ロシアNOW 5月号

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揺らぐ冷戦後秩序

行といった状況だ。

い別のシステムへの未 完 成の移

ステムからいま だに整っていな

まれた。 存 在 するのは一つのシ

クリミアの国際児童センター ﹁アルテク﹂。ソ連時代の標語 が並んでいる =ロシア通信撮影

米国主導は公平か 2014年のウクライナ危機は﹁冷戦﹂終結後の中間総 括として名を残すかもしれない。米国及び米国寄りの国々 その秩序はひとりでに生まれ、講和を結ぶべき国は消滅し

にとって、 冷戦の終幕は新たな世界秩序確立を意味した。 た。 当惑した相手国は、 勝者がどの国にどう振る舞うか ︻外交防衛政策会議議長、フョードル・ルキヤノフ︼

を決める権利を有する、という確信を持ってしまった。    ロシアは、力を信じ﹁限界線﹂ を引いて古臭い別の現実に生き ている、と非難されている。

米 国 指 導の下、 公 平 公 正 な を見直す必要性については何年

理、IMF、世銀など︶の機能 事 会のファンロンパウ議 長 もイ

としてロシアを責めた。 欧州理

ロシア識者の見方 米国のケリー国務長官は﹁

世 界 秩 序の存 在 という 考 え方

世紀の精神﹂を呼び戻している

が支配している。その指導を疑 デオロギー化された﹁冷戦﹂の過 去の世界を復活させようとして

安定を損ねてしまう。

も 叫 ば れている。 不 公 平 感 は いるとロシアを突き放した。

ち 着 いて、 戦 争 が ないよ

安定がほしい。すべてが落

ア が ま し と い う 程 度 だ。

ど、ロシアもひどい。ロシ

︵態度表明なし︶     ﹁ウクライナもひどいけ

どちらもひどい

いる。﹃ロシアとウクラ

すべき か わ か ら ないで

法人、 国家機関はどう

法 も 法 な り ﹄。 個 人、

た。 法 律 家として﹃悪

ライ ナ 政 権 を 支 持 し

︵ロシア編入反対︶   ﹁ 住 民 投 票では ウ ク

悪法も法なり

米国との対立が決定的にな りつつあるロシアには「西側

とする大転換の兆しも見え始

なしの世界」を受け入れよう めた。 それ ほどに米 国 不 信

が高まっている。ロシア知識

大国が小国の参加なしに小国

考えている。

関 係 安 定の基 礎 を 作 らないと

なく、いかなるイメージ操作も

典的外交に取って代わるものは

ロシアの視点からみた ウクライナ情勢の行方 の運命を決定した時代は過去の

プレーヤーの国益に対する高い 関 心。 型 通 りの地 政 学 的 綱 引

ウ ク ラ イ ナ 危 機 で は プロ

勝利の幻想は瓦解する

突然の国境変更

喜び・不安・戸惑い

︶はシンフェロポリ

イナに戻った ら 逮 捕 さ 市 の 住 人。﹁ 私 は ク リ

た。ロシアへのクリミア る。 両 親が住むウクラ ︵

バフチサ ライ 市に暮 編入には反対した。

何の改善もなし

らす クリミア・ タター

手、 イッゼ ド・エミ ル ライナの民 族 主 義 者 だ

す。 年 金 生 活に入って

ンにルーツがある﹂と話

3年だ。

同僚のワジムさんは、 ﹁ 住 民 投 票 の時、 私

右派は嫌だ

﹁ ウ ク ライ ナ 中 部 の れる。 裏 切り者 だと考 ミ ア人で、 ポ チョム キ

お よ び 円 滑 な 中 継 輸 送、 大 統

ル 人 の タ ク シ ー 運 転 人 間 だと、 なぜかウク えられているから﹂

シアへのクリ ミ ア 編 入

クリミアが編 入され

サリエフさん︵ ︶はロ と思われてしまう﹂ 要 なのは、 すべての 協 議 参 加

た後、 セバスト ポリ滞 自 分がウクライナ人 だ は航 海に出ていた。 投

住 んでいる。 ウ クライ 人はかわいそうだ﹂

いかなる改 善 も感じな で、 どの国 民になりた 親 戚 は ウ ク ライ ナ に、 アへの編入に賛成した。

の価 格が3 倍に値 上が と言われた。

アンナ・マリニナさん

﹁ ﹃右派﹄と仕事をす 誰も助けてくれない

﹁ 市 民 権 付 与 はロシ ナに行くつもりはない。

﹁ 戦 わ な け れ ば な ら ア人になることを 意 味

りしたという。

ない時は戦 う。 アラー している。 学 校 はあと るのは嫌 だ。 妻と6 カ

立場でそれぞれ

クライナ中 部 ポルタワ んとワジムさんはウク 月の子 供を連れて移 住 ︵ ︶とビクトリヤ・マ

軍 人のアレクセイさ

戻れば裏切り扱い

ここを去ると思う﹂

の神 以 外 何 も恐 れてい 1 年 半ある。 その後は

イロネさん︵ ︶はウ

いずれここを去る

ない﹂

解 しは じ める。 な ぜな ら、 敗

世紀 至る能 力で際 立っていた。 第一

司令部で働いてきた。

めにクリミアに移 住 し ポリのウクライナ艦 隊

所 属 している が、ロシ 学校の 年生。 2 人と

ま だ ウクライナ軍に は、 セバスト ポ リ市の

ルトィネンコさん︵

次 大 戦 後 に勝 利 し た 大 国 が 世

である。 ︻5 面に別稿︼

て、 安 定へと至ってほしいもの

た。 外 交 的 な 理 性 の 力 に よっ

結局、移行の状態にすぎなかっ

世 界 秩 序 と 思 わ れた ものは

めにもそれはなかった。

の感 覚 に酔いし れた 今 世 紀 初

紀 前 半、 西 側 が 自 らの正 当 性

界 を 構 築 し よ う と していた

市から心理学を学ぶた ライナ市 民。 セバスト するのも大変だ﹂

や 冷 戦 時 代 は 粘 り 強 く 合 意に

が 非 難 している 欧 州の

ケリー 氏とファンロンパウ氏

者は雪辱を期するから。

が 生 じるな ら ば、 た ち ま ち 瓦

かに勝 利 を 収 め た という 幻 想

件な勝利というものはない。誰

真 の外 交 には 完 全 かつ無 条

い。 むしろ食 糧や燃 料 いか決 める必 要 がある 父 方の親 戚 はロシアに ウクライナ南 東 部の住

ロシアへの 編 入 後 は 在 中 に 出 入 国 管 理 局 と 考 えている。 母 方の 票 で きていた ら、ロシ

に反対した。

写真を見る jp.rbth.com/47997

うに束ね合わせることである。

犠 牲にして自 分たちにとってよ

者 が さ ほ ど 重 要 で ない ものを

これ らが 基 本 的 要 素 だ。 必

の承認などであろう。

領選挙の適法性に対するロシア

参 加、 ガス価 格 や 巨 額の債 務

クライナの何 らかの同 盟への不

る ウ ク ライ ナの立 憲 体 制、 ウ

すべての住 民 の権 利 を 保 障 す

そこでのテ ーマに な るのは、

が求められている。

取 引、 歩 み 寄 り、 国 益の考 慮

ている。 さまざまなレベルでの

フェッショナルな 外 交 だ けが 状

ロシア極東 森林火災が深刻

え方の核心への介入が始まる一

社会

ものだ。しかし、その時代の政

日産自動車が低価格帯の復刻ブランド「ダット サン」 をロシア市場へ投入する。今回発表された 「on-DO(オンドー) 」はアフトワズのラーダ・グ ランタがベースとなっている。ロシアの厳しい 道路条件や環境に適合するように開発された。 これは復刻ダットサンの 3 番目のモデル。ダッ トサン・ディーラー網を通じて販売され、初期 段階で 25 店舗、その後 2 年でさらに 75 店舗 増えロシア全土で展開される。【ロシア NOW】

況 を 打 開で きる 正 念 場 を 迎 え

ダットサンがロシア市場に

線の認識。それらに起因するリ

ビジネス

治には、国際関係の自明の真理

短信

スクは到底避けられない。

領の見解を紹介する。

という別の側面がある。主要な

人とゴルバチョフ元ソ連大統 きではなく安全保障に関する考

2013 年ベスト・オブ・ロシア り 重 要 な 何 かを 手に入 れる よ

JP.RBTH.COM

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問 視 する 国 は 修 正 主 義のらく 印 を 押 され、 普 遍 的 利 益の名

に持っていないのは真実である。

うに。 生 活 が 大 き く 変 わ

民 族 主 義 者 扱 いさ れ

2 人は政 治に興 味は

ないが、 無 関 心ではい

られなかったという。

﹁ウクライナの人は自

分 た ちが利 用 されてい

︵態度表明なし︶    ﹁ 私 はロシアの予 備 役

に入りたくて、 友 だちと

アは ずっと 前 か らロシア

賛成票を投じた。 クリミ

︵ロシア編入賛成︶    ﹁ 住 民 投 票 では 編 入 に

EU加盟はだめだ

︻エラッジ・ニドエフ︼

助けてはくれない﹂

と 思ってる け ど、 誰 も

﹃ 右 派 ﹄ も過 激 主 義 者

ることに気 づいてない。

将 校 だ。ロシアへの移 行

も そ う だった か ら、 やっ

も米 国が助 けてくれる

は経 済 的に難しいプロセ

とロシアが 動いたって 感

EU加盟の希望あった

らない。 ウクライナには

どかった。 今 回の革 命は

ばかりで、 政権交代もひ

最 悪 だ。一番 望むのは安

じ。 ウクライナでは革 命

定を希望する。クリミア

E U 加 盟への希 望 があっ

をロシアの自 由 経 済 特 区

定。EUには絶対に加盟

ラト ビア、エストニアに

しちゃだめ。 私の親 戚が

がない。書類変更手続き

か。 今のところ全く仕事

に多額の出費が見込まれ

はEUに加盟した途端に

貧窮して、 仕事がない状

いるけれど、 バルト3 国

態になったという﹂

証明書に切り替えて、組

べてお金がかかる﹂

アンドレイさん︵ 不動産査定人

アリョーナさん︵ 看護師

合に入ったりするのにす

る。ロシアの卒 業 証 書や

にし た らいいのではない

た。ロシアに入った ら 安

スで、 何が得なのかわか

ウ ラ ジー ミ ルさ ん

ることを恐れる。   ﹁ ウ ク ライ ナ 人 だ と 南東部住人は気の毒

リ ミ ア問 題について語 することになる。

こに暮 ら している。 ク 受 けてロシア軍に従 事 でいる。

はロシア人。 子 供 もこ た。いずれ、 再 教 育を 人になれることを 喜 ん

アレクセイさんの妻 ア軍の制 服が支 給され もロシア 系 で、ロシア

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のもとに反撃にさらされる。 崩壊、安定化、苦しみを味わっ 一方、ロシアは力と国 益のバ

未完成の移行期 ロシアが外交において保守的 この四 半 世 紀、 変 化の陶 酔、 であり一部の現代的手法を十分

すべての国がそうした考えを抱 序も生じなかったとの確信が生

てきたロシアには、いかなる秩

一方、西側の共同体の外では、

諸 国 を は じ めと し た 急 成 長 を

いているわけではない。 アジア

るなんて思ってない。ロシ

大学講義があり、 文法

イナの法的比較﹄という

ウクライナ危機

ランスや交渉取引に基づいた古

遂げる有力な国家の一部は、そ れを公平なものとはみなしてい ない。 前 世 紀 半 ばの勢 力 図 を 反 映 する国 際 機 関︵ 国 連 安 保

編入運動に参加 ︵ロシア編入賛成︶    ﹁ソ連 に 暮 ら し、 今 は 家族の再結成。住民投票

アの他の地域よりクリミア

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読者の皆様、「ロシアNOW」 へようこそ。   「ロシアNOW」 はロシアを紹介する日本語版で、毎日新聞 の折り込みです 。1月,4月,7月,10 月を除く毎月第2 木曜日に発行されます。「ロシアNOW」チームの目標はロ シア発の興味ある記事をお届けし、ロシア理解の一助になる ことにあります。  2007 年以来、ロシアで影響力を持つ有力な日刊紙 「ロシー スカヤ・ガゼータ(ロシア新聞) 」は世界の主要新聞に折り込 まれる月刊付録を制作してきました。ロシアは現在、政治か ら文化に至るまで変化の過程にあります。日本語版ウェブサ イト roshianow.jp は追加の記事や多様なコンテンツが毎日 更新されます。ご意見・ご感想をお待ちしております。

ロシアに 戻った。 これは

が良くなるわけないじゃな

「ベスト・オブ・ロシア」で最も特筆す べき部門は「人々・出来事・日常」 。興 味深い写真が数多い。写真上は「人生 を変える経験」と名付けられたシリーズ の中の 1 枚。ほこり、土とロックンロー ル。クラスノダール地方のコサック村、 ブラゴベシェンスカヤで開催された音楽 祭「クバナ 2013」の一コマである。

ロシア情報をお届けします

では編入に賛成票を投じ た。 クリミ アで起こった 運 動 を 支 持 している し、 私自身参加していた。 地 元の政 党と一緒に3 回 キ エフに行った。 編 入 が ビ

条文があった。ロシアで 無 罪 判 決 は 1 % 以 下。

の間 違いまで一致 する

旧 ソ連 諸 国 も 同 じ だ。

い。ウクライナの親戚が呼 ミアを去ることはない。家

裁 判 員は間 違いを認め

ジネスに及ぼす影響を恐

があって家族がいたら、 他

んでくれているけど、 クリ

に移ることなんてできない

れてはいない。 何 も怖 く ないし、 失敗しても心配 することなんてない。 ま だ若いし、この先にはもっ

ない。 クリ ミ アの裁 判 所と公証人役場は発進

フョードル・オブマイキン撮影

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2014年(平成26年)5月8日(木曜日)

から﹂ ︶

しない車のようだ﹂

jp.rbth.com/ukuraina-kiki

Product of Russia Beyond the Headlines

ナタリヤさん︵ 絵本作製者

19

グルジア、アルメ ニ ア、 ア ゼ ル バ イ ジャンのカフカス3 国 に住 み 着 いてい るロシア人。さまざ ま な 理 由 で ロ シア から移住してきた人 たちの子孫だ。

パーベルさん︵ 法律家

「ロシアNOW」    電子版でお勧め

48

と た く さ んの希 望 が あ

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58

モスクワ南部のビリュリョフスキー樹木園で4 月 24 日、桜が開花した。観測史上最も早い開 花となった。モスクワ市役所が伝えた。27 日に 満開となった。昨年の開花は 5 月 9 日、科学ア カデミー中央植物園 「日本庭園」 でのことだった。 安倍晋三首相は昨年4月末のモスクワ訪問の際 に、桜の苗木を植樹した。これまでモスクワで 開花が最も早かったのは 4 月 25 日、最も遅かっ たのは 5 月 15 日である。【ロシア NOW】

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極東のマガダン  ラーゲリの暗い過去  大自然ツアー満喫 7面 19

モスクワで史上最も早く桜が開花

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の長い列に並んでいた住民に聞い た。  【ダリヤ・ダニロワ、ルース キー・レポーター誌】

クリミアで商売繁盛しているのが 写真屋。住民はロシアの身分証明 書用の写真が必要なのだ。撮影

カフカスの ロシア人 26

気候

「クリミア人」に聞いてみた

Alamy/LegionMedia 撮影

6面

8面

もう一つのロシア文学  古典だけじゃない

4面

ロシアのレトロカー  ソ連要人車に人気   投資家も熱い視線 28

る。 働き者は飢えで死ぬ ことはないさ﹂ ウラジーミルさん︵ 実業家

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ロシア極東で4月23日の一昼夜の間に24件、 5000㌶以上の森林火災が消し止められた。消火 活動には924人が動員され、車両164台とヘリコ プター8機、航空機14機も参加した。極東連邦 管区の保護地域で森林火災が始まった当初から これまでに1153件の火災が発生、 12万1600㌶以 上が燃えた。昨年の同じ時期は森林火災20件で 1400㌶強の被害だっただけに、今年の状況は深 刻である。 【ロシアの声】

編入どう思う

DISTRIBUTED WITH THE MAINICHI SHIMBUN THIS PULL-OUT IS PRODUCED AND PUBLISHED BY ROSSIYSKAYA GAZETA, RUSSIA jp.rbth.com

2014年(平成26年)5月8日(木)

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オピ ニ オン ( 5 面 )


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