ロシアNOW8月号

Page 1

Alamy/LegionMedia

7面

ウクライナ避難民 ロシア反戦アート 人道物資輸送運転手

3面

飲料自販機売り込み コラ半島原子力施設 日露将棋チェス対局

4面

サモワールの魅力 クラスノダール紅茶

8面

ロシア作家の戦争観

冷めた目で問う

現在のウクライナ情勢は我々に倫理的問題を突きつけている。 紛争 の原因、 意義ばかりでなく、 そもそも軍事力行使が許されるか否か。 この問いを考える手がかりとして、ロシアの大 作 家5 人の戦 争 観を紹 介する。 発言の時期と状況はさまざまだが、いずれも現代性を失って いない。 今日、マスコミとソーシャルネットで繰り広げられている議論

1 8 7 7 年、ロシア に義 勇 軍によって戦 う

も結局、彼らの見解を超えるものではない。 ︻ミハイル・ブートフ︼

フョードル・ドストエ た。 政 治 的 理 由のほか のウクライナ南 東 部の

フスキー︵1 8 2 1 ∼ はトルコに宣 戦 布 告 し 可能性を論じた。 現在 ︶

和であって、 戦 争では

問題の解決を不可能にする。 今こそ対話が必要だ、とイー

ゴリ・イワノフ前外相は説く。 ほかに 2018 年サッカーW杯

ロシア大 会、 日本 の 集 団 的 自衛権を取り上げる。

短信 ビジネス

役人はレクサスに乗れず

を 経 て、 あ ら ゆ る 殺 ん︶ 弾 を 恐 れない。 だ けた。 その努 力の結 果 詩 人が自 任 するように 撃のた めではな く、 何

﹁私は榴散︵りゅうさ

﹁ 当 事 者 のい ず れ もコント ロー ルで き ない 場合、状況は日 に日に危 険 度を 増 していく。 打 開 策 は ひ と つ。 対 立 する相 手 を悪と見なすこ

とをやめ、 対 話

然 的 な 暴 力に追いやっ

来月モスクワで開催

日露フォーラム

﹁ ビ ジ ネ ス、 技 術、 文 化 の 接 点 ﹂

これと 正 反 対の発 言 て し ま う こ と だ ⋮⋮。

合っている﹂。

あ ら ゆ る 気 分、 健 康、 争 なんか 無 くても、い

﹁ 我 々 はこの 時 代 を 仕 事の能 力、 運 命の感 つもそうなのだが﹂︵長

高め、 ﹃霊化﹄すべきだ。 覚に対し、 限りなく解 編小説﹃煉獄のなかで﹄

の両日、モス

た。 兵 隊 外 套の臭いは ナ ー ク︵ 1 8 9 0 ∼ も あ る。﹁ 戦 争 は 私 の もっと もロシアで は 戦

日の日記︶

ロシアの 第一次 世 界 その目 的は、 日 々をよ き放つように作用する﹂ 1958年。原題は ﹃第

クワのワールド・ トレード・ センター

ロシースカヤ・ガゼータ ︵ロシア新聞︶

で開催される。

監獄と強制収容所に送

の最 大の詩 人 だった ブ 感と美に満 ち、 殺 人と 情と詩 人 気 質によるも あ り、 前 線 か ら 直 接、

トルトネフ極東連邦管区大統領全権代

総会では森喜朗・元首相、ユーリー・

ロークは孤立していた。 自 殺 というむなしい願 のだろう。

表、佐々木則夫日露経済委員会委員長

戦 争 を 嫌 悪 しつつ、 そ 望 が生 じないよ うにす

れが﹁社会的爆発﹂をも る た め だ。 こ れ 以 外、 ア レ ク サ ン ド ル・ ソ も、 国 内の独 裁 者を正

﹁いかなる 戦 争 も 解

は 知 らないし、 想 像で ︵1918∼2008︶ めるだけだ﹂

たらすのは必 至 だと理 戦 争に抗 する方 法を私 ル ジ ェ ニ ー ツ ィ ン 当 化し、 その立 場を強 解していた。

巻︶

︶ は 作 家。

* ミ ハ イ ル・ ブ ー

パステル ナ ー クの発 決にはな らない。 戦 争 ト フ 氏︵

1 9 1 7 年のロシア きない﹂︵書簡、第 革命後、彼は新たな﹁忌

まわしい現 実﹂ と和 解 言 に は ト ル ス ト イ 的 は 破 滅 だ。 戦 争 が 恐 1 9 9 9 年 にロシア・

周年を迎える。

東 シベリ アと 極 東 を

バム 鉄 道 は 全 長 約

jp.rbth.com/jap_rus_forum

具体的な情報はこちらで

マッチング・投資相談会も予定される。

また、フォー ラム 期 間 中にビジネス

係の発展が大きなテーマとなりそうだ。

が行われる。 特に極 東における日 露 関

市民の代表が参加し、 率直な意見交換

関・経済界・地方自治体、スポーツ団体、

フォーラムには日 露 双 方から国 家 機

の二国間協力の可能性を論じ合う。

学技術、スポーツ、 文化交流の各分野

食と農業、輸送・都市交通、医療、科

分科会ではエネルギー、極東の発展、

︵日本経団連副会長︶ が講演を行う。

ら れ た。﹁ ど ん な 戦 争

ソルジェニーツィンは

も巻き込む熱狂を呼び れを 失 うのが惜 し くな も 戦っていない 彼 の 戦

開催に続き2回目となる。

と毎日新聞社の共催。 昨年2月の東京

二つの大 戦 のいず れ 一圏にて﹄︶

起こす中で﹁銀の時代﹂ り、 生 活が魅 力 的で霊 争 観は経 験でなく、 感 実 戦に参 加した将 校で

大 戦への参 戦 が文 学 者 り 尊いものと して、 そ

2014﹂ が9 月9、

を 話 し 合 う﹁日 本・ロシアフォー ラム

にのど 元 ま で 迫って 来 ボ リ ス・ パ ス テ ル

フィリップ・マリャービン

山脈、 の大河を貫き、 くものにした。

世 紀 末に生 ツ ク 州 タイシェト か ら

も 呼 ばれた バムはタイ 口をロシアにもたらし、 通 る 輸 送 路 を 建 設 す 43 0 0 ㌔。イルクー

第 2 シベリア鉄 道 と 太 平 洋に至る第 二の出

シベリア鉄道を補完

すべく 苦 しい試 みを 続 語 調 が 聞 き 取 れ よ う。 ろしいのは、 火 災 や 爆 ブッカー賞を受賞した。

アム ール鉄 道

略 称バ (

この 夏、 バイ カ ル・

バム鉄道 着工 を始 める。 さも

ないと両 側から

エスカレー ト さ せ、 新たな犠牲 者を生み、 内戦 となる﹂

﹃戦争と平和﹄と﹁響き 者 すべてを、 愚 鈍の必

ト ル ス ト イ を 変 え 人を否 定 するよ うにな が、 戦 争とそれに結 び は 絶 望への沈 潜 と 早 す ﹃ドクトル・ジバゴ﹄は よりも、 自 ら思 考 する

︶のセ 多くを否定した。

わった。 これ らの体 験

はそれを 通 じて教 育 さ た カフカス戦 争にも加 1921︶

︵1916年6月 虚 偽の宗 教。 若い世 代 カスの諸 民 族を征 服し ロ ー ク︵ 1 8 8 0 ∼ い﹂

に、 意 識 的に人を欺 く 加 し、 その前には カフ ア レ ク サ ン ド ル・ ブ 我 慢で きる ものじゃな 1960︶

が存 在 すること。 第 三 バスト ポリ防 衛 戦に参

教 育された人 間の階 層 ︵ 1 8 5 3 ∼

すなわ ち殺 人のために た。 ク リ ミ ア 戦 争 めとする社 会 的 組 織の まわしい。そいつはつい

窃盗だ。 第二に、 軍人 た の は 戦 争 体 験 だ っ り、 国 家と教 会をはじ ついた ものの 臭 いは 忌 ぎる死であった。

の不 正な分 配 すなわち

明 白 だ。 第一に、 財 産 月4日付書簡︶

このままではさまざまな国際 ︵18 9 9 年 れる ﹂

マリャービンの豊かな色彩

40

﹁ 人 間 を 野 蛮で 獣 的 に、 ト ルコに抑 圧 され の状 況 とパラレルをな にするのは長 す ぎる平

現代性 失われず

ない。 大 義にもと づく 戦 争、 抑 圧 さ れ た 者 を 解 放 す る 戦 争、 無 私の神 聖なる目 的のた た ブルガリア人 とセル している。 めの戦い⋮⋮このよ う ビア人への﹁兄弟﹂の援

レ フ・ ト ル ス ト イ

ド ス トエフス キ ーの ︵1828∼1910︶

な戦争は個々人の魂を 助だとみなしていた。 自己犠牲の意識で強固 ﹁どんな 戦 争であれ、

統一でたくましくする﹂ シャルネットワークの政 一方 だ け が 悪いという

作家 ボリス・    アクーニン

もっと読む jp.rbth.com/45445

ま れていた。ロシア 政 バイカル湖の北 側 を 通

府 が そ れに関 心 を もっ り、 日 本 海 沿 岸のソビ

たのは日 露 戦 争での敗 エツカ ヤ・ ガ バニに 達

本にす

1 日に通 過 する列

戦︵1905年︶以降。 する。

東部国境の強化が必要

車運行は約

それから実 地 調 査が ぎ ず、 輸 送 量 も 年 間

になってからだ。

行 われたが、 第一次 世 約 1 2 0 0 万 ㌧ と 少

たる ものだ が、 そ れで

現 在の輸 送 量は微 々

まっている。

ア全 体の約 1 %にとど

1 2 0 0 万 人で、ロシ

界 大 戦とロシア革 命 が な い。 旅 客 数 は 年 間

それを妨げた。

完工は1984年

バム鉄 道の中 枢 部 分

年レー もソ連 時 代の戦 略は実

の建 設はソ連 時 代の

年に始 まり、

ル敷 設を完 了した。 以 現されたといえる。

バム鉄道開通により

この﹁世紀の大建設﹂ 懸 案 の一つが 解 決 さ れ

後、鉄道線を延長した。

に は 約 2 0 0 万 人 が た。ロシア国 境 近 くを

参 加 した。 ある者はロ 走るシベリア鉄 道 東 部

マンを 求 め、 ある 者 は 区 間が何かの理 由︵例

で 高 給 に 引 か れてやって えば、中国との紛争︶

来た。 彼 らの多 くはそ 使用不能になった場合、

都市や集落に残ったが、 トを確保できたからだ。

のま まバム 鉄 道 沿 線の 極 東 地 域への輸 送 ルー

6面に続く︼

年 代 初 ︻ ダリヤ・ ゴンサレズ、

めからさびれ始めた。

これらの街は

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毎日新聞の折り込みとして、ロシア NOW は1月、 4月、7月、10 月を除く毎月第2木曜日に発行され ます。チームの目標はロシア発の興味ある記事をお 届けし、ロシア理解の一助になることにあります。  日本語版ウェブサイト jp.rbth.com には追加の記事や 多様なコンテンツが毎日更新されます。ご意見・ご感 想をお待ちしております。

にし、 全 国 民の団 結と 政 治 評 論は現 代のソー

開 戦 前 にドス トエフ 戦 争の原 因は自 ら目を

10

ロシア情報をお届けします

49

19

︵﹁血を流 すことは救い 治分析と似通っている。 意見には賛成できない。 になるか﹂、﹃作 家の日

「ロシアNOW」    電子版でお勧め

ム︶ が着工されてから ガ︵亜寒帯林︶ 、七つの へき 地の資 源 を 手の届 る構 想は

現 在のウクライナ政 権は状 況を

続けている。

に悪化させる必要性をEUに訴え

︵政治情勢センター長︶       米 国はロシアとの関 係を徹 底 的

セルゲイ・ミヘエフ氏

ロシア外交の﹁暗黒の日﹂   アンドレイ・ピオントフスキー氏 ︵戦略調査研究センター長︶    欧米だけでなく、 全世界との関 係が急速に悪化している。 ロシアが 少 な くともこの事 故に 間接的に関与したという意見があ

感情的かつ不条理な段階に持ち込

もうとしている。﹁ドネツク人民共

和国﹂と﹁ルガンスク人民共和国﹂

を国際的テロ組織に認定すると発

表し、 欧 米の一般 市 民の意 識の中

勢と重なるようにした。

でアルカイダやアフガニスタン情

この問 題については、 自 国の主

張を守る必要がある。たとえ間接

的であったとしても、ロシアを事故

の当 事 者にすることで得をするこ

10

スキーは宣 戦 布 告なし 閉 ざ さ ない者 にとって

赤星選手がFCウファに入団

証明する証拠もない。

もっと読む jp.rbth.com/mareshiaki_tsuiraku

記﹄1876年所収︶

マレーシア機撃墜 戦はソ連崩壊に寄与したのだ。

アレクサンドル・コノバロフ氏 ︵戦略評価研究所長︶        墜 落 事 故はロシアの外 交 政 策の

る。 そのような報 道が続けられて

だがこれからは、 オバマ大 統 領は

米 国 か らの圧 力に抵 抗 してきた。

制裁がある。 ヨーロッパはこれまで、

微 妙 な 問 題の一つとして、 経 済

業を妨害されたと訴えた。

は武 装した酔っ払いに囲 まれ、 作

安保協力機構︵OSCE︶ の調査団

が悪いイメージになっている。全欧

事故後に現場で起こっていること

いるためだ。

フィリップ・マリャービンはカザンカ村 (ウラル山脈南麓)の小作農の家に生ま れた。16 歳の彼はアトス山にあるロシ ア正教の修道院へと旅した。イコン画家 になるための訓練を積む中で、豊かな 色彩と大胆な筆の動きを鮮やかに組み 合わせた独自のスタイルを確立すること に没頭した。 「ファランドール」 ( 、1926 年 )

読者の皆様、「ロシアNOW」 へようこそ。  「ロシア・ビヨンド・ザ・ヘッドラインズ」 (Russia Beyond the Headlines = RBTH) の日本語版「ロシ アNOW」は多面的な情報リソースであり、ロシア の文化、政治、ビジネス、科学、社会などの各分 野におけるニュース、解説、オピニオン、分析を 提供いたします。

マレーシア航 空 機 撃 墜の悲 劇は 引きの流れを大きく変えた。 今後

ウクライナ情勢をめぐる政治駆け どのようになるのか。ロシアの専門 家の意見を聞いた。

くなった。 それが対 露 関 係で正 当

米国の経済制裁に従う可能性が強

状況は根本的に変化し、 欧州が

になった。 ︻ ニコライ・リトフキン、マリナ・ ﹁ブラック・デー﹂ スタロドゥブツェワ︼

セルゲイ・カラガノフ氏

イナ軍が撃 墜したということが調

であってもなくてもである。ウクラ

︵国立高等経済学院学部長︶     事故調査が義勇軍による撃墜を   証明した場合、ロシアは間接的な

兄 弟 関 係 だったロシア・ ウクラ

査で判明する可能性は低い。

関与者と見なされ、禍根を残す。

ロシア 1 部リーグのサッカークラブ「ウファ」 はポーランド 1 部リーグの「ポゴニ・シュチェチ ン」所属の日本人ミッドフィールダー赤星貴文選 手(28)を獲得することで合意した。「契約期間 は少なくとも 3 年」と「ウファ」の公式ウェブサイ トに記されている。赤星選手は 2011 年から「ポ ゴニ」でプレーしている。日本では「浦和レッズ」 、 「水戸ホーリーホック」などの複数のクラブでプ レーしていた。【ガゼータ・ルー】

10

「ロシアはウラル で 終 わ るも の で な く、シベリアで始ま る」。 広すぎてつか みどころのないシベ リア。この漠とした 感じがシベリアの魅 力である。

すべてを台 無しにしてしま うよ う

28

とはない。ロシアの直 接 的 関 与 を

74

技術

簡単にEUを経済制裁に呼び込め るだろう。

84

90

オバマ米 大 統 領はロシア軍 がウク

ペルミ国立研究大学の言語学者たちが携帯 用の日本語学習アプリを開発した。ロシア語文 体論講座の研究者で、発案者のイリーナ・ベロ ゼロワ氏がタス通信に伝えた。日本の国際交流 基金と日本国際教育支援協会が運営する日本語 能力試験JLPTはN1∼N5の5段階だが、 今のところは一番簡単なN5にしか対応してい ない。しかし、近日中にN4対応のアプリを追 加するという。ダウンロードは無料。 【タス通信】

世界との関係悪化を憂慮

漠とした シベリア

力も小規模になるだろう。

スポーツ 11

一言

2014年 (平成26年) 8月14日 (木曜日)

な措 置をとった。 軍 産 複 合 体の協

アフデエフ撮影

ロシアで7月末、公用車購入の新規則が発効 し、関税同盟(ロシア、ベラルーシ、カザフスタ ン)域外で組み立てられた自動車を役人は購入 できなくなった。 日本の高級車レクサス、 インフィ ニティ、アキュラは国家発注の対象にならなく なる。とはいえ、ロシアで日本の高級車の国家 発注が占める割合はレクサス 0.4%、インフィニ ティ 1% と低い。有望なニッチとなるのは民間 エリートと商業部門である。【ロシア NOW】

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劇的に悪化した米露関係。 ウクライナ南東部のドネツク州で、攻撃 を受け自宅が破壊された女性 =マックス・

Product of Russia Beyond the Headlines

ピンポイントの経済制裁は国際 イナ関係はさらに崩れた。 両政府   シス テ ム を 昔 のシス テ ム に 戻 す。 はロシアのクリミア編 入 直 後から ライナに投 入されることを期 待し ている。かつてのアフガニスタン作

12

もろい米露関係はどこまで悪 化するのか jp.rbth.com/ukuraina_kiki

日本語学習アプリを開発 40

倫理の提起

81

DISTRIBUTED WITH THE MAINICHI SHIMBUN THIS PULL-OUT IS PRODUCED AND PUBLISHED BY ROSSIYSKAYA GAZETA, RUSSIA jp.rbth.com

2014年(平成26年)8月14日(木)

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オピ ニ オン ( 5 面 )


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