存するため、マップ左端の窓際に少ないことはテーブ ルの機能や部屋自体のレイアウトが要因であると考えられる。それ 以外の部屋中央全体に、食事場所は広がっている。食事場所は、現 在の作業場所、空いている席、また個人用小テーブルを用いればど の場所でも確保することができる。しかし、準備場所は食事場所同 様に全体に広がっていることはなく、大きく3箇所にまとまってい る。これは、フリーテーブルの位置に大きく起因すると思われる。 この研究室のオフィス家具、テーブルすべてはキャスターが付いて いて可動になっており、この調査期間にも何度も大規模な模様替え、 小規模な移動が行われている。これにより、長時間滞在している席 もこまめに移動されているため、部屋全体に作業場所は広がってい る。しかし、調理場所には、いくつかの条件があり、それらを満た す場所は一部であったのだろう。その条件は、 「①食材や食器を広 げられる何もない台 ( 水などがかかって困るようなパソコンや書類 のない場所である必要がある ) ②食材や水を運ぶための最短動線の 確保、なるべく近くであること」である。
出入口
9300
窓
AO機器 機材置き場
6790
準備場所
食事場所
fig.7-2.16 研究室内の食事の場所マップ
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ケーススタディー
7 7-2.2. 観察調査分析考察
作業場所と、食事場所および準備場所との関係を、全体の総数と して、fig7-2.17 に、テーブルの機能ごとに分類してグラフ化した ものを fig.7-2.18 に示した。 作業場所はさまざまな机に比較的公平に利用されているが、食べ る場所、作業場所では偏りが見られる。また、作業場所は「個人用 小テーブル」はほとんど利用されていない。 「個人用小テーブル」は、 サイドテーブルとして、飲み物や資料を置くなど、メインの作業テー ブルとして使われることは少ない。食べる場所では、 「丸テーブル のフリー席」が一番多く、 準備場所ではさらに「丸テーブルのフリー 席」に偏りが見られる。食べる場所や作業場所が「丸テーブルデス クトップ席」や「豆テーブルデスクトップ席」などのデスクトップ の置いてある席に座っている人が、席の狭さなどの要因から広く空 いている別の席を利用して食事や食の準備場所に充てるのだと思わ れる。デスクトップ席でも食事行為自体は見られ、作業をしながら 食べるという「ながら行為」も多くみられた。 list.7-2.15 研究室内での作業場所、食べる場所、準備場所の統計
準備場所 準備場所 食べる場所 食べる場所 作業場所 作業場所
fig.7-2.17 研究室内での作業場所、食べる場所、準備場所の割合
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ケーススタディー
7 7-2.2. 観察調査分析考察
作業場所自体に総数の差があるので、作業場所選択の少ない「個 人用小テーブル」はあまり割合がわからないが、作業場所の多くは デスクトップ席と丸テーブルのフリー席であるため、その4箇所に ついて言及する。フリー席で作業をしている人は、同じフリー席で 食事も準備も行うことが多い。しかし、 「丸テーブル」が前述のレ イアウトのとおり、調理場所として最適な場所に存在しているため、 水場から遠い「丸テーブル2」の席で作業をしている人などは、こ の水場の前の「丸テーブル」を利用する事が多いのだと考えられる。 また、「丸テーブル2」では、フリー席であるため、食器を置く場 所は作ることが可能であるのにもかかわらず、食べる場所も別の席、 「個人用小テーブル」を用いている。作業場所をそのまま片づけた りせず、かつ作業中のものを汚したり壊したりしないため、食べる 場所や準備場所を離しておきたいという考えからだと思われる。ま たは、「個人用小テーブル」で食べるときには、その自由に場所と 向きを選べる特徴を生かして、テレビに向いて場所を取ったり、他 の人と話がしやすい所で食事をするというような行動もみられた。 「丸テーブルデスクトップ」 「丸テーブルフリー」のふたつの作業 場所においては、食べる場所と準備場所が同じであることが多いよ うだが、「丸テーブルフリー2」と「豆テーブルデスクトップ」の グラフを見ると、準備場所と食べる場所が異なっていることがわか る。ここから、食べる場所と、食事の準備をする場所というものは、 必要な空間条件が異なっていることがわかる。 研究室のような空間では、作業をすることが前提の場となってい るため、その場所で作業をしながら片手間に食事を摂ることは不可 能ではない。そのため、作業場所と食べる場所は同じになることも 多いが、一方で食事時間を作業から切り離して、“有意義な休憩時 間” と捉えていることもあり、この場合に必要となる食べるための 場所は、作業場所とは異なった場所である。テレビや人との会話な ど、作業とは別のことを考えられる時間とするための、外部刺激を 必要とする場合が多い。作業時間と景色が異なっていることも重要 となっており、開放的な空間を求めることもある。 準備場所としては、前述のように、食事の準備には、水などの液 体物を扱うことが多く、熱を使用することがあり、いくつかの物を 並べて使用する。これらが出来る条件として「物のない空いた広い 台」を必要とする。
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ケーススタディー
7 7-2.2. 観察調査分析考察
list.7-2.16 研究室内の食行動について作業場所ごとの 食事場所および準備場所について
fig.7-2.18 研究室内の食行動について作業場所ごとの 食事場所および準備場所について
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ケーススタディー
7 7-3.1. 食レポート調査結果
7-3. 研究室食レポート 7-3.1 食レポート調査結果 研究室内で簡単に手を加えるなどした、 「研究室食」についての レポートデータを 2013/1/4 〜 1/22 の 61 食分、245 メニューに ついて集めることが出来た。 list.7-3.1 研究室食レポートメニュー一覧
全 61 食 245 品目
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ケーススタディー
7 7-3.1. 食レポート調査結果
資料編
研究室食レポート生データ _2013.01.23_01 資料編
研究室食レポート生データ _2013.01.23_01
list.7-3.2 研究室食レポート 01 ごはん、一品物 ( カレー、丼 )
資料編
研究室食レポート生データ _2013.01.23_02
資料編
研究室食レポート生データ _2013.01.23_02
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ケーススタディー
7
資料編
7-3.1. 食レポート調査結果
研究室食レポート生データ _2013.01.23_04 _2013.01.23_03 資料編
list.7-3.3 研究室食レポート 02 研究室食レポート生データ _2013.01.23_03 ごはん、一品物 ( カレー、丼 ) 資料編
研究室食レポート生データ _2013.01.23_05 資料編
研究室食レポート生データ _2013.01.23_03
資料編 資料編
研究室食レポート生データ _2013.01.23_05 _2013.01.23_03
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ケーススタディー
7 7-3.1. 食レポート調査結果
資料編
研究室食レポート生データ _2013.01.23_03 資料編 list.7-3.4 研究室食レポート 03 研究室食レポート生データ _2013.01.23_02 ごはん、定食もの
資料編
研究室食レポート生データ _2013.01.23_04 資料編 資料編
研究室食レポート生データ _2013.01.23_04 _2013.01.23_05 研究室食レポート生データ
資料編
研究室食レポート生データ _2013.01.23_05
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資料編
研究室食レポート生データ _2013.01.23_02
ケーススタディー
7
資料編
7-3.1. 食レポート調査結果
研究室食レポート生データ _2013.01.23_03 _2013.01.23_05 _2013.01.23_02
list.7-3.5 研究室食レポート 04 麺もの
資料編
研究室食レポート生データ _2013.01.23_04
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ケーススタディー
7 7-3.1. 食レポート調査結果
研究室食のレポートで集めたデータの、食の時刻についてまとめ た。fig.7-3.1 は時刻を示しており、縦軸に時刻、横軸にレポートさ れた食事サンプル数となっている。
fig.7-3.1 レポートされた研究室食の時刻
fig.7-3.2 は 時 間 帯 を 示 し て い る。 昼 時 の 1 3 時 台、 夕 飯 時 の 20、21時に多くなっていることがわかる。 list.7-3.6 レポートされた研究室食の時間帯
2 9 9 1 3 61
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fig.7-3.2 レポートされた研究室食の時間帯
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ケーススタディー
7 7-3.2. 食レポート分析考察
7-3.2 食レポート分析考察 食レポートについて、統計分析を行った。研究室食レポートで出 された、245 品のメニューについて、下記 list のように、13 種類 に分類してメニュー数を数えたものを fig.7-3.3 に示した。米、ご はんものが多く、卵や魚類は特に少なくなっている。まず、研究室 食において、いつでもスーパーマーケットなどに買いに行くことが できるわけではないので、近くのコンビニエンスストアなどで買い 込めるものや、保存が長く効くものを選ぶ傾向が高い。ごはんもの が多い理由としては、日本人ならではの好みもあるが、他のおかず 類に対して応用が効きやすく、メニュー数や品数を増やすことがで きるからだと思われる。 fig.7-3.4 は一度の研究室食で摂られた食事の品数を示したもので ある。時間短縮に適した一品物から、定食のようなもので7品もあ るものまであった。一品でも十分食事にはなるが、工夫をして品数 を多くしている事が多く、豊かな食生活を送ろうと努力している姿 がみられた。この調査を続けていくうちにさまざまなメニューが増 44 え、生活は意識することでより食を楽しむ姿勢が生まれるのだろう。
list.7-3.7 研究室食の種類
11
9 24 3 44 25 11 10 9 12 24 20 3 23 25 29 10 31 12 4 20 23 29 31
fig.7-3.3 研究室食の種類について
4
list.7-3.8 食事の品数 7 6 5 4 3 2 7 1 6
8 6 12 8 13 7 8 7 6
5 4 3 2 1
12 8 13 7 7
fig.7-3.4 食事の品数について
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-227-
ケーススタディー
7 7-3.2. 食レポート分析考察
食事を品数ごとに分類し、それぞれの食べ物の種類を分けた。 fig.7-3.5 〜 11 は、それぞれ、7品、6品・・・1品の食事につい てのグラフである。 7品の食事の場合では、米や野菜を毎食必ず摂っている。主食が 米類の食事ではおかずが合わせやすく、品数を多くしやすいのだろ う。健康感を高めるため、栄養バランスを考慮して、意識的に野菜 を摂ることは多く、サラダを買ってきたり、野菜そのもののメニュー を摂っている。果物については品数の多い6,7品の場合で特に多 く摂られており、6品では、110%を超えている。これは果物を二 品以上摂っているときがあるということである。品数を増やすもの として、「野菜」 「果物」 「ヨーグルト」のようなもので、簡単に増 やすことが多いようだ。また、インスタントでスープを加える事で 品数を増やし、食事を豪華にすることで食への満足感に配慮してい る。 一方で一品のものでは、 「お茶漬け」や「親子丼」のような丼も のが多く、米は簡単に食べることにも、多くのおかずと組み合わせ て豪華にすることにも対応できる。 研究室食においては、魚類よりも肉類が好まれており、“限られ た調理方法” と “なるべく長期保存が可能であること” を条件とす ると、肉のほうが適しているようだ。逆に家庭の味などと呼ばれ、 家庭料理の定番でもある、惣菜類に関しては研究室内でも好んで食 べられており、家から持ってきたり、コンビニなどで購入するなど して、もう一品増やしたいという時に合わせて食べられている。 list.7-3.9 7品の場合の食事 7 8 0 1 4 0 8 1 5 7 7 6 8 0
6 5 0 Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012 2 3 0 4 2 1
fig.7-3.5 7品の場合の食事
-228-
7
7
8 0 1 4 0 8 1
ケーススタディー
7 7-3.2. 食レポート分析考察
8 0 8 1 0 4 1 0 4 8 0 1 8 5 1 7 5 7 7 6 7 8 6 0 8 0
7
5 7 7 6 8 0
6
list.7-3.10 6品の場合の食事 6
6
5 0 5 2 0 3 2 0 3 4 0 2 4 1 2 6 1 4 6 7 4 5 7 0 5 0
5 0 2 3 0 4 2 1 6 4 7 5 0
list.7-3.1155品の場合の食事 5
fig.7-3.6 6品の場合の食事
5
8 4 8 8 1 4 4 6 1 1 3 6 6 6 3 3 4 6 6 4 2 4 2 4 2 4 7 4 7 8 7 10 8 8 10 0 10 0 0
fig.7-3.7 5品の場合の食事 list.7-3.12 4品の場合の食事 4
5 2 3 6 2 5 1 0 0 1 3 3 0
fig.7-3.8 4品の場合の食事
-229-
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012 3 7 4
5 1 0 0 1 3 3 0
ケーススタディー
7 7-3.2. 食レポート分析考察
list.7-3.13 3品の場合の食事 3
7 4 0 1 3 2 1 4 3 3 3 5 1 2 5 1 list.7-3.14 2品の場合の食事 1 2 1 0 5 0 1 1 0 1 0 0 1 0 1 0 0 3 0 1 0 0 3
fig.7-3.9 3品の場合の食事
fig.7-3.10 2品の場合の食事 list.7-3.15 1品の場合の食事 1
1
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
6 1 0 0 0 6 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
fig.7-3.11 1品の場合の食事
-230-
ケーススタディー
7 7-3.2. 食レポート分析考察
次は、研究室食レポートで出された食事の、調理方法について示 している。この研究室食レポートでは、研究室内で行った調理につ いて調理方法を記述してもらった。家や外部で半調理済みのものな どは、研究室に持ち込むまでの調理方法については記載されておら ず、すべて研究室内部で行った調理行為である。 fig.7-3.12 ではそれぞれの調理行為について、その調理行為を行 われた食事回数を示しており、調理方法は、 「1,かける、混ぜる」 「2,温める」 「3,お湯を入れる」 「4,ちょい足し」 「5,茹でる」 の5つにまとめることができた。他の行為より時間がかかり、その ための調理器具も必要となってくる「茹でる」という行為はとても 少ないが、その他の行為はほとんどの食事で行われていると言える だろう。特に、 「温める」という行為については、調査時期が冬季 であることもあるが、電子レンジを利用してコンロ代わりとする調 理方法が多くあった。研究室食においては、 「お湯を入れて」食べ られる状態に戻す、インスタント食品はとても重宝されており、ど この研究室でも「ポット」があるので、高い頻度で利用されている ようだ。特に、食事のメインとしてよりも、おかずやもう一品増や したいときなどにインスタント食品は好まれている。 list.7-3.16 調理方法について
55 59 41 43 6
fig.7-3.12 調理方法について
57 51 55 12 10 6IH
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
4 10
-231-
ケーススタディー
7 7-3.2. 食レポート分析考察
次は、調理方法の組み合わせについてである (fig.7-3.13)。 「1, かける、混ぜる」 「2,温める」 「3,お湯を入れる」 「4,ちょい 足し」の4つの調理行為全てを行なっている食事が、他と群を抜い 55
て多かった。 「3, お湯を入れる」という行為は、 キッチン設備の整っ 59
た所で、1からの家庭調理を行う場合はあまり行わない行為である。 41
コンロで熱する場合、お湯を入れるのではなく、水から沸かして具 43 材を入れて「茹でる」 か、 鍋やフライパンの中に食材を入れて、 「焼く」 6 「炒める」などの調理行為になるはずだ。この行為は、インスタン ト食品やレトルト食品などを、ポットで沸かしたお湯で熱したり温 めたりするためのものであり、このような簡易調理ならではの工夫 である。また、 「温める」と「お湯を入れる」の2つの行為を行なっ ているということは、ひとつの食材だけでなく、二つ以上の食材を 調理しているということである。例えば、 『米を炊く』ことや『パ 57 スタを茹でる』ことに「温める」という行為を行い、それに合わせ 51 るおかずや味付けのレトルトに「お湯」を使う、スープを一品加え 55
るためにインスタント食品を用いて、 「お湯」を使うというような 12
ものである。 10 6IH
また、「ちょい足し」という行為も多く見られ、これは、一品と 4 10 して調理するというよりは、冷蔵庫などに保存してある惣菜やおか
ずを簡易的に加えるというものであるが、これだけで食べるのでは なく、調理をして用意したメニューにひとつ素材を加える事で、贅 沢感を上げる効果があるのだと思われる。 list.7-3.17 調理方法について 1
1
1,2
6
1,2,3 1,2,3,4,
5 27
1,2,3,4,5,
3
1,2,3,5
1
1,2,4
9
1,2,5
2
1,3
1
2,3
2
2,3,4
2
2,4
2
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fig.7-3.13 調理方法について
-232-
ケーススタディー
7 7-3.2. 食レポート分析考察
fig.7-3.14 〜 16 は電子レンジ調理の例と、それぞれの調理器具 についてである。今回の調査は長期間研究室内で生活し、何度も調 理を行なっている被験者によるレポートであるため、さまざまな工 夫と便利な調理器具を多く見ることができた。電子レンジ調理に関 しては耳にしたことはあっても、実際に調理器具を購入して利用し たことがある人は少なく、電子レンジがあれば可能な調理をできな いと思い込んでいる例をよく見かける。キッチンセットの揃ってい ないところで、何が出来るのか、知識とアイディアが必要となって くることがわかった。fig.7-3.17 はそれぞれの調理器具の利用頻度 を示しているが、やはりもともと研究室に常備してある、電子レン ジ、ポット、冷蔵庫の利用頻度はほとんど毎食である。 ごはんを1合〜1合半炊 くことができるもの。 米と水を入れて、電子レ ンジで 10 〜 15 分程度温 fig.7-3.14 電子レンジ用ミニ炊飯釜
める パスタを電子レンジで茹 でることができるもの パスタと水を入れて 5 〜
55
10 分程度温める
59 41 fig.7-3.15 電子レンジパスタ茹で器 43
シリコンスチーマーは
6
電子レンジがあれば鍋料 理のような「煮る」「茹 でる」などの行為が可能
fig.7-3.16 電子レンジ用シリコンスチーマー list.7-3.18 調理に使ったもの
57 51 55 12 10 6IH
4 10
fig.7-3.17 調理に使ったものについて 1
1
1,2
6
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012 1,2,3 1,2,3,4, 1,2,3,4,5,
5 27 3
-233-
ケーススタディー
7 7-4.1. 意識調査調査結果
7-4. 研究室食に関する意識調査 7-4.1 意識調査調査結果 研究室内での食行動についての意識調査アンケートの結果を示 す。まず、研究室にいる時に夕飯を食べるとしたら、どのような 行動を行うか、そして、その理由はなぜか、という質問の回答を fig.7-4.1、2 にグラフにした。一番多かった回答として、 「近くのお 店に食べに行く」次いで「近くのお店に弁当などを買いに行く」と なった。理由としては、 「時間がないから」という、研究室ならで はの特徴とも言える回答が一番多く得られた。その他の理由として 多く見られたものは、 「気分転換、リフレッシュになるので、なる べく外に出たい」というものであった。研究室は作業場、会議など の執務を行う場であるため、それぞれの仕事に追われている事が多
研究室に居るときに夕飯の時間が訪れたら、大抵の場合どのようにしますか?
く、そのために研究室に残っているので、 「食行動」に時間をかけ ているような余裕は少ない、ということだ。 研究室に居るときに夕飯の時間が訪れたら、大抵の場合どのようにしますか?
fig.7-4.1 研究室にいるときの夕飯について その理由を教えて下さい。 その理由を教えて下さい。
一番研究室に居る事が多かった期間で、 夕飯の時間を研究室で迎えるのはどれくらいの頻度でしたか? fig.7-4.2 研究室にいる時の夕飯についてそれを選んだ理由 一番研究室に居る事が多かった期間で、 夕飯の時間を研究室で迎えるのはどれくらいの頻度でしたか?
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-234-
ケーススタディー
7 7-4.1. 意識調査調査結果
研究室に居るときに夕飯の時間が訪れたら、大抵の場合どのようにしますか?
研究室内で夕食を食べるという状況が、これまでにどれくらい あったかという質問に対する答えを fig.7-4.3 に示す。これは、こ れまでの経験の中での最大頻度である。 「一週間毎日」 「一週間5〜6日」のふたつで過半数を超えること がわかる。これは主に、論文や設計などの締め切りの直前であると 考えられるが、このような頻度で研究室で食事を摂ることとなると、 生活のほとんどが研究室内となり、健康を左右しかねないほどに研 その理由を教えて下さい。 究室での食生活が影響を持つといえるだろう。つまり、適当に空腹 を満たすだけの食生活ではなく、日々考えて食事を摂らなければな らない。「週に5〜6日」と回答した人の中にも、本当は研究室で 過ごさなければならないが、せめて週に一度は、研究室以外、主に 家でゆっくりとした食事を摂りたいという意識を持って過ごしてい る人がいるようだ。 また、日々の食事は生活の豊かさや満足度に大きく影響している。 あまり満足できない食事を続けると、生活全体への不満が募り、豊 かな気持ちで生活を送ることも困難となってくるだろう。研究室と いう特殊な空間ではあるものの、キッチン設備がすべて整っている わけではない空間において食事に対する意識、満足感、不安感につ
いて、この調査結果からみていきたい。 一番研究室に居る事が多かった期間で、夕飯の時間を研究室で迎えるのはどれくらいの頻度でし
fig.7-4.3 研究室にいるときに夕飯を食べることになった最大頻度
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-235-
ケーススタディー
7 7-4.1. 意識調査調査結果
fig7-4.4 は研究室で食事をするときに食べるものである。これは 前質問までと異なり、外に食べに行くものは含まれず、研究室内で 食べる行為を行うときに食べるものである。パン・おにぎりや、市 販のお弁当など持ち込んですぐそのまま食べられるものが多い。そ の次に、インスタント食品など長期保存が可能でお湯など簡単な方 法ですぐに食べられるものが続く。数は少ないものの、レトルト食
研究室でごはんを食べる時、 どのようなものが多いですか?
品など、少し手間を加えるものも利用する人がいる。
fi以下の物の中で、 g.7-4.4 研究室内で食事をするときに食べるもの 研究室にある機具はどれですか?
その中であなた自身がよく利用しているものはどれですか?
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-236-
ケーススタディー
7 7-4.1. 意識調査調査結果
研究室でごはんを食べる時、 どのようなものが多いですか? 研究室でごはんを食べる時、 どのようなものが多いですか?
fig.7-4.5、6 は調理機具についてである。電子レンジはどの研究 室にも存在している事が多く、使ったことがある人も多い。逆に、 IH ヒーターやガスコンロは研究室にはあっても、普段使われてい ないことが多い。また、このアンケートは同じ研究室の人に複数名 聞いているのだが、研究室にある調理機具の回答にばらつきがあっ たことからも、IH ヒーターやガスコンロの存在に気づいていない という人が多いこともわかった。調理器具について (fig.7-4.7) は、 意外にも包丁を使っとことがある人が多く、調理器具は普段の生活 以下の物の中で、研究室にある機具はどれですか?
の中でも便利に利用されているようだ。 以下の物の中で、 研究室にある機具はどれですか?
fi g.7-4.5 それぞれの研究室にある調理機具 その中であなた自身がよく利用しているものはどれですか? その中であなた自身がよく利用しているものはどれですか?
その他の調理器具について聞きます。以下の中で研究室に置いてあるもの(一時的に置いていたものも含む)をすべて選び「1 あなたが研究室で食事をする際に使ったことがあるものに限ります。
fig.7-4.6 回答者本人がよく利用する調理機具
研究室でちょ っとした調理をしたことがありますか? fig.7-4.7 その他の研究室に置いてある調理器具 たとえば、インスタント食品にお湯を注ぐ、 レトルト食品をごはんにかけて温めるなども含みます。 (回答者の使用したことがあるものに限る)
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-237-
7
ケーススタディー
7-4.1. 意識調査調査結果
その他の調理器具について聞きます。 以下の中で研究室に置いてあるもの(一時的に置いていたものも含む)をすべて その他の調理器具について聞きます。 以下の中で研究室に置いてあるもの(一時的に置いていたものも含む)をすべ 実際に研究室内で調理を行ったことがあるかという質問をした。 あなたが研究室で食事をする際に使ったことがあるものに限ります。 あなたが研究室で食事をする際に使ったことがあるものに限ります。
“研究室調理” は、 「インスタント食品」や「レトルト食品」を用い て簡単に行う食事の準備のことも含めており、主に「まぜる」 「か ける」「加熱する」などの行為のことを指している。 fig.7-4.8 は研究室調理の経験の有無の割合を表しており、アン ケート回答者の4分の3は経験があると答えている。また、そこで
あると回答した 78%の人に、調理にどのくらい時間をかけるか聞 いたところ (fig.7-4.9)、5 分以内が過半数を占め、10 分以内で9割 りを占めた。これらから家庭での調理と大きく異なった意識を持た れていることがわかる。効率性、時間の短縮を重視しており、研究 研究室でちょ っとした調理をしたことがありますか? 研究室でちょ っとした調理をしたことがありますか? 室食は、作業時間をなるべく減らさないことを条件として考え無く たとえば、 インスタント食品にお湯を注ぐ、 レトルト食品をごはんにかけて温めるなども含みます。 たとえば、 インスタント食品にお湯を注ぐ、 レトルト食品をごはんにかけて温めるなども含みます。
てはならないことがわかる。
fig.7-4.8 研究室内で調理をした経験の有無
あると答えた人にお聞きします あると答えた人にお聞きします 研究室で行う調理にかける時間はどのく らいですか?待ち時間も含めます 研究室で行う調理にかける時間はどのく らいですか?待ち時間も含めます
fig.7-4.9 研究室内で行う調理にかける時間
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-238-
ケーススタディー
7 7-4.1. 意識調査調査結果
fig.7-4.10 〜 12 は研究室内においてある食料、食材についてで ある。調味料では、砂糖や塩は多くの研究室が持っているようだ。 砂糖はコーヒーなどの飲み物を飲むときにも使うという理由で置い
研究室で置いてある調味料はありますか?
てあることが多いが、醤油やマヨネーズのように食事の時にしか使 われないと思われるものも置いてある。ちょい足し食材とは、ごは んなどにひとつ加える食材で、なくても良いがあると良い、という ようなものである。研究室にその調味料があることを知らないとい う人もおり、研究室での食に関しての関心に個人差が大きいという 研究室で置いてある調味料はありますか?
研究室で置いてある調味料はありますか? ことがわかった。
研究室に置いてあるおかず(ちょい足し素材)はありますか?
研究室に置いてあるおかず(ちょい足し素材)はありますか?
fig.7-4.10 研究室内にある調味料
研究室に置いてあるおかず(ちょい足し素材)はありますか?
fi研究室においてある食糧はありますか? g.7-4.11 研究室内にあるおかず ( ちょい足し素材 ) 研究室においてある食糧はありますか? 研究室においてある食糧はありますか?
fig.7-4.12 研究室内に置いてある食糧
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-239-
ケーススタディー
7 7-4.1. 意識調査調査結果
fig.7-4.13 は研究室食 ( =研究室内で食べる食事 ) について健康 的だと思うかという質問をした。研究室内で食べる食べ物の選択肢 は少なくはなく、前述のとおり、IH ヒーターや電子レンジ用シリ コンスチーマーなど、料理をするにあたって必要なものは揃ってい るのだが、どうしても時間制限などの理由から食べられる食べ物の 種類は偏ってしまっている。このため、 「ややそうでないと思う」 「全 くそうでないと思う」というような「不健康的な食である」という 考えを持つ人が 97%に及んでいる。 また、このような研究室食が何日か連続で続くとしたら、どの程 度なら満足に生活できるか、という質問をした。これは、食は健康 にも関る上、生活自体の満足度にも関わってくるものなので、“食 の満足感” について調べるための質問となる。この質問では、意外 にも、一週間程度なら我慢出来ると答えている人が、過半数を超え ているが、一方で3日程度で限界だという回答が一番多いことも着
いますか?
目すべき点だといえる。意識については個人差が大きく、その差は 極端であるようだ。
研究室でのごはんを健康的だと思いますか?
たら、連続何日程度なら満足に過ごせますか?
研究室でのごはんを健康的だと思いますか?
fig.7-4.13 研究室ごはんを健康的だと思うかどうか 研究室でのごはんを毎日するとしたら、 連続何日程度なら満足に過ごせますか? 研究室でのごはんを毎日するとしたら、連続何日程度なら満足に過ごせますか?
fig.7-4.14 高いものとするためにはどのようにしたら良いと思いますか。
研究室でのごはんをより満足度の高いものとするためにはどのようにしたら良いと思いますか。 研究室でのごはんをより満足度の高いものとするためにはどのようにしたら良いと思いますか。 fig.7-4.15 研究室ごはんを毎日連続で続ける時、
研究室ごはんを毎日連続で続ける時、
何日間程度なら満足に過ごせるか
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何日間程度なら満足に過ごせるかの割合
-240-
研究室でのごはんを健康的だと思いますか? 研究室でのごはんを健康的だと思いますか?
ケーススタディー
7 7-4.1. 意識調査調査結果
fig.7-4.16、17 は研究室食をより満足度の高いものとするために
研究室でのごはんを毎日するとしたら、連続何日程度なら満足に過ごせますか? 意識すべきこと、気にかけていることについて質問した回答である。 研究室でのごはんを毎日するとしたら、 連続何日程度なら満足に過ごせますか?
まず多くの回答者が「栄養バランス」について気にかけていると答 えている。これはやはり健康への気遣いから、今の研究室食は健康 的でないと思う理由として、 「栄養バランス」が悪いと考えている ということである。つぎに 「メニュー数を増やす」 ことで、 これは、 “食 の満足感” にとって大きな要素であると考えられる。時間がないた め、一品物やおにぎりなど片手間で食べられるコンパクトなものを 求めがちだが、それが逆に食の豊かさを失わせており、家で出てく る料理のようにいくつかのおかずがあることで、栄養バランスも偏 りを減らすことができ、食の満足感が向上するのだと思われる。具 体的な対策として一番多く挙がったのがサラダを摂ることで、その 他の回答を見ても、 「野菜」 「魚」を摂りたいという回答が多く見ら
研究室でのごはんをより満足度の高いものとするためにはどのようにしたら良いと思いますか。 れた。 研究室でのごはんをより満足度の高いものとするためにはどのようにしたら良いと思いますか。
fi具体的に、 g.7-4.16 どのようにしたらより満足度の高い食事になると思いますか? 研究室食をより満足度の高いものとするために意識すべきこと 具体的に、 どのようにしたらより満足度の高い食事になると思いますか?
fig.7-4.17 研究室食をより満足度の高いものとするための工夫
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-241-
ケーススタディー
7 7-4.2. 意識調査分析考察
7-4.2 意識調査分析考察 <男女比較> 食に対しての意識は男女によって異なる部分があると考える。ア ンケート結果の男女比較を行った。fig.7-4.18 は研究室にいるとき の夕飯についてのグラフで、左が男性のもの、右が女性のものとなっ ている。女性のほうが 「家に帰ってご飯を食べる」 という回答が多く、 夜遅くまで学校にいることの家族からの不安や、家での食事を大切 にしていることなどが理由だと考えられる。一方で近くのお店に買 いに行くという回答も女性のほうが多く、女性の回答者の 43%を 占めている。近くの店に食べに行くことは男性のほうが多く、理工 学部のキャンパス周りには、ラーメンや中華などの男性受けの高い 店が多いことが理由だと考えられる他、fig.7-4.19 の理由をみてみ ると、女性のほうがお金の面に対して厳しく考えているようだ。そ の他の意見はほとんどが、リフレッシュなどの理由から外に出たい のでなるべくそうしているというような回答であったが、これも女 性のほうが多くなっており、女性のほうが、限られた時間とお金の
男 女 条件が厳しく、その中で、なるべく豊かに過ごそうという意志があ 男 女 男 女 るのだと思われる。
研究室に居るときに夕飯の時間が訪れたら、 研究室に居るときに夕飯の時間が訪れたら、 大抵の場合どのようにしますか? 大抵の場合どのようにしますか? 研究室に居るときに夕飯の時間が訪れたら、 大抵の場合どのようにしますか? 研究室に居るときに夕飯の時間が訪れたら、 大抵の場合どのようにしますか?
男
女
fig.7-4.18 研究室にいるときの夕飯について その理由を教えて下さい。 その理由を教えて下さい。 その理由を教えて下さい。 その理由を教えて下さい。
男
女
fi g.7-4.19 研究室にいる時の夕飯についてそれを選んだ理由 ⃝外に出ると気分転換になるから ⃝外に出ると気分転換になるから ⃝外に出ると気分転換になるから ⃝外に出ると気分転換になるから ⃝息抜きがしたいから積極的に外に出るようにしている ⃝息抜きがしたいから積極的に外に出るようにしている ⃝息抜きがしたいから積極的に外に出るようにしている ⃝息抜きがしたいから積極的に外に出るようにしている
一番研究室に居る事が多かった期間で、 一番研究室に居る事が多かった期間で、 夕飯の時間を研究室で迎えるのはどれく 夕飯の時間を研究室で迎えるのはどれく らいの頻度でしたか? らいの頻度でしたか? 一番研究室に居る事が多かった期間で、 夕飯の時間を研究室で迎えるのはどれく らいの頻度でしたか? 一番研究室に居る事が多かった期間で、 夕飯の時間を研究室で迎えるのはどれく らいの頻度でしたか?
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-242-
男
女
研究室に居るときに夕飯の時間が訪れたら、大抵の場合どのようにしますか?
7
ケーススタディー
7-4.2. 意識調査分析考察
その理由を教えて下さい。
fig.7-4.20 は研究室にいるときに夕飯を食べることになった最大 頻度の男女別のグラフである。 「週5〜6日以上」と答えた割合は 男女変わらないが、男性のほうが、 「一週間毎日」と毎日遅くまで 研究室で過ごすこともあるようで、女性のほうが、せめて週に一度 は家で食事をという意志が強いのだと思われる。食べるものとして は、ごはんに関しては女性のほうが多いようだ。女性のほうが比較 的、ごはんもの、和食のようなものを求める傾向にあるようだ。逆 に男性ではインスタント麺が多くなっており、男性はラーメンなど
⃝外に出ると気分転換になるから
の麺類を好む傾向にあるようだ。食自体の好みも研究室内での食生 ⃝息抜きがしたいから積極的に外に出るようにしている 活に求めることが変わってくる要因になるだろう。
一番研究室に居る事が多かった期間で、夕飯の時間を研究室で迎えるのはどれくらいの頻度でしたか?
男
男 fig.7-4.20 研究室にいるときに夕飯を食べることになった最大頻度
女
女
研究室でごはんを食べる時、 どのようなものが多いですか?
男 fi以下の物の中で、 g.7-4.21 研究室内で食事をするときに食べるもの 研究室にある機具はどれですか?
女 その中であなた自身がよく利用しているものはどれですか?
男
女
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-243-
ケーススタディー
7 7-4.2. 意識調査分析考察
男 男どのようなものが多いですか? 研究室でごはんを食べる時、
女 女
fig.7-4.22~25 は研究室においてある調理機具についてである。
調理器具の有無に関しては、把握しているかどうかであるため、男 研究室でごはんを食べる時、 どのようなものが多いですか? 女差はあまり関係がない。実際に使ったことがある調理機具に関し ては、男女共に「電子レンジ」はほとんどの人が使っており、全員 が研究室にあることを把握している。ポットについては、女性のほ うが使ったことが無いと答えた人が多く、 これに関しては前述の「イ ンスタント食品」 、特に麺類のものに関係があると考えられる。男 性が好む、カップ麺やインスタントやきそばなどの「インスタント 麺類」はお湯を用いて食べられるように調理するものであるため、
以下の物の中で、研究室にある機具はどれですか?
その中であなた自身がよく利用しているものはどれですか?
ポットは男性のほうがよく用いられるのだと思われる。 以下の物の中で、 研究室にある機具はどれですか? その中であなた自身がよく利用しているものはどれですか?
男 男 男
fig.7-4.22 それぞれの研究室にある調理機具 ( 男性 )
fig.7-423 回答者本人がよく利用する調理機具 ( 男性 )
fig.7-4.24 それぞれの研究室にある調理機具 ( 女性 )
fig.7-425 回答者本人がよく利用する調理機具 ( 女性 )
女 女 女
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-244-
7
ケーススタディー
7-4.2. 意識調査分析考察
fig.7-4.26、27 は研究室に置いてあり回答者が使用したことのあ る調理器具である。男性のほうがさまざまな調理器具を使っており、 研究室内での食に関して、“挑戦心” が強いものだと思われる。男 性のもともと持つ “冒険心” からの影響で、限られた条件下ででき ることを考え、自分なりに考えて工夫して挑戦するという行動が、 男性のほうが多いからであると思われる。女性は包丁を使ったこと がある人が多く、食材を切るなどの型にはまった調理方法は女性の
男
ほうがすることが多いようだ。
男 その他の調理器具について聞きます。以下の中で研究室に置いてあるもの
!"
女
!"
fig.7-4.26 その他の研究室に置いてある調理器具
男
研究室でちょっとした調理をしたことがありますか?
女
(回答者の使用したことがあるものに限る)( 男性 )
女
その他の調理器具について聞きます。以下の中で研究室に置いてあるもの
!"
研究室でちょっとした調理をしたことがありますか?
研究室で行う調理にかける時間はどのくらいですか?待ち時間も含めます !"
fig.7-4.27 その他の研究室に置いてある調理器具 (回答者の使用したことがあるものに限る)( 女性 )
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012 研究室で置いてある調味料はありますか?
研究室で行う調理にかける時間はどのくらいですか?待ち時間も含めます
-245-
ケーススタディー
7 7-4.2. 意識調査分析考察
fig.7-4.28 は研究室内で調理をしたことがあるかについてである。 経験の有無は、男女差はまったくない。前述のように調理器具など を女性はほとんど使っていないことから、特に調理器具の必要ない
男
男
女
女
調理方法でつくれるものを女性は好んで食べているのだろう。例え ば、「かける」 「混ぜる」などの作業ならば箸や調味料、足す食材が
その他の調理器具について聞きます。 その他の調理器具について聞きます。 以下の中で研究室に置いてあるもの 以下の中で研究室に置いてあるもの
あれば可能である。
fig.7-4.29 は研究室内での調理時間についてである。こちらは少 し男女差がみられる。 「5分以内」で調理を済ますという回答は、 男女共に過半数を超え、約6割程度にのぼる。しかし、男性では一 割程度いる「10 分以上」調理にかけると答えた人は、女性では全 くいない。これは、男性は女性に比べ、調理も様々なものに挑戦し !"
!"
!"
!"
ており、よりよい食生活を送るために工夫を施すことにも力を入れ ているのだと考えられる。
研究室でちょ 研究室でちょ っとした調理をしたことがありますか? っとした調理をしたことがありますか?
男
女
fig.7-4.28 研究室内で調理をした経験の有無 研究室で行う調理にかける時間はどのく 研究室で行う調理にかける時間はどのく らいですか?待ち時間も含めます らいですか?待ち時間も含めます
男
女
fig.7-4.29 研究室内で行う調理にかける時間 研究室で置いてある調味料はありますか? 研究室で置いてある調味料はありますか?
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-246-
!"
!"
!"
!"
7
ケーススタディー
7-4.2. 意識調査分析考察
研究室でちょ っとした調理をしたことがありますか? 研究室でちょ っとした調理をしたことがありますか?
研究室に置いている調味料や食材についてである。fig.7-4.30、 31、32 はそれぞれ、調味料、ちょい足し食材、食糧について示し 研究室で行う調理にかける時間はどのく らいですか?待ち時間も含めます 研究室で行う調理にかける時間はどのく らいですか?待ち時間も含めます たグラフである。女性のほうが、ちょい足し食材を持ち込む割合が 大きい。研究室に置いておけば食べたいときに、白いご飯ひとつで 美味しく食べられるという利点があり、男性のようにがっつりとし たメニューを好まず、定食などのように複数のおかずとごはんもの を好む人には、このようなちょい足し食材は、簡単に栄養や味付け をちょい足しすることが出来るため、好まれる方法のようだ。スー プ系のインスタント食品やごはんもののものは、女性のほうが好ま れる傾向にある。
研究室で置いてある調味料はありますか? 研究室で置いてある調味料はありますか?
男
女
男
fig.7-4.30 研究室に置いてある調味料 研究室に置いてあるおかず(ちょい足し素材)はありますか?
男
研究室に置いてあるおかず(ちょい足し素材)はありますか?
女
男 研究室においてある食糧はありますか?
fig.7-4.31 研究室内にあるおかず ( ちょい足し素材 )
研究室においてある食糧はありますか?
女
男 研究室でのごはんを健康的だと思いますか?
fig.7-4.32 研究室内に置いてある食糧
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
女
研究室でのごはんを健康的だと思いますか?
-247-
ケーススタディー
7-4.2. 意識調査分析考察
男
7
女
研究室に置いてあるおかず(ちょい足し素材)はありますか?
fig.7-4.33、34 は、研究室食についての満足意識についてである。 研究室食が健康的だとは思えないという意見が男女どちらとも多い が、特に男性には1割り程度いる、研究室食を健康的だとポジティ ブに考えている人が、女性では全くいないなど、女性のほうが、よ 研究室においてある食糧はありますか? り、研究室食をネガティブに捉えているようだ。しかし、 「全くそ うでないと思う」と答えている人は、男性のほうが若干多く5割り 近くもおり、男性の中では、健康に気を使いさまざまな研究室食に 挑戦している人と、研究室食は健康的でないものだと諦めている人 がいるのだと思われる。また、そのため女性のほうが全体的に、研 究室食で満足に過ごせる日数も長く、女性はもともとある程度健康 に気を使ったメニューを考えて食事を摂っている人が多いのだろう と考えられる。
研究室でのごはんを健康的だと思いますか?
男
男
女
男
女
女
研究室でのごはんを毎日するとしたら、連続何日程度なら満足に過ごせますか?
研究室でのごはんを毎日するとしたら、 連続何日程度なら満足に過ごせますか? fig.7-4.33 研究室食を健康的だと思うかどうか
女
男 fig.7-4.34 研究室食を毎日連続で続ける時、
研究室でのごはんを毎日するとしたら、 連続何日程度なら満足に過ごせますか? 何日間程度なら満足に過ごせるかの割合
研究室でのごはんを毎日するとしたら、連続何日程度なら満足に過ごせますか?
!
"
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012 ! "
!
"
!
"
-248-
ケーススタディー
7 7-4.2. 意識調査分析考察
fig.7-4.35、36 は研究室食をより満足度の高いものとするための 工夫についてである。研究室食では、前述のとおり健康感に関して 不安が多く、それが生活の不満へとつながっている。研究室食の条 件として、時間と手間をあまりかけず、限られた調理器具で調理す るという制限があり、この制限の中で “研究室食は健康的でないも の” と諦めて我慢してしまう人が多い。この質問では、研究室食に 対するニーズと、より満足度の高い研究室食にするためのアイディ アを抽出している。男女共に栄養に関して気にしていることが多く、 特に女性ではほとんどの人が気にしていることがわかる。一方で好 きなものが食べたいという希望は女性のほうが高いようだ。全体的 に、野菜やくだものを摂るという答えは女性のほうが割合が高く、 その他でも「野菜そのもの」を答える人もおり、それらはビタミン
や栄養素材、というよりは形のあるものを食べることによって満足 男 女
男 女 感を得ているようだ。食事は、素材などの科学的な数値の健康では
研究室でのごはんをより満足度の高いものとするためにはどのようにしたら良いと思いますか。 いつも気にかけていること、 そのような状況が来たら、 気にかけたいことを答えて下さい。 なく、感覚的に “体にいいものを食べている” と思えることが、満 研究室でのごはんをより満足度の高いものとするためにはどのようにしたら良いと思いますか。 いつも気にかけていること、 そのような状況が来たら、気にかけたいことを答えて下さい。
足感につながりやすいといえそうだ。
!
"
!
"
!
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"
男
女
男
女
行いたいことを答えて下さい。 fi気にして行なっていること、 g.7-4.35 研究室食をより満足度の高いものとするために意識すべきこと 気にして行なっていること、行いたいことを答えて下さい。
fig.7-4.36 研究室食をより満足度の高いものとするための工夫
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-249-
ケーススタディー
7 7-5. 研究室食調査まとめ
7-5. 研究室食調査まとめ
<研究室調理:場所について> 研究室食行動の、空間的な側面から分析を行うと、 「作業の場所」 「食事の準備する場所」 「食事を行う場所」では好まれる空間が異な ることが分かる。fig.7-5.1 は「食行動の前後に作業していた場所」 、 「食事の準備をした場所」 「食事を行う場所」を観察調査の結果を用 いて遷移図にまとめたものである。 今回、キッチンセットが揃っていない空間で調査を行うことに よって、既存のキッチン空間の概念を取り払ってそれぞれの行動に どのような空間条件、空間要素を必要としているのかを明らかにす ることができた。 □「調理場所」 ①広く ( 幅 50 センチより大きい ) 何もない空いた平らな台 ②汚してはいけないもの、熱や液体に弱いものが近くにないこと ③食器が運びやすく置きやすい場所 ④水場や熱源からなるべく近く、動線が確保されていること □「食事場所」 ①食べるのに使う食器が並べられるだけの台 (ex. 丼一つなら狭いと ころでも可 ) ②書類など、少しでも汚れたら困るもののないところ、または片付 ける ③ながら食べが出来るような、他の物との配置関係 (ex. 作業しなが らであればパソコンの前や横、テレビを見ながらであればテレビの 見える位置と向きを考えて場所を取るなど) (複数人で食べる場合) ④相手の見える場所と向きを考慮する ⑤共有で食べるものがあれば、全員が共有のメニューに手が届く距 離で、かつ、共有のメニューは共有のテーブルに置き、なるべく全 員が同じテーブルまたはその近くに集まって食べる ながら作業が多いため、作業場所と食事場所は完全に切り離され ているわけではなく、作業場所と同じところか、その近くに食器を 並べる用のサイドテーブルを置いていることが多かった。食事中も 作業場所は作業をしている時の状態のままにしていて、書類やパソ コンなどを片付けて同じ場所で食事をするというようなほとんど行 動はみられなかった。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-250-
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
n=108
n=55
n=108
26%
35%
100 %
16
%
6 6%
10%
20% 20%
%
59
%
36 1% 85%
15%
フリー2
丸テーブル
20% 25%
3%
フリー
デスクトップ
fig.7-5.1 研究室食行動場所まとめ遷移図
食べる場所
準備場所
作業場所
丸テーブル
14 86% %
25% 25 25%25% %
小テーブル
個人用
%
25% 75
%
34% 3% 3 13% % 9% 9 25% 3%
デスクトップ
豆テーブル
%
50% 50%
%
20% 20% 20 % 2020
フリー
豆テーブル
100%
100%
0%
0%
7-5. 研究室食調査まとめ
丸テーブル
ケーススタディー
7
-251-
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
14
0
4
7
5
23
2
3
fig.7-5.2 研究室食行動場所まとめマップ
窓
4
32
22 40 48
4
22
31 2
8
AO機器 機材置き場
食べる場所
準備場所
作業場所
7-5. 研究室食調査まとめ
出入口
ケーススタディー
7
-252-
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
2 3
1
1 1 1
fig.7-5.3 研究室食行動場所遷移マップ
窓
1 10
1 1
1 11 11 1 4
8 13 8
1
1
1 8 38 3
8 11
1
6 1
1 8
3 1
28
2 25
AO機器 機材置き場
食べる場所
準備場所
作業場所
7-5. 研究室食調査まとめ
出入口
ケーススタディー
7
-253-
ケーススタディー
7 7-5. 研究室食調査まとめ
<研究室調理:調理方法について> キッチンセットのない空間内での調理方法について、研究室での 調理をケーススタディーとして考える。アンケートなどから、ほと んどの研究室に置いてあることがわかった、 「電子レンジ」 「冷蔵庫」 「ポット」の三点を有している空間と設定する。熱を利用する調理 の時の行為を以下の図、fig.7-5.4 の8つとした時、キッチンセット のある家庭料理と比較してどのようになるかを、研究室食レポート をもとに考えた。普通のシステムキッチンのある家庭の場合、多く の調理行為をコンロで行うだろう。近年普及率が上がってきている、 IH ヒーターも、システムキッチンに備え付けのものであれば使用 頻度は高くなるが、電化製品として持ち運び可能なものはたまに家 族で囲む料理をするときに使う程度である。しかし、実際ほとんど の調理行為に対して、それぞれ家電製品が開発されて普及している。 更に近年では、 「電子レンジ調理」や「炊飯器調理」など、さまざ まな手軽にできるアイデアレシピが流行しており、“忙しい人のた めに” というコンセプトから作られた、手間いらずの電子レンジ調 理器具も有名になってきている。 このように考えていくと、ほとんどのメニューはキッチンがなく ても調理して食べることが可能なのである。 熱する
温める
沸かす
調理場:家電製品 中心
煮る
コンロ
家庭料理 調理場:システム キッチン
茹でる
IH ヒーター
電子レンジ
ポット
電気鍋 IH ヒーター
焼く
炊く
揚げる
グリル ホット プレート
炊飯器
電気 フライヤー
研究室調理 調理場:なし
電子レンジ
ポット
電子レンジ
電子レンジ
電子レンジ
電子レンジ
fig.7-5.4 家庭料理と研究室調理の調理方法について
実際に調理自体は可能なのであるが、それらをすべてうまく活用 して簡単に、美味しく調理をしている例は実は少ない。電子レンジ 用調理器具等は、知名度は高くなっているものの、先入観やこれま での “料理とは火を通すものである” というような固定概念から、 実際に普段の料理に使っている人は少ないのだ。 『料理』に関しては、簡単で効率的である以上に、 『料理とはこう いうものである』という家庭料理の固定概念が根強くあり、そうで ない料理は手抜き、ないしは豊かな料理ではないというようなみな され方をしてしまうので、“体験” と “概念の変革” が必要であると 思われる。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-254-
ケーススタディー
7 7-5. 研究室食調査まとめ
キッチンセットがなくても調理は可能である キッチンセットのない空間でも、いくつかの調理器具と、いくつ かの条件を満たした調理場所があればほとんどの調理は可能である ことがわかった。空間的、方法的に全く問題なく、家庭料理級のも のが食べられるだろう。 ただし、ここで問題となるのは、同じメニューが食べられれば、“家 庭料理と同じ豊かな食事” であると感じるのかどうか、というとこ ろである。実際にアンケートの意見でも、 『研究室は作業をする場 所なので』というような意見は多数見られ、空間要素には問題がな くても、感覚として “食事に適した空間” であるとは感じ取られに くいようだ。研究室内での食事を、 より“豊かな食生活を送っている” と感じさせるためには、空間全体の雰囲気の向上も必要である。例 えば、書類やパソコンに埋もれた場所で肩身を狭くして食事をしな くてよいように、少し開けた、リラックスできる空間を設けるなど である。 調理方法に関しても同じである。キッチンというスペースが、“家 の中で自慢すべき場所” であったり、 女性が新居を考えるときにキッ チンに注目するというような事例があるように、キッチンというお 気に入りの道具と場所で調理をすることが、ひとつの楽しみである とも言えるのだ。また、調理方法が簡易的で、省力で美味しい食事 が食べられたとしても、手間をかけたり1からの家庭料理をしたも のと同じものだとは思えない。“料理をした” という実感が、豊か な食生活を送っているという満足感に影響しているようだ。 現代は、便利な道具で溢れているものの、 『食』に関しての意識 は昭和の経済成長時期からあまり変わっておらず、簡単なものや新 しいものができても、これまでの日本の家庭料理に変わるものでは なく、新しいメニューとして認識されてきてしまっている。そのた め、食が多様化していると言われる現代でも、システムキッチンと いう形態が変化していない。今後さらに共働きや女性のキャリア進 出が増え、家事に使う時間や手間が省かれて行く中では、このよう な概念や価値観が邪魔になって、豊かな生活を実感できず、満足感 の喪失にも繋がりかねない。現代でも既に普及しつつある、電子レ ンジ調理器具のような、食材を形ある状態から調理でき、手間のか からない新しい調理方法を取り込み、各々がそれぞれ豊かな食生活 を実感しながら生活できることが大事である。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-255-
ケーススタディー
7 7-5. 研究室食調査まとめ
<研究室食:食事の時刻について> 食事を行った時刻について、調査結果を縦の時間軸に並べた 1.食行動観察調査 (fig.7-5.5) 2.研究室食レポート (fig.7-5.6) の2つのグラフを比較する。1のグラフでは、ほぼ一直線になって おり、ほとんどの時間に均等に食行動が行われていたことになる。 一方で2のグラフは、朝食時の 8:00 〜 9:00、昼食時の 12:00 〜 14:00、夕食時の 20:00 〜 22:00 に固まっている。1のグラフと2 のグラフの違いとしては、1ではパンやおにぎりと言った「買って きてそのまま食べられるもの」が多かったのに対して、2は必ず手 を加えた食事に限られている。調理を行い、食事をするという定型 的な食行動は、朝ごはん、昼ごはん、夜ごはんというような概念に 基づいて行われやすいことがわかった。 23:00 22:00 21:00 20:00 19:00 18:00 17:00 16:00 15:00 14:00 13:00 12:00 11:00 10:00 9:00 8:00 7:00 6:00 5:00 4:00 3:00 2:00 1:00 0:00
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
70
75
80
85
90
95
100 105 110
fig.7-5.5 食事時刻 ( 1.食行動観察調査 )
fig.7-5.6 食事時刻 ( 2.研究室食レポート )
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-256-
その他の調理器具について聞きます。以下の中で研究室に置いてあるもの(一時的に置いていたも あなたが研究室で食事をする際に使ったことがあるものに限ります。
ケーススタディー
7 7-5. 研究室食調査まとめ
研究室でちょっとした調理をしたことがありますか? たとえば、 インスタント食品にお湯を注ぐ、 レトルト食品をごはんにかけて温めるなども含みます。
<研究室食:食にかける時間について> まず、研究室内での調理時間について二つの調査を比較すると、 観察調査では (fig.7-5.7)10 分位内とであった食行動は5割程度で あったのに対して、意識調査 (fig.7-5.8) の方では9割りを超えてい る。これは、意識調査の方は、自分の中で許せる時間がこの程度の 時間であるということ、この時間内に終わらせているつもり、そし て希望の時間でもある。つまり、実際には 10 分位内には収まって いないこともあるが、本当の希望としては、10 分位内に収めたい あると答えた人にお聞きします と思っている人が9割にものぼるということである。
研究室で行う調理にかける時間はどのくらいですか?待ち時間も含めます
fig.7-5.7 研究室食の準備時間の割合 ( 観察調査 ) fig.7-5.8 研究室内で行う調理にかける時間 ( 意識調査 )
以下は5章で紹介した社会の統計調査から抜粋したものである。 fig,7-5.9 は夕飯の支度時間について味の素が主婦に対して行った調 査、fig.7-5.10 はシチズンが働く女性に対して家事にかける時間の 調査を行ったものである。どちらの結果を見ても近年調理にかける 時間はとても短くなっている。これらと、上記の研究室食の調理時 間と比較すると 30 分以上短いことがわかる。研究室食の準備は、 簡略化、短時間化を最大限追求したものであると言えそうだ。
fig.7-5.9 夕飯の支度時間
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
fig.7-5.10 家事にかける時間の変化
-257-
ケーススタディー
7 7-5. 研究室食調査まとめ
また、食事の準備時間だけではない。食にかける時間全体的に短 くなっている。 シチズンが行ったビジネスマンの食生活の統計調査の結果(fig.75.11) では、平均時間は1時間を超えているのに対して、研究室で の食事時間は (fig.7-5.12) 平均 27 分であり、家庭での食事時間よ りはるかに短い。家庭の中でも食にかける時間はどんどん短縮され てきており、食べる時間、準備時間共に短時間化、効率化が望まれ ている。今後さらなる省力化、短時間化、効率化が望まれる家庭で の生活においても、この研究室内での食行動は参考になるところが あると考えられる。研究室食は、最低限の手間で最小限の時間と使 用器具の中で、より豊かな食生活を送れるよう追求された形でもあ る。研究室での調理方法や食行動を見直すことで、家庭にも取り入 れ、普段の食生活をもっと楽にすることができるのではないだろう か。
fig.7-5.11 家庭での食事時間の平均 シチズンによるビジネスマンの生活調査
fig.7-5.12 研究室食の食にかける時間の割合
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-258-
7
ケーススタディー
7-5. 研究室食調査まとめ
<研究室食:食にかける時間について> 人と一緒に
食糧の入手
お腹がすいたから
食べ物を決める
♡
余裕のある時
食事空間を決める
食べに行く
店で食べる 食べる場所を 決める
購入する 買って帰る
時間だから
家で食べる
!
育てる 時間がないから
栄養が摂りたいから
採ってくる
※2
作る
※1
研究室内で 食べる
人と一緒に
♡
ルクエや電子レンジ調理器具 など、食材から簡易的に調理 できる道具を用いて
インスタント食品やレトルト などの半調理済み食材での 省力化料理
fig.7-5.13 研究室内での食行動について
※1栄養が摂りたいという意見が多かった ※2少しでも手間をかける料理、品数の多い料理のほうが満足度が高い ↓ 食材から直接する調理に時間がかからなければもっと栄養のある、豊かなものが食べられる
fig.7-5.13 は研究室内の食行動について示す。研究室内の行動で は、まず、時間の制限によって行動の制限が発生する。今行なって 食料庫 いる作業状況に余裕があれば、研究室内で食事をする必要はなく、 レンジ レンジ
食器
冷
夕食時間前に帰宅をしたり、人を誘って店へ食べに行くこともでき ポット
冷
る。実際にアンケート結果によると、研究室内で夕食時が来ると、 ポット 食の場 外へ食べに行く人も多い。作業状況が芳しくなく、食事を早く済ま せて作業を再会しなければならない場合には、外に買いに行って研 究室内で食べることが多くなる。 研究室内での食事では、店で買ったそのまま食べられるお弁当や 作業空間
食の場=動線計画
食の場=点在、点で発生 お惣菜か、インスタント食品のような簡易調理で済む保存食が多く、
これらは、時間と手間を最小限に抑えた結果である。しかしこれに 対して浮かんでいるのが、食品の安全性や健康に対する不安である。 これらを解決し、キッチンのない空間である研究室内での食事を豊 かにするためには、購入した食材もしくは研究室内で育てた食材か ら、研究室内で作ることが必要であると思われる。手間をかけ、自 分で見て加工調理した料理について、安心感と満足感が高まるよう だ。半加工食品でなく、食材のそのままの形から、簡易的に調理で きる調理方法がこれから肝になってくるだろう。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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育てる 時間がないから
栄養が摂りたいから
採ってくる
※2
作る
※1
研究室内で 食べる
人と一緒に
♡
ルクエや電子レンジ調理器具 など、食材から簡易的に調理 できる道具を用いて
インスタント食品やレトルト などの半調理済み食材での 省力化料理
ケーススタディー
7
食料庫 ポット
レンジ
レンジ 冷
冷
ポット
食の場
作業空間
食の場=動線計画
食の場=点在、点で発生
fig.7-5.14 研究室内での食の場
食器
7-5. 研究室食調査まとめ
※1栄養が摂りたいという意見が多かった ※2少しでも手間をかける料理、品数の多い料理のほうが満足度が高い ↓ 食材から直接する調理に時間がかからなければもっと栄養のある、豊かなものが食べられる
fig.7-5.15 現代家庭での食の場
研究室内の食の場について考える。研究室内は全体的に「作業の ための場所」であり、部屋全体の中で、 「調理場所」 「食事場所」 「作 業場所」など区切られてはいない。さまざまな行動・行為が多様に 混在している中で、空間の決められていない食の場はどのようにつ くられているか。 キッチンという決められた空間のない場所では、冷蔵庫や電子レ ンジなどの家電それぞれと共に食の場が発生する (fig.7-5.14)。また、 IH ヒーターやポットなど持ち運びできるものでは、空いている場 所に食材と調理器具を持ち寄って、簡易的に作業を行い、また調理 が終わると片付けることで、食の場は瞬間的に発生してすぐに消滅 する。また、それらは、一時的に調理空間、食事空間を形成するが、 家庭での食の場のように (fig.7-5.15) 決められた動線や調理行動の 流れはなく、それぞれの場の繋がりもない。 また食材の入手経路も、空間的繋がりが薄く、購入する側はそれ ぞれの食材がいつ、どこから運ばれて来ているものなのか把握して いないほどである。空間的繋がりを絶たれた、食の場の点が点在し ているような状態である。 現代の食は、空間の自由度が高く、“いつでも” “どこでも” 食の 場として成り立つようになってきている。調理の空間も、場所を選 ぶことなく、動かすことができる。昔は鍋や炊飯釜のように大きく 場所を取り、動かせなかった調理器具も電子レンジの中に入れたり、 そのまま個人の食器として食べる場所へ持ち運ぶことができる。家 庭でも、決まった時間に決まった人数が決まった場所で食事をする ことの少なくなってきた現代において、この研究室のように個人が 好きな時間に自由に食の空間を展開できることは、これからの家庭 においても必要になってくるだろう。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-260-
総括
総括
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
8
8
まとめ
8-1
展望
8-2
-262-
総括
8 8-1. まとめ
8-1. まとめ
本研究は、 「住空間」の食に関して、 「食行動」に着目してまとめ たものである。これまでの食の研究では、 「食材を育てること」 「食 材の商業的流通」 「外食産業」 「家の中での LDK 空間」 「料理の種類 や味付け」「食べる行為での満足感」 「食べる空間の評価」など、そ れぞれのプロセスを個々に分断して評価が行われていた。近年の 「住空間」では慣例的に “当たり前” となっている住宅設備に対し て、特に疑問を持たず設計に組み込まれている。LDK で過ごす , 料 理をする行為、食べる行為は、“当たり前” となっている概念の上で、 それぞれの空間の “効率化” や “快適性” を評価軸として、設計の 改良を重ねられている。しかし、日々の食は一連の流れであり、行 為を積み重ねた「食行動」によって、食の豊かさに対する満足感が 生まれるものである。ひとつひとつの行動を分けて考えてしまって いる食について、本研究では一連の流れとしてのあり方をもう一度 考え直すことにした。 本研究では大きく、2 つのことを行った。 1.古代からの食のライフスタイルと、食空間の変遷についての文 献調査 2.近年のライフスタイルの中での「住空間」における「食行動」 の調査 これらの調査によって、今後の「食行動」を読み、これからの食 空間のあり方を考えた。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-263-
総括
8 8-1. まとめ
1の調査でわかったこと ○古代から、建築がつくられ始めた時から、食の空間は考えられ始 めていた。古代から生活の中で食はとても重要度の高いものであっ た。 ○食の場は、 「火をつかうところ」 「水を使うところ」 「食糧を保存 するところ」の3つで構成されてきた。特に日本では、 「火を使う ところ」を重視して住空間の設計を行なっており、古代から「食糧 を保存するところ」は高度な技術を詰め込んだ文化建築を表してい た。 ○食の場は、狩猟時代は土地に根付いたものであり、次に場、部屋 に固定されてつくられ、その後道具となっていき、土から離れた。 ○食のライフスタイルは、古代では毎日、丸一日が食のための行動 であり、人々は共同で食生活を送っていた。それが時代の流れと共 に、個々の家族、家庭、世帯、そして近年では、個人へと小規模で 食生活を送るようになった。 ○食のライフスタイルは、家畜や稲作などで食糧を確保できるよう になってから大きく変わった。そして、工業が生まれ、食の加工が 人の手ではなく機械で行えるようになってから、もう一度変革が起 きた。それらは、建築の中の食空間へも大きく影響した。 ○食の空間は、食だけのための場所ではなく、生活全体に密接に関 わっていた。それぞれの気候に合わせて特徴を持っている。寒い地 域などでは、調理をするための火や熱を暖として再利用していると ころもある。 ○地域や国柄によって異なった特徴をもっている。それは、食べる ものや調理の仕方に合わせて空間が作られて来たからである。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
-264-
総括
8 8-1. まとめ
2の調査でわかったこと ○近年では、 「家庭で食事をすること」自体は増えてきているが、 全体的に「料理をする」頻度と時間は減っている。全体的に人々の 生活が忙しくなっていて料理にかける時間が減っていることと、い つでも簡単に食べられるものが手に入る便利な社会が要因である。 ○どの世代でも半加工食品や市販の惣菜など、下ごしらえから長時 間かけた料理をしなくてよい食材を利用しているが、 「料理をして いない」という意識はなく、もっと省力化したいと思っている。 ○共働きや働く女性の増加、不景気と忙しくなっている現代社会の 影響によって、食にかける時間全体が短縮されている。食べる時間 も30年前より短くなっている。 ○「料理をしたい」という希望は特に若者に多く、 多くの主婦も「家 庭の味を大切にしたい」 「楽しい食卓をつくりたい」というような、 家庭の食の時間をもっと大切にしたいと思っている。 ○食品添加物や、農薬などの不安は高まってきており、これによっ て自然食品への注目度が高まっている。食材自体の質に対する意識 が高くなってきている。 ○調理方法は、長い時間と手間をかけるものは減ってきており、火 を使わない電子レンジ調理は時間や手間を省くことができるため料 理の頻度も高くなりやすい。 ○料理は、作る過程を自分の目で確かめたり、自分で手を加えたほ うが、“よい物を食べている” と感じやすく、食の満足感を高める ことにも繋がる。 ○米などは、市販の炊いてあるごはんに対して抵抗が強く、米の状 態から自分で炊くことによって、食の豊かさを感じやすい。逆にで きあいの食べ物に対しては、不健康感や栄養の偏りを感じやすくな る。 ○料理に関しては、昭和時代の良い食べ物、良い家庭料理のイメー ジが固定概念として根強く残っている。 ○野菜や魚に対して、“摂ったほうが良い栄養素” だと感じている 人が多く、これらは野菜ジュースなどで簡単にでも摂るようにして いる人が多い。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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8
総括
火
食
食べ物を決める
経済的理由から 厳しくなっている
食事空間を決 週1,2日
食空間の変遷を追うと、狩猟時代人々が住居を構 食べに行く
水
え始めた頃、食の空間は自然の全てに広がっていた。
内
していた。
店で食べ 食べる場所を
週5,6日
買って帰る
週1日
育てる
稲作などの食の確保ができるようになり、人の住居
時間がない
週3,4日
は固定され、火を使う場所も固定されるようになっ
水
内 火 食 寝
食べられる場
作る
た。建築の中でも火を使うところを計画して施工す 採ってくる るようになった。
作る手間が簡略化されれば
調理を行うところ、寝食をするところの区分けが始 安全な食材が食べたい もっと増えてくるだろう 栄養が摂りたい
食材 火
まる。食の場は、ここで、部屋になった。
かまど
かつて屋外にあった、水、食糧、火のすべてを家
水
食糧の入手
寝
♡
お腹がすいたから
食べ物を決める
食べに行く
キッチンの機能を台所のなかで配置するようにな
食材
中世
購入する
水
店で食べ 食べる場所を 決める
り、キッチンセットという形が完成する。これを一
井戸
つの製品化してシステムキッチンができる。システ 内 食
食事空間を
の中で配置計画が行われるようになり、台所という 一室の概念が生まれる。
火
人と一緒に
の中に取り込み、家の中で暮らせるようになる。家 余裕のある時
内 食
買って帰る
ムキッチンは、キッチン機能を動線上に並べて、効 育てる
寝
栄養が摂りたい 率化を進め、より省力で効率よく料理ができるよう
に改良されていった。
火 水 食材保存
採ってくる
近代
さらに昨今の傾向として、キッチンのすべての機 ※1
家で食べ
! 時間がない
作る
能を使って時間をかけて料理をすることが少なくな ルクエや電子レンジ調理器具 など、食材から簡易的に調理 り、電子レンジなどのそれぞれの機能を個々に使用 できる道具を用いて
内 食
探す
インスタント食品やレトルト などの半調理済み食材での 省力化料理
家庭菜園ブームから
増えては来ている 建築に部屋の概念ができ、食糧を保存するところ、 ↓
水
※2
インスタント食品やレトル などの半調理済み食材での 省力化料理
して調理を行うようになってきた。それにともなっ
寝
できるような調理器具も充実してきた。
現代
火 水 食材保存 冷
個々の機能をうまく使うことで、空間に計画配置 されたキッチンがなくても、可変性のある自由な空
食
間の中で調理器具の機能を個々に用い、必要な時だ 寝
け食の場を形成するような、新しい食のライフスタ イルと空間のあり方が見られた。 食料庫 ポット
レンジ 冷
食の場
作業空間 食の場=点在、点で発生
fig.8-1.1 食空間の変遷ダイアグラム ( 古代から昨今まで ) Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
研究室内
食べる
て、コンロを使用しなくても家電製品で簡単に調理
内
家で食べ
!
人々が住居を建て始め、食の場は限定され始める。 食材
人
決める
食は土地であり、場であり、広い食の場の中で暮ら 購入する
寝
外
8-1. まとめ
古代
外
食糧の入手
食材
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総括
8 8-1. まとめ
形態
時代の変遷
空間の 状態
人
人 場から室へ
物理的 空間構成
外
形態
食 水
線でのつながり
食材 水
火
水
井戸
内 寝
ネットワークから どこでも へ
動線とネットワーク
平面
食材 火
人
室からネットワークへ
空間全体
台所の
人
火 水 食材保存 冷
内 内 食
寝
点
食料庫 ポット
食
レンジ 冷
食の場
寝
作業空間 食の場=点在、点で発生
fig.8-1.2 空間構成の変遷
近年のクラウド化情報社会と比較して、食の空間の変遷について 説明する (fig.8-1.2)。情報化社会になる前、情報は紙媒体で収集さ れていた。物理的な情報媒体を集めておく、図書館のような、知識 の場であった。後に最初のコンピューター、大型計算機が発明され る。しかし当初は優秀な媒体ではあるものの、とても巨大なもので 一度設置したらなかなか動かすことは出来ず、一室を占め、情報部 屋がつくられていた。コンピューターはその後個人でも扱えるパー ソナルコンピューターが登場するが、動かそうと思えば一人でも動 かせるものの、パソコンと自分の身の回りに空間をつくり、有線ネッ トワークを構築する必要があった。最近の情報端末といえば、ipad などのタブレット型またはスマートフォンと呼ばれる小型の個人端 末である。人が持ち歩き、いつでもどこでも、ネットワークと繋が ることが可能である。このような現代の形は、物理的には、点で構 成されていると言える。こうして、情報化の流れは物理的にいえば、 空間→平面→線→点へと構成形態を辿ってきている。 食の空間も、現代のような物理的な繋がりや距離感や動線の関係 が薄れた状態を、点だと捉えると、同じような構成形態の変化が見 られる。これまでの概念でキッチンを考えると、作業動線や場をつ くるように調理機能の配置をまとめて考えてしまうが、今後は固定 された食の場ではなく、点で発生して、点在するような食の場を考 えていくべきだろう。
Hitoshi Watanabe .Lab Waseda .Univ 2012
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総括
食べ物を決める
経済的理由から 厳しくなっている
食事空間を決める 週1,2日
火
食
食べに行く
水
店で食べる 食べる場所を
内 寝
人と一緒に
♡
決める
購入する
週5,6日
買って帰る 外
週1日
家族と一緒に
時間がない
週3,4日
内 火 食 寝
食べられる場所を
作る
採ってくる
火
探す
インスタント食品やレトルト などの半調理済み食材での 省力化料理
家庭菜園ブームから 増えては来ている ↓ 作る手間が簡略化されれば もっと増えてくるだろう
栄養が摂りたい 安全な食材が食べたい
食材
家で食べる
!
育てる
食材
水
8-1. まとめ
古代
外
食糧の入手
食材
8
fig.8-1.3 現代の家庭での食行動
かまど
水
人と一緒に
内 食
食糧の入手
寝
食べ物を決める
お腹がすいたから
♡
余裕のある時
食事空間を決める
食べに行く 食材
中世
火
水
店で食べる 食べる場所を 決める
購入する
水
井戸
内 食
買って帰る 育てる
寝
栄養が摂りたい
火 水 食材保存
採ってくる
近代
※1
時間がない
作る
ルクエや電子レンジ調理器具 など、食材から簡易的に調理 できる道具を用いて
内 食
※2
研究室内で 食べる
人と一緒に
♡
インスタント食品やレトルト などの半調理済み食材での 省力化料理
fig.8-1.4 現代の研究室での食行動
寝
“食事をする” と決めてからの食の行動を、家庭と調査を行った 研究室でそれぞれ示す (fig.8-1.3~4)。それぞれの行動の選択には、
現代
火 水 食材保存 冷
内
家で食べる
!
別々のニーズが存在するところがポイントである。 食事をすると決定した時に、様々な理由が存在するが、今回は行
食
動の決定に大きく関わる欲求を、 「お金がない」 「時間がない」 「人 寝
と一緒に食べたい」 「栄養が摂りたい」の4つに分けて考えた。 「外 食」の選択肢の減少は、社会の不景気=「お金がない」ことによる 食料庫 ポット
ものである。食の時間が減少しているのは、他の仕事ややることが
レンジ 冷
食の場
多く、「時間がない」ためであり、このような場合、 「外食」や「料 理をする」ことは憚られ、“今居る所で”「買ってきて食べる」とい
作業空間 食の場=点在、点で発生
う行動を取りやすい。しかし、食に対しては自らの健康と密接に繋 がっているため、 「お金がない」 「時間がない」ながらもこのままで はいけないという意識も強い。ここで、新しい傾向として、これか らのためのニーズとして、“どこでも” 一つ家電製品があればでき る簡易調理で、食材から自分で料理をする行動が増えることが必要 であるといえる。
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総括
8 8-1. まとめ
食事は、日々の楽しみであり、豊かな毎日を送っているという生 活の満足感につながっている。食の満足感は、多くの人が人が手を かけているもの、良い食材を人の手で調理したものが、より高いよ うだ。逆に、工場で作られたものや誰が作ったかわからないような 食べ物に対して、不安感を抱き、いい食生活を送っているという実 感失ってしまう。しかし、専業主婦が少なくなり、それぞれが個々 に忙しい現代の人々に、食にかける時間を増やすのは不可能である。 今求められているのは、“どこでも” “いつでも” 簡単に、良い食材 そのものから調理できることである。そのためには、本来食の場で はない空間も、状況に合わせて食の場を形成できるような多様性が 求められる。また、複数人で楽しく食べる食事と、個人で簡単に済 ませる食事も混在しているため、食の空間も固定でなく、可変性の 高いものである必要がある。 現代の食事は多様化している。本研究で調査を行ったのも、ほん の一部である。経済的な余裕、時間的な余裕があれば、もっと選択 肢が増えるだろう。食糧を保存する広い空間が住居内にある家や、 近くにいつでもすぐに買いにいけるスーパーマーケットやコンビニ エンスストアのない所では、本研究と同じような食生活を送ること はないかもしれない。 本研究からいえることは、現代のキッチンは、多様化している食 生活をひとまとめにして、平均的、もしくはこれまでの食生活に合 わせてデザインされた、当たり前の形ひとつであるが、本来はそれ ぞれが個々の生活に合わせた空間の形があるべきである。そのため には、まず機能を分割してそれぞれの機能の必要性を考え、生活者 それぞれが再構成する必要がある。それぞれが、自分がどのような 料理で満足するタイプなのか、それによって食行動が変わってくる。
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総括
8 8-2. 展望
8-2. 展望
本研究で取り扱ったのは、食行動のうち、日々の生活の中で瞬間 的に考えて行う行動のみであるが、古代から食というのは人々の生 活に浸透し、繋がっているものである。地球上で自然の力で食材が でき、人が食べることでゴミとなってまた土になり、土がまた食材 を育てるように、自然の摂理の中で循環しているものである。食を 考えることは、地球全体を考えることでもあり、人類の生き方と密 接に繋がっているものである。 近年のブームである自然食や家庭菜園、ホールフードの考え方は、 もう一度食について、個人個人が “まるごと” 考えるようになって きていることの現れである。商業や工業の発達によって、本来の循 環した流れを一部だけ切り取って便利に享受できるようになった社 会に対しての疑問・不安の表れでもある。しかし、今更古代のよう に、食材の宝庫である大自然の中に身をおいて生活するというわけ にはいかない。 現代の、クラウド化、ネットワーク化による、空間的な面や線の 繋がりを持たない、“どこでも” 繋がることができる点の社会にお いて、次に起こりうる食のライフスタイルは、それぞれの家庭や住 宅周りで、点在する食物の栽培、食材の保存だと考えられる。現在 の家庭菜園のブームによって、家庭の中で食べられる植物を育てら れる家電製品の開発も始まっているようだ。食材を点で作り、“ど こでも” 食の場となる。そしてそのひとつひとつに、ゴミやエネル ギーなど環境の循環が考えられてくる。 これからの、食の場は、場所や部屋に根付いてしまったものでは なく、分散化、点在した食を “いつでも” “どこでも” 楽しめるよう に空間を考えていかなくてはいけないだろう。
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おわりに
参考文献 謝辞
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おわりに
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