Russia Now #1

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レオニード・ボリショフ氏

This pull-out is produced and published by Rossiyskaya Gazeta(Russia)

―宇宙のニュートリノ観測―

少子化の問題を通し、 ロシア女性の悩みに迫る。

Getty Images/Fotobank

忘れ得ぬ助け合い風景 国 営イタル・タス通信東京支局長 ワシーリー・ゴロヴニン

に初 報を送った後は、 不 眠

危 険 を 冒 してオフィスに 戻り、揺れ始めから5分後 支局を移す話をつけたほど

え込んだ。 本州の南西部に

身も逃 げるべきかどうか考

東京から避難し始め、私自 敬の念 を 抱いている。 他の しば混 乱 や 無 秩 序、 暴 力、

日 本の庶 民に対して深い尊

国 々 で は、 被 災 地 は し ば

不休で働き続けた。 あとで パニックの原 因 が 情 報の欠

分 かったのだ が、 自 宅マン だ。しかし、 まもなく私は ションの床 は一面、 割 れた 気中の放射線量を聞かされ 難しい。

き、 様 々な事 件に出 遭って ンの瓶も粉々になり、 本当 ても、 普 通の人には判 断が

如であることを 悟った。 大

私は、 1990年代初め 食 器の破 片 だ らけになって から日本で特派員として働 いた。 何 本かの美 味いワイ

福 島 第一原 子 力 発 電 所 事

期日 本に居 合わせて良かっ あの3月 日以 来、私は

たと思っている。

的なプログラムだ。

カフカス地方は、ロシア、 模なリゾート開発を進めよ トルコ、 ペルシャ(イラン) うというロシア連 邦の野 心 など大 国のせめぎあいの場

南西に約2時間、 雄大な山

略奪に陥る。だが日本人は

国営イタル・タス通信

いる。

アの 収 集 家 が 所 蔵 す る

「 失 わ れた 日 本 」 と 題 された 展 覧 会では、ロシ

明 治 時 代 の 日 本 のス タ

ジオ 写 真 が 紹 介 さ れる。

~ 日 下 部 金 兵 衛( 1841 ) 、小川一眞( 1860 1934 )、玉 村 康 三 郎 1929

~ 没 年 不 明 )な ( 1856 ど巨匠たちの作品と並ん

で、日 本の写 真の発 展に

今 回 は、 東 日 本 大 震 災を受けて、開催費用を

7 月2日、第6回ロシ するものでもある。 多大な影響を与えた西洋 ア文 化フェスティバルが、 1年を通じて日本各地 の写真家の作品も展 示 す 周 年」 と で行われるフェスティバル る。 「新 生ロシア

銘打って開 幕する。日本 の内 容 はバラエ ティに富

にお けるロシア正 教 会の む。ミハイロフスキー劇場

ものだった。 私は、 日 本 が

で尊 敬されるにふさわしい

だが、 肝 心なのは別のこと

北オセチア大統領は、 「きっ

人が信頼できるからだ。

リティー・フェスティバル

創 始 者、宣 教 師ニコライ バレエ 団(サンクトペテル ロシア側 が 負 担 し、 チャ

耐え、 支え合っている。

原発事故を乗り越えると確

そのまま料 理して出してい

を乗り越 え、 テロのない平

とわが国の若者たちが困難

モスクワでも昨 年 3 月には (アルチョム・ザゴロドノフ)

が初めて来日 する。

いるほ か、 パントマイ ム

ア人 アー ティストた ちも

額 寄 付 されるほか、ロシ

上げは日本赤十字社に全

ために辞 退している。 在

民族合唱団の演奏会。合

フェスティバルが毎年百万

村朗・前広報文化部長は、

き込む取り組みを行って

奏 法は守りつつ、民 族 的

ており、 素朴で雄大な演

語った。

なるに違いありません」と

の難局を乗り切る助けと

スティバルは 私 た ち がこ

ボリショイサーカスとピャトニツキイ記念国立アカ デミー・ロシア民族合唱団の公演日程は4面に詳報

な作品に現代の息吹を吹

保存と発展を目標に掲げ 一つにしてくれます。フェ

る。 あらゆる民族芸術の 化 行 事はロシアと日 本を

「文 エの3 部 門 か ら 成ってい 博している点に触れ、

され、合 唱と楽 団、 バレ 人以上を集め、大好評を

唱団は1911年に創設

国 立 アカデミ ー・ロシア ロシア日 本 国 大 使 館の今

フェスティバルの幕開け は、ピャトニツキイ 記 念

次々に出演料を被災者の

スタジオ・ろうあ者 劇 団

カスの公 演が予 定されて になる。 チケットの売 り

の来日150周年を記念 ブルク)やボリショイサー

だ。日本人はその底力を見

もちろん対応策の誤りは あった。 原 発 事 故の処 理 作

信している。 資金と技術力

並々ならぬ自制心で困難に せてくれた。 それは、 世 界

業はあまりに遅いし、 事故

事を始めている。

が説明した。チーズや肉や

るんですよ」とウエートレス

に 関 する 情 報 も 足 り ない。 のためだけではない。 日 本

マミソンからさらに 分 西へ行くと、 世 紀の村 落

ま ま 残 していて、「 観 光 客

次号 8 月16日 (予定 )

ロシアについてのニュースと解説はここで

き た。 そ の 私 に とって も、 に惜しかった。 私と同 僚は、 今のところ 恐 れることはないと 思って

方 向からスーツ姿の人 々が いる。 東 京の現 在の放 射 線

夕 方、 支 局 の あ る 大 通 りに出てみて驚いた。 都 心 量はモスクワより低いのだ。

故は最 大の衝 撃 だった。 日 し、外国人はパニックに陥っ 黙 々と歩いて来る。 怒 鳴る あの最 も 危 険 な 日 々 でさ

本の原発の安全神話は崩壊 者は一人 もいない。 余 震 が

た。 た。 全 世 界 の 耳 目 は 日 本

れた人を休ませ、 トイレを にくぎ付けになり、 その報

え、 私は逃 げたくはなかっ

地震の瞬間、 私は支局で 続いていたのにパニックはな パソコンの前に座っていた。 かった。 小さな商 店では疲 揺れはゆっくり遠くから来 貸していた。 私は決してこ 道が必要不可欠だったから

る感じ だったが、 見る間に だろう。

強まって、 棚から本が落 ち の光 景を忘れることはない だ。 率直に言うと、この時 始めた。 私と同僚は中庭に

「平和な原子力」 という おとぎ話の終わり

ソ連のバレエスクールに入学して以来、在 露 21年。今や名門の顔となった個性派に近 況を聞いた。

2011年(平成 23年)6月 21日 (火曜日)

20

その目 玉のひとつがマミ 跡ツェメチがある。 谷 底 を 野菜もすべて地元産だ。 和な北オセチアを実現して となった歴 史を持 ち、 最 近 しかし、 北 カフカスでは くれるだろ う 」と 私に語っ も 二 度 にわ たる チェチェン ソン・スキー場だ。 共和国 見下ろす丘の上に、 石造り の首 都 ウラジカフカスから の塔が数 世 紀 前の姿をその 依然テロが頻発しているし、 た。 戦争が起きたばかり。

日にはドモ ジェド ヴォ空

地下鉄爆破テロ、 去る1月

ユージン・アボフ

並に沿ってあ ら ゆ る 難度の 用のエスニックな 村 を 作る

ロシアは魅惑する

共 和 国 で も 2004年 に、 ゲレンデ が100キロに わ には最高です」と、オレグ・

創刊ごあいさつ

ロシア連 邦 構 成 主 体のひ とつであるここ北 オセ チア

港で爆破事件と、 カフカス

ロシア新聞社副社長 国外発行版編集長

チェチェン独 立 派 に よ る ベ たって続く壮大なスケール。 カルサノフ観光大臣( )は

沿いにオープンします」と、 木の支柱を立てて、 水上ダ ルサノフ氏た ちの固い信 念

政治・経済・企業・オピニオン・文化

テロ地帯を大リゾートに

夏の間、ここで観 光 客のお ロが後を絶たない。

言 う。「 近 隣の人 た ちには との関 連が疑われる爆弾テ

「 北 オセチア 」 の 開発計 画 が始 動 スラン学校占拠事件が起き す で にい くつ か の 新 し て、 多くの子供たちが爆弾 い ホ テ ル の 建 設 が 進 ん で

お り、 道 路などのインフラ もてなしや昔ながらの牧 畜 だ か ら、 観 光 開 発 で テ も 着 々 と 整 備 さ れている。 を やって も ら うつも り だ 」 ロが撲 滅できるという 幻 想

テロの犠 牲になった。ど う してもテロ横 行の地という

地 元 住 民の平 均 月 収 は 約

は誰 も 抱いていない。 それ

イメージが強い。

カルサノフ氏と、 新しく でも粘り強く開発を続けて 500ド ル ど ま り だ か ら、 経済効果への期待も大きい。 オー プンした 道 端のカフェ いけばやがて希 望が見えて

農 業 を 営 むエルブルス・エ イニングル ー ム を 作ってい だ。

リ ゾ ー ト 化 計 画 が 始 まっ 「 私 は 民 宿 と 売 店 を 道 路 で昼 食 をとった。 川の中に くるはず だ、 というのがカ

とも。 その北 カフカスで今、 美 し い 景 観 を 生 か し た一大

1兆2000億円)を投入

た。総 額 150億 ド ル( 約

タイ ム ラズ・マムスロフ

それでは、日本語版第1号をお楽しみください。

ロシアで初めてのハイブリッド車「Yo モービ ル製造工場の建設が6月、 サンクトペテルブルク 近郊で始まった。同車の前評判は上々で、予約 数はすでに11万8000台に上る。製造元 Yo ア フトのビリューコフ社長によると、部品の約 90% がロシア製だと言う。(タス通信)

飛び出したが、 地面は船の 放射性物質の大量拡散が 明らかになると、 外国人は

ウラジーミル・スリビャーク氏

被災者支援チャリティーで

12 回目となる「くるみ割り人形」コンクールは、 世界から 14 歳以下の才能ある児童の参加を募集 している。今年は 11 月初めにモスクワで行われ、 テレビ放映される。スポンサーは、国営テレビ局 「ロシア-文化」 。世界的に有名な指揮者ウラジー ミル・スピバコフ、ヴィオラ奏者ユーリー・バシュ メットなどが審査員を務める。成績優秀者には、 名指揮者ウラジーミル・フェドセーエフとモスクワ 放送交響楽団をバックに演奏する機会が与えられ る。コンクール後は、審査員を務めた音楽家たち に指導を受けることもできる。詳しくはテレビ局 「ロ シア-文化」のホームページ(www.tvkultura.ru) の Nutcracker の項目で。

甲板のように揺れている。

物理学者レオニード・ボリショフ氏は、か つてチェルノブイリ原子力発電所事故の 処理作業に参加し、現在はロシア原子力 エネルギー研究所所長。氏は、福島第一原 子力発電所事故に対する評価をチェルノ ブイリと同じ、最悪のレベル7とする根拠 はないと言い、世界は今、核事故の被害を 過大視する傾向があると主張する。

ロシア文化フェスティバル 国際児童音楽コンクール 「くるみ割り人形」出場者募集

「Yoモービル」の工場が着工 ロシア初のハイブリッド車

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東日本大震災で被災した子供たちがロシアに 招待され、夏の児童キャンプで休暇を過ごすこ とになった。ロシア消費者保護・健康管理庁の ゲンナジー・オニシチェンコ長官は、ウラジオ ストク近郊の海岸にある児童センター「オケアー ン (大洋) 」が 6月と 7月 の 2 回に分け500人の日 本の子供を受け入れると発表した。日本の子供 たちの口に合う食べ物を用意するため、特別に 料理人も手配する予定だという。 (インターファ クス)

る。「この川で釣ったマスを

ロシア最大のレストラン・チェーンを経営する アルカジー・ノビコフ氏は、福島原発事故の風評 被害で不振の、魚介類などの日本産食料品をせっ せと買い込んでいる。 「風評に負けて良い食料品 を買わないという法はないでしょう?」と同氏は言 う。 ロシア人の客は怖がらないと確信しているの だ。 (コメルサント紙)

ボランティアから救援物資を受け取る被災者=ロイター撮影

30 43

ルカノフさん( )は既に工

大震災で被災の子供たちを ロシアの児童キャンプに

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伊藤忠商事、石油資源開発、丸紅、国際石油 開発帝石および伊藤忠石油開発の5社が出資す る極東ロシアガス事業調査と、ロシア国営天然ガ ス企業ガスプロムは、ウラジオストク市周辺にお ける天然ガス利用プロジェクトの共同事業化調査 実施に関する合意書に 4 月下旬調印した。調査 は、液化天然ガス(LNG)やガス化学製品製造 のプラントを建設する可能性を探るのが目的。ア ナネンコフ・ガスプロム副社長は、「調査は、日 本をはじめアジア太平洋地域諸国への天然ガス 輸出を増加させていく上で重要な意義がある」と 述べた。 (ビジネス専門テレビRBC)

読者の皆様 このたびロシア政府がスポンサーとなり、 4ページにわ たりロシアを紹介する日本語版を発行する運びとなり ました。 『ロシア NOW』のこれが 第1号です。 ファッションや自動車企業で折り込み広告は珍しくありませんが、国としての 広告となると意外な試みでしょう。しかも1度限りではなく、読売新聞の折り込 みとして、8月以降、ほぼ月に1度お読みいただくことができます。 決して宣伝パンフレットではありません。私たちの目的は、今のロシアと 1億4000万人の国民のことを知っていただき、ロシアの社会的な変化や、斬新 な理念、才能ある人びと、豊かな文化と良き伝統についてお話しさせていただく ことです。 あらゆる新興国と同様、ロシアにもたくさんの未解決な問題があります。美化 したり隠したりするつもりはありません。私たちの方針は、様々な問題を正しくお 伝えし、多様な視点からの見解を皆様に知っていただくことです。 皆様からのご意見、ご提案をお待ちしております。jp@rbth.ru あてにお送りく ださい。お寄せいただいたご意見にはすべて目を通し、参考にさせていただきます。

ロシアのレストランに、 日本の魚を

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して北 カフカス全 体で大 規

天然ガスの事業化調査で日露合意 ウラジオストク

福島原発事故

フクシマは チェルノブイリではない

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ニュース ブリーフ

北オセチアの山岳地帯に住む老人=ルスラン・スフシン撮影

ウラジーミル・スリビャーク氏は、環境保 護団体「エコ-ザシチータ (擁護) !」共同議 長。同氏は、原子力産業は、廃棄物処理 一つをとっても 、あまりにも経済的に高 くつき、そのリスクは人間の手に負える ものではない、と言う。そして、そのこと を明らかに示した福島第一原発事故 は 、 「 平 和 な 原 子 力 」という神 話 を 崩 壊 さ せたと確信する。

「私たちは逃げなかった」 オピニオン 3面

岩田 守弘 ボリショイバレエ団ソリスト〈4面〉 Distributed with The Yomiuri Shimbun

バイカル湖底に 巨大望遠鏡設置へ〈4 面〉 ロシアの少子化事情〈2面〉

宇宙の謎を秘めた微粒子は水中で青く光 る。 世 界 最 深 の 湖で 宇 宙 最 深 部 の 声を 聞く試みが始動した。

Lori/Legion Media

国営イタル・タス通信


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