設計者のための快適性評価を取り入れた統合的形状決定手法の開発

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設計者のための快適性評価を取り入れた統合的形状決定手法の開発 Development of holistic design method which integrate form finding with comfortable evaluation for designers


はじめに

はじめに

目まぐるしく変化する時代の中で、 建築はどう変化するだろうか。

時間、日、季節、年、 あらゆるスケールの時の流れに、 建築はどう答えるべきだろうか。

その時、 建築はどうあるべきだろうか。

長い間変化してこなかった建築の設計プロセスに疑問を持ったところから、 本研究は始まった。

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University


目次

目次 第 1 章 背景

1

1-1 BIM と設計

2

1-1-1 建築家の役割

2

1-1-1-1 建築家の理想像

2

1-1-1-2 建築家の分業化

2

1-1-2 BIM とは

3

1-1-2-1 BIM の定義

3

1-1-2-2 現状と事例

4

1-1-2-3 設計プロセスと BIM

12

1-1-2-4 Grasshopper

14

1-1-2-5 シミュレーションソフトの陥穽

15

1-2 建築とアルゴリズム

17

1-2-1 アルゴリズミック・デザイン

17

1-2-1-1 アルゴリズミック・デザインとは

17

1-2-1-2 建築とアルゴリズミック・デザイン

18

1-2-2 環境に対する建築の潮流

22

1-2-3 環境系シミュレーションソフト

25

1-2-4 人間行動シミュレーション

29

1-3 まとめ

30

第 2 章 研究概要

31

2-1 用語の定義

32

2-2 目的

33

2-3 研究フロー

34

2-4 プラットフォームによる設計フロー

35

第 3 章 実験概要

36

3-1 実験目的

37

3-2 実験フロー

38

第 4 章 予備調査

39

4-1 入力パラメータの決定

40

4-1-1 予備調査概要

40

4-1-2 実験対象日時と条件の決定

41

4-1-2-1 実験対象日の決定

41

4-1-2-2 実験対象時間の決定

44

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目次

4-1-3 その他入力パラメータの決定

45

4-1-3-1 代謝量の決定

45

4-1-3-2 着衣量の決定

46

4-2 敷地モデルの作成

47

4-2-1 地形の読み取り

47

4-2-2 三次元モデルの作成

48

4-2-3 測定領域周辺の作成

49

4-2-4 モデリング結果

50

第 5 章 本実験

51

5-1 プラットフォームの作成

52

5-1-1 使用するソフトとフロー

52

5-1-2 プラットフォームの全体像

54

5-1-3 初期形状のスタディ

55

5-1-4 測定位置の書き出し

58

5-1-5 測定結果の可視化

59

5-1-6 数値としての結果出力

63

5-2 解析結果 1

65

5-3 解析結果検証第一段階

75

5-3-1 解析結果検証

75

5-3-2 第二モデルの作成

78

5-4 解析結果 2

82

5-5 解析結果検証第二段階

91

5-5-1 解析結果検証

91

5-5-2 第三モデルの作成

94

5-6 解析結果 3

98

5-7 解析結果検証第三段階

107

5-8 まとめ

111

第 6 章 まとめ

112

6-1 結論

113

6-2 展望

114

第 7 章 参考文献

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117


第1章 1 背景  1-1 BIM と設計   1-1-1 建築家の役割    1-1-1-1 建築家の理想像    1-1-1-2 建築家の分業化   1-1-2 BIM とは    1-1-2-1 BIM の定義    1-1-2-2 現状と事例    1-1-2-3 設計プロセスと BIM    1-1-2-4 Grasshopper    1-1-2-5 シミュレーションソフトの陥穽  1-2 建築とアルゴリズム   1-2-1 アルゴリズミック・デザイン    1-2-1-1 アルゴリズミック・デザインとは    1-2-1-2 建築とアルゴリズミック・デザイン   1-2-2 環境に対する建築の潮流   1-2-3 環境系シミュレーションソフト   1-2-4 人間行動シミュレーションソフト  1-3 まとめ


第 1 章 背景

1-1 BIM と設計

1-1 BIM と設計 1-1-1 建築家の役割 1-1-1-1 建築家の理想像  紀元前 1 世紀の古代ローマ時代の建築家が書いた建築理論書には、 理想的な建築家像として「建 築家は学問、絵画、幾何学に精通し、歴史をしり哲学を解し、音楽を嗜み、医術、法律を理解し、 天文学の知識をもちたいものである」と記してある。建築家に求められることは当時も今も変わ らず、建物の構造などにおける理工学的知識を基盤とし、住む人の感性を満足させる文学的、音 ※ 1 『建築家の起源と建築家に求めら れること』日本建築家協会 http://www.jia.or.jp/guide/ about_jia/history_jia.htm 2013-09-28

楽的素養、感受性をもって、その場所、地域に見合った哲学や歴史的背景を理解して、幾何学を 駆使し絵画的にも美しい一つの建物を創造することである。 ※ 1 理想的で著名な例では、レオナ ルド・ダ・ヴィンチが様々な分野の研究を行ったことで、それぞれのあらゆる分野において相乗 的な影響を与えていることが見て取れる。その一例としてそれらに取り組んだスケッチを示す。

図 1-1 Photography by Luc Viatour 『Studies of Emmbryos by Leonardo da Vinci』 2008

図 1-1

ダヴィンチの手稿

図 1-2

オーニソプターの概念図

図 1-3 Google Art Project 『Plan of Imola』 http://www.google.com/ culturalinstitute/assetv i e w e r / p l a n - o f - i m o l a / h g E p M g Z 5 m n 6 R 4 A ? projectId=art-project 1502 2013-10-03

図 1-3

イーモラの地図

図 1-4

神聖比率の挿絵

1-1-1-2 建築家の分業化  しかし一方で日本において、西洋建築の移植が一応の完成をみせた明治末になると、建築に対 する根本的な問いがなされるようになり、建築の芸術面と技術面のどちらを重要視するかが建築 家の間で問題となった。「建築家」は同時に「構造家」であったために、表面的には建築家総体 ※ 2 阿 部 和 夫・ 高 橋 和 之 『建築家と構造家の協働を中心に み た ア ン ト ニ ン・ レ ー モ ン ド の 事 跡』日本建築学会大会術講演便概 集 1997.9

の方向性の議論であったが、ここにおいて、「建築家」の内部意識に「構造とデザイン」分離の 萌芽を読み取ることができる。大正中期になると、実際の設計活動の中に建築家と構造家の分業 が見られるようになる。そして大正 12 年の関東大震災は、日本独自の耐震構造技術を急速に高 速化・複雑化させ、構造家の多くは構造学者として実際の設計からは遠ざかっていく。 ※ 2  さらに現在、大学という教育機関から既に設計・構造・環境・都市計画といったように複数の 分野に分かれているという現状がある。そして実務においても、設計事務所と構造事務所が分か れて存在していたり、ゼネコンにおいても内部で部署が分かれているという現状がある。本研究 は、そんな現在の状況に違和感を感じたことを発端としている。

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- 002 -


第 1 章 背景

1-1 BIM と設計

1-1-2 BIM とは 1-1-2-1 BIM の定義  建築の長い歴史を通じて、建物の共有の表現はドローイングであった。そのはじまりはスケッ チであり、やがて建設の意図をまとめあげた建築図面となる。ドローイングはウィトルウィウス

※ 3,6 吉 田 信 之   マ ッ シ モ・ ヴ ィ ネ リ   『建築と都市 2009年 8月臨時増 刊 』 株 式 会 社 エ ー・ ア ン ド・ ユ ー 2009.8

とアルベルティによって、建築的な表現と企図の基本的な手段として説明されている。産業革命 のはじめに、エンジニアリングは建築図面の手法を取り入れ、その歴史の最初の 100 年をその 手法の上に築き上げてきた。 ※ 3  そんな中登場したのが BIM である。チャック・イーストマン氏によると、 「BIM とは、コンピュー

※ 4 C h u c k

E a s t m a n

H a n d b o o k : B u i l d i n g

A

B I M

G u i d e

t o

I n f o r m a t i o n

M o d e l i n g M a n a g e r s ,

f o r

O w n e r s ,

タで読み込み可能なフォーマットにおける建築情報 (Building information) と、それによる表現 のことである。先行した製造業のように BIM は、建物の表現をドローイングから設計された建 物の仮想のコンピュータ・モデルへと変化させてきた。BIM の革新は、人間だけが解釈できる

D e s i g n e r s ,

Engineers and Contractors 2011.4

ドローイングに代わって、3D 的な携帯、空間構成、マテリアルとパーツ、そして構造などにつ いて、コンピュータが建物のモデルを解釈できるという点である。」 ※ 4 とある。  また、BIM は今も進化中の概念であるので、ひとつの定まった定義に集約されておらず、そ の中でも共通する事項として以下のように述べられることもある。 ・建築の形状を定義する三次元の形状情報を持っている。 ・形だけでなく属性というさまざまな建築情報を同時にもっている三次元の建築データベース である。 ・形状情報も属性もデジタル化された情報であり、それゆえにコンピュータで処理することで、 さまざまな利用が可能である。

※ 5 山梨知彦 『業界が一変する BIM建築革命』 2009.2

そして、BIM は、Building Information Model と言ったときには、構築されたデータそのもの を指し示す言葉であり、Building Information Modeling と言った場合には、データを構築する手 段を指し示す言葉である。BIM はこの両方の意味でつかわれている。 ※ 5  BIM は機械が読み込むことのできるデータであるため、そののちの資材調達のために、資材 の数量を算出することができる。そしてそれらのデータは、建築の使用と相互にリンクしたもの となる。さらに重要なことに、デザイン・インフォメーションは、分析アプリケーションに読み 込ませ、エネルギー消費量、照明、構造、利用者のシミュレーションを行うことができる。 ※ 6

図 1-5 吉 田 信 之   マ ッ シ モ・ ヴ ィ ネ リ   『建築と都市 2009年 8月臨時増 刊 』 株 式 会 社 エ ー・ ア ン ド・ ユ ー

図 1-5

BIM ワークフロー

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第 1 章 背景

1-1 BIM と設計

1-1-2-2 現状と事例  前に述べたように、BIM にも様々な定義があるが、実際に BIM がどういった形でプロジェ クトに関わり、影響を与えているのか、その役割と可能性について、具体的なワークフローと 共に記す。  26 の実例の図式化されたワークフローと共に、そこでの BIM の使われ方、使われた理由を ここに示す。そこから全体として BIM がどういった傾向で利用され、デザインや設計プロセ スと関わっているのか。その後の展望も含めて記述する。

図 1-6

1-31

吉 田 信 之   マ ッ シ モ・ ヴ ィ ネ リ   『建築と都市 2009年 8月臨時増 刊 』 株 式 会 社 エ ー・ ア ン ド・ ユ ー 2009.8

※ 7

32

吉 田 信 之   マ ッ シ モ・ ヴ ィ ネ リ   『建築と都市 2009年 8月臨時増 刊 』 株 式 会 社 エ ー・ ア ン ド・ ユ ー 2009.8

図 1-6

Cathedral of Christ the Light

図 1-7

Masdar Headquarters

スキッドモア・オウイングス・アンド・メリ

エイドリアン・スミス・アンド・ゴードン・

ル キリストの光大聖堂

ジル・アーキテクチュア マスダール本社屋

壁面が複雑な曲面形状をしているため 3D モ

様々な専門分野からのデータを即時にモデル

デルでのパネルの検討などが必要であった。

に反映させ、効率よく全体の作業を進めるた

デザインから施工までのツールである。

※ 7

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めに利用している。 ※ 8

- 004 -


第 1 章 背景

1-1 BIM と設計

図 1-8

Ordos Concert Hall

図 1-9

Food and Drug Administration

キャノン・デザイン・ヤズダニ・スタジオ

RTKL アソシエイツ

キルドス・コンサート・ホール

連邦食品医薬品局

SFMO 構成の事務所の世界各地のオフィスの

優秀な少数のメンバーでも効率よく作業を進

協働を可能にし、景観や光、風等を外装のファ

められる上、他のチームとと深く関わってい

サードデザインに反映している。 ※ 9

くことが可能となっている。 ※ 1 0

図 1-10 World Trade Center, Tower 1

図 1-11 Lotte Super Tower

スキッドモア・オウイングス・アンド・メリ

スキッドモア・オウイングス・アンド・メリ

ル 世界貿易センター、タワー 1

ル ロッテ・スーパー・タワー

主に敷地の分析から詳細デザインと施工デザ

構造やパラメトリックなファサードのデザイ

インにおいて使用されている。初期のデザイ

ンと干渉の確認等を行い、さらに風荷重など

ン構想には使われていない。

※ 11

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の軽減を行っている。 ※ 1 2

- 005 -


第 1 章 背景

1-1 BIM と設計

図 1-12 Cellophane House

図 1-13 Douglas Gauthier and Jeremy Edmiston

キーラン・ティンバーレイク

ダグラス・ガルジェ・アンド・ジェレミー・

セロファン・ハウス

エドミストン バースト *008

1つの BIM モデルを一貫して使用して組み立

3D モデルにより組み立てキットのように板

てを可能にし、マテリアルもシミュレーショ

から部品を切り出し、組み立てられるような

ンをすることで最後の段階で決定した。 ※ 1 3

システムでユニークな住宅が作られた。

図 1-14 SHoP Architects

※ 14

図 1-15 L. L. Bean

ショップ・アーキテクツ

バーグマイヤー

マルベリー 290、ヒューストン通り

LL ビーン

パネルのデザインが決まり、部材の組み方を

スタッフが早い段階で相互に関連したデザイ

素早く決定し、それらを検証し、ただちに変

ンのアイデアと施工上のディテールのワーク

更していくことを可能にした。

※ 15

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フローの全体像を知ることができた。

※ 16

- 006 -


第 1 章 背景

1-1 BIM と設計

図 1-16 Research Laboratories at Boston

図 1-17 Estonian Academy of the Arts

クリング・スタビンズ

ゲイジ/クレメンソー・アーキテクツ

ボストンの研究所

エストニア芸術アカデミー

コスト積算をリアルタイムで表示でき、同時

自動車のモデリングソフトでデザインし調整

にエネルギー、日照、人工照明、風等のシミュ

を行う際にモデルを最初から作り直すことな

レーションを定量的に評価できる。 ※ 1 7

く自由に編集することを可能にした。

図 1-18 Autodesk-AEC Headquarters

※ 18

図 1-19 Shanghai Tower

クリング・スタビンズ / トッチ・ビルディング・

ゲンスラー

カンパニーズオートデスク AEC 本社屋

上海タワー

モデルを中心とし、ビジュアライゼーション、

3D の情報を元データに使用し、デザインの

様々なシミュレーションから組み立てモデル

変更の影響に対し分析を行うためのエンジニ

のプレ・ファブリケーションを行った。

※ 19

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アとコンサルタントの対話の手助け。

※ 20

- 007 -


第 1 章 背景

1-1 BIM と設計

図 1-20 1 Bligh Street Sydney

図 1-21 BNIM Applebee's Support Center

アーキテクタス / インゲンホーフェン・アー

BNIM

キテクツ シドニーのワン・ブライ通りビル

アップルビーズ・サポート・センター

手作業による工程管理が不要になり設計図書

米国の地理情報システム GIS( 土地および地域

の整合性が保たれる。CAD と同等のコストで、

的なスケールの BIM) との連携を図り、より

非常に高品質なのアウトプットが可能。 ※ 2 1

広範囲なシミュレーションを行った。

※ 22

図 1-22 Cyclone Tower

図 1-23 Fashion Institute of Technology - ALABS

クンウォンアーキテクツ・プランニング・ア

ショップ・アーキテクツ・ファッション・イ

ンド・エンジニアリング・シアクロン・タワー

ンスティテュート・オブ・テクノロジー

建築家が複数の選択肢を検討することを可能

デザイン・チームと実施チームとのやりとり

とし、ダイアグリッド構造のパラメータを

に関してのワークフローにおいてエラーと工

BIM によってコントロールした。

※ 23

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期、そして経費を削減している。

※ 24

- 008 -


第 1 章 背景

1-1 BIM と設計

図 1-24 The Methodist Hospital Research Institute

図 1-25 Job World

コーン・−エダーソン・フォックス・アソシ

サモー・アーキテクツ・アンド・エンジニアー

エイツ メソジスト病院研究所

ズ ジョブ・ワールド

BIM を使いデザインと設計図書が作成され、

最終的な図面上の誤りを確認、デザインチー

意匠、構想、設備の開発工程の間で合理的な

ムに業務を振り分けレポートをまとめる設計

共同作業と相互調整が図られている。 ※ 2 5

プロセス全体のマネジメントを行う。 ※ 2 6

図 1-26 Block D24, Mixed Use Residential

図 1-27 University of California at Davis, Physical Sciences Building

HOK

アラップ カリフォルニア州大学デイヴィス

D24 街区、複合レジデンス

校、物理学校舎

グローバルなコラボレーションツールとして

細部まで調整されたデザインを一部だけでな

利用。世界中の人がデザイン・モデルを見て、

く、多くの場所に行うことが可能となり、設

開発に貢献することを可能とした。

※ 27

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計段階から現場での矛盾点を低減した。 ※ 2 8

- 009 -


第 1 章 背景

1-1 BIM と設計

図 1-28 Neoscape Various project

図 1-29 Yokohama Camellia Hospital

ネオスケープ

大成建設

様々なプロジェクト

横浜カメリアホスピタル

BIM システムへの移行により、リアルタイム

V.R. の技術に BIM を取り込みクライアントに

にアクセスすることが可能となり、データの

仮想空間を事前に体感してもらうことで細部

共有に手間取らなくなった。 ※ 2 9

まで入念に打ち合わせを行った。 ※ 3 0

図 1-30 Hoki Collection

図 1-31 Mokuzai Kaikan

日建設計

山梨智彦 / 日建設計+勝矢武之 /NSD

ホキ・コレクション

木材会館

周辺のコンテクストの中で自身の形状によっ

日本の伝統的な引張継手である追掛大栓継手

て不都合な景観を切り取り望みたい風景を取

を、CNC 加工に適したかたちに修正し、伝統

り込むためシミュレーションを行った。

※ 31

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とデジタルの融合で新たな表情を生む。 ※ 3 2

- 010 -


第 1 章 背景

傾向を把握する。 プロジェクト名

BIM の関連

Cathedral of Christ the Light

Ordos Concert Hall

デザイン・フェーズ

Food and Drug Administration

詳細・デザイン・フェーズ

World Trade Center, Tower 1

Phase

コンセプト・デザイン・フェーズ

Masdar Headquarters

施工・デザイン・フェーズ

Lotte Super Tower Cellophane House Douglas Gautheir and Jeremy Edmiston

L.L.Bean

環境

Research Laboratories Boston

経済性

Estonian Academy of the Arts Autodesk-AEC Headquarters

Field

施工

SHoP Architects

構造

Shanghai Tower 1 Bligh Street Sydney BNIM Applebee's Support Center

Fashion lnstitute of of Technology - ALABS

仕事の効率化

The Methodist Hospital Research Institute

Role

デザイン実現のためのツール

Cyclone Tower

他分野との連携を図ったもの

Job World Block D24, Mixed Use Residential University of California at Davis, Physival Sciences Building

ビジュアライゼーション

Yokohama Camellia Hospital Hoki Collection

Output

ファブリケーションツール

Neoscape Various project

疑似体験

Mokuzai Kaikan 図 1-32 BIM フローの集計

これらから、BIM は建築のフローの中で多方面で影響を与えていることがわかる。また、仕 事の効率化を図り、建築において構想から施工までのすべての段階においてデータのやり取りを スムーズに行うシステムとしてうまく BIM が機能しているといえる。  デザイン・フェーズに関わってくるものは多くあるが、構想段階や、全体のデザインに大き く関わってくるコンセプト・デザイン・フェーズにまで関わってきているものは非常に少ない。 BIM は膨大な他分野のデータを取りまとめる役割を果たしていることで、デザインをする時間 が増えたことや、ディテールの設計に時間を費やすことは可能になり、そういった意味ではデザ インに対して影響を与えている可能性がある。しかし、コンセプト・デザインフェーズが少ない ことから、初段階では設計者の意図の元に設計のスケッチが始まるところは変わらず、未だに設 ※ 33 吉 田 信 之   マ ッ シ モ・ ヴ ィ ネ リ   『建築と都市 2009年 8月臨時増 刊 』 株 式 会 社 エ ー・ ア ン ド・ ユ ー 2009.8

計者と BIM( その他の専門家 ) は分離している状態にあると考えられる。  これらのプロジェクトは共通して、あらゆる分野の情報を誰にでも分かりやすく視覚化したプ ラットフォームの必要性を歌っている。 ※ 3 3  本論文では「BIM」とは、デザイナーとは別の役割を持った多分野を統合する一つのツールと 定義して使用する。

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- 011 -

1-1 BIM と設計

代表的な 26 個ここでは取り上げたが、それらから見られた段階・分野・役割・出力の分類をし、


第 1 章 背景

1-1 BIM と設計

1-1-2-3 設計プロセスと BIM  これまで述べてきたように、BIM は非常に便利で、共有しているモデルから様々なシミュレー ション等ができる。また、BIM と初期設計は未だ分離している状態にあり、設計プロセスに直 接的に影響を与えることは少ない現状があるということを示した。しかしながらデザイナーが意 匠以外の他方面から設計を行い易い状況も整いつつある。  ここではデザイナー向けのプログラミング言語とソフトを紹介する。コンピュータのスペック が向上し、このようなソフトやプラグインが登場してきたことで個人でもデザインにあらゆる要 素を取り込めるようになっているのである。

図 1-32 Processing2 『Arm』 http://processing.org/ examples/arm.html 2013-10-08

図 1-33 processing

※ 34 @IT デザインハック『アートや デザインのための プログラミン

1. Processing

グ 』 http://www.atmarkit.

Processing は、アートやデザインの分野でのプログラミングを扱うス

co.jp/ait/articles/0810/10/ news148.html 2013-10-08

ケッチブックのような言語で、画像処理やアニメーションなどの分野に 特化したオープンソースのプログラミング環境である。 ※ 3 4

図 1-33 Programs for Pressure Probe Measurement. http://www.nongnu.org/ fivehole/ 2013-10-05

図 1-34 Python

※ 35 Python Japan『Pythonとは』 http://www.python.jp/ about/ 2013-10-05

2. Python  Python とは、様々な分野のアプリケーションでつかわれる動的プログ ラミング言語で、文法が読みやすく、直感的に事実上すべてのタスクを こなすことのできるモジュールである。 ※ 3 5

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第 1 章 背景

1-1 BIM と設計

図 1-34 m L A B

I n t e r m e d i a t e

Grasshopper Modeling in Rhino h t t p : / / m l a b . c c a . edu/2009/08/fall-2009workshop-intermediategrasshopper-modeling-inrhino/ 2013-10-03 ※ 36 Rhinoceros 『Rhinoceros5.0』 http://www.rhino3d.co.jp/ product/index.html

図 1-35 Grasshopper

2013-10-06

3. Grasshopper

※ 37 G r a s s h o p p e r 『 A b o u t Grasshopper』 http://www.grasshopper3d.

Grasshopper は Rhinoceros ※ 3 6 のプラグインで、プログラミングやス クリプトの知識を必要としないが、デザイナーは簡単なものから複雑な

com/

ものまで設計することが可能である。 ※ 3 7

2013-10-06

図 1-35 D y n a m o

V i s u a l

Programming for BIM http://autodeskvasari.com/ dynamo 2013-10-03

図 1-36 Dynamo ※ 38 D y n a m o

V i s u a l

4. Dynamo

Programming for BIM http://autodeskvasari.com/

Dynamo は BIM 用のビジュアルプログラミング環境で、開発者と積極

dynamo 2013-10-03

的にツールの構築に関与するためのデザイナーのためのオープンソース プロジェクトである。 ※ 3 8

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- 013 -


第 1 章 背景

1-1 BIM と設計

1-1-2-4 Grasshopper  本研究には Grasshopper を使用するため、本項ではこのソフトについて記述する。 Grasshopper をここで選んだ理由は、前述したように Grasshopper が Rhinoceros のプラグイン ソフトであることで最も多くの設計者が利用しているソフトの一つであるためである。プログラ ミングやスクリプトの知識を必要としないインターフェイスを持ちながらも、表面的にはプログ ラミングと同じことを行うことができ、さらにその結果が Rhinoceros 上ですぐに確認できるソ フトである。  中でも最も優れた特徴の1つは、以下のように他ソフトとの連携を非常に取りやすいことで、 そういった理由から様々な方面からデザインへとフィードバックすることができる。 BIM

Revit

Digital Project

CAM

RhinoNest

Mastercam

Catia

RhinoCAM SolidWorks

Vasari

RhinoBIM

プラグイン

プラグイン

プラグイン

VectorWorks Cinema 4D

Rhinoceros

SketchUp

DraftSight 3ds Max

AutoCAD

Houdini

FormZ

Micro Station

ArchiCAD

Maya

3D Modelor 境 環 発 開

開発 環境

プラグイン

環境 開発

CAD

Mel RhinoCommon ジェネラティブ・デザイン

Excel

RhinoScript

Generative Component Rhinocers5.0

Ecotect Python

Geco

Radiance

Grasshopper

WinAir

VBScript

環境解析

VB.net

物理解析

Firefly

C++

C#.net

プラグイン

プラグイン

Kangaroo

gHowl

ン グイ プラ

VVVV

OSC/UDP

Arduino 図 1-36 ノイズアーキテクツ 『Rhinoceros Grasshoper建築

Gainer フィジカル・ コンピューティング

Quartz Composer GAE

総合開発環境

openFrameworks

java Processing

デザイン実践ハンドブック』 2011.9

図 1-37 Grasshopper 相関図

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- 014 -


第 1 章 背景

1-1 BIM と設計

1-1-2-5 シミュレーションソフトの陥穽    PC のスペックの向上と共に、高度なシミュレーションソフトが各分野において活躍するよう になった。これまで予測もできなかったような目に見えない風の動きや粒子レベルのシミュレー ション等を可能にするソフトウェアが一般的に出回った。これがやがて建築の設計においても使 われるようになり、設計段階で構造や環境等のシミュレーションを行うことも多くなってきた。  しかし具体的な事例を後述するが、シミュレーションソフトを正しく扱うのは簡単なものでは ない。パラメータの入力によって大きく結果が変動し、さらに流体シミュレーションともなれば、 そのシミュレーション結果が実際の結果と完全に一致しないといわれている。正しくシミュレー ションを行うためには結果にも入念な検証の必要があり、その結果の精度を把握した上で利用し なければならない。  同時に、デザイナーが気軽に利用し、デザインに反映できてしまう現状もある。例えば、デザ イナーが環境のことを考えて、熱のシミュレーション結果から内部が快適になるように設計する ことが可能になった。しかしそのシミュレーション結果に信憑性がなければ、同時にその設計の 信憑性もなくなるわけである。実際にその建築が建ってみないと建築の環境はわからない。だか らこそ、そのシミュレーションの精度に対して議論が必要となるのである。

シミュレーションによる設計と実際とのずれが生じた事例として STUDIO GANG ARCHITECTS の AQUA TOWER について取り上げる。

図 1-37

1-39

STUDIO GANG AECHITECTURE『AQUA TOWER』 http://studiogang.net/ work/2004/aqua 2013-09-27

図 1-38 Aqua Tower スケッチ

※ 39 STUDIO GANG AECHITECTURE『AQUA

図 1-39 Aqua Tower 写真 1

図 1-40 Aqua Tower 写真 2

このビルは 2010 年にアメリカ・シカゴに完成した集合住宅で、フロアによってテラスが大き く異なる波打った特徴的なファサードは、部屋からの景色、太陽による影と住居サイズのシミュ

TOWER』 http://studiogang.net/ work/2004/aqua

レーションから形成されたという。画期的な設計手法と独特のデザインから様々な賞も受賞した。 ※ 39

2013-09-27

しかし Jeff Niemasz 氏はこの設計に対して疑問を持ち、本当に日射や見え方から最適化され た設計なのかを検証し、最適化された理想的な形状を提示した。次の頁にそれらの結果を示す。

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 015 -


第 1 章 背景

1-1 BIM と設計

図 1-40

1-42

Niemasz.net 『Rethinking Aqua』 http://niemasz.net/aqua. html

図 1-41 Aqua Tower 写真 3

図 1-42 最適化モデル

図 1-43 様々な状況下で最適化されたモデル

2013-09-27

図 1-1-2.36 が実際の Aqua Tower、図 1-1-2.37 が、本研究が提案する最適化された形状である。 オリジナルのモデルと同じようにクラウドゲート、オークストリートビーチ、ノーザリーアイラ ンドパーク、シカゴ川、BP 橋、グランドパークの見え方及び各機能に対してそれぞれ重みづけ を行い決定した。  図 1-1-2.38 はフォーム上のエネルギーと見え方の相互作用をスタディーするために作られた ものである。一番左にあるモデルの完成系のモデルと左側 6 つのモデルは様々な都市機能や周 辺の特徴的な景色に重点を置き開発されたものであり、残りの右側の 3 つのモデルは、眺望だ ※ 40 Niemasz.net 『Rethinking Aqua』 http://niemasz.net/aqua. html 2013-09-27

けではなく、気候によるエネルギーの最適化とのハイブリッドモデルである。最も年間のエネル ギー使用量を削減し、眺望を確保したテラスの場所を決定した。これらのモデルはエネルギーと 眺望の間の妥協を表す。 ※ 4 0 ここに実際建ったものと同じものはない。

ここで矛盾が生じていることが証明されている。おそらく同じようなことをまた他のデザイ ナーが行ったとしても違う結果がでると推定される。そのために、デザイナーがシミュレーショ ンを行っても、その結果が正しいものなのかは専門家が検証する必要があり、またその結果が正 しかったとしても、それをデザイナーが結果を多少なりとも都合良く改変して使用してしまう可 能性がある。  つまりデザイナーと、高度なシミュレーションの距離は確実に近づいているようには見えるの だが、実際にはそれらをデザイナーが利用してデザインに反映させるような土壌は整っていない といえる。これは非常に危険な状態である。 「それらしい」ことができても実際には「できていない」 可能性があるのである。

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- 016 -


第 1 章 背景

1-2-1 アルゴリズミック・デザイン 1-2-1-1 アルゴリズミック・デザインとは  近年デザイナーがすべて意匠的な理由からデザインを決めるのではなく、コンピュータにデザ インの計算を任せ、条件にあった最適な解、形状を導き出すことが可能となった。俗にこの方法 をアルゴリズミック・デザインと呼ぶ。 ※ 41 複 雑 系 に よ る 自 己 成 長・ 修 復 ネ ッ ト ワ ー ク 時 限 研 究 専 門 委 員 会『 ア ル ゴ リ ズ ミ ッ ク・ デ ザ イ ン の 現 在』堀池秀人 http://www.ieice. org/

csbn/program/

papers/080516_waseda.pdf 2013-08-25

アルゴリズミック・デザインという言葉も多義的であるが、簡単に言えば、アルゴリズム ( 形 態を創りあげていく手続き ) に基づいてプログラムを実装し、それを実行することによって形態 を創生することである。特に建築分野では、必要な条件を基にアルゴリズムを組み、コンピュー タで解析する。機能や構造、あるいは環境等についての条件を満たした解答を導き出し、さらに 斬新な形態をも生み出す可能性を模索する試みである。 ※ 4 1

アルゴリズミック・デザインの一例を示そう。以下の図は NY Times のデータベースを基に、 年ごとのトップニュースとなった組織や個人を示しており、それらの関連性を線で結ぶことで全 体としてこのような一つのデザインが出来上がっている例である。このように、複数のデータベー スをまとめ上げることで情報を可視化したデザインとなったものもアルゴリズミック・デザイン の一つと言える。

図 1-43

1-46

blprnt.blg 『NYTimes:356/360』 http://blog.blprnt.com/ selected-works 2013-10-13

図 1-44 NYTimes: 365/360 (1994)

図 1-45 NYTimes: 365/360 (1999)

図 1-46 NYTimes: 365/360 (2004)

図 1-47 NYTimes: 365/360 (2009)

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- 017 -

1-2 建築とアルゴリズム

1-2 建築とアルゴリズム


第 1 章 背景

実際に日本においてアルゴリズミック・デザインが建築に利用され、それがデザインとして露 出している例に絞ってここでは 5 つの事例を示す。  また、それぞれのアルゴリズムの使用目的、入力パラメータ、また、最終的にそのデザインに なった理由は何なのかということをあげていくことにする。

図 1-47

1-48

1 0 + 1 『 パ リ・ レ・ ア ー ル 再 開 発 計画 -バルタールの亡霊を巡っ て』 http://10plus1.jp/ monthly/2007/12/ 20171837.php 2013-08-25

図 1-48 レ・アール国際設計競技案模型 1

図 1-49 レ・アール国際設計競技案模型 2

レ・アール国際設計競技案 伊東豊雄建築設計事務所

アルゴリズムの使用目的: ※ 42

46

複 雑 系 に よ る 自 己 成 長・ 修 復 ネ ッ ト ワ ー ク 時 限 研 究 専 門 委 員 会『 ア ル ゴ リ ズ ミ ッ ク・ デ ザ イ ン の 現

直行グリッドから生成可能な多様で流動的な空間発生プロセスを試みるため。 アルゴリズムへの入力: 運動のアルゴリズムを制御するさまざまなパラメータ。( 上昇と旋回の速度や回転角、その高さなど )

在』堀池秀人 http://www.ieice. org/

デザインの決定理由:

csbn/program/

papers/080516_waseda.pdf 2013-08-25

最適化のプロセスを繰り返すことにより、建築プログラムへの最適な応答、力学的合理性、空間体験の 豊かさなどから設計者が決定する。 ※ 4 2

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- 018 -

1-2 建築とアルゴリズム

1-2-1-2 建築とアルゴリズミック・デザイン


第 1 章 背景

1-2 建築とアルゴリズム

図 1-49

1-50

ARCH20 『Taichung

Metropolitan

Opera』 http://www.arch2o.com/ taichung-metropolitanopera-toyo-ito/#respond 2013-10-08

図 1-50 台中メトロポリタンハウス模型 2

図 1-51 台中メトロポリタンハウス模型 1

台中メトロポリタンオペラハウス 伊東豊雄建築設計事務所

アルゴリズムの使用目的: 不定の複雑性の新しい代替秩序を発生させ、アルゴリズムが相互作用の設計過程を規定していくため。 アルゴリズムへの入力: 応答グリッド。アルゴリズムは必要に応じてパラメータを見つけながら操作性を高めた。 デザインの決定理由: アルゴリズム開始時に設計者がルーズな枠組みを決定し、デザインの選択はアルゴリズムのプロセスに 於いて行う。

図 1-51

※ 43

1-52

A AS ARCHITECTURE 『HIMARAYAS

CENTER

BY

ARATA ISOZAKI』 h

t

t

p

:

/

/

w

w

w

.

a a s a r c h i t e c t u r e . com/2013/02/HimalayasCenter-Arata-Isozaki.html 2013-10-08

図 1-52 証大ヒマラヤ芸術センター 写真 1

図 1-53 証大ヒマラヤ芸術センター 2

証大ヒマラヤ芸術センター 磯崎新アトリエ

アルゴリズムの使用目的: 建築計画上の様々な要求と力学的な性能を同時に満足する合理的な建築構造形態を獲得するため。 アルゴリズムへの入力: 設計領域、荷重条件、支持条件、敏感数、基準値。 デザインの決定理由: プログラムにより創生される力学的に合理的な構造形態の中から、設計者の ( 芸術的 ) 感性で選択する。 ※ 44

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- 019 -


第 1 章 背景

1-2 建築とアルゴリズム

図 1-53

1-54

渡辺誠 /アーキテクツオフィス 『WEB FRAME-2』 h t t p : / / w w w . m a k o t o a r c h i t e c t . c o m / s u b w a y / subway_2e.html 2013-10-08

図 1-54 飯田橋駅 WEB FRAME 写真 1

図 1-55 飯田橋駅 WEB FRAME 写真 2

都営地下鉄大江戸線飯田橋駅 WEB FRAME 渡辺誠 / アーキテクツオフィス

アルゴリズムの使用目的: 設計者が高く評価できる、三次元形態を得るため。 アルゴリズムへの入力: パラメータのうち、「設計意図」として設計されたものの指定 デザインの決定理由: 複数の候補の中から手動選択する。

図 1-55

※ 45

1-56

IKDS 『慶應義塾大学 SFC納品検収所』 h t t p : / / w w w . i k - d s . c o m / toppage_Frame.html 2013-10-08

図 1-56 慶応大学本館納品検収センター写真 1

図 1-57 慶応大学本館納品検収センター写真 2

慶応大学本館納品検収センター 池田靖史 /IKDS

アルゴリズムの使用目的: 限られた種類の部材で非周期的な特性をもつ穴あき板状の構造体を自由に組み立てるため。 アルゴリズムへの入力: ペンローズタイルの単位形状。 デザインの決定理由: 部分の連続的なパターンはペンローズタイルの展開アルゴリズムによって決定している。当てはめるユ ニット形状を設計者が決定することによって万華鏡のように様々なパターンに生まれ変わる。集合体全 体の形状は設計者が調整する。

※ 46

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- 020 -


第 1 章 背景

化する理由、または効率的に設計を行うためのツールとしてアルゴリズミックデザインを使用し、 最終的な決定を人間が恣意的に行っているということである。アルゴリズミックデザインを使用 して新しいことをしているようにも見える 5 案だが、実際には初めにイメージが設計者にある ため、設計プロセスに大きな影響を与えてはいないといっていい。  つまり、ここで設計者が言うアルゴリズミック・デザインは、典型的な BIM となんら変わり ない。

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- 021 -

1-2 建築とアルゴリズム

これらの事例に共通していえることは、設計者のデザインの意図が最初にあり、それらを正当


第 1 章 背景

18 世紀から 19 世紀にかけて産業革命が起こり人間の生活と環境のバランスの秩序が崩れ、 20 世紀に入りレイチェル・カーソン著の『沈黙の春』という文献を初めとして人々はようやく 環境破壊に対して問題意識を持つようになった。そして 21 世紀に入り、生産方法だけでなく本 格的に人間の生活と住まい方が見直され、現在、今まで空調設備などのソフト面で環境を解決し ようとしていた建築に対しても、形状等のハード面での解決を考える流れがでてきた。生活空間 を考える上で、そこに住まう人を取り巻く環境を考えるのは必然であり、それゆえ建築の設計に おいて同時に環境を考慮するのも必然である。  設計のデザインと共に環境に配慮した建築、または環境に配慮したためにできたデザインの事 例をここで挙げる。 1. 30 St Mary Axce (Norman Foster)

図 1-57

図 1-58 St Mary Axe 写真

図 1-59 30 St Mary Axe 模型

図 1-60 30 St Mary Axe スケッチ 1

図 1-61 30 St Mary Axe スケッチ 2

図 1-62 30 St Mary Axe シミュレーション 1

図 1-63 30 St Mary Axe シミュレーション 2

1-62

EMPORIS 『30 St Mary Axe』 http://www.emporis.com/ b u i l d i n g / 3 0 s t m a r y a x e london-unitedkingdom 2013-10-14

※ 47 建築マップ 『30 St Mary Axe』 h t t p : / / a l l x a . w e b . f c 2 . com/a-map/uk/maryaxe/ maryaxe01.html 2013-10-13

30 St Mary Axe はノーマンフォスターの設計で、2003 年に完成した、高さ 179.80m のスカ イスクレイパーである。巨大な建築ではあるが、上の図にもあるように風や温熱環境のシミュレー ションを行い、全体として風を受け流すような形状を取り、プランとしても風の通りを良くして いる。さらに渦巻き状の吹き抜けが風を全体に通すことで空調負荷の軽減にもつながっている。 形状が流体力学等の観点から非常に合理的で、デザインと環境配慮が一体化している。 ※ 4 7

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- 022 -

1-2 建築とアルゴリズム

1-2-2 環境に対する建築の潮流


第 1 章 背景

1-2 建築とアルゴリズム

2. Breeze Tower, Osaka (Ingenhoven Architects)

図 1-63

1-64

Ingenhoven Architects 『Breeze Tower』 h

t

t

p

:

/

/

w

w

w

.

ingenhovenarchitects.com/ en/projects/breeze-towerosaka.html 2013-10-14

図 1-64 Breeze Tower 写真 1

図 1-65 Breeze Tower 写真 2

オフィス、商業、ホール、会議室、レストランの複合施設の超高層ビルである。高層階のオフィ スは東西にコアを配置することによって年間の日照負荷を軽減し、低層階は吹き抜けが南北へ抜

※ 48 D+T

ける。高層階のガラスカーテンウォールには、サッシュを二重にすることで、直接雨が吹き込む

『ブリーゼダワー』 http://inaxreport.info/ data/IR177/IR177_p54-57.

ことを抑制し、外部の風速に影響されず室内に流入する風量を一定に制御できる風量調節弁サッ シュ内に設け、各階の空調機と連動した換気扉により、名前通りそよ風を感じられる超高層階オ

pdf 2013-10-14

フィスを実現した。 ※ 4 8

3. 1 Bligh Street Sydney (Ingenhoven Architects)

図 1-65

1-66

arch daily 『 1

B l i g h

O f f i s

T o w e r

/

Ingenhoven Architects』 h t t p : / / w w w . a r c h d a i l y . c o m / 1 6 9 1 7 3 / 1 - b l i g h office-tower-ingenhovenarchitects/ 2013-10-14

図 1-66 1 Bligh Street 写真

図 1-67 1 Bligh Street 環境

29 階の建物に 42,000 ㎡の賃貸フロアを収めている。オーストラリアにおけるサステイナブ ルな高層建築の新たな到達点を示しており、グリーン・スター評定で 6 星を達成すべくデザイ ンされている。効率性、透明性、フレキシビリティを基本的な考え方としてデザインされてお ※ 49

吉 田 信 之   マ ッ シ モ・ ヴ ィ ネ リ   『建築と都市 2009年 8月臨時増 刊 』 株 式 会 社 エ ー・ ア ン ド・ ユ ー 2009.8 P. 1 0 6

り、これらの要素に対するいくつもの斬新なストラテジーの代表例となるものである。BIM か らの情報は、日照シミュレーションプログラムにより、建物の ESD( 環境や持続可能性への配慮 ) パフォーマンスを向上させていくために活用可能である。ダブルスキンの換気システムもシミュ レーションによってより品質の高いものとなっている。 ※ 4 9

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- 023 -


第 1 章 背景

1-2 建築とアルゴリズム

4. 地中の棲処 (SUEP)

図 1-67

1-68

EVOLVE 『 建 築・ ラ ン ド ス ケ ー プ デ ザ イ ン 』 http://www.aanda.co.jp/ Event/vwsd2013/lecture2. html 2013-10-15

図 1-69 地中の棲処 風解析

図 1-68 地中の棲処 模型

都市の中心部の傾斜状の住宅地。熱しにくく冷めにくい大地と一体化した建物は、エアコンを

※ 50 SUEP

持たず、躯体の温度を調節することのみで室内環境を作っている。躯体表面には鉱石の粉末を混

『地中の棲処』 http://www.suep.jp/SUEP./ news_files/SUEP_%E5%9C% B0%E4%B8%AD%E3%81%AE %E6%A3%B2%E5%87%A6s. pdf

入した塗料を塗り込んでおり、同じ塗料を塗った放熱フィンから発せられる遠赤外線の共鳴効果 によって躯体温度と身体の輻射環境をコントロールしている。 ※ 5 0  日本の設計事務所でもこのような環境をシミュレーションしながら設計を行う流れも出てきて

2013-10-15

いる。

5. 1 Bligh Street Sydney (Ingenhoven Architects)

図 1-69

1-71

Wiley Online Library 『 C 2

B u i l d i n g ,

F a s h i o n

Institute of Technology』 http://onlinelibrary.wiley. com/doi/10.1002/ad.850/ pdf 2013-10-15

図 1-70 3ALABS 写真 1

図 1-71 ALABS 写真 2

図 1-72 ALABS 日射解析

服装的なガラスと金属のファサードが特徴的で、この厚みのあるファサードに収められてい るのは、その間に組み込まれたメインの動線であり、デザイン・スタジオと自然光が射し込む 5 階の学生用の中庭を繋ぎあわせる展示のための空間となっている。 ※ 51

吉 田 信 之   マ ッ シ モ・ ヴ ィ ネ リ   『建築と都市 2009年 8月臨時増 刊 』 株 式 会 社 エ ー・ ア ン ド・ ユ ー 2009.8 P. 1 0 6

1 つのプロジェクトをコンセプト段階から完成まで担当することが可能になっている。ショッ プはデザイン・チームと実施チームとの情報のやりとりに関して、実績のあるワークフローを導 入しており、そのプロセスの中でエラーと工期、そして経費を節減している。これによってクラ イアントに信頼感が生まれ、建物のデザインやプロジェクトを一般的な手法で進めていくことと 比べて、大きなアドヴァンテージをもたらしている。 ※ 5 1

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- 024 -


第 1 章 背景

シミュレーションのソフトウェアには、誰にでも使いやすいインターフェースを持つものが増 えてはいるが、1-1-2 でも述べたようにシミュレーションはそう簡単に結果を出力できるもので はない。実際には複雑なパラメータの入力と、幾度もの検証を行い、精度を把握しながらそのシ ミュレーション結果を出力する。  近年多くの建築家がシミュレーションソフトに手をつけ、設計に反映させている事例が多くあ るが、正しく使えているのかどうかは再考の余地がある。そこでここではソフトウェアの位置づ けや精度に関する検証などのデータを示す。

1. Autodesk Ecotect Analysis ※ 52

日影と反射、日射、昼光、熱性能、建物全体のエネルギー解析、水の消費量およびコスト計算

Autodesk 『 A u t o d e s k

E c o t e c t

Analysis』 w w w . a u t o d e s k . c o . j p / ecotect-analysis

などを行うことのできるソフトである。 ※ 5 2 インターフェースもわかりやすく、多くの建築家が このソフトを利用してシミュレーションを行っていることが事例調査から見て取れた。

2011

図 1-72

1-76

Autodesk 『 A u t o d e s k

E c o t e c t

Analysis』 w w w . a u t o d e s k . c o . j p /

図 1-73 Ecotect 視覚的影響

図 1-74 Ecotect 日射

図 1-75 日影と反射

ecotect-analysis 2013-09-29

図 1-76 Ecotect 昼光 ※ 53 Digo I. Ibarra, Christoph F.

図 1-77 Ecotect 熱性能

Autodesk では、このソフトのバージョンは 2011 で止まっており、その背景には、このシミュ レーションの基にあるソルバーの検証が十分になされていなかった可能性がある。

Reinhart " D A Y L I G H T

F A C T O R

SIMULATIONS ‒ HOW CLOSE

精度に関しては論文もいくつか出ており、さらに Autodesk から公式に精度に関する見解を示

DO SIMULATION BEGINNERS REALLY

した。

GET?"

G r a d u a t e

S c h o o l

o f

Design, Harvard University Cambridge MA, USA

※ 54 Autodesk 『Ecotect: Heat Gain/losses』 http://sustainability workshop.autodesk.com/ buildings/ecotect-heatgainslosses 2013-09-29

Ecotect の精度に関する研究では、ハーバード大学の Digo I. Ibarra 氏と Christoph F. Reinhart 氏は、ECOTECT と RADIANCE の昼光率の精度と、 初心者 ( ここでは学生 ) が利用した場合のエラー に対して調査し、初心者のシミュレーションによる致命的なミスについて報告した。 ※ 5 3  Autodesk によると、Ecotect の温度のシミュレーション結果は厳密な建物の定量分析のために は不十分な精度であり、詳細な分析や実際のエネルギー使用量に一致させるには有用なものでは ない。また、熱質量の正確な分析には適さないとしており、比較分析のための初期段階の設計ツー ルとして使うことを推奨している。 ※ 5 4

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- 025 -

1-2 建築とアルゴリズム

1-2-3 環境系シミュレーションソフト


第 1 章 背景

1-2 建築とアルゴリズム

図 1-77 DESIGN PLAYGROUNDS 『Geco GH3D + Ecotect by UTO』 http://designplaygrounds. com/deviants/geco-gh3decotect-by-uto/ 2013-09-30

図 1-79 Geco for grasshopper 2

図 1-78 Geco for grasshopper 1

図 1-78 MAMOU-MANI 『DIVA+GECO+GALAPAGOS』 http://mamou-mani.com/ a d v a n c e d - w o r k s h o p -

また、Ecotect は、grasshopper のプラグインである Geco と連携を取ることができ、 grasshopper での形状変化の結果を迅速に解析にかけ、結果をフィードバックすることができる。

w i t h - s i m p l y - r h i n o / 0 _ divagecogalapagos/ 2013-10-13

2. Autodesk Vasari

※ 55 Autodesk 『Project Vasari』 h t t p s : / / p r o j e c t p o i n t . b u z z s a w. c o m / _ b z _ w e b / projectpointjapan/AEC/ A E C _ P u b l i c / _ _ T e m p _ Public/ 2013-10-06

図 1-79

Autodesk が現在開発を進めている Vasari というソフトは、Ecotect よりもリアルタイムでシ ミュレーションを行うことに特化しており、より設計の初期段階においてシミュレーションを行 いながら設計に反映させることができる。テクノロジープレビューとして現時点 (2013.10) で は無料でダウンロードおよび評価が可能だ。 ※ 5 5

1-81

Autodesk 『Project Vasari』 h t t p s : / / p r o j e c t p o i n t . b u z z s a w. c o m / _ b z _ w e b / projectpointjapan/AEC/ A E C _ P u b l i c / _ _ T e m p _

図 1-80 日照シミュレーション

図 1-81 日照量解析

図 1-82 風洞シミュレーション

Public/ 2013-10-06

図 1-82

1-83

buildz 『 p r a c t i c a l

n o t e s

f o r

図 1-83 Dynamo 連携例 1

図 1-84 Dynamo 連携例 2

making impractical things』 h t t p : / / b u i l d z . b l o g s p o t . j p / 2 0 1 3 / 0 6 / conceptualissimo-vasaribeta-3-and.html 2013-10-16

Ecotect よりもダイナミックな挙動が可能となり、さらに 1-1-2 で示したように、Autodesk に よる図 1-2-2.9、図 1-2-2.10 のような非常にわかりやすいインターフェースでのプログラミング ソフトを連携させたことで、設計の初期の段階から詳細なデザインのフェーズまで、パラメトリッ クな形状のスタディを行いながら同時にシミュレーションを行うというフローが可能となりつつ ある。しかしリアルタイムに比較的高度な風のシミュレーションを行うということは、現段階で はそれなりに精度を欠く結果が出ることを意味している。よって実際にはシミュレーションの精 度と、各段階でのデザインの密度に関しては熟考する必要がある。  利用しやすいシミュレーションソフトが作られ始め、デザイナーとシミュレーションソフトの 関わり方については検討する必要があると考える。

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- 026 -


第 1 章 背景

1-2 建築とアルゴリズム

3. DIVA  日射のシミュレーションと、冷暖房の負荷を計算することのできるソフトである。

図 1-84 LMNts 『 D I V A

i s

A w e s o m e

a n d

Everyone Should Use It』 http://lmnts.lmnarchitects. com/featured/diva-review/ 2013-10-15 図 1-85 THE PROVING GROUND 『 A d o v a n c e d

T o p i c s

i n

Grasshopper』 h

t

t

p

:

/

/

w

i

k

i

.

t h e p r o v i n g g r o u n d . o r g / ucla-workshop

図 1-85 日射シミュレーションの比較

2013-10-08

図 1-86 grasshopper との連携例

DIVA は Radiance というソルバーを使っており、他のソフトに組み込みやすいことから、 Rhinoceros と Grasshopper のプラグインとして使われるようになった。直接 Grasshopper に組 み込めることで、遺伝的アルゴリズムのような、シミュレーションとデザインの変更を自動的に、 連続して行う必要がある場合でも組み込むことが可能となっている。デザイナーの利用するソフ トに組み込んでいく場合にはこういった形で展開されていくことが理想的といえる。

4. GoldFish  GoldFish は Grasshopper に組み込むことのできるコンポーネントで、二次元上の線分に対し て風のシミュレーションを行うことができる。

図 1-86 Grasshopper 『GoldFish』 http://www.grasshopper3d. com/group/goldfish 2013-09-16

図 1-87 風解析

Grasshopper に風解析を組み込んだこと自体は画期的だが、二次元でしかシミュレーションで きないため、三次元上でデザインする建築に対しては、組み込まれた意味が半減している。短時 間で風のシミュレーションの動画を出力できることは魅力的なのだが、流体は本来容易にシミュ レーションできるものではない。  風のような流体の運動に関する方程式をコンピュータで解くことを、CFD(Computional Fluid Dynamics) といい、和名では数値流体力学と呼ばれている。流体は常に変化しているもので、さ らに少しでも周辺の環境が変化すれば結果は大きく変動する。そのため、非常に予測しにくい流 体のシミュレーションを行うと、妥当な結果を出すのは難しい。もちろん Navier - Stokes 式によっ て CFD は計算できるため、それを使えば解析は行うことができる。しかし複雑なパラメータの 入力の違いで結果は大きく異なり、結果も風洞実験等により検証を何度も行う必要がある。よっ て既製のソフトを使用する場合でも、GoldFish のような CFD のソフトは多数存在するが、流体 のような高度なシミュレーションになるほど信憑性の高いソフトを選定する必要がある。

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- 027 -


第 1 章 背景

図 1-87

シンプルなインターフェースで流体・温熱・環境・音響・日射の三次元シミュレーションが可

1-89

A D V A N C E D

K N O W L E D G H

LABORATORY

能で、住宅環境や空調解析などの設計に用いることができる。 ※ 5 6

『FlowDesigner10』 h t t p : / / w w w . a k l . c o . j p / products/flowdesigner10/ index.php 2013-09-26 ※ 56 A D V A N C E D

K N O W L E D G H

LABORATORY 『FlowDesigner10』 h t t p : / / w w w . a k l . c o . j p / products/flowdesigner10/ index.php 2013-09-26

図 1-88 温熱分布

図 1-89 シンプルなインターフェース

図 1-90 風解析

※ 57 私の経験に基づく大まかな時間で あり、モデルや内容によって変動 する。

CFD のシミュレーションはこれまで紹介したものですべて試したが、この FlowDesigner が最 も解析に時間がかかり、Vasari がリアルタイムだったのに対し、こちらは 8 時間ほどであった。 ※ 57

しかし BIM や環境系で環境解析に関わるエンジニアにとっては CFD の解析時間は 10 時間や

1 日かかるようなもので、リアルタイムで CFD のシミュレーションを行うなど考えられないと いう認識であった。  FlowDesigner は信憑性の高いソフトで、多くの環境系の専門家によって利用されている。し かし、Grasshopper 等、他のソフトと連携させることはできないという欠点がある。

環境系のソフト まとめ  ここまで環境系のソフトについていくつか見てきたが、そこから大きく2つのことが見えてき た。  第 1 には精度と時間の関係であった。そのソフト自体が検証を成されているのかがまず問題 であるが、基本的にシミュレーションは精度が上がれば上がるほど時間がかかる。設計の初期段 階に何日もかかるようなシミュレーションをかけても無意味であるし、細かい設計段階で精度の 低いシミュレーションを行うこともまた無意味であると考えられる。よって設計者がこういった ソフトを使う時には、設計の段階、密度に合わせて精度を考える必要があり、信憑性の高いソフ トを選ぶことが重要である。  第 2 に環境に配慮した建築、環境解析のソフトを調査して感じたことは、快適性を考えて解 析と設計を行っているにも関わらず、人のおかれる状況、人間の行動について考えられていない ということである。まず、環境解析のソフトは環境の解析しかしないということには再考の余地 がある。環境デザインの多くは夏の暑さのピーク時と冬の寒さのピーク時に関して最低限の環境 を保てるよう設計され、部屋の平均的な環境に対して設計を行われる。しかし快適性は常に考え らえるべきであるし、時間によって、人のいる場所、行動は異なるのである。そのために、快適 性を考えるためには、建築を利用する人の動きを同時に考え、設計しなければならないだろう。  そこで次項では快適性を考えるにあたって人の動きをシミュレーションするソフトに焦点を当 てる。

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- 028 -

1-2 建築とアルゴリズム

5. FlowDesigner


第 1 章 背景

1. SimTread2 ※ 58

SimTread 2 では、歩行者のシミュレーションを Vectorworks(CAD ソフト ) 上で行うことがで

A&A 『SimTread 2 機能紹介』 http://www.aanda.co.jp/ products/simtread/func. html

図 1-90

きる。人の発生場所や目的地、障害物などを設定することで、それぞれの人が最短ルートをたど り、人同士の衝突や滞留ストレスまで表現可能である。 ※ 5 8

1-92

A&A 『SimTread 2 機能紹介』 http://www.aanda.co.jp/ products/simtread/func. html

図 1-91 歩行シミュレーション

図 1-92 ポテンシャルマップ

図 1-93 都市スケール

Sim Tread 2 は二次元でしかシミュレーションを行えないのだが、Vectorworks を使うことが できれば非常に使いやすいソフトである。本来は避難シミュレーション等に利用され、その建築 の大よその利用人数を予測し、避難にかかる時間を把握するために使われる。人間の動きを正確 にシミュレーションすることはできないが、車いすや高齢者などの細かい設定も行え、大まかな 予測を立てることはでき、人が滞留する場所等を把握できるため、設計段階でシミュレーション することにより、設計に反映することができる。

2. SMART Move VIZ  SMART Move は、建物内や都市において、直感的に群集のシミュレーション、分析と視覚化

※ 59 SMART Solutions Network 『Introduction

to

Smart

が可能となる Rhinoceros のプラグインである。 ※ 5 9

Move』 h t t p : / / w w w . s m a r t solutions-network.com/ p a g e / s m a r t - m o v e - v i z introduction 2013-10-18

図 1-93

1-95

SMART Solutions Network 『Introduction

to

Move』 h t t p : / / w w w . s m a r t solutions-network.com/ p a g e / s m a r t - m o v e - v i z introduction 2013-10-18

図 1-94 群集シミュレーション

図 1-95 密度の可視化

図 1-96 危険な場所の把握

Smart

2013 年 10 月現在では、無料でベータ版が配布されている。設計のより早い段階でこういっ たシミュレーションを行うことができるのは画期的で、さらに三次元で視覚化されていることは 魅力的である。非常に不安定なソフトで、著者が使用した際には、簡易的なモデルに対してしか シミュレーションできなかった。

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- 029 -

1-2 建築とアルゴリズム

1-2-4 人間行動シミュレーションソフト


第 1 章 背景

背景では、建築の分業化が進んでいること。また BIM というシステムによって設計系以外の 分野でのデータのやり取りがシンプルなものに確立されつつあること。一方でデザイナーが様々 な分野の解析ソフトを設計に反映させることができる状況にあること。しかしその解析結果に対 して知識がないデザイナーが安易に使おうとすればそこに問題が起きるため、解析に利用するソ フトは設計段階において慎重に選ぶ必要があること。さらに環境シミュレーションのソフトを用 いた設計は多いものの、人間の動きまで考え、根本的に人の快適性というものを考えた事例がな いことを示した。  これらの背景から、デザイナーが他分野と統合すると、より設計の幅が広がる可能性があると 思われる。だがそこにはこれまで示したような多くの障壁がある。それを解決するには、精度と 信憑性の高いソフトを選定し、それらを1つのプラットフォームとしてつなげることが必要に なってくる。そしてシンプルなインターフェースで入力と出力をわかりやすいものにする必要が ある。  そこでよりシームレスなフローが実現できれば、今までになかった設計プロセスによって新し い建築が生まれると考えられる。

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- 030 -

1-3 背景のまとめ

1-3 まとめ


第2章 2 研究概要  2-1 用語の定義  2-2 目的  2-3 研究フロー  2-4 プラットフォームによる設計フロー


第 2 章 概要

2-1 用語の定義

2-1 用語の定義

・プラットフォーム 本研究はプラットフォームの開発を目的とするものである。 本論文では、「プラットフォーム」を、BIM に置き換わる新たなデータベースと定義する。 デザイナーが利用するソフトをベースとし、環境や構造等の他分野の解析ソフト等を連携させた プラットフォームにより、1つの建築の初期設計から施工、竣工後の管理までのすべての段階に おいて管理する。そのシステムができることによって設計の初期段階からあらゆるシミュレー ションを行いながら大胆な形状のスタディを行うことのできるフローが確立される。

・SET* 標準有効温度 (Standard Effective Temperature) のことを SET* と呼ぶ。SET* とは、 「温熱感覚 ※ 1 社 団 法 人   空 気 調 和・ 衛 生 工 学 会 『 新 版・ 快 適 な 温 熱 環 境 の メ カ ニ ズム 豊かな生活空間をめざし

ある。実在環境の気温、平均放射温度、風速、相対湿度、代謝量、実質着衣量などの入力パ ラメータから、人間の温冷感と快適感を支配する値が算出でき、温冷感と快適感に対応した

て』 P73

および放熱量が実在環境におけるものと同等になるような相対湿度 50%の標準環境の気温」で

P77

2006.3

SET*[degC] を算出することができる。SET* と温熱感覚の対応に関しては下に図を示す。 ※ 1

40

温冷感

快適感

非常に暑い

非常に不快

暑い 35 暖かい

不快

SET*[degC]

30 やや暖かい 25

なんともない

快適

やや涼しい 20 涼しい

図 2-1.1

やや不快

社 団 法 人   空 気 調 和・ 衛 生 工 学 会

15

『 新 版・ 快 適 な 温 熱 環 境 の メ カ ニ ズム 豊かな生活空間をめざし

寒い

て』 P73

非常に寒い

P77

10

2006.3

不快

図 2-1.1 SET* と温熱感覚の対応

・快適性 本論文で定義する快適性とは、単に人を取り巻く空間の環境の状態 ( 気温や湿度等 ) ではなく、 その環境によって人が実際どう感じているかということを指標とした値である。快適性を導き出 すために、今回は SET* という指標を使う。

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- 032 -


第 2 章 概要

2-2 目的

2-2 目的

デザイナーが高度なシミュレーションを、正確で容易に行うことのできるプラットフォームを 明示し、新しい設計プロセスを開発・提案することを目的とする。

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- 033 -


第 2 章 概要

2-3 研究フロー

2-3 研究フロー

ここに本研究のフローを示す。

技術が発達しても建築の設計 プロセスに変化がない現状

建築の理想像とは

建築業界の現状を調査

建築とアルゴリズムについて 調査

BIM について調査

デザイナーが利用するプログ ラミング言語・ソフトを調査

環境と建築について調査

BIM の事例と優位性

デザイナーが他分野のソフトをデザ インに組み込む際の優位性と陥穽

デザイナーが利用する多分野を統合した プラットフォーム開発の必要性と可能性

プラットフォームの一例を作成 モデリング

Y 駅を対象とした調査 人数と環境の調査

プラットフォームにより Y 駅の 快適性を算出する。

モデルの評価と解析・改善案の 提案

プラットフォームの有用性の 証明

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- 034 -


第 2 章 概要

プラットフォームを設計した場合、具体的に建築設計のフローがどのように変化するのか。ま た、今までにないどのようなプロセスが可能となるのか。そのフローをここに示す。 クライアントの依頼 敷地の決定 調査

初期モデルの作成 敷地の条件

利用者の人数や敷地の条件、環境 等、誰にでもわかる内容を入力

初期値、可変パラメータ の設定。

Platform

デザインに必要なパラメータ を即座に見ることができる。

分離していた分析結果を統合 することによる新たな評価値

Platform

Platform

Platform

評価値が最適な値に なるようなモデル

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- 035 -

2-4 プラットフォームによる設計フロー

2-4 プラットフォームによる設計フロー


第3章 3 実験概要  3-1 実験目的  3-2 実験フロー


第 3 章 実験概要

デザイナーのソフトと環境解析ソフト、人間行動シミュレーションソフトをできる限りシーム レスに連携するためのプラットフォームを設計する。本実験では、例として Y 駅を取り扱うこ ととし、ホーム上での人間の快適性を最適化する設計プロセスを示す。

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- 037 -

3-1 実験目的

3-1 実験目的


第 3 章 実験概要

本実験のフローを示す。プラットフォームを設計しておくことで、デザイナーがシンプルなフ ローで新しい設計プロセスで設計を行うことができる。

Y 駅の予備調査

敷地の季節・時間ごとの 環境条件

敷地の 3D モデルを作成 時間ごとの利用人数を把握

初期モデルとパラメータの設定

駅構内の人間行動をシミュレーション

CFD のシミュレーション

気温

湿度

気流

放射温度

代謝量

SET* での評価

着衣量

Platform

快適性を出力し、モデルを評価

モデルの評価値

モデルの変更

Platform

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- 038 -

3-2 実験フロー

3-2 実験フロー


第4章 4 予備調査  4-1 入力パラメータの決定   4-1-1 予備調査概要   4-1-2 実験対象日時と条件の決定    4-1-2-1 実験対象日の決定    4-1-2-2 実験対象時間の決定   4-1-3 その他入力パラメータの決定    4-1-3-1 代謝量の決定    4-1-3-2 着衣量の決定  4-2 敷地モデルの作成   4-2-1 地形の読み取り   4-2-2 三次元モデルの作成   4-2-3 測定領域周辺の作成   4-2-4 モデリング結果


第 4 章 予備調査

4-1-1 予備調査概要  環境と人間行動に着目し、快適性を算出するにあたって、本実験では非空調であり、場所によっ て人の密度が変わり、時間によっても環境、人の動きが大きく変化する空間として鉄道駅を例に とりあげる。鉄道駅は通勤に毎日多くの人が利用するにも関わらず、外部空間として快適性を考 えられることが少ない。しかし外部の影響を大きく受ける空間であるからこそ、環境を同時に考 えた設計を考える必要がある。  具体的な敷地として、非空調駅でありながら環境に配慮され、去年改修が終わった某 Y 駅を 対象として実験を行う。環境に配慮されて設計された駅のモデルとして、環境調査が Y 駅を対 象に行われ、データが比較的多数あることも、この駅を本論文で取り上げる理由である。  予備調査では、本実験を行うために Y 駅における時間ごとの利用者数と敷地の環境を把握する。 また、シミュレーションを行うための敷地の 3D モデルの作成と現状の駅のモデリングを行う。  このシミュレーションは、一年の中で最も気温が高くなる夏の代表日、最も気温が低くなる冬 の代表日、一年の最も平均的な気温の日を春、秋の代表日とし、三種類の日を対象に行う。また、 以下のように利用者数と人の動き、気温に大きく影響を与える時間帯を 1 日のうちで 3 箇所選 定し、それら 3 種の時間帯に対してもシミュレーションを行うこととする。 日

時間

春・秋

3

×

3

=

9

これらの要素を掛け合わせ、1 つのモデルに対して 3×3=9 通りの解析をかけ、検証する。  実験対象日の選定方法を 4-1-2-1 に、実験対象時間の選定方法を 4-1-2-2 に記す。

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- 040 -

4-1 入力パラメータの決定

4-1 入力パラメータの決定


第 4 章 予備調査

4-1-2-1 実験対象日の決定  実験対象日を決定する。四ッ谷駅の快適性を考えることが第一の目的である。  まず近年四ツ谷駅において、16 風向の測定、記録された論文があるため、その測定結果を利 用する。

N

N 25%

25% 図 4-1

4-2

山田友紀、中村友香、山形史人、 坂 本 圭 司 、中 野 涼 太 、伊 藤 光 太 朗 、

50%

50%

横山朋之、飯野直志、佐藤敏彦、 田辺新一 『駅空間における熱的快適性実測

0%

0%

調査 その 26:Y駅の気流環境測 定結果』梗概 図 5 構内風廃図より

図 4-1 Y 駅南駅舎屋上風向図

図 4-2 Y 駅南駅舎構内風向図

※ 1 山田友紀、中村友香、山形史人、 坂 本 圭 司 、中 野 涼 太 、伊 藤 光 太 朗 、 横山朋之、飯野直志、佐藤敏彦、 田辺新一 『駅空間における熱的快適性実測 調査 その 26:Y駅の気流環境測 定結果』梗概

図 4-1-2-1.1 は、8 月における主風向別の駅舎屋上における風配図を示しており、南南西から の風が最も大きいことがわかる。また、屋外では風速 1.5m/s 以上の風が多く観測された。一方 図 4-1-2-1.2 の、駅構内の風向図からは南側からの風を効率的に導入できていないことがわかる。 また、同論文より、この時主風向南の風速は、平均 2.38m/s である。 ※ 1

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- 041 -

4-1 入力パラメータの決定

4-1-2 実験対象日時と条件の決定


第 4 章 予備調査

4-1 入力パラメータの決定

次に以下に四ツ谷駅と川の位置関係を示す。

図 4-3 Google 『Google earth』 四ッ谷駅周辺

Y駅

図 4-3 Y 駅衛星写真

図 4-1-2.3 からわかるように、Y 駅の延長上に川があり、 南南西から北北東の方向に流れている。 そのような外的要因から、南南西が一年間の卓越風であると考え、前のページで示した平均風速 をすべての期間に適用し、シミュレーションをする。  また、測定日が 2012 年 8 月 15 日、16 日であることから、夏の代表日として 2012 年 8 月 15 日を対象とすることにし、冬の代表日と平均気温の代表日も 2012 年の中で決定する。

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- 042 -


第 4 章 予備調査

また、春、秋の代表日は 2012 年で最も平均的な気温変位を示した日とする。2012 年の年間 平均気温を以下に示す。

表 4-1 2012 年 年間平均気温 表 4-1 気象庁 『過去の気象データ検索』 http://www.data.jma.go.jp/

平均気温 16.3

[degC]

最高気温 [degC]

最低気温 [degC]

20.0

13.1

obd/stats/etrn/index.php 2013-09-23

※ 2 気象庁 『過去の気象データ検索』 http://www.data.jma.go.jp/

2012 年を通して最も年間平均に近い日を調べたところ、4 月 10 日が最も近かったことから、 この日を代表日とする。 ※ 2

obd/stats/etrn/index.php 2013-09-23

以上より実験対象日程は、2012 年の 1 月 3 日、4 月 10 日、8 月 15 日を採用する。

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- 043 -

4-1 入力パラメータの決定

冬の代表日は、気象庁のデータより、2012 年で最も低い平均気温を記録した 1 月 3 日とする。


第 4 章 予備調査

次に実験対象時間を決定する。最も気温が高くなる時間帯と駅の利用者数が最大になる時間帯 を代表的に取り上げ実験を行う。  まず、気温が最大となるのは 8 月 15 日の 13 時であり、環境的に最も状況が悪化するため、 全期間において 13 時を実験対象とする。  次にラッシュのピークの時間帯を把握するため、Y 駅の利用者数について現地で調査を行った。  測定使用器具は、改札通過人数を数えるためのカウンター ( 数取器手持ち型 ) と、10 分間の 乗降者人数を測定して記録するためのカメラ (NEX-6) である。  朝と夜の通勤ラッシュの時間帯は、それぞれの時間帯で Y 駅の Y 口の改札通過人数を計測し、 最も利用者数が多くなる 10 分間を割り出した。結果は 08:40 08:50 と 20:20 20:30 であった。  そして前項で決定した 13:00 13:10 において、それぞれの電車の 1 つの扉から出入りする人 数を計測し、その結果を元に群集シミュレーションを行った。

これらの予備調査から決定された実験対象日時ごとの入力パラメータを以下に示す。 表 4-2 実験対象時間の気象データ

実験日

実験時間

気温 [degC]

相対湿度 [%]

現地気圧 [hPa]

海面気圧 [hPa]

2012/01/03

08:40-08:50

5.7

28

1009.9

1014.4

13:00-13:10

9.7

18

1006.4

1010.8

20:20-20:30

6.9

28

1007.7

1012.2

08:40-08:50

15.8

44

1020

1024.4

13:00-13:10

18.5

38

1018.9

1023.2

20:20-20:30

16.5

70

1017.8

1022.2

08:40-08:50

29

80

1011.3

1015.4

13:00-13:10

33.1

58

1009.5

1013.6

20:20-20:30

29.2

72

1009.8

1013.9

2012/04/10

表 4-2 気象庁 『過去の気象データ検索』 http://www.data.jma.go.jp/ obd/stats/etrn/index.php 2013-09-23

2012/08/15

前述したように風向風速に関しては測定場所が東京気象台のデータしかないため、 前項で示した四ツ谷駅の北駅舎屋上での気流速度を使う。 よって一律して風向は南南西、風速 2.38[m/s] とする。

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- 044 -

4-1 入力パラメータの決定

4-1-2-2 実験対象時間の決定


第 4 章 予備調査

4-1 入力パラメータの決定

4-1-3 その他入力パラメータの決定 4-1-3-1 代謝量の決定  SET* の算出に必要な入力パラメータの1つである代謝量 [W/ ㎡ ] を決定する。 ※ 3 社 会 法 人 空 気 調 和・ 衛 生 工 学 会 『快適な温熱環境のメカニズム』 丸善株式会社 p.29

代謝量は静かに横になっている状態を基礎代謝量といい 1met と呼ぶ。  立位の状態は 1.2met。ホーム上での移動を平坦地歩行、速度 4.8km/h とし、2.6met の代謝 量であるとする。それらを [W/ ㎡ ] に換算し、以下を入力パラメータとする。 ※ 3

表 4-3 立位時と歩行時の代謝量

立位時

歩行時

1.2met × 58.2W/ ㎡ =69.84W/ ㎡

2.6met × 58.2W/ ㎡ =151.32W/ ㎡

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第 4 章 予備調査

4-1 入力パラメータの決定

4-1-3-2 着衣量の決定  SET* の算出に必要な入力パラメータの1つである着衣量 [clo] を決定する。 ※ 4 神奈川県建築士事務所協会 『快適指標』

気温 21℃、湿度 50%、気流 0.1m/s 秒以下で 1met の人が快適と感じるときの着衣量を 1clo

h t t p : / / w w w . j - k a n a . or.jp/architect/pdf/faq/ kaitekiseinokagaku.pdf 2013-09-18

とし、裸体は 0clo としての着衣量の熱抵抗を表現する。着衣量は以下を入力パラメータとする。 ※ 4

表 4-4 季節ごとの着衣量

冬季

春季・秋季

春季・秋季

1.2clo

0.8clo

0.3clo

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第 4 章 予備調査

4-2-1 地形の読み取り  Y 駅の敷地と、現状の Y 駅の 3D モデルを作成する。どちらも詳細な図面を手に入れることは できないため、Google Earth と現地調査から、以下の図のように大よそのモデルを作成する。こ こでは 3dsMax を使用してモデリングを行った。

図 4-4

4-5

Google 2013 ZENRIN 『Y駅』

図 4-4 Y 駅衛星写真

図 4-5 Y 駅衛星写真 2

図 4-6 Y 駅モデル

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- 047 -

4-2 敷地モデルの作成

4-2 敷地モデルの作成


第 4 章 予備調査

環境と人間行動に影響を与える可能性のある要素を主にモデリングした。敷地とホームに加え、 現状で風に影響を与える可能性のある障害物・日射に影響を与える可能性のある遮蔽物・人間の 行動に影響を与える可能性のある階段等をモデリングした。

道路

コンコース屋根 コンコース・建物 ホーム屋根 階段 ホーム

敷地

図 4-7 Y 駅モデル 2

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- 048 -

4-2 敷地モデルの作成

4-2-2 三次元モデルの作成


第 4 章 予備調査

周辺の敷地は風の影響を正確に把握するため、平面で見たときに測定範囲である駅ホームの長 辺の、2.5 倍以上の直径範囲の円を想定し作成した。

1

2.5 以上

図 4-8 Y 駅モデル 3

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- 049 -

4-2 敷地モデルの作成

4-2-3 測定領域周辺の作成


第 4 章 予備調査

4-2 敷地モデルの作成

4-2-4 モデリング結果  モデリングした Y 駅の内観を以下に示す。

図 4-9 Y 駅モデル

図 4-10 Y 駅モデル内観

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第5章 5 本実験  5-1 プラットフォームの作成   5-1-1 使用するソフトとフロー   5-1-2 プラットフォームの全体像   5-1-3 初期形状のスタディ   5-1-4 測定位置の書き出し   5-1-5 測定結果の可視化   5-1-6 数値としての結果出力   5-2 解析結果 1  5-3 解析結果検証第一段階   5-3-1 解析結果検証   5-3-2 第二モデルの作成  5-4 解析結果 2  5-5 解析結果検証第二段階   5-5-1 解析結果検証   5-5-2 第三モデルの作成  5-6 解析結果 3  5-7 解析結果検証第三段階  5-8 まとめ


第 5 章 本実験

5-1-1 使用するソフトとフロー  本研究で最も重要な目的は他分野のソフトを統合したプラットフォームを開発することであ る。プラットフォームはまずデザイナーが利用するソフトである必要があり、さらに、他分野に 広がりを持った拡張性の高いソフトである必要がある。よって本研究では背景で紹介したソフト の中で、デザイナーが非常に利用しやすいインターフェースを持つ Grasshopper をプラグイン に持つ Rhinoceros を使うことにする。  デザイナーが利用するソフトを中心に置くことで、今までの設計フローの構図が一変する。 初期設計

詳細設計

施工設計 避難設計

環境設計 構造設計

BIM

最終モデル 図 5-1

現状 BIM フロー

現状 BIM モデル  現状の BIM と設計の連携では初期設計 ( コンセプトデザイン ) の段階はデザイナーが受け持ち、 他分野に詳細な設計や他の側面からの設計を任せるような形を取っていた。よって BIM によっ て複数の分野を統合しても形状として設計に露出することはなかった。 施工設計

避難設計

環境設計

Rhinoceros Grasshopper 構造設計

詳細設計

Platform

最終モデル 図 5-2

想定モデルフロー

想定モデル  新たなプラットフォームの設計モデルでは、デザイナーが設計に利用する Rhinoceros + Grasshopper を常に中心に添え、他分野の知識を取り込みながら、全段階においてデザイナーが 設計を進めることが可能となる。  また、Grasshopper はデザイナーが操作しやすい拡張性のあるプログラミングソフトであり、 場合によって自ら設計要素を拡張していくことができる。非常に将来性のある形といえる。

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- 052 -

5-1 プラットフォームの作成

5-1 プラットフォームの作成


第 5 章 本実験

本研究でプラットフォームを作成する際にデザイナーが中心に使用するソフトは Rhinoceros と Grasshopper と想定し、今回は CFD のシミュレーションソフトは Flow Designer、群集シミュ レーションソフトは SimTread2 を利用する。ソフトの詳細に関しては背景を参照。

図 5-3 Robert Mcneel & Associates 『Rhinoceros』 http://www.flexicad.com/ bild.php?id=6274 2013-10-16

図 5-4 nlucero.com 『Getting into Grasshopper』 h t t p : / / n l u c e r o . c o m / getting-into-grasshopper

図 5-4

Grasshopper

2013-10-16

図 5-3

Rhinoceros

図 5-5 A D V A N C E D

K N O W L E D G E

LABORATORY 『FlowDesigner10』 h t t p : / / w w w . a k l . c o . j p / products/flowdesigner10/ 2013-10-16

図 5-5

FlowDesigner

図 5-6 A&A 『SimTread2』 http://www.aanda.co.jp/ products/simtread/ 2013-10-16

図 5-6

SimTread 2

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- 053 -

5-1 プラットフォームの作成

使用するソフトを以下に示す。


第 5 章 本実験

5-1 プラットフォームの作成

5-1-2 プラットフォームの全体像  本項目ではプラットフォームの概要から作成プロセスを提示する。   以下の画像が、Grasshopper で作成したプラットフォームである。

初期形状のスタディ (5-1-1-2) 迅速に形状のスタディができ るよう、Rhinoceros 上で線を 描くだけで階段や測定面を簡 単に生成することができるシ ステムを設けた。

測定位置の書き出し (5-1-1-3) 形状に合わせて生成された 測定面の座標を出力する。

測定結果の可視化 (5-1-1-4) シミュレーションソフトで 出力された結果を取り込み、 Rhinoceros 上で色をつける ことで、駅ホーム上での人 や環境状態の分布を可視化 する。

評価値を出力 (5-1-1-5) シミュレーションソフトか ら出力された結果を統合し、 具体的な値として出力する。 これが今回の設計の評価値 ( 快適性 ) といえる。

図 5-7 項 5-1では頁右上に、各頁におい て説明している部分がどこなのか をこの図を使い示す。

図 5-7

Platform

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- 054 -


第 5 章 本実験

5-1 プラットフォームの作成

5-1-3 初期形状のスタディ

図 5-8

Platform_ 初期形状のスタディ部

プラットフォームの第一段階である初期形状のスタディのシステムに関して示す。図 5-8 は、 ホームの作成、ホームに対する測定面の作成、階段の作成を迅速に行えるよう作ったシステムで ある。

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- 055 -


第 5 章 本実験

5-1 プラットフォームの作成

初期形状のスタディでは、その後シミュレーションを行うために迅速かつある程度正確なモデ リングが求められる。よってこの段階では、駅を速やかにモデリングするために、駅には必須で ある階段を、一本線を引くだけで法規の範囲内でパラメータを設定できるシステムを作った。ま た、ホーム上を CFD と群集シミュレーションの測定面とするが、ホームの形状が変わった時で もすぐにシミュレーションを行えるよう、測定面のグリッドの作成と、それぞれのグリッドの座 標の書き出しを行えるシステムを設けた。

図 5-9

Rhinoceros 画面 1

図 5-10 Rhinoceros 画面 2

図 5-11 パラメータ入力部

図 5-9 のように Rhinoceros 上で線を一本引き、Grasshopper でその線をセットするだけで、 図 5-10 のようにその線に合わせて階段ができあがる。また、図 5-11 の入力部分で法規上の規 定値を入力することで高さに合わせて踊場が自動で生成され、後から蹴上や踏面の寸法を変更す ることが可能である。

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- 056 -


第 5 章 本実験

5-1 プラットフォームの作成

図 5-12 Rhinoceros 画面 3

図 5-13 Rhinoceros 画面 4

図 5-14 パラメータ入力

駅のホームも、図 5-12 のように Rhinoceros 上で線を引き、 Grasshopper 上でそれらの線をセッ トするだけで、図 5-13 のようにその線を繋ぐ面が生成され、その形状に合わせ、入力したグリッ ドの個数に合わせてグリッドが作成される。これらが他のシミュレーションソフトでの測定面と なり、ここから書き出すことで形状が変わってもその度にモデリングをする必要がなくなる。

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- 057 -


第 5 章 本実験

5-1 プラットフォームの作成

5-1-4 測定位置の書き出し

図 5-15 測定位置書き出し

図 5-16 書き出し結果

シミュレーションソフトでは、測定が必要な場所に測定位置を設定する必要がある。しかし膨 大な数の測定位置があるため、図 5-15 のように自動化するシステムを作成した。  生成されたグリッドの中心点の x,y,z 座標をエクセルに書き出すシステムである。このシステ ムにより、測定位置の設定が簡単に行えるため、CFD のシミュレーションへの移行がスムーズ になる。

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- 058 -


第 5 章 本実験

5-1 プラットフォームの作成

5-1-5 測定結果の可視化

図 5-17 Platform_ 測定結果の可視化部

群集シミュレーションと CFD のシミュレーションによる結果を取り込み、3D 上で分布を確認 できるシステムについて示す。

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- 059 -


第 5 章 本実験

5-1 プラットフォームの作成

図 5-19 パスの入力 2

図 5-18 パスの入力 1

図 5-20 着色

群集シミュレーションのログファイルと CFD のシミュレーションから出力されたファイルの パスを設定し、スイッチを入れるだけで瞬時に結果を読み取ることのできるシステムを配置。読 み込むと同時に結果を Rhino 上の 3D の測定面グリッドへフィードバックし、分布を可視化する。

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- 060 -


第 5 章 本実験

5-1 プラットフォームの作成

実際に群集シミュレーションソフトと CFD のソフトから出力されるデータは、以下の図のよ うなデータである。それらのデータを整理し、Grasshopper に取り込んだ過程をここに示す。 Sub Demo() Dim fso As Object 'FileSystemObject Dim fldStart As Object 'Folder Dim fld As Object 'Folder Dim fl As Object 'File Dim Mask As String Application.ScreenUpdating = False Dim newWS As Worksheet Set newWS = Sheets.Add(before:=Sheets(1)) Set fso = CreateObject("scripting.FileSystemObject") ' late binding 'Set fso = New FileSystemObject 'or use early binding (also replace Object types) Set fldStart = fso.GetFolder("C:\Folder1") ' <-- use your FileDialog code here Mask = "*.txt" 'Debug.Print fldStart.Path & "\" ListFiles fldStart, Mask For Each fld In fldStart.SubFolders ListFiles fld, Mask ListFolders fld, Mask Next

図 5-22 出力ファイル 2

図 5-21 出力ファイル 1

群集シミュレーションの結果は、動画と共に図 5-21 のようなログファイルを出力することができ る。計測領域のログファイルは前述した測定位置の グリッドと同じ数 ( 今回は 300 個 ) だけある。それ ぞれのファイルの中身は図 5-22 のように、毎秒そ のグリッドに何人、人がいたかを示している。よっ て今回は 10 分間測定したため、300 グリッド × 600 秒= 180000 個のデータとして、結果が出力 される。  この膨大なデータを Grasshopper で読み取るに

Dim myWB As Workbook, WB As Workbook Set myWB = ThisWorkbook Dim L As Long, t As Long, i As Long L = myWB.Sheets(1).Cells(Rows.Count, "A").End(xlUp).Row t=1 For i = 1 To L Workbooks.OpenText Filename:=myWB.Sheets(1).Cells(i, 1).Value, DataType:=xlDelimited, Tab:=True Set WB = ActiveWorkbook WB.Sheets(1).UsedRange.Copy newWS.Cells(t, 2) t = myWB.Sheets(1).Cells(Rows.Count, "B").End(xlUp).Row + 1 WB.Close False Next myWB.Sheets(1).Columns(1).Delete Application.ScreenUpdating = True End Sub

Sub ListFolders(fldStart As Object, Mask As String) Dim fld As Object 'Folder For Each fld In fldStart.SubFolders 'Debug.Print fld.Path & "\" ListFiles fld, Mask ListFolders fld, Mask Next End Sub

Sub ListFiles(fld As Object, Mask As String) Dim t As Long Dim fl As Object 'File For Each fl In fld.Files If fl.Name Like Mask Then t = Sheets(1).Cells(Rows.Count, "A").End(xlUp).Row + 1 'Debug.Print fld.Path & "\" & fl.Name If Sheets(1).Cells(1, 1) = "" Then Sheets(1).Cells(1, 1) = fld.Path & "\" & fl.Name Else Sheets(1).Cells(t, 1) = fld.Path & "\" & fl.Name End If End If Next End Sub

あたって、ファイルが 300 個にわかれていると面 倒が生じるため、エクセルに右のようなコードを 入力し、フォルダを指定することで全データを図 5-23 のように統合した。  そしてそれらを Grasshopper で読み込み、再度 整理するシステム ( 図 5-24) を作った。

図 5-24 データの整理

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図 5-23 ファイル統合結果

- 061 -


第 5 章 本実験

5-1 プラットフォームの作成

図 5-25 CFD 出力ファイル

次に CFD のシミュレーション結果から得られたファイルは、図 5-25 のように、測定位置ごと に、10 分間の平均値がそれぞれで出力される。この結果をそのまま Grasshopper で読み込める ようなシステムを作った。

図 5-26 off プレビュー画面

図 5-27 風速プレビュー画面

図 5-29 スイッチ

図 5-28 SET* プレビュー画面

三次元上でシミュレーション結果の分布を確認できる。また、図 5-29 のスイッチの切り替え だけで、図 5-26 5-28 のように、 「off」 、「風速」、「温度」、「湿度」、「SET*」のプレビューの切 り替えが可能である。

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- 062 -


第 5 章 本実験

5-1 プラットフォームの作成

5-1-6 数値としての結果出力

図 5-30 Platform_ 結果出力部

シミュレーションソフトから出力された結果をここで統合し、図 5-30 のような評価値やその 他結果をシンプルに表示することができるシステムを作成した。

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- 063 -


第 5 章 本実験

5-1 プラットフォームの作成

図 5-31 結果出力部拡大図

図 5-31 のように、必要な評価値と出力結果がまとめて出力される。  このようにシンプルな入力と出力のシステムを作ることで誰でも簡単にこのプラットフォーム を利用できるようになる。このようなプラットフォームこそ、より高度な設計スタディや新しい 設計プロセスに繋がる。

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- 064 -


第 5 章 本実験

本項目では第四章の予備調査で作成した第一段階の初期モデル ( 現状の Y 駅の形状 ) に関して プラットフォームを通した実験結果を示す。  以下に実験結果の見方を示す。 シミュレーション対象日時

入力パラメータ

初期モデル階段位置

初期モデルエスカレーター位置

シミュレーション結果分布 二つのホーム上に左から、 ・SET* 分布 ・10 分間の群集の密度分布 ・風速分布 ・温度分布 ・湿度分布 を示す。

N

シミュレーション結果 ・SET* 平均 [deg.C] : 10 分間の駅の利用者それぞれが、その時間内に通過したグリッド の環境を積算し、10 分間で感じた温度の平均値を、人数全体で平均値を算出したもの。 ・SET* 左ホーム平均 [deg.C] : 上記の SET* 平均を左ホームに限って算出したもの。 ・SET* 右ホーム平均 [deg.C] : 上記の SET* 平均を右ホームに限って算出したもの。 ・SET* 最低 [deg.C] : 全グリッドで測定した中での SET* の最低値。 ・SET* 最高 [deg.C] : 全グリッドで測定した中での SET* の最高値。 ・風速最低 [m/s] : 全グリッドで測定した中での風速の最低値。 ・風速最高 [m/s] : 全グリッドで測定した中での風速の最高値。 ・温度最低 [deg.C] : 全グリッドで測定した中での温度の最低値。 ・温度最高 [deg.C] : 全グリッドで測定した中での温度の最高値。 ・湿度最低 [%] : 全グリッドで測定した中での湿度の最低値。 ・湿度最高 [%] : 全グリッドで測定した中での湿度の最高値。

0人

最大人数

出力値の最低値と最高値に合わせてグラデーションを設定。 なるべく分布をわかりやすく可視化するために、それぞれの値の範囲 に合わせてグラデーションを対応させたため、最低値、最高値と共に 色を示した。 人の密度分布に関しては左の色を使う。

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- 065 -

5-2 解析結果 1

5-2 解析結果 1


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

08:50

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

5.7

28

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

20.674

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

20.694

[deg.C]

20.607

5-2 解析結果 1

2012.01.03. 08:40

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

18.996

20.887

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.034068

1.5797

5.6921

5.7000

13.999

27.999

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- 066 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

13:10

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

9.7

18

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

23.573

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

23.594

[deg.C]

23.500

5-2 解析結果 1

2012.01.03. 13:00

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

22.083

23.753

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.034057

1.4583

9.7000

9.7052

8.9978

18.000

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- 067 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

20:30

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

6.9

28

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

21.626

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

21.654

[deg.C]

21.542

5-2 解析結果 1

2012.01.03. 20:20

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

19.970

21.832

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.034075

1.45833

6.9000

6.9129

13.996

27.999

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- 068 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

23.304844

08:50

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

15.8

44

2.38

南南西

利用者密度

温度

風速

SET* 左ホーム平均

[deg.C]

SET* 右ホーム平均

23.32918

[deg.C]

23.21967

5-2 解析結果 1

2012.04.10. 08:40

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

21.60558

23.532

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.034061

1.4593

15.800

15.802

21.996

44.000

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- 069 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

13:10

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

15.8

38

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

25.257

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

25.283

[deg.C]

25.166

5-2 解析結果 1

2012.04.10. 13:00

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

23.678

25.469

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.034043

1.45944

18.500

18.500

18.996

38.000

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- 070 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

20:30

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

16.5

70

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

24.616

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

24.654

[deg.C]

24.499

5-2 解析結果 1

2012.04.10. 20:20

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

22.864

24.874

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.032702

1.4589

16.482

16.500

34.990

70.000

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- 071 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

08:50

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

29

80

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

30.609

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

30.609

[deg.C]

30.270

5-2 解析結果 1

2012.08.15. 08:40

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

26.994

30.943

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.032758

1.4604

28.970

29.000

39.927

80.000

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- 072 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

13:10

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

33.1

58

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

32.469

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

32.521

[deg.C]

32.286

5-2 解析結果 1

2012.08.15. 13:00

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

29.389

32.856

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.0348

1.4608

33.044

33.100

28.996

58.002

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- 073 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

20:30

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

29.2

72

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

29.758

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

29.827

[deg.C]

29.549

5-2 解析結果 1

2012.08.15. 20:20

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

26.856

30.173

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.032792

1.4605

29.126

29.200

35.804

72.000

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- 074 -


第 5 章 本実験

5-3-1 解析結果検証  まず Y 駅の現状モデルの解析結果の検証を行う。5-2 で示した第一段階の現状モデルの解析結 果をまとめると以下のような結果であった。

表 5-1 解析結果 1

春季と冬季に関しては比較的 25degC に近い SET* の値が算出されているが、夏季は特に快適 であるとされる 25degC との差が大きいことがわかる。

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- 075 -

5-3 解析結果検証第一段階

5-3 解析結果検証第一段階


第 5 章 本実験

5-3 解析結果検証第一段階

このモデルのすべての日時に類似している特徴を示す。

SET* の分布は南側の階段位置と、北側階段部は比較的低い温度となっている。

一方で北側と南から二つ目のエスカレーター部は比較的高い温 度となっている。

温度はほとんど均一で、一部の温度が低くなってい ることがわかる。階段下等であることからこのよう な現象が発生する可能性が推測できる。

湿度もほぼ均一であるが、一部 低い湿度となっている。温度と 同じ現象であるため同じ理由で あると推測する。

風速の低い場所が北側に集中している。 南南西から入る風がホームの南側で止まってしまっ ていることがわかる。北側階段部でも一部風が取り 込まれている。

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- 076 -


第 5 章 本実験

り 25degC に近い場所に人の密度が高くなってしまう箇所を配するべきであ る。

以上のような傾向から、SET* 分布に影響が強い因子が風速分布であり、温度と湿度における 特異的な数値低下部に関してはさらなる検証の必要がある。  背景でも述べたように、シミュレーションは比較する時に非常に有用であるが、1 つの解析結 果に対しては、実際の計測結果等と比較する必要がある。よってここでは現状モデルの解析結果 の分布と大まかな数値のみに着目する。

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- 077 -

5-3 解析結果検証第一段階

駅利用者分布は階段付近に多くなっている。SET* の指標においてできる限


第 5 章 本実験

以上の現状モデルの検証より、第二モデルを作成する。設計者が大まかなスケッチ段階からス タディをし、快適性を判定できることがこのシステムを使う上で優位な点である。

群集行動において利用者の密度が高くなり、SET* の温度 が高くなる場所はエスカレーター付近である。この位置を特 に注視する。

意匠的な面と快適性を設計初期段階から同時に考える。南側は風速が高い。 その南風をより北側まで運び、エスカレーター付近まで届けることがまず必 要であると考えた。また、同時に斜めから入る日射を防ぐことで夏季の環境 を改善する。

簡易的なスタディの例として、以下の図のように Vasari でのシミュレーションも試みた。あ くまでスタディの前段階に実験的に試みたものである。

図 5-32 Vasari1

図 5-33 Vasari2

日射を防ぐと同時に、南から流れてくる風を取り込み、エスカレーター付近で風速を強めると いう狙いで考案した。

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- 078 -

5-3 解析結果検証第一段階

5-3-2 第二モデルの作成


第 5 章 本実験

5-3 解析結果検証第一段階

スケッチとして以下のようなイメージのモデルを次のモデルとして提案する。

図 5-34 第二段階モデル レンダリング画像

新たにつけた屋根の効果の検証として Vasari を実験的に使用する。そのイメージを以下に示 す。

図 5-35 第二段階モデル Vasari1

図 5-36 第二段階モデル Vasari2

図 5-37 第二段階モデル Vasari3

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- 079 -


第 5 章 本実験

そして次の解析に持ち込む。

IN

OUT

図 5-38 第二段階モデル _ 分解

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- 080 -

5-3 解析結果検証第一段階

下のように現状モデルの屋根を取り外し、日射を遮蔽し風を取り込むためのパネルを配置する。


第 5 章 本実験

5-3 解析結果検証第一段階

次の測定モデルを以下に示す。これを第二モデルとする。

図 5-39 第二段階モデル

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- 081 -


第 5 章 本実験

5-4 解析結果 2

5-4 解析結果 2

2012.01.03. 08:40

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

08:50

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

5.7

28

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

20.688

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

20.735

[deg.C]

20.524

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

19.357

20.868

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.050243

1.2499

5.6878

5.7000

27.197

27.999

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- 082 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

13:10

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

9.7

18

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

23.558

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

23.597

[deg.C]

23.426

5-4 解析結果 2

2012.01.03. 13:00

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

22.405

23.752

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.049499

1.2501

9.7000

9.7003

17.193

18.000

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 083 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

20:20

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

6.9

28

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

21.609

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

21.650

[deg.C]

21.485

5-4 解析結果 2

2012.01.03. 20:20

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

20.325

21.841

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.049596

1.2500

6.9000

6.9140

27.239

28.000

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 084 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

08:50

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

15.8

44

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

23.324

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

23.372

[deg.C]

23.157

5-4 解析結果 2

2012.04.10. 08:40

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

21.974

23.532

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.049308

1.2498

15.797

15.800

42.794

43.999

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 085 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

13:10

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

18.5

38

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

25.254

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

25.295

[deg.C]

25.111

5-4 解析結果 2

2012.04.10. 13:00

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

24.019

25.469

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.049345

1.2499

18.499

18.501

36.971

37.999

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 086 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

20:20

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

16.5

70

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

24.612

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

24.659

[deg.C]

24.469

5-4 解析結果 2

2012.04.10. 20:20

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

23.240

24.874

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.049354

1.2499

16.361

16.500

66.706

69.997

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 087 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

08:50

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

29

80

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

30.601

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

30.667

[deg.C]

30.368

5-4 解析結果 2

2012.08.15. 08:40

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

28.816

30.943

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.049354

1.2499

28.957

29.000

77.843

79.999

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 088 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

13:10

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

33.1

58

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

32.544

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

32.596

[deg.C]

32.364

5-4 解析結果 2

2012.08.15. 13:00

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

31.072

32.856

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.049462

1.2500

33.024

33.100

56.420

57.999

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 089 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

20:20

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

29.2

72

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

29.679

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

29.806

[deg.C]

29.287

5-4 解析結果 2

2012.08.15. 20:20

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

27.968

30.172

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.045263

1.3126

29.182

29.200

68.501

71.999

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 090 -


第 5 章 本実験

5-5 解析結果検証第二段階

5-5 解析結果検証第二段階 5-5-1 解析結果検証  5-4 で提案したモデルに対して行った解析の結果の数値をまとめて示す。

表 5-2 解析結果 2

前の現状モデルで出力された結果を下に記し、比較する。

表 5-3 解析結果 1

上昇

低下

図 5-40 第一段階から第二段階への SET* の値の変位

モデルの評価値となる SET* の値の変位に注目すると、全体的に期待通り SET* の値は低下の 傾向があるが、最も SET* の値を下げる必要のある夏季の昼の時間帯に対しては上昇してしまっ ている。25degC にできる限り値を近づける必要があるので、冬季の昼と夜に関しては上昇させ る。

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- 091 -


第 5 章 本実験

置き、シミュレーション結果変動から、提案したモデルの有用性を判定する。

一部特異的な SET* 値を示していた場所が SET* の分布には見られなくなった。

SET* の分布を比較すると南側の比較的低い値 の範囲が提案の狙い通り北側へ拡大している。

Y 駅現状モデル

第二モデル

風速の最低部の分布が変化した。

南側の SET* の分布が改善された理由は風 速分布に依存していることが読み取れる。 Y 駅現状モデル

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第二モデル

- 092 -

5-5 解析結果検証第二段階

5-5 では、5-4 で提案したモデルと 4 章で作成した Y 駅の現状モデルを比較することに重点を


第 5 章 本実験

置き、シミュレーション結果変動から、提案したモデルの有用性を判定する。  温度においては特異的な変化が一部にこのモデル でも見られる。原因がシミュレーション解析側のエ ラーであることが考えられるため次のモデルより修 正を試みる。

上記の場所以外では大きな温度の分布は見られな い。CFD の解析において放射熱の計算が含まれて いないことが原因であると考えられる。

Y 駅現状モデル

第二モデル

湿度の分布に関しては特異的な推移を示 す部分に関しては減少した。

Y 駅現状モデル

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第二モデル

- 093 -

5-5 解析結果検証第二段階

5-5 では、5-4 で提案したモデルと 4 章で作成した Y 駅の現状モデルを比較することに重点を


第 5 章 本実験

以上の現状モデルと第二段階のモデルの比較検証より、第三モデルを作成する。第二段階で行っ たような大まかなスケッチ段階からのスタディと共に、今回は人間行動にも着目する。全体の環 境をよくする必要はなく、人のいる場所の環境を改善すればよく、言い換えれば環境の良い場所 に人を誘導すれば良いのである。

利用者の密度に関しては、風をより北側まで延長すると同 時に、利用者の密度が高いエスカレーター位置を南側に下げ ることを検討する。

風速に関しては、南南西方向には遮蔽物があるため、東側ホームに風が流 れても西側に流れ込むことはなかった。西側に取り込む工夫も必要である。

南側の風速が高い部分をさらに北側まで誘導する方法を検討する。

西側のエスカレーター部に風を運ぶために簡易的なモデルで Vasari 上で実験的に解析を行う。 例として以下にその様子を示す。

図 5-41 Vasari_ 簡易モデル 1

図 5-42 Vasari_ 簡易モデル 2

図 5-43 Vasari_ 簡易モデル 3

日射を防ぐことは変わらず、一枚の布をめくり上げたような形状で作成していた第二モデルを 分割し、西側でも風を取り込めるような形状とすることを考えた。

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- 094 -

5-5 解析結果検証第二段階

5-5-2 第三モデルの作成


第 5 章 本実験

うな設計イメージである。

図 5-44 第三モデル _ レンダリング画像

屋根の効果の検証の例として Vasari での簡易的な検証結果のイメージを以下に示す。

図 5-45 第三モデル _Vasari

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- 095 -

5-5 解析結果検証第二段階

第三段階として以下のようなモデルを想定する。西側の上空に吹く風をより取り込みやすいよ


第 5 章 本実験

レーター位置を南方向にずらし、西側のホーム高さを下げる。今回のモデルの修正においては、 人間の行動にも変化を与える。このように測定位置の変形や人間行動の障害物の移動に対しても 即時に対応し、快適性を求めることが可能である。今回作成したプラットフォームの新規性の 1 つともいえる。

IN

OUT

MOVE

図 5-46 第三モデル _ 分解

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- 096 -

5-5 解析結果検証第二段階

第二モデルで作成したパネルを取り外し、新たに分割したモデルを取り付ける。さらにエスカ


第 5 章 本実験

5-5 解析結果検証第二段階

次の作成モデルを以下に示す。これを第三モデルとする。

図 5-47 第三モデル

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- 097 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

08:50

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

5.7

28

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

20.678

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

20.742

[deg.C]

20.482

5-6 解析結果 3

2012.01.03. 08:40

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

19.417

20.887

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.13202

1.2195

5.6993

5.7000

26.602

27.999

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 098 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

13:10

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

9.7

18

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

23.550

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

23.623

[deg.C]

23.424

5-6 解析結果 3

2012.01.03. 13:00

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

22.458

23.752

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.13204

1.2196

9.7000

9.7000

17.107

18.000

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 099 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

20:20

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

6.9

28

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

21.607

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

21.684

[deg.C]

21.473

5-6 解析結果 3

2012.01.03. 20:20

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

20.3834

21.832

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.13200

1.2197

6.9000

6.9008

26.623

28.000

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 100 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

08:50

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

15.8

44

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

23.316

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

23.381

[deg.C]

23.118

5-6 解析結果 3

2012.04.10. 08:40

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

22.036

23.532

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.13178

1.2199

15.799

15.800

41.831

44.000

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 101 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

13:10

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

18.5

38

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

25.247

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

25.325

[deg.C]

25.112

5-6 解析結果 3

2012.04.10. 13:00

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

24.077

25.469

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.13182

1.2200

18.500

18.500

36.131

38.000

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 102 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

20:20

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

16.5

70

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

24.624

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

24.706

[deg.C]

24.483

5-6 解析結果 3

2012.04.10. 20:20

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

23.313

24.874

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.13181

1.2197

16.498

16.500

66.505

70.000

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 103 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

08:50

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

29

80

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

30.611

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

30.691

[deg.C]

30.368

5-6 解析結果 3

2012.08.15. 08:40

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

28.924

30.943

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.13183

1.2198

28.998

29.000

76.055

80.000

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 104 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

13:10

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

33.1

58

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

32.555

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

32.642

[deg.C]

32.406

5-6 解析結果 3

2012.08.15. 13:00

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

31.163

32.856

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.13186

1.2195

33.096

33.100

55.082

58.000

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 105 -


第 5 章 本実験

SET* 平均

SET* 平均

[deg.C]

20:20

気温 [deg.C]

相対湿度 [%]

風速 [m/s]

風向

29.2

72

2.38

南南西

利用者密度

SET* 左ホーム平均

29.835

温度

風速 [deg.C]

SET* 右ホーム平均

29.932

[deg.C]

29.671

5-6 解析結果 3

2012.08.15. 20:20

湿度

SET* 最低 [deg.C]

SET* 最高 [deg.C]

28.223

30.173

風速最低 [m/s]

風速最高 [m/s]

温度最低 [deg.C]

温度最高 [deg.C]

湿度最低 [%]

湿度最高 [%]

0.13183

1.2193

29.192

68.264

68.264

72.000

Department of Architecture, Faculty of Science Engineering, Waseda University

- 106 -


第 5 章 本実験

5-7 解析結果検証第三段階

5-7 解析結果検証第三段階

第三段階 (5-6) で結果を示したモデルの解析結果の数値をまとめて示す。

表 5-4 解析結果 3

第二段階 (5-4) で出力された結果を下に記し、比較する。比較結果に関しては次の頁で示す。

表 5-5 解析結果 2

第一段階 ( 現状モデル ) で出力された結果を下に記し、比較する。

表 5-6 解析結果 1

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- 107 -


第 5 章 本実験

5-7 解析結果検証第三段階

以下に数値での比較結果を示す。

第二段階モデル 上昇

第三段階モデル 低下

図 5-48 第二段階から第三段階への SET* の値の変位

第一段階モデル 上昇

第三段階モデル 低下

図 5-49 第一段階から第三段階への SET* の値の変位

第二段階と比較し、モデルの評価値となる SET* の値の変位に注目する。冬季は SET* の値は 低下、一方で夏季は上昇した。  また、第一段階と比較したところ、SET* の値は上昇する傾向にあった。  夏季に上昇してしまった理由として、大きく屋根面を設けたことで湿度が籠ってしまった可能 性があげられる。

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- 108 -


第 5 章 本実験

置き、シミュレーション結果変動から、提案したモデルの有用性を判定する。

西側ホームの東側の SET* 分布では比較的低下し た。

東側のホームでは SET* の分布は南側の比較的 値の低い範囲が少なった。一方で西側のホームで は拡大した。

第二モデル

第三モデル

風速の比較的低い範囲が減少した。

南側の風に関しては変化があまり見られな い。 第二モデル

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第三モデル

- 109 -

5-7 解析結果検証第三段階

5-5 では、5-4 で提案したモデルと 4 章で作成した Y 駅の現状モデルを比較することに重点を


第 5 章 本実験

5-7 解析結果検証第三段階

第二モデルと第三モデルを比較する。

CFD でのシミュレーションの際のエラーを発見 し、修正を試みた結果改善することができた。

温度でも一部偏りがあることが判明したが、温度 の範囲から判断して影響は少ないと判断した。

第二モデル

第三モデル

湿度に関しても温度と同じような分布が 確認できた。

第二モデル

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第三モデル

- 110 -


第 5 章 本実験

5-8 まとめ

5-8 まとめ

本論文では第三段階のモデルまでを提示したが、実際にはさらに多くの段階を踏み、設計のモ デルを決定する必要がある。Y 駅の例ではあえて Vasari で CFD をかけながら、環境に配慮した 形状での解決方法を試みたが、簡易的なシミュレーションによって環境が一見改善されたように 見えても、実際には快適性は改善されていないといったことが起こりうることもわかった。  簡易的なシミュレーションは解析時間が短く初期段階の設計には確かに向いているのだが、そ の分精度が低く、設計の根拠としての大きな 1 つの柱にはならないといえるだろう。  しかし作成したプラットフォームは正常に稼働し、簡単な入力パラメータから迅速に必要な評 価軸となる結果を得ることができた。ここで得た評価軸とは快適性のことであり、その快適性と はそれぞれの人間がその時々で、どう動き、どこにいるのかを捉え、何度と感じているかを算出 することで導かれた値である。環境に配慮し設計された建築は多々あるが、実際に人々がどう感 じているかといったところまで考えらえているものはないだろう。そして今回プラットフォーム を作ることができたということが、プログラミングの知識がない設計者でも自ら機能を拡張する ことができるということを示している。

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- 111 -


第6章 6 まとめ  6-1 結論  6-2 展望


第 6 章 まとめ

6-1 結論

6-1 結論

デザイナーが使うことのできるプラットフォームを作成し、それを実際に適応した新しい設計 のプロセスを示した。プラットフォームを作成したことにより、設計者が多岐にわたる分野のシ ミュレーションソフトを複数使い、今まで明快にされてこなかった建築における空間的な快適性 をよりシンプルに考えることを可能とした。具体的には、環境解析と群集流動解析、双方からの 解析を設計者の利用するソフトにスムーズに統合するシステムを作ったことで、複数の人の感じ る温度の平均温度まで簡単に出力できるようになった。また、建物の形状だけで環境負荷の少な い建物を作ることができる可能性を示し、初期段階から快適性と形状の関係性をデザインに取り 込む必要があることがわかった。  Rhinoceros が中心にあることで、設計者はビジュアル化された結果を設計の初期段階で見る ことが可能となり、その結果、環境設計をデザイナーが行うことも可能となるのである。  さらに、Rhinoceros の Grasshopper はデザイナーがプログラミングの知識がなくてもツール を作ることのできるベースとなりうる。デザイナーが自ら設計に必要な情報を集めることのでき る拡張性、将来性の高いシステムであり、多岐にわたる設計プロセスの可能性を示唆した。

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第 6 章 まとめ

6-2 展望

6-2 展望

本研究のプラットフォームは、複数の分野のソフトができる限りシームレスに連携をとること ができるよう作成したが、完全な自動化には至らなかった。しかしこれらのシステムは必ず自動 化が行えるようになる。もしくは 1 つのソフトとして統合される。また、その必要がある。自 動化されれば 1 つの形状に対しすぐに快適性等の評価値を出力するだけでなく、逆に目指すべ き快適性になるような形状をパソコンが選びとってくれるようなフローが可能となるのである。 そうなれば自然とデザイナーの役割は、初期モデルの可変パラメータの設定と、最終的な最適化 モデルの選定になるだろう。  さらにデザイナーが自ら他分野のシミュレーションから必要な情報を読み取り自分のデザイン 言語として使用するようになる。環境設計だけでなく、構造設計等も含め、デザイナーが管理す るような建築の設計プロセスが生まれ、新しい建築が生まれるだろう。  時代と共に建築は変化する。その未来に期待しよう。

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謝辞

謝辞  まず、この論文を進めることができたのは、渡辺仁史先生のおかげです。この研究室だからこ そこの研究を行うことができました。仁史先生は私よりはるか先の未来を見ていて、本当に毎回 ご指導頂く度になるほどと思わされました。また、OB の方を紹介してくださったり等終始あら ゆる面でサポートして頂きました。お世話になりました。ありがとうございます。  論文以外でも普段から熱心にご指導を頂いた小林恵吾先生。テーマが揺らいでいた時から毎回 一つ一つの案に的確なアドバイスを頂き、なんとか1つの方向性を示すことができました。お忙 しい中、休日でも時間を割いてご指導して頂きました。ご友人を紹介してくださり、顔の広さと 経歴のすごさには驚かされます。感謝しております。ありがとうございます。  中村良三先生は気さくに話しかけてくださり、会議においても非常に鋭いアドバイスを頂きま した。お世話になりました。ありがとうございます。  林田和人先生は毎回差し入れでおいしいお菓子を持ってきてくださり、それが論文の活力にな りました。的確なアドバイスを頂き、ありがとうございます。  田辺新一先生、デジタルデザインゼミが作られたことを聞き、無理なお願いながらゼミに参加 させてもらえないか相談したところ、快く受け入れてくださいました。田辺研の中間発表にも呼 んで頂き、貴重なご意見、ご提案を頂き、大変勉強になりました。このきっかけがなければこの 論文もできていません。本当にありがとうございます。  田辺研究室の長澤夏子先生、田辺研究室としても快く協力してくださり、方向性が曖昧な時か ら親身に相談に乗って下さいました。今の論文のテーマがあるのも、今思えば長澤先生のとりあ えずやってみようという言葉があったからです。感謝しております。ありがとうございます。  アルゴリズムデザインラボの重村珠穂さん、本当にお世話になりました。お仕事で忙しいにも 関わらず時間を作ってくださり、熱心にご指導くださいました。重村さんの豊富な経験から、私 の論文の本質的な部分、訴えるべき部分を見出して頂きました。重村さんのご指導によって何倍 にも厚みのあるものになったと思います。非常に勉強になりました。そして恐縮ながら私が行う ことのできない非常に多くの作業を手伝いサポートしていただきました。 本当に感謝しています。  OB であるエーアンドエー株式会社の木村謙さん、SimTread のサポートをしていただくと共に お忙しいところ時間を割いて丁寧に教えてくださり、アドバイスを頂きました。ソフトを大いに 活用させていただきました。ありがとうございます。  菊地さんには、かなり初期の段階から最後の文章の構成に至るまで何度も相談に乗って頂きま した。プレゼンが下手で伝わらない時も、誰よりも言いたいことをわかってくださり、説明して くださいました。ありがとうございます。馬淵さんも色々と大変な中、自分のことよりも卒論生 のことを心配し、親身にアドバイスをしてくださいました。ありがとうございます。

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謝辞

そして修士の先輩の皆さん、大杉さん、伊永さん、高橋さん、瀧口さん、非常に少ない人数で ありながら、全員を指導してくださり、ありがとうございます。色々とお世話になりっぱなしで、 特に担当してくださった瀧口さんには論文をほぼすべて添削指導していただきました。暖かな先 輩方のお蔭でなんとか書ききることができました。お世話になりました。ありがとうございます。  田辺研究室のデジタルデザインゼミの海野さん、石井さん、竹中さん、原田さん、山口さん、 そして加藤さん、違う研究室にも関わらず、快くゼミへの参加を認めてくださいました。お忙し い中わざわざ集まっていただき、多々及ばない発表でも親身になってアドバイスを頂き、サポー トしてくださったことが大変嬉しかったです。環境のことでわからないことはすべて田辺研の先 輩方に教えていただきました。大変お世話になりました。ありがとうございます。  この論文を手伝ってくれた宮嶋さん、無謀なスケジュールで、大変な作業量でしたがなんとか サポートしてくださり、ありがとうございます。  そして共に論文を書き上げた卒論生の有川さん、大崎さん、小野山さん、斎藤さん、佐藤さん、 立野さん、陳さん、廣田さん、堀坂さん、宮島さん、柳瀬さん、皆さんのお蔭で楽しくできまし た。ありがとうございます。  一人でも欠けていればこの論文はできませんでした。この論文に関わって下さった全ての方に 心より感謝致します。ありがとうございました。

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第7章 7 参考文献


第 7 章 参考文献

7 参考文献

参考文献、参考論文、参考ウェブサイトを本項に記す。 参考文献と参考論文は出版年、ウェブサイトは閲覧日と共に記す。  第 1 章 日本建築家協会 『建築家の起源と建築家に求められること』 http://www.jia.or.jp/guide/about_jia/history_jia.htm 2013-09-28 Photography by Luc Viatour 『Studies of Emmbryos by Leonardo da Vinci』 2008 Google Art Project 『Plan of Imola』 http://www.google.com/culturalinstitute/asset-viewer/plan-of-imola/hgEpMgZ5mn6R4A? projectId=art-project 2013-10-03 阿部和夫・高橋和之 『建築家と構造家の協働を中心にみたアントニン・レーモンドの事跡』 日本建築学会大会術講演便概集 1997.9 吉田信之 マッシモ・ヴィネリ 『建築と都市 2009 年 8 月臨時増刊』 株式会社エー・アンド・ユー 2009.8 Chuck Eastman BIM Handbook: A Guide to Building Information Modeling for Owners, Managers, Designers, Engineers and Contractors  2011.4 山梨知彦 『業界が一変する BIM 建築革命』 2009.2 Python Japan 『Python とは』 http://www.python.jp/about/ 2013-10-05

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第 7 章 参考文献

Programs for Pressure Probe Measurement. http://www.nongnu.org/fivehole/ 2013-10-05 @IT デザインハック 『アートやデザインのための プログラミング 』 http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/0810/10/news148.html 2013-10-08 Processing2 『Arm』 http://processing.org/examples/arm.html 2013-10-08 Rhinoceros 『Rhinoceros5.0』 http://www.rhino3d.co.jp/product/index.html 2013-10-06 Grasshopper 『About Grasshopper』 http://www.grasshopper3d.com/ 2013-10-06 mLAB Intermediate Grasshopper Modeling in Rhino http://mlab.cca.edu/2009/08/fall-2009-workshop-intermediate-grasshopper-modeling-inrhino/ 2013-10-03 Dynamo Visual Programming for BIM http://autodeskvasari.com/dynamo 2013-10-03 ノイズアーキテクツ 『Rhinoceros Grasshoper 建築デザイン実践ハンドブック』 2011.9 STUDIO GANG AECHITECTURE『AQUA TOWER』 http://studiogang.net/work/2004/aqua 2013-09-27 Niemasz.net 『Rethinking Aqua』 http://niemasz.net/aqua.html 2013-09-27

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第 7 章 参考文献

複雑系による自己成長・修復ネットワーク時限研究専門委員会 『アルゴリズミック・デザインの現在』堀池秀人 http://www.ieice.org/ csbn/program/papers/080516_waseda.pdf 2013-08-25 blprnt.blg 『NYTimes:356/360』 http://blog.blprnt.com/selected-works 2013-10-13 10+1『パリ・レ・アール再開発計画 - バルタールの亡霊を巡って』 http://10plus1.jp/monthly/2007/12/20171837.php 2013-08-25 A AS ARCHITECTURE 『HIMARAYAS CENTER BY ARATA ISOZAKI』 http://www.aasarchitecture.com/2013/02/Himalayas-Center-Arata-Isozaki.html 2013-10-08 ARCH20 『Taichung Metropolitan Opera』 http://www.arch2o.com/taichung-metropolitan-opera-toyo-ito/#respond 2013-10-08 渡辺誠 / アーキテクツオフィス 『WEB FRAME-2』 http://www.makoto-architect.com/subway/subway_2e.html 2013-10-08 IKDS 『慶應義塾大学 SFC 納品検収所』 http://www.ik-ds.com/toppage_Frame.html 2013-10-08 Foster+Partners 『Projects/Swiss Re Headquarters, 30 St Mary Axe』 http://www.fosterandpartners.com/projects/swiss-re-headquarters-30-st-mary-axe/ 2013-10-13 建築マップ 『30 St Mary Axe』 http://allxa.web.fc2.com/a-map/uk/maryaxe/maryaxe01.html 2013-10-13

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第 7 章 参考文献

エー・アンド・ユー 『a+u』 2004 年 9 月号 EMPORIS 『30 St Mary Axe』 http://www.emporis.com/building/30stmaryaxe-london-unitedkingdom 2013-10-14 Ingenhoven Architects 『Breeze Tower』 http://www.ingenhovenarchitects.com/en/projects/breeze-tower-osaka.html 2013-10-14 D+T 『ブリーゼダワー』 http://inaxreport.info/data/IR177/IR177_p54-57.pdf 2013-10-14 arch daily 『1 Bligh Offis Tower / Ingenhoven Architects』 http://www.archdaily.com/169173/1-bligh-office-tower-ingenhoven-architects/ 2013-10-14 EVOLVE 『建築・ランドスケープデザイン』 http://www.aanda.co.jp/Event/vwsd2013/lecture2.html 2013-10-15 SUEP 『地中の棲処』 http://www.suep.jp/SUEP./news_files/SUEP_%E5%9C%B0%E4%B8%AD%E3%81%AE%E6%A3%B 2%E5%87%A6s.pdf 2013-10-15 Wiley Online Library 『C2 Building, Fashion Institute of Technology』 http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ad.850/pdf 2013-10-15 Autodesk 『Autodesk Ecotect Analysis』 www.autodesk.co.jp/ecotect-analysis 2013-10-09

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第 7 章 参考文献

Autodesk 『Ecotect: Heat Gain/losses』 http://sustainabilityworkshop.autodesk.com/buildings/ecotect-heat-gainslosses 2013-09-29 DESIGN PLAYGROUNDS 『Geco GH3D + Ecotect by UTO』 http://designplaygrounds.com/deviants/geco-gh3d-ecotect-by-uto/ 2013-09-30 MAMOU-MANI 『DIVA+GECO+GALAPAGOS』 http://mamou-mani.com/advanced-workshop-with-simply-rhino/0_divagecogalapagos/ 2013-10-13 Autodesk 『Project Vasari』 https://projectpoint.buzzsaw.com/_bz_web/projectpointjapan/AEC/AEC_Public/__Temp_ Public/ 2013-10-16 buildz 『practical notes for making impractical things』 http://buildz.blogspot.jp/2013/06/conceptualissimo-vasari-beta-3-and.html 2013-10-16 LMNts 『DIVA is Awesome and Everyone Should Use It』 http://lmnts.lmnarchitects.com/featured/diva-review/ 2013-10-15 THE PROVING GROUND 『Adovanced Topics in Grasshopper』 http://wiki.theprovingground.org/ucla-workshop 2013-10-08 Grasshopper 『GoldFish』 http://www.grasshopper3d.com/group/goldfish 2013-09-16 ADVANCED KNOWLEDGH LABORATORY 『FlowDesigner10』 http://www.akl.co.jp/products/flowdesigner10/index.php 2013-09-26

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第 7 章 参考文献

A&A 『SimTread 2 機能紹介』 http://www.aanda.co.jp/products/simtread/func.html 2013-10-18 SMART Solutions Network 『Introduction to Smart Move』 http://www.smart-solutions-network.com/page/smart-move-viz-introduction 2013-10-18 社団法人 空気調和・衛生工学会 『新版・快適な温熱環境のメカニズム 豊かな生活空間をめざして』 P73 P77 2006.3

第 4 章 気象庁 『過去の気象データ検索』 http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php 2013-09-23 山田友紀、中村友香、山形史人、坂本圭司、中野涼太、伊藤光太朗、横山朋之、飯野直志、佐藤 敏彦、田辺新一 『駅空間における熱的快適性実測調査 その 26:Y 駅の気流環境測定結果』 梗概 2010.9 社会法人空気調和・衛生工学会 『快適な温熱環境のメカニズム』 丸善株式会社 p.29 神奈川県建築士事務所協会 『快適指標』 http://www.j-kana.or.jp/architect/pdf/faq/kaitekiseinokagaku.pdf 2013-09-18

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第 7 章 参考文献

第 5 章 Robert Mcneel & Associates 『Rhinoceros』 http://www.flexicad.com/bild.php?id=6274 2013-10-16 nlucero.com 『Getting into Grasshopper』 http://nlucero.com/getting-into-grasshopper 2013-10-16 ADVANCED KNOWLEDGE LABORATORY 『FlowDesigner10』 http://www.akl.co.jp/products/flowdesigner10/ 2013-10-17 A&A 『SimTread2』 http://www.aanda.co.jp/products/simtread/ 2013-10-17

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