﹁違いを大切に 中心が全てではない﹂ ﹁九年前の祈り﹂で今年1月、第152回芥川賞を受賞した気鋭
\
fic t
初めてだが、氷点下のモスクワを﹁心地よい寒さ﹂と受けとめていた。
の作家の小野正嗣さん︵ ︶がモスクワにやってきた。ロシア滞在は 今回は 月末にモスクワで開かれた国際図書展﹁non ion ﹂ への招待を受けたもの。仏文学を通じてロシア文学に入った
繰り返された露土戦争
∼
年の露土戦争 の講和︵ 年︶でロシア
な ものに し、 ヤッシー
黒海周辺を舞台に
年に
露 土 関 係の悪 化に関 はオースト リア・ トル とができなくなった。
連し、 両国の主な紛争 コ戦 争 だった。
タンティノ ー プル 条 約 ア軍はドナウ川 進 出に
世紀
の奪 取に成 功。コンス 突 破 口と なった。ロシ られた。
1806 ∼
年の戦
を振り返る。両国が戦っ ロシア 軍 は ア ゾフ要 塞 はロシアのバルカンへの のクリミア領 有が認 め
∼ 世紀
た回数は に及ぶ。
年にクリミ ア
モルダビアとワラキ ア 域 でのロシアの優 越 を
半島を占領した。クチュ 争はトルコが親 露 的な
年の露土戦争 クカイナルジ条 約︵
年 領有となった。
最初の大規模な露土 ︵1700年︶でロシア 続いて 戦争は1672∼
∼
クリミア戦 争︵
∼
ン帝 国 がドニエプル右 では オ ース ト リ アがロ 年︶によりクリミア・ハ の君 主 を 退 位 させたこ 認 め、 セルビアに自 治
とみ な さ れる。 オスマ
のロシア 遠 征 直 前 にロ
岸のウクライナを 支 配 シア側で戦った。ロシア ン国のト ルコか らの独 とが発 端。 ナポレオン 権を与えた。
下に収 めよ うとしたこ は 黒 海への出 口確 保 を 立が宣言された。
次の露 土 戦 争︵
海に自 国 艦 隊を置 くこ ンにおける立 場を強 固 ︵
出 品 は 主 に 穀 物 と ガ スで
予 定されていない。ロシア
あり、この部 分への制 限は
産ガスの輸入国としてはト
年の
ルコはドイツに次ぐ第2位
一方で、トルコは
の得意先である。
最初の9 カ月間でロシアに
億㌦︵約1200億円︶
の食 料 品 を 輸 出 し た。 主
要 な 品 目 は トマト と 柑 橘
類 でこれ ら が 輸 入 の半 分
以上を占めている。他の輸
入 品 目には 布 と 繊 維 製 品
小売業者の多くが、トルコ
がある。ロシアの衣料品の
の工場に発注している。
経済制裁によって、トル
コの建設会社がロシア市場
年の露土戦争
ベルリン条約︵ 年︶は
か せ て 譲 歩 を 強 い た。
ロシアに 戦 争 を ち らつ
迫ったが、 西 欧 列 強 は
ンスタンティノープルに
伸 べた。ロシア 軍 はコ
シアが援 助の手 を 差 し
のトルコとの戦いに、ロ
では、 バルカン諸 民 族
∼
の非武装化を定めた。
への割譲︵返還︶ 、黒海
ナウ河 口地 帯のトルコ
ベッサ ラ ビ ア 南 部 と ド
を 得 な かった。 これは
年︶でベッサラビア パリ条 約に調 印せざる
西欧列強の介入も
㌦︵ 約 2 兆 7 6 0 0 ∼
り、 う ち2 0 0 億 ㌦︵ 約
3 兆 円 ︶ と 試 算 されてお
か ら 撤 退 する 可 能 性 も あ
る。 最 も 顕 著 な 損 失 にな
年︶でロシアは外交上
とか ら 生 じ、 バフチサ 狙った が 失 敗。 ベオ グ
年︶はロシアのバルカ 行い、 ブカレスト 条 約 の孤 立により、 不 利 な 維持が定められた。
∼ シアが成 功 裏に戦 闘を
ライ条約︵ 年︶で現状 ラード条約︵ 年︶で黒
∼ 1 7 0 0 年の
露 土 戦 争では 欧 州 全
体の軍 事 危 機の一部 を
なしており、 その中 心
ロシアの対トルコ経済制
裁 は 最 初 に ト ルコ 産 品 の
輸 入に影 響 を 及 ぼ す。 ま
た、制裁によって来年1月
以降、ロシア企業はトルコ
国 籍 保 有 者 を 雇 用で き な
除 制 度 が 廃 止 される。 近
く な り、 両 国 間のビ ザ 免
クトにトルコ業者を招くこ
い将来、 国家発注プロジェ とも禁止される。
ト ルコは 貿 易 規 模 に
お いてロ シ アの 上 位 5
位 の 貿 易 相 手 国 で あ る。
2 0 1 5 年 度の両 国の貿
2 兆 4 0 0 0 億 円 ︶ はロ
易 額 は2 3 0 ∼ 2 5 0 億
シ ア か ら ト ルコへの 輸 出
りそうなのは、将来的なプ
ロジェクトが実 現されない
をロシアに割譲させた。 ロシアにベッサラビア南
年 の 露 土 戦 部の返 還 を 求 めた。一
年 ︶ によ り、 黒 海 ルーマニアが独立した。
およ び現 アルメニア地 研究所上級研究員︼
た。 ト ルコは グル ジア アカデミー・スラブ学
東 岸 およびドナウデル ︻ピョートル・イスケ タ 地 帯 がロシアに 移っ ン デロフ、 ロシア 科 学
︵
アド リアノー プル条 約 ルビア、モンテネグロ、
争 のロ シ ア の 勝 利 で、 方、ロシアの要 求 でセ
∼
JP.RBTH.COM
53
小野さんにロシア文学、 ジャーナリズム、 文化論に至るまで、 作家 の視点からロシアを語ってもらった。 ︻和田達朗︼
芥川賞作家、ロシアで語る
自分たちの目で世界を見る
ですよね。
︱︱図書展と国立人文大学での 見 え方を考 え直 す契 機になると 講演で感じたロシア聴衆の反応は。 思いま す。 それはやはり、 発 見 ロシアは文学大国だと聞いてい ましたが、 文 学 という 営 為に関 心を持っている方がこんなにもい
は、普段疑念を抱かないでしょ。
えるのに、 米 国のやってることに
やってることについては疑 問に思
だけど、日本にいると、ロシアの
ロシアがやってることがすべて るんだなと、やはり驚きました。 質 問 もすばらし くて、こちらも 正 しいと か、 思 わ な いで す よ。 考えることを強いられました。 ︱︱講演で﹁故郷を離れること で、かえって故郷について知る シリア問 題の報 道でも、 ど う しても﹁ロシアが例外﹂みたいに見
とが ある。 中 央 か ら 離 れている
た。 仏語訳はすぐ出るんですよ。 ながることがあると思 うんです。
ドストエフスキーのまなざし フです。大江健三郎さんにとって ︱︱自分の作品の翻訳がロシ ︱︱特によく読んだ作家は。 も ド ス ト エ フ ス キ ー は 大 切 な 作 アで出た時、ロシアの読者にど やは り ドス トエフス キ ーで す 家だしね。 んなことが伝わっていくことを ね。彼の、傷つけられた小さな命 現 代 の 作 家 では ウ リツ カ ヤ。 期待されますか。 したんです。隣町まで行って、N へのまなざしというもの、 それが ﹁ソーネチカ﹂は沼野恭子さんが ローカルなものをとことん掘り H K ラジオのテキストを買って。 印象深い。﹁カラマーゾフの兄弟﹂ 訳 される前に仏 語 訳で読みまし 下げればユニバーサルなものにつ
で、わずか ∼ 億㌦︵約
78
ことができる﹂と述べられまし た。日本発見はありましたか。
う場 所から、 自 分たちの目で世
日本は、政治・経済はもちろん、 てしまう。でもここへ来たら違う 文化的にも米国一辺倒になってい じゃないですか。僕らも日本とい る ところ が あ る。ロシアは そ れ にいい意 味で抵 抗していますね。 界を見るということをしなくちゃ はここへ来て思いました。
自分たちの文化とか文学、立場、 ならないんじゃないかなと。それ 場所というものをちゃんと持って いる、という感じがしました。
︱︱日本を相対化する視点は ︱︱ 米 国 偏 重 と い う こ と は、 フランス留学時代に培われたも よく報道について言われますが。
場はあるけれど、 やはり米 国 が
人 は、 そ ういうふ うになるケー
優れた芸術ってそうでしょう。 個
は4回か5回、読みました。
僕はフランスでロシア文学をいろ
日本企業の原発建設参加に前向き
4800∼6000億
78
ビジネス
別 的な土 地を描 くことで普 遍 的
︻レオニード・ホメリキ︼
ことによる ものだという。
56
な関係は崩れるのか。 いろ発見したんです。マヤコフス
1年くらいやってましたよ。
12
弊紙のフォト ・アルバムでご覧 ください!
のですか。
文学大国を実感
主導する世界秩序の一部というと
イデンティファイ︵同一化︶するこ
るからこそ、 中 央に過 剰にア
いうところがやや ある。 世 界に
ころがありますね。
日 本の報 道は米 国という 窓 を フランスだってかつてほど独自 通 してしか 世 界 を 見ていないと 路線じゃない。フランス独自の立 対 する 評 価 も 米 国メディアの影
東京、 中心っていうものにはアイ
するケースと、 両 方 ある。 僕 は
スと、 自 分 た ちの違いを 大 切に
響 を 受 けている。 違 う 声とか違 う見方っていうのが見えにくい。
デンティファイしなかった。
19
12
28
29
コ経 済 制 裁で、この 不 思 議
パリ 留 学 時 代にはロシア人 留 それに、フランスの 世紀の文 学 生 の友 達 が 結 構 で き ま し た。 学者はドストエフスキーに影響を
87
バーしてきた。今回の対トル
円︶ がロシアへの輸入だ。
ロシアからトルコへの輸
29
ロシアの冬は実際はどんな ロ シアの冬は実 様子なのか? 様
15
あっても、それを経済面でカ
受けた人が多いんですね。カミュ
74
71
写真を見る jp.rbth.com/542445
読者の皆様、「ロシアNOW」 へようこそ。 「ロシアNOW」 はロシアを紹介する日本語版で、毎日新聞の折り込み です 。原則として1月を除く毎月第2木曜日に発行されます。 「ロシアNOW」チームの目標はロシア発の興味ある記事をお届けし、 ロシア理解の一助になることにあります。 2007 年以来、ロシアで影響力を持つ有力な日刊紙「ロシースカヤ・ ガゼータ(ロシア新聞) 」は世界の主要新聞に折り込まれる月刊付録を制 作してきました。 日本語版ウェブサイト jp.rbth.com は追加の記事や多様なコンテンツ が毎日更新されます。ご意見・ご感想をお待ちしております。
スベルドロフスク州のチェルノイスト チンスクとビジムの村に住む 12 人の若 き写真家たち ( 全員が 11 ∼ 15 歳 ) がロ シアの遠隔の地に住む若者たちがどの ような生活を送っているかを伝えるため、 自分たちの日常を撮った。色つけされ た写真を見るだけで、彼らについて多く のことを知ることができる。
ロシア情報をお届けします
子供たちが撮った遠隔地の暮らし
68
91
ロシアの医療ロボットが日本で活躍
なればいいなと思っています。
91
「ロシアNOW」 電子版でお勧め
96
10
75
39
制裁でトルコ産品輸入に影響
短信 どを読みました。
39
緊 張 関 係 に入った。これま
もシモーヌ・ベイユもカラマーゾ
35
でも両国関係は政治不和が
なものにつながるっていうことに
1970年、大分県蒲江町(現佐伯市)生
キー、ツベターエワ、ハルムスな
映画監督のソクーロフの知り合い もそこにいたんですよ。
50
スポーツ界 15 年回顧
少なくともロシアは﹁米国のや ︱︱首都から遠いところに生 り方 だっておかしいんじゃないの まれ育ったことも大きいですか。
81
第一次世界大戦で両国 間の戦闘は一部で行われた が、ロシア革命により戦闘 は事実上停止となった。大 戦終結後は、他ならぬロシ アが、ケマル・アタテュル クの世俗政権を承認した最 初の国の一つとなった。 21 年 にロシアとトルコ 大国民議会(アンカラ政権) の間でモスクワ条約が結ば れ、カルス州はトルコに返 還、アジャリア自治共和国 はグルジアに残された。 第二次世界大戦におい てト ル コ は 中 立 を 保 ち、 52 年に北大西洋条約機構 (NATO) に加盟した。 61 年、 米 国 がトルコに 中距離核ミサイルを配備。 ソ連もキューバに核配備を 行い、「キューバ危機」に発 展した。 40
2面
ロシア経済浮上せず 冷え込む自動車販売 新事業に日本参加を
中 学 1 年 生でロシア語 を 勉 強
ナタリア・ミハイレンコ
科学
「モスクワ、心地よい寒さで すよ。人はこういう北の大地に も生きてるんだなあ、と思って 感動しました。こんな寒いと ころに人が住んでいるっ て立派だなと」
世 界 水 泳 など国 際 大 会 が 盛 況 だっ た一方で陸上の ド ー ピ ング 問 題 に 揺 れ た。18 年 サッ カ ー W 杯 ロ シア 大 会開幕へのカウント ダウンが始まった。
作家
2015年(平成27年)12月10日 ( 木 )
た だ、 田 舎の人って、 距 離 が あ
小野正嗣(45)
モスクワで11月18∼24日、第49回日本映画祭 が行われた。今年は女性の運命をテーマに、 「海 街diary」 「ペタル ダンス」 「上京ものがたり」 「旅立 ちの島唄∼十五の春∼」 「ひみつのアッコちゃん」 「もらとりあむタマ子」 「悪夢ちゃん The 夢ovie」 の7作が上映された。今年は観客賞が実施さ れ、 最多得票の 「海街diary」 製作チームには記念 トロフィーが贈られた。映画祭はペテルブルクに 会場を移し、 12月17∼22日まで開催される。
81
20 世紀
ロシアの国営原子力企業「ロスアトム」は国外 における原発建設プロジェクトに日本企業を参 加させる用意がある。東京で開かれている原子 力技術会議で、 ロスアトムのキリル・コマロフ第 1副社長が述べた。 さらに同氏は「日本にはこの 方面で膨大な経験をもつ大企業がある。東芝も 三菱もそうだが、他にも、原発向け設備の製造 について多大な作業経験をもつ企業が数多くあ る」 と語った。
一言
女性の運命テーマに日本映画祭 10
トルコ軍によるロシア機撃 まれ。45歳。
文化 18
ロシアとトルコの 不思議な関係 小野正嗣(おの・まさつぐ)
Product of Russia Beyond the Headlines
か﹂ ということを言ってるわけで そ う で す ね。 やっぱ り 東 京、 ︱︱ロシアとの出会いは。 中 心 がすべてじゃないだろうと。 すよね。そういうロシアを見るこ
とは、 日 本 が 自 分 た ちの世 界の
39
17
86
オピ ニ オン ( 5 面 ) 「九年前の祈り」 で芥川賞
Getty Images 撮影
4面
6面
モスクワの陶芸家 教会の鐘楼守 第 17 回国際図書展 non/fiction には 24 カ国の出 版社が参加した。日本は 2003 年に特別招待国となった。近年招 かれた作家には川上弘美、鈴木 光司、黒川創、鹿島田真希、 加賀乙彦、古川日出男の 各氏がいる。
東京の順天堂医科大学にロシアのロボット・ シミュレータが装備されたトレーニング・セン ターが開設された。ロボットの人間への類似性 は約 90%。外科医を目指す学生がロボットで手 術を学ぶ。開発したのはカザン市にあるロシア の仮想現実システム分野のソフト開発・機器製 造会社「エイドス・メディツィナ」 。同社は米国 の IPG フォトニクスやドイツの KURA といったロ ボット技術会社と提携している。
核の時代に
45
墜により、ロシアとトルコは
故郷の「浦」を舞台とする作品を 描き、「にぎやかな湾に背負われた 船」で 2002 年に三島由紀夫賞を受 賞、15 年1月には「九年前の祈り」 で芥川龍之介賞を受賞した。ほか著 書・受賞多数。一部著作はベトナム 語、朝鮮語、英語に翻訳され出版さ れている。東京大学大学院総合文化 研究科博士課程単位取得満期退学。 パリ第 8 大学留学でフランス語圏カ リブ海地域文学を研究、博士号(文 学)取得。現在、立教大学文学部准 教授。 20
11
氷点下 30 度冬景色 極寒の街はここ 防寒着シューバの物語 3面 日本は常連参加国
DISTRIBUTED WITH THE MAINICHI SHIMBUN
THIS PULL-OUT IS PRODUCED AND PUBLISHED BY ROSSIYSKAYA GAZETA, RUSSIA
jp.rbth.com
2015年(平成27年)12月10日(木)
1